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約束手形が廃止?廃止の理由・問題点と手形をやめる方法
約束手形とは?
約束手形の概要
約束手形とは、金銭の支払いを約束する書面であり、一定の要件を満たすことで法的効力を持つ証券です。約束手形は、支払人(手形を発行する人)、受取人(手形による支払を受ける人)、および場合によっては保証人(支払人が支払いを果たさない場合に支払いを担保する人)が関与する取引で使用されます。約束手形は、かつては企業間取引等で広く使われていましたが、企業による資金需要が縮小に転じたことや、資金調達の手法の多様化などを背景に、約束手形の流通量は減少していきました。
2026年に廃止予定!約束手形の問題点
約束手形が廃止される理由は?
約束手形を廃止する主な理由として、受取側の資金繰り悪化が挙げられます。
手形は振出日から3~4ヵ月後に入金されることも多く、その間はお金が入ってこず、 特に中小企業は自転車操業のところも多いため、資金繰りの悪化=倒産に陥りやすくなります。
また、期日の到来前に現金化できる「手形割引」といった制度もございますが、手形割引は業者へ手数料を支払う必要があるため受け取れる金額が減ってしまいます。
なお、手形の廃止予定は2026年となっていますが、廃止されるのは紙の手形であり電子(電子記録債権)は引き続き利用可能となります。
紙が廃止され手形は電子記録債権に集約される
経済産業省は企業に対して、現金化までの期間を短縮できる現金振込への移行をすすめています。現金振込への移行が難しい場合は、電子記録債権(でんさい)の利用を推奨しており、現金振込またはでんさいへの移行が今後必要になります。でんさいは、手形・指名債権の問題点を克服した金銭債権のことで、専用のネットワーク「でんさいネット」上で取引先への支払いができる仕組みです。このように、今後は企業に決済手段の電子化を求める動きが強まっていくと考えられます。
約束手形をやめるには?支払手形・受取手形それぞれの方法
支払手形をやめる方法
銀行借入 支払手形をやめるためには、銀行からの借入れを利用して一気に返済する方法があります。 ただし、借入金には利息がつくことを覚えておく必要があります。 現金決済金額を増やす 現金決済の金額を少しずつ増やしていき、複数年をかけて手形から現金決済に移行する方法です。 例えば、初年度は200万円、2年目は300万円、3年目は400万といった計画を立て、 最終的に○○年で完全移行するという目標を立てておきます。 着実に現金決済に移行できますが、目標年数まで現金決済と支払手形の両方の資金を準備する必要があり、 資金が潤沢である必要があります。 定期預金を利用する 定期預金に毎月一定の金額を積み立てていく方法です。 預金の金額が支払手形の残高を超えたタイミングで一気に支払いをします。 もっともリスクが少なく着実に実施できる方法ですが、時間がかかる点が難点です。 何年間で返済するか事前に決めておきましょう。 |
受取手形をやめる方法
下請法を利用する
下請法は、日本の下請け企業の権利を守るために制定された法律であり、主に下請け企業が支払い条件の改善や遅延損害金の請求を行うことができます。これを利用して受取手形をやめる方法を以下に示します。
1.下請法の適用範囲の確認 まず、自社が下請法の適用範囲内にあるか確認しましょう。 下請法は、主に下請け企業と取引先(元請け企業)との間で発生する問題に対処するための法律ですので、 適用されるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。 2.支払い条件の改善交渉 下請法を利用して、取引先との支払い条件の改善交渉を行いましょう。 具体的には、手形決済から現金決済への変更を提案し、受取手形の利用を減らすように働きかけます。 3.下請法に基づく相談・紛争解決 下請法に基づいて、支払い条件の改善や受取手形の問題に関する相談や紛争解決を行うことができます。 自治体や商工会議所などに設置されている相談窓口を利用し、専門家のアドバイスを受けることができます。 |
これらの方法を利用して、下請法を活用し、受取手形をやめることができます。ただし、取引先との関係を損なわないよう、円満な交渉が大切です。事前に情報収集や準備を行い、適切な方法で取引先と話し合いましょう。
資金繰りを理由にする
資金繰りが厳しいことを理由に、受取手形から現金決済に変更してもらう方法もあります。例えば、以下のようなステップで取引先と交渉してみましょう。
1.事前準備 まず、自社の資金繰り状況や受取手形が現金化されるまでの期間を把握し、現金決済への変更が必要な理由を 明確にします。具体的な数字やデータを用意しておくことで、交渉時に説得力が増します。 2.交渉のタイミング 取引先との関係や過去の実績を考慮して、適切なタイミングで交渉を行いましょう。 例えば、新たな取引の開始時や契約の更新時など、双方が協議する機会があるタイミングが適切です。 3.誠意ある対応 取引先に対して誠意を持って交渉を行い、相手の立場や事情も理解しようとする姿勢が大切です。 また、自社の資金繰り状況や現金決済への変更によるメリットを具体的に説明しましょう。 4.双方にメリットがある提案 現金決済に変更することで、取引先にもメリットがあることをアピールしましょう。 例えば、支払いのスピードアップにより取引先の資金繰りが改善される点や、受取手形に関連するリスクが 減る点などが挙げられます。 5.柔軟な対応 取引先の反応に応じて柔軟に対応しましょう。 現金決済への一度の変更が難しい場合でも、徐々に現金決済の比率を高めるなど、 段階的なアプローチを提案することが有効です。 |
これらのポイントを踏まえ、取引先との良好な関係を維持しながら、受取手形から現金決済に変更してもらう交渉を進めましょう。
まとめ
約束手形は今後廃止される決済方法です。この方法での取引に慣れ親しんだ方にとっては移行するのは簡単なことではないかもしれません。とはいえ、2026年以降は利用できなくなることが考えられるため、早めに対処する必要があります。今回ご紹介した方法で、手形から現金決済や電子記録債権(でんさい)に移行しましょう。また、移行後の財務環境の改善にはクレジットカードの導入がおすすめです。合わせて検討してみてください。