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資金繰り表の簡単な作り方と活用法を解説!
手元資金の収支予定を把握するためには、資金繰り表の作成が有効です。この記事では、簡単にできるExcelでの資金繰り表の作り方と活用方法について解説します。
資金繰り表の概要と役割
まず、資金繰り表の概要と役割を解説します。
資金繰り表とは
資金繰り表とは、会社に入ってくるお金と出ていくお金を把握するための帳票です。一定期間の現金収支をまとめた表で、会社の資金状況を一目で確認することができます。損益計算書には表れない部分です。
なお、キャッシュフロー計算書は資金繰りの過去の実績です。これまでの資金の増減における原因を分析するためにはキャッシュフロー計算書が必要ですが、資金繰り表の役割は別にあります。詳しくは次項で説明します。
資金繰り表の役割
資金繰り表は、将来の資金繰りの予測に役立ちます。
たとえば、仕入れが発生する事業の場合、買掛金の支払い期間から売掛金の回収期間まで時間差があります。その間の経費の支払いは、自社の資金を捻出しなければなりません。
資金が不足すれば、必要な支払いができない「資金ショート」の状態に陥ります。たとえ帳簿上は利益があっても、資金が不足すると経営が立ち行かなくなるかもしれません。
資金繰り表を作成して、事前に資金ショートの可能性やその時期を把握できれば、資金を調達して支払い不能な状態を免れることができます。
また、融資を受ける場合にも、資金繰り表があれば会社の資金状態を金融機関に示せるでしょう。
シンプルな資金繰り表の作り方
資金繰り表はExcelで簡単に作成できます。一度フォーマットを作成してしまえば、あとは数値を入れるだけで毎月の資金繰りを確認できるようになります。作り方を順番に紹介していきましょう。
1.資金繰り表を作る準備をする
資金繰り表を作るために必要なものは、月次推移試算表・手形帳・現金出納表・預金出納帳(預金通帳)・借入金返済明細です。
月次推移試算表とは、1ヵ月ごとに作成した貸借対照表と損益計算書です。売上・経費の変動や、資産・負債の残高を確認できます。現金出納帳や預金出納票は現金の動きを追うために必要な資料です。
そのほか、受取手形・支払手形を記入する手形帳、借入金がある場合は、借入金返済明細も準備しておきます。
2. Excelに項目を入力しレイアウトを整える
資金繰り表の作成は1ヵ月単位が一般的です。
資金繰り表に必要な項目は大きく分けて前月繰越・収入・支出・営業収支・財務収支・次月繰越です。それぞれ月ごとに予算と実績を記入できるようにレイアウトします。
3.項目ごとに金額を算出する
出納帳や手形帳などをもとに、項目ごとに予算と実績を入力します。予算は見積もりでの数値、実績は実際の数値です。
セルに関数を設定しておくと、数値を入力するだけで自動的に計算できます。
前月繰越
前月から繰り越された預金残高を記入します。
前月繰越=前月の次月繰越
11月の前月繰越(予算)=1,700
収入
営業活動で得た金額を記入します。
収入合計=現金売上+売掛金回収+受取手形期日入金+前受金の入金+その他の入金
10月の収入合計(予算)=1,000+300+100+50+50=1,250
支出
営業活動で支払った金額を記入します。
支出合計=現金仕入+買掛金の支払+支払手形期日決済+未払金支払+人件費+その他支出
10月の支出合計(予算)=800+100+50+100+100+100=1,250
営業収支
収入から支出をマイナスした数値です。売掛金回収・買掛金の支払いの項目については、決済した月に記入します。
営業収支=収入合計-支出合計
10月の営業収支(予算)=1,500-1,250=250
財務収支
借入金や手形割引、設備投資など営業活動とは別に発生した収支です。借入金・手形割引が収入に、設備投資・借入金返済が支出になります。
財務収支=財務収入-財務支出
10月の財務収支(予算)=0+0-100-50=-150
次月繰越
営業収支と財務収支に前月繰越を加算した数値です。
次月繰越=営業収支+財務収支+前月繰越
10月の次月繰越(予算)=250-150+1,600=1,700
4.内容をチェックする
入力を終えたら、数字やExcelの計算式に誤りがないかどうかチェックしましょう。誤りがなければ、計算後の数値が経営上問題ないかどうかを見ていき、必要な対策を取ります。
Excel以外での資金繰り表の作り方
資金繰り表はExcelで自作する以外にも、さまざまなテンプレートが公開されています。銀行や日本政策金融公庫のサイトなどでダウンロードすることができますので、それをアレンジして利用しても構いません。
また、会計ソフト付属の機能でも作成することができます。状況に応じて選択しましょう。
資金繰り表の活用方法
資金繰りが安定していると判断できる目安は、業種にもよりますが、3ヵ月以上にわたり資金が不足していないことです。また、営業収支がプラスで推移しているか、営業収支の中で借入金返済ができているかもチェックしておきましょう。
資金繰り表を見て資金に余裕があるなら、新たな投資や事業開拓の検討や、借入金の前倒し返済により財務の改善に取り組むのも良いでしょう。
一方、もし次月繰越がマイナスになるなど今後、資金状況が厳しくなる見込みがある場合には、融資や資金調達の検討、遊休資産の売却などの対策を考える必要があります。
特に融資については、資金繰りが悪化してからでは利用が難しくなります。資金繰り表を作成して、 早めに対処することが重要です。
また、計画と実績で大きな差がある場合には、事業計画が適切でない可能性もあります。より良い経営のためには原因を分析・改善することが必要です。
このように、資金繰り表は資金の不足のみならず、さまざまな経営判断にも役立てることができます。
まとめ
会社の安定経営には資金繰りの管理が欠かせません。資金繰り表はExcelで簡単に作成できます。将来的な資金繰りが明確になるだけでなく、問題点の把握や今後の事業計画にも役立ちます。万が一の資金不足を防ぐために、ぜひ活用しましょう。
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