更新日:
公開日:
資金繰り

設備資金の融資を受けるには?運転資金との違いや申し込み手続きの注意点、ポイントを解説

  • Facebook
  • X
  • Line
設備資金の融資を受けるには?運転資金との違いや申し込み手続きの注意点、ポイントを解説
店舗拡大や新商品の生産といった事業拡大や起業には大きな夢があるものですが、現実的にみれば多額の資金も必要です。

そのための資金を初めから自力で用意できる人は少なく、多くの場合は銀行からの借入に頼ることになります。

本記事では、設備資金の融資を受けるために必要なポイントを具体的に紹介していきます。

設備資金と運転資金、それぞれの使い道・融資条件

スムーズに融資を受けて思い描いたとおりに事業を進めていくには、設備資金の融資申し込みにおける手続きの特徴を把握して、しっかりと準備をすることが重要です。

設備資金、運転資金についてそれぞれ詳しくみていきましょう。

設備資金とは?

設備資金とは、設備、施設等の購入や契約といった設備投資のために、一時的に発生する資金のことです。一般的に設備投資は多額の資金を投入するため、企業活動に対して大きな影響を与えます。そのため、投資の意思決定を慎重に行う必要があるのはもちろん、銀行も融資には慎重になります。

設備投資が必要となるのは、以下のようなケースです。

・創業
・製造用機械の導入
・新しい工場の開設新しい店舗のオープン
・店舗や事務所の移転
・店舗の改装
・事務所で必要な機器の購入
・車両の購入
・備品の購入
・システム導入、バージョンアップ

運転資金とは?

運転資金とは、設備資金以外の使い道で、会社が事業を続けていくために必要となる資金のことです。

運転資金には、使い道別に主に以下のようなものがあります。

・経常運転資金:人件費や材料費など、恒常的に発生する費用の支払いに充てる資金
・季節運転資金:季節性イベントなどに伴って増加する費用の支払いに充てる資金
・増加運転資金:売上の増加に連動して増える費用の支払いに充てる資金
・その他資金:納税や株式の配当、賞与などの支払いに充てる資金

融資を受ける際の設備資金と運転資金の違い

設備資金と運転資金では、返済期間や提出資料、借りやすさ、審査方法といった点が異なります。

返済期間は一般的に運転資金の方が短めで、具体的には3~7年あたりとなります。

一方で、設備資金は投資効果がすぐに売上に反映されるとは限らないため、返済期間が長めに設定できます。具体的には、減価償却との兼ね合いにより10年~20年といった期間になります。

しかし、設備資金の融資では設備投資の必要性や効果について説明する必要があるため、一般的に多くの提出資料を求められ、審査も厳密になります。

>>運転資金の調達として資金繰りの問題を大きく軽減できる「支払い.com」

設備資金の融資を受けるには?金融機関に求められる資料や説明

融資を受ける際には、金融機関に資料や書類などを提出する必要があります。どんな資料が必要になるか、そして提出資料の作成においてどんなことを押さえておくべきかをみていきましょう。

設備資金の融資申し込みに必要な資料

銀行に融資の相談をすると、以下のような書類の準備を求められることが一般的です。

①何にいくら使うために借りるのかを示す資料

まず投資予定の設備の見積書など、金額を確認できる書類が必要になります。相談する際は仮のものでも問題ありませんが、最終的な融資実行までには正式なものが求められます。

②今後の事業の見通しを示すための資料
事業計画書など、投資による影響を含めた今後の損益や資金繰りの計画を数字で確認できる書類で実現可能性の高い計画を示し、「これなら期間内に返済できそうだ」と銀行を納得させる必要があります。

現在の経営状況が悪化していて、その状況を改善するための投資であれば、経営改善計画の提出を求められるケースもあるでしょう。

③その他の資料
すでに営業している企業であれば、会社説明資料など、事業内容を理解してもらうための資料があるとよいです。併せて、直近3期分程度の決算書(損益計算書、貸借対照表)などにより、企業の現在の経営状況を示すことも必要です。

これから創業する場合は、創業計画書の提出が求められます。

ポイント1:なぜ設備資金が必要かを明確にする

設備資金の融資を希望する際には、金融機関に対して「なぜ設備資金が必要で、どんな効果があるのか」をしっかりと説明することが重要です。

通常、設備投資には多額の現金が必要になることから、効果が低い投資をすれば、財務面の安全性が一気に崩れてしまう可能性があるためです。

金融機関が融資をする際には、確実に返済を受けられるか、リスクがないかどうか、確実に把握したいのです。

そして、融資の必要性や効果の説明に説得力を持たせるためには、資料による確かな裏付けが必要です。明確な説明と根拠となる資料が提示できれば、銀行とよい関係を構築することができ、今後の経営もスムーズになるでしょう。

ポイント2:設備投資による効果、融資額の妥当性を示す

銀行への説明で最も重要なことは、「必要な投資なのかどうか」「設備投資によってどのような効果が得られるか」といった銀行の疑問に答えることです。特に設備投資により得られる効果は、数値でしっかりと示すことが求められます。

また、融資額が妥当な金額であることも示す必要があります。妥当な融資額には、絶対的な正解がありません。世間的な相場感に、そのときの企業の経営状況や経営者の力量を加味して判断されることになります。

世間的な相場は、例えば坪単価、立地とのバランス、業界業種といったものが判断のよりどころとなります。

融資を申し込む経営者としては、希望する額がなぜ妥当だと思うのか、明確な根拠と共に説明できるようにしておくことが望ましいでしょう。

ポイント3:不動産物件の場合は仮押さえしておいてから融資申し込み

設備投資の対象が不動産物件です場合は、対象の不動産が確定していることが融資の前提となりますが、意中の物件は他の人にも需要があるかもしれません。融資の決定を待っていると、他の人に先を越されて契約されてしまうリスクがあります。

良い物件を見つけたときは、仮押さえしておいてから融資の相談をするという段取りにすれば安心です。先に契約まで済ませてしまうと、万が一融資が下りなかったときに困ってしまうので、あくまでも仮押さえにとどめておきましょう。

物件を仮押さえする場合、手付金などが必要となる可能性があるので、ある程度の資金は自力であらかじめ準備しておくとよいです。

設備資金の融資を受ける際の4つの注意点

晴れて融資を受けられるとなったときも、いくつか注意したいことがあります。4つの注意点を詳しく解説していきます。

1:使い道を変えてはいけない

「運転資金として融資を受けたお金を設備投資に使った」などということがあると、会社の信用力が大きく損なわれます。場合によっては、今後銀行からの融資を受けづらくなってしまう可能性があります。

信用力を維持するために、銀行に対しては必ず「正直であること」を貫きましょう。

2:設備投資をした後の領収書を残す

設備資金として借入をした場合は、資金の使途違反がないことを銀行に示すために、設備投資をした後の領収書は必ず残しておきましょう。万が一、銀行から疑いを持たれた際に役立つはずです。

3:多すぎる融資額、短すぎる返済期間はNG

通常、設備投資は利益が出ることを見込んで行います。せっかく設備投資を行ったのに、無理な返済計画のために資金繰りが苦しくなって、倒産でもしてしまったら元も子もありません。

融資額が多すぎたり、返済期間が短すぎたりすると、途中で資金繰りが苦しくなってしまう可能性もあるでしょう。余裕をもって着実に返済できるよう、無理のない返済額と返済期間を設定するように心掛けましょう。

4:返済計画、事業計画をきちんと立てる

設備投資の際には、利益がいつ、どれくらい見込めるか、返済額に見合う利益が出せるのかを把握しておくことが重要です。

そのためには、返済計画、事業計画をきちんと立てておきましょう。これは、銀行に説明するためでもありますが、そもそも設備投資の実行に関する意思決定の段階でやっておかなければならないことです。

投資の是非を決めるためには、設備投資によって見込まれる今後数年間のコストとリターンを洗い出さなければなりません。それには、詳細な返済計画や事業計画の数字が必要となってきます。

投資によるコストとは、初期投資額、メンテナンスなどの維持費、税金などが該当します。リターンは、例えば製造業なら生産量の増大や品質向上による売上増加分、効率化による原価低減分などが該当します。

こうした投資によるリターンからコストを差し引いて求めたフリーキャッシュフローをもとに、時間的価値を考慮して計算して投資の経済性を評価することが一般的です。

コストに対してリターンの方が大きいという計算結果なら「投資する」、逆なら「投資しない」という意思決定となります。この意思決定プロセスがしっかりしていれば、銀行への説明も自ずと説得力を持つでしょう。

まとめ

設備資金は運転資金と比較して必要となる金額が大きい分、経営へのインパクトが大きく、融資申し込みに伴う説明や資料準備に手間がかかります。しかし、返済期間を長めに設定することができる点は運転資金と比べて有利です。

設備資金の融資申し込みの際には、「なぜ設備資金が必要か」「設備投資によってどんな効果が得られるか」「何にいくら使うのか」「金額は妥当か」といった説明を尽くすことが求められます。併せて、その根拠となる資料を提示することによって、説明に説得力を持たせることが重要です。

>>運転資金の調達として資金繰りの問題を大きく軽減できる「支払い.com」