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財務・経理

【建築業向け】法定福利費とは?見積書が求められる理由と記入例を解説

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【建築業向け】法定福利費とは?見積書が求められる理由と記入例を解説
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法定福利費とは何か?なぜ見積書に記載が必要なのか?と疑問を抱えている建築業の方もいるでしょう。今回は、法定福利費の概要や、建築業で見積書への記載が求められる理由、見積書への記載方法について解説します。

■法定福利費とは?福利厚生費との違い

■法定福利費とは?福利厚生費との違い

法定福利費とは何を指すのか、福利厚生費とはどのような違いがあるのかについて解説します。

法定福利費の概要

法定福利費とは、企業が法律に基づき従業員に対して提供する保険や費用のことを指します。具体的には、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険などの社会保険料や労働者の退職給付に関連する費用が含まれます。これらは企業が法律に従って支払わなければならない費用であるため、「法定」福利費と称されます。

法定福利費に含まれる保険

法定福利費には以下の保険が含まれます。

・健康保険
この保険は、従業員やその家族が病気やけがで医療を必要とした場合に医療費を補償する制度です。

・厚生年金保険
この保険は、従業員が老後に安定した生活を送ることができるように、退職後の収入を保証する制度です。

・介護保険
この保険は、従業員やその家族が介護を必要とした場合に介護サービスを利用するための費用を補償する制度です。

・雇用保険
この保険は、従業員が失業した場合に一定期間の生活費や職業訓練の費用を補償する制度です。

・労災保険
この保険は、従業員が職業上の事由により病気やけがをした場合、または死亡した場合に医療費や補償金を提供する制度です。

法定福利費と福利厚生費の違いは?

法定福利費と良く似たものとして福利厚生費があります。どのような違いがあるのかについて解説します。

・要件が異なる
法定福利費は、企業が法律で義務付けられた支出であり、適用対象や金額、支払い時期などは具体的に法律に規定されています。一方、福利厚生費は企業が自発的に行うものであり、その内容や規模は企業の経済状況や経営方針、従業員のニーズなどにより大きく変わります。

・従業員全体を対象とした支出である
法定福利費は、基本的に全ての従業員を対象とします。社会保険料などは従業員の給与に応じて計算され、全ての従業員が対象となります。一方、福利厚生費は、全従業員を対象とするものもあれば、一部の従業員だけを対象とするものもあります。例えば、役員のみが利用できる保養所の運営費などは福利厚生費に含まれます。

・社会通念上、妥当な内容・金額であること
法定福利費の金額は法律によって決まりますが、福利厚生費の金額は企業が自由に設定できます。ただし、その金額は社会通念上妥当でなければなりません。つまり、適切な範囲内での支出であることが求められます。極端に高額な福利厚生は、税務上問題となる可能性もありますし、企業の財務健全性を損なう可能性もあります。また、従業員の公平性を担保するためにも、福利厚生費の配分は公正かつ透明であるべきです。

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■建築業は要注意!法定福利費を含めた見積書の提出

■建築業は要注意!法定福利費を含めた見積書の提出

建築業においては、特に労働安全衛生法や建設業法などに基づく法定福利費の支払い義務が重視されています。そのため、見積書に法定福利費を含めることが求められ、その提出が義務化されています。

平成25年から見積もり書の提出が義務化

平成25年から、建築工事の発注者は、元請け業者から見積もりを受ける際に労働者の法定福利費を含んだ詳細な見積もり書を提出させることが義務付けられました。これにより、法定福利費を適切に支払っているかどうかが明確になり、労働者の権利保護が強化されています。

各種保険へ未加入企業は仕事ができない

労働者の保護と企業の信頼性確保のため、法定福利費に含まれる各種保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険など)への加入が必須となっています。未加入の企業は、法令遵守が疑われ、仕事の受注が難しくなる可能性があります。

・元請け企業が確認するポイント
元請け企業は、下請け企業からの見積もり書を受け取る際に、法定福利費が適切に計上されているかを確認することが求められます。また、下請け企業が各種保険に加入しているかどうかも確認すべきです。これにより、法令遵守と労働者の権利保護が確保されます。

・下請け企業が確認するポイント
下請け企業は、見積もり書を作成する際に、自社の法定福利費を正確に計算し、見積もり金額に含めることが重要です。また、法定福利費の内訳や計算方法を明示することで、元請け企業への説明責任を果たすことが求められます。また、自社が各種保険に加入していることを確認し、必要に応じて証明書を提出することも重要です。

■法定福利費を内訳表示する際の見積書の作り方と記入例

■法定福利費を内訳表示する際の見積書の作り方と記入例

上述したように、建築業においては、見積書に法定福利費を含めることが求められます。見積書にどのように記載すればいいのかわからないという方に向けて、法定福利費を内訳表示する際の見積書の作り方と、見積書の記入例をご紹介します。

見積書の作り方

見積書は以下の手順で作成しましょう。

1. 労務費の計算
まずは仕事に必要な労務費を計算します。これには、従業員の賃金、残業代、一時金などが含まれます。

2. 法定福利費を算出
次に法定福利費を算出します。これには、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などが含まれます。各保険の掛け率は、それぞれの保険の法律や規則に基づいて定められています。

3. 法定福利費を見積書に記載
労務費と法定福利費を合計し、それを見積書に記載します。具体的には、「労務費」と「法定福利費」を別々の行に記載し、その金額をそれぞれ記入します。

4. 消費税の計算は法定福利費込みで行う
見積書の最後には消費税を計算します。この時、税率を労務費と法定福利費の合計に適用し、その結果を見積書に記載します。

■まとめ

法定福利費とは、企業が従業員に対して提供する保険や費用のことであり、法律に基づいて正しく運用する必要があります。代表的なものとしては、健康保険・厚生年金保険・介護保険などがあり、よく混合される福利厚生費とは要件などが異なります。建築業では、労働安全衛生法や建設業法などに基づく法定福利費の支払いが義務付けられているため特に注意が必要。今回ご紹介した方法を参考に、見積書に法定福利費を記載しましょう。