|公開日:
経営者や役員が負担する責任と訴訟リスクとは?
役員に昇進することで生じる責任とリスク
役員に昇進すると、従業員のときとは異なる固有の責任やリスクが生じます。
以下では役員と従業員の違いや、役員に就任することで発生するリスクとは何かについて解説します。
役員と従業員の違い
役員は経営に直接関与する立場であり、従業員とは契約形態が異なります。
具体的には、役員は会社と委任契約を結ぶ一方で、従業員は会社に雇用される立場であり、雇用契約を結びます。また、役員は株主総会決議で選任され、解任も株主総会決議で行われます。従業員の採用と解雇は労働基準法に基づいて行われ、より厳格な規制がある点も違いです。
責任の面では、役員には会社の利益を守るための善管注意義務と忠実義務があり、会社に損害を与えた場合、損害賠償責任を負う可能性があります。
一方で、従業員が業務中に会社に損害を与えた場合、故意または重大な過失による違法行為を除き、一般的に損害賠償責任を問われることはありません。
役員に就任することで発生するリスクとは
取締役は株主から信任を受けているため、企業の経営に責任を負います。業績が悪化すれば、役員報酬の一部を返上することがあるほか、前述のように適切な業務遂行を怠ったことによる損害の賠償責任を負う場合もあります。
また、不祥事が発生した際には監督責任を追及され、株主から訴訟を提起される可能性もあります。
以上をまとめると、役員は会社の経営や意思決定に深く関与する立場であるがゆえに、会社や第三者に対してより広範囲で重大な責任を負うのに対して、従業員が会社に負う責任は限定的であり、故意や重大な過失がない限り責任を問われることはまれだということです。
役員に関わるリスク事例
以下では、役員の責任が問われるケースやリスク、必要な備えについて解説します。
事例① 株主代表訴訟による賠償金の支払い
株主代表訴訟とは、会社が役員の責任を適切に追及しない場合に、株主が会社の利益のために原告となって役員等を被告として責任追及する訴訟のことです。
【ケース】
役員が社員の詐欺事件を放置したことにより会社に損害が発生。株主代表訴訟が提起され、約7,400万円の賠償命令を受けてしまった。
【リスクに備えるためのチェックポイント】
・株主訴訟発生時の高額な賠償金、争訟で支出した費用を役員個人で支払えるか?
・社外取締役の登用に備え、役員賠償責任保険は用意しているか?
・会社役員賠償責任保険の保険料は会社で全額負担でき、役員負担なしにできることを知っているか?
事例② 従業員へのハラスメント
パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)など、役員としての強い権限や立場を利用した従業員へのハラスメントは深刻な問題となります。
【ケース】
役員から人事上の不当な取扱いや退職勧奨を受けたことで精神疾患を発症し、休職に追い込まれたとして、従業員に訴えられ、慰謝料約3,000万円を支払った。
【リスクに備えるためのチェックポイント】
・従業員からのハラスメント訴訟への備えはしているか?
事例③ 役員退職金支払いによる資金繰りの悪化
役員の退職金は数千万円から数億円の規模になることもあり、一度に大きな金額を支出する必要があるため、手元資金が大幅に減少し会社の資金繰りが悪化する可能性があります。
【ケース】
在任年数35年、退任時報酬月額100万円である役員への役員退職金として、約8,400万円を現預金から支払ったところ、高額な支出となり、赤字決算となった。
【リスクに備えるためのチェックポイント】
・役員退職金の準備をしているか?
・直近の利益が黒字でも、役員退職金を支払うことによる当期赤字決算の可能性はないか?
・役員報酬として受け取るよりも、役員退職金として受け取る方が税制上のメリットがあることを知っているか?
【役員退職金の計算事例】
最終報酬月額100万円、在任35年の社長の退職金準備の場合
退任時最終報酬月額(100万円)×通算役員在任年数(35年)×功績倍率(2.4)
=8,400万円
*1:一般的な功績倍率(例) 会長:2.0、社長:2.4、専務:1.8、常務:1.5、役員:1.4
※功績倍率の法的な基準はありませんが、不相当に高い倍率は税法上否認されることがあります。
役員のリスクに備える法人保険
上記のような役員のリスクに備えるためには、会社役員賠償責任保険(D&O保険)への加入がおすすめです。
会社役員賠償責任保険(D&O保険)は、役員の業務遂行に起因する損害賠償請求から役員を守るための保険です。会社が契約者となり、役員を被保険者として契約を結びます。
補償内容には損害賠償金のほか、争訟費用(弁護士費用)や保険会社による初期対応費用などが含まれます。
法人保険のことならセゾンの法人保険にご相談ください
会社の経営に深く関与する役員は、経営上の広範なリスクを負う責任があります。株主訴訟や役員退職金支払いによる資金繰り悪化などさまざまなリスクが考えられるため、役員自身や会社を守るためにも法人保険に加入しておくと安心です。
セゾンの法人保険では、役員のリスクに備える保険をはじめ、生命保険、その他損害保険も取り扱っており、トータルで相談できます。
豊富な選択肢の中から専任のコンサルタントがご希望に合った保険をご提案しており、生命保険と損害保険をまとめて相談することも可能です。
経営者、役員に関するリスクに備えたい方はぜひお気軽にご相談ください。