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資金繰り

【資金繰り表の簡単な作り方とポイント】無料テンプレートも紹介

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【資金繰り表の簡単な作り方とポイント】無料テンプレートも紹介
会社を健全に経営するには、資金繰りが重要です。たとえ売上や利益が十分に出ていても、支払いに必要な手元資金が不足すれば倒産するリスクがあります。

手元資金の収支予定を把握するためには、資金繰り表の作成が有効です。この記事では、Microsoft Excel(以下、エクセル)で簡単にできる資金繰り表の作り方と活用方法、ポイントなどを解説します。

資金繰り表の概要と目的

まず、資金繰り表の概要と役割を解説します。

資金繰り表とは

資金繰り表とは、会社に入ってくるお金と出ていくお金を把握するための帳票です。一定期間の現金収支をまとめた表で、損益計算書では判断できない会社の資金状況を一目で確認することができます。

なお、キャッシュフロー計算書は資金繰りの過去の実績です。これまでの資金の増減における原因を分析するためにはキャッシュフロー計算書が必要ですが、資金繰り表の役割は別にあります。詳しくは次項で説明します。

資金繰り表の目的は将来の予測

資金繰り表を作成する目的は、将来の資金繰りを予測するためです。例えば、仕入れが発生する事業の場合、買掛金の支払いから売掛金の回収まで期間が空きます。その間の経費の支払いは、自社の資金を捻出しなければなりません。

資金が不足すれば、必要な支払いができない「資金ショート」の状態に陥ります。たとえ帳簿上は利益があっても、資金が不足すると経営が困難になりかねません。

資金繰り表を作成して、事前に資金ショートのリスクやその時期を把握できれば、資金を調達して支払い不能な状態を免れることができます。また、融資を受ける場合にも、資金繰り表があれば会社の資金状態を金融機関に示せるでしょう。

資金繰り表の形式

実績資金繰り表
過去の営業実績を基に作成される資金繰り表です。過去の収支データを参考に現状を正確に把握し、改善点を見つけるために役立ちます。例えば、過去3ヵ月分の売上や支出の傾向を記録し、それを基に現在の資金状況を評価します。

予定資金繰り表

月次経営計画や将来の見通しを基に作成される資金繰り表です。売上予測や今後の支出計画を基に、未来の資金の流れを可視化します。この表を使えば、資金不足が予測されるタイミングに対して事前に対策を講じることができます。

ただし、資金繰り表に厳密な形式は存在しません。会社の業種や規模に合わせて自由にカスタマイズ可能です。多くの中小企業では、エクセルやGoogle スプレッドシートを使って資金繰り表を作成しています。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書との違い

資金繰り表とキャッシュ・フロー計算書はどちらも資金の流れを管理する重要な書類ですが、目的と内容が大きく異なります。

資金繰り表
資金繰り表は、将来的な資金の動きを予測するための書類です。主に1週間から数ヵ月先までの収支を細かく管理し、現金不足や余剰を防ぐために使用されます。短期的な資金管理に特化しており、経営者が日々の判断材料として活用します。

キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書は、事業年度1年間における過去の資金の動きをまとめた書類です。営業活動や投資活動、財務活動に分けて資金の流れを記録し、事業の健全性を評価します。これは財務諸表の一部であり、主に外部の利害関係者(投資家や金融機関)に向けて作成されます。

項目 資金繰り表 キャッシュ・フロー計算書
目的 将来の資金計画の立案 過去の資金管理の記録
対象期間 短期間(週、月単位) 長期間(年度単位)
活用場面 日常的な経営判断に使用 財務状況の把握、外部報告用
利用者 経営者・内部管理者 投資家・金融機関などの外部関係者

このように、資金繰り表は日々の運転資金管理に直結するツールであり、キャッシュ・フロー計算書は経営の健全性を示すための財務指標といえます。それぞれの役割を正しく理解し、適切に使い分けることが重要です。

簡単な資金繰り表の作成方法・作成手順

簡単な資金繰り表の作成方法・作成手順

資金繰り表はエクセルで簡単に作成できます。一度フォーマットを作成してしまえば、あとは数値を入れるだけで毎月の資金繰りを確認できるようになります。作り方を順番に見てみましょう。

1.資金繰り表を作る準備をする

資金繰り表を作るために必要なものは、月次推移試算表・手形帳・現金出納表・預金出納帳(預金通帳)・借入金返済明細です。

1. 月次推移試算表
概要:月ごとの貸借対照表と損益計算書をまとめたもの。売上や経費の動き、資産・負債の残高を把握できる。
用途:過去の傾向を基に収支の変化を確認し、予測を立てる。

2. 手形帳
概要:受取手形や支払手形の期日や金額を管理する帳簿。
用途:手形の期日を確認し、収支のタイミングを予測する。

3. 現金出納帳
概要:現金の入出金を日次で記録する帳簿。
用途:現金の流れを把握し、小口資金の管理に使用。

4. 預金出納帳(預金通帳)

概要:銀行口座の入出金記録を追うための資料。
用途:口座ごとの残高や引き落としスケジュールを把握する。

5. 借入金返済明細
概要:借入金の返済スケジュールや利息額を記録した資料。
用途:今後の返済予定を反映し、計画的に支出を管理。

6. その他参考資料
売掛金・買掛金明細書:未収入金や未払金のスケジュールを確認。
固定費内訳:家賃や人件費など定期的な支出を整理。
予定収支計画書:将来の収支予測に役立つ。

2. エクセルに項目を入力しレイアウトを整える

資金繰り表の作成は1ヵ月単位が一般的です。資金繰り表に必要な項目は大きく分けて前月繰越・収入・支出・営業収支・財務収支・次月繰越です。それぞれ月ごとに予算と実績を記入できるようにレイアウトします。

それぞれの項目の詳細は以下のとおりです。

前期繰越
前月末時点での現金および預金残高(当座預金、普通預金)を、金融機関や口座ごとに記録します。これにより、計算期間のスタート地点の明確な把握が可能です。

収入
現金売上、売掛金の回収、手形の期日到来、手形割引など、収入の種類ごとに分類します。これらに加え、その他の収入を合算した金額が「収入計」です。

支出
現金仕入れ、買掛金の支払い、手形決済に加えて、給与、利息の支払い、その他経費が含まれます。それらをすべて合計したものが「支出計」です。

営業収支
企業の営業活動から生じる収入と支出の差額です。この項目には、売上や売掛金回収などの営業収入から、仕入れや経費支払いなどの営業支出を差し引いた金額が含まれます。

財務収支
事業活動以外の財務活動による収入と支出を記録します。短期・長期の借入金やその返済額が対象で、借入金総額から返済額を引いた金額が財務収支計です。

翌月繰越
すべての計算が終了したあとの最終残高を翌月繰越金として記録します。この金額は、前期の繰越金、収入と支出の差額、財務収支計の合計から算出されます。

資金繰り表

3.項目ごとに金額を算出する

出納帳や手形帳などをもとに、項目ごとに予算と実績を入力します。予算は見積もりでの数値、実績は実際の数値です。
セルに関数を設定しておくと、数値を入力するだけで自動的に計算できます。

前月繰越
前月から繰り越された預金残高を記入します。

前月繰越 = 前月の次月繰越
10月時点の前月繰越(予算)= 1,600

収入
営業活動で得た金額を記入しましょう。

収入合計 = 現金売上 + 売掛金回収 + 受取手形期日入金 + 前受金の入金 + その他の入金
10月の収入合計(予算)= 900 + 300 + 100 + 50 + 50 = 1,400

支出
営業活動で支払った金額を記入します。
支出合計=現金仕入+買掛金の支払+支払手形期日決済+未払金支払+人件費+その他支出
10月の支出合計(予算)=800+100+50+100+100+100=1,250

営業収支
収入から支出を差し引いた数値です。売掛金回収・買掛金の支払いの項目については、決済した月に記入します。

営業収支 = 収入合計 - 支出合計
10月の営業収支(予算)= 1,400 − 1,250 = 150

財務収支
借入金や手形割引、設備投資など営業活動とは別に発生した収支です。借入金・手形割引が収入に、設備投資・借入金返済が支出になります。

財務収支=財務収入-財務支出
10月の財務収支(予算)=0+0-100-50=-150

次月繰越
営業収支と財務収支に前月繰越を加えた数値です。
次月繰越=営業収支+財務収支+前月繰越
10月の次月繰越(予算)=250-150+1,600=1,700

4.内容をチェックする

入力を終えたら、数字やエクセルの計算式の誤りをチェックしましょう。誤りがなければ、計算後の数値が経営上問題ないかどうか確認し、必要に応じて対策を講じます。

資金繰り表を作るメリット

資金繰り表は、企業の資金管理において欠かせないツールです。資金繰り表を作成することで得られるメリットを理解すれば、多くの経営者が資金繰り表を活用している理由がわかるでしょう。以下では、主なメリットを4つ解説します。

将来の収支状況を把握できる

資金繰り表を作成することで、企業の将来的な収支状況を可視化できます。

現時点での資金の流れを把握するだけでなく、将来にわたる予測が可能になるため、経営状況の見通しが格段に良くなるでしょう。例えば、収入が減少する月や支出が多くなる月をあらかじめ把握できれば、資金不足を防ぐために準備できます。

また、必要な資金のタイミングを予測できるため、事前に資金調達の計画を立てることが可能です。これにより、資金調達の遅れによるトラブルを回避し、安定した経営を維持することができます。

融資の際に役立つ

銀行や金融機関から融資を受ける際、資金繰り表は非常に重要な資料です。金融機関は融資の審査時に、借り手の資金管理の計画性を重視します。将来の収支計画を明確に示す資金繰り表は、貸し手にとって信頼性の証明となり、融資をスムーズに進める助けとなります。

特に中小企業の場合、資金計画を明確に示すことで金融機関との交渉力が高まり、より有利な条件で融資を受けられる場合があるでしょう。

黒字倒産を防げる

「黒字倒産」とは、会計上は利益が出ているにもかかわらず、資金不足によって経営が困難になる状態を指します。この原因の多くは、キャッシュフローの管理不足です。

資金繰り表を作成することで、実際のキャッシュフローを詳細に把握し、将来的な資金不足のリスクを事前に察知できます。例えば、大口の取引先からの入金が遅れる場合、その影響を事前に予測し、ほかの資金調達手段を検討する時間を確保できます。

結果として、黒字倒産のリスクを大幅に低減し、安定した経営を維持することにつながるでしょう。

経営判断に活用できる

資金繰り表は、経営判断を行う際の強力なツールです。資金の流れを把握することで、次のような場面での判断がより適切になります。

・新規事業の開始タイミング:資金に余裕がある時期を選べる
・投資判断:設備投資や広告宣伝費の配分を最適化
・コスト削減の必要性の把握:経費削減が必要なタイミングを見極められる

さらに、経営者が直面する緊急の意思決定の際にも、資金繰り表があれば適切な根拠を持って判断することができます。これにより感覚に頼らず、データに基づいた合理的な経営を実現できるでしょう。

資金繰り表を作る際のポイント

資金繰り表を正しく作成し、効果的に活用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。資金繰り表を作成する際に意識すべき重要なポイントを4つ紹介します。

試算表との違いを理解する

資金繰り表を作成する際、試算表との違いを理解することが重要です。

試算表は「発生主義」に基づき、収益や損失を把握するために作成されるもので、売上や費用が発生した時点で記録します。一方、資金繰り表は「現金主義」に基づいており、実際に現金が入金・出金されたタイミングを記録します。

この違いを意識せずに混同すると、実際のキャッシュフローが見えにくくなり、資金不足や黒字倒産のリスクを見落としかねません。したがって、資金繰り表では「現金の動き」を正確に記録することを優先しましょう。

固定費から入力していくとスムーズ

資金繰り表を効率的に作成するためには、まず固定費から入力を始めるのがポイントです。
固定費(家賃や人件費、リース料など)は毎月一定で予測が立てやすいため、最初に記録することで資金計画の土台を作ることができます。

次に、変動費や売上の予測値を入力していくと、全体像が見えやすくなります。固定費を先に計算することで、支出の最低限必要な額を把握でき、将来のキャッシュフローの正確な予測が可能です。

予算は厳しめに設定する

資金繰り表を作成する際は、予算を厳しめに設定することを意識しましょう。楽観的な見積もりを行うと、実際の収支が予測を下回った場合に資金不足を招くリスクがあります。慎重な資金計画を立てるために、以下のような予測方法を採用するのがおすすめです。

・収入のタイミングは遅めに予測:取引先からの入金が遅れる場合を考慮
・支出のタイミングは早めに予測
:支払いの期日が早まる可能性を考慮

このような予測をしておくと予期せぬ出費や収益減少に備えられ、より堅実な資金計画を立てることができます。

状況に応じて適宜見直す

資金繰り表は一度作成したら終わりではなく、状況に応じて適宜見直すことが重要です。経済環境や取引条件、事業の進捗状況は常に変化します。そのため、最新のデータを反映させ、資金繰り表を常にアップデートする必要があります。

以下のタイミングで定期的に見直しを行いましょう。

・月次決算後:新しいデータを適宜反映させる
・取引条件の変更時:売掛金や買掛金の支払いサイクルが変わった時期
・新規事業や投資を検討する際:余裕資金を再確認する

柔軟に対応することで、資金管理の精度を高め、経営の安定化につなげることができます。

資金繰り表の無料テンプレートと使い方

資金繰り表の無料テンプレートと使い方

資金繰り表はエクセルで自作する以外にも、さまざまなテンプレートが公開されています。銀行や日本政策金融公庫のサイトなどでダウンロードすることができるので、それをアレンジして利用しても構いません。

また、会計ソフト付属の機能でも作成することができます。状況に応じて選択しましょう。テンプレートを利用する際も上記の作成方法・作成手順を踏まえることで、適切な資金繰り表を作成できます。

日本政策金融公庫の無料テンプレートは以下でダウンロードできます。
参考:日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード|中小企業事業」

資金繰り表の活用方法

資金繰りが安定していると判断できる目安は業種にもよりますが、3ヵ月以上にわたり資金が不足していないことがポイントです。また、営業収支がプラスで推移しているか、営業収支の中で借入金返済ができているかもチェックしておきましょう。

資金繰り表を見て資金に余裕がある場合、新たな投資や事業開拓の検討や、借入金の前倒し返済により財務の改善に取り組むのも良いでしょう。

一方、もし次月繰越がマイナスになるなど、今後資金状況が厳しくなる見込みがある場合には、融資や資金調達の検討、遊休資産の売却などの対策を考える必要があります。

特に、融資は資金繰りが悪化してからでは利用が難しくなります。資金繰り表を作成して、早めに対処することが重要です。また、計画と実績で大きな差がある場合には、事業計画が適切でない恐れがあります。

より良い経営のためには原因を分析・改善することが必要です。資金繰り表は資金の不足のみならず、さまざまな経営判断にも役立てることができます。

資金繰りの改善に役立つツール・サービス

資金繰りに課題を抱える中小企業や個人事業主の経営者にとって、効率的なキャッシュフロー管理は事業運営の安定に欠かせません。ここからは、資金繰りの改善に役立つ3つのサービスを紹介します。

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会社の安定経営には資金繰りの管理が欠かせません。資金繰り表はエクセルで簡単に作成できます。将来的な資金繰りが明確になるだけでなく、問題点の把握や今後の事業計画にも役立ちます。万が一の資金不足を防ぐために、ぜひ資金繰り表を活用しましょう。

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