財務・経理
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経費精算規定(ルール)は必要?作成ポイント・注意点を解説

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申請者と承認者の双方で苦労する点が多い経費精算業務ですが、面倒な手間と時間を削減するには一体どのような方法があるのでしょうか。経費精算を適正かつ効率的に運用するには、明確な規定を設けることが大切です。

今回はどの企業でも抱えがちな、非効率な経費精算業務をどのように見直せば良いのか、具体的な解決方法や規定を設ける際のポイントを紹介します

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経費精算とは?

経費精算とは、社員や従業員が立て替えて支払った営業費や出張費といった経費を、会社に請求して精算することです。経費として処理できるものは会社の事業に関係する支出に限られます。

経費には何が含まれる?

会社が支払う経費は主に「従業員から申請される経費」と「事業所として支払う経費」のふたつに分けられます。

<従業員から申請される経費>
 ● 旅費交通費
 ● 通信費
 ● 接待交際費
 ● 消耗品費
 ● 図書研修費

<事業所として支払う経費>

 ● 租税公課
 ● 保険料
 ● 賃借料
 ● 水道光熱費
 ● 広告宣伝費
 ● 修繕費
 ● 車両費
 ● 減価償却費
 ● 給与賃金
 ● 外注費

経費を処理する場合には、各勘定科目に仕訳をして計上します。仕訳作業は経費精算の中でも重要な位置づけです

経費精算規定(ルール)が必要な理由・目的

経費精算を効率化・厳格化するためには、ルールの策定が欠かせません。経費精算のマニュアルがない場合、経理業務が非効率になり、不正受給や無駄な支出が増加する恐れもあります。以下では、経費精算規定が必要な理由と主な目的について、具体的なポイントを解説します。

経理業務の効率化

経費精算のルールを明確にすることで、経理業務の大幅な軽減が可能です。ルールが曖昧なままだと、経費の範囲や上限金額が不明確なため、申請内容の確認や書類不備の修正に時間がかかり、業務が非効率になります。
例えば「交通費は公共交通機関を利用し、領収書を添付する」といった基準を設定することで、従業員も迷わず申請できるでしょう。明確なルールがあると不明点の問い合わせが減り、書類確認もスムーズに進むため、経理業務の効率が向上します。

経費の削減

経費精算規定を整えることで、不必要な経費や重複した支出を抑え、コスト削減につながります。ルールがない状態では、従業員が無駄な経費を請求するリスクがあり、企業の財務に影響を与えかねません。
具体的な基準を設定することで、経費の使い過ぎを防ぐことができます。経費の範囲を明確化し、全社員に周知することで無駄な支出が削減され、企業全体のコスト管理が適正化されます。

不正受給の防止、法律を遵守するため

透明性のあるルールを策定することで、不正な経費請求の防止が可能です。例えば、架空の領収書を使った請求や、業務に関係のない私的な費用を経費として申請するケースが考えられます。こうした不正は企業の信頼を損なうだけでなく、経営リスクにもつながりかねません。
さらに、労働基準法や税法に準拠した経費管理を行うことで、法的リスクを回避できます。税務調査などで「経費処理が不適切」と判断されれば、追徴課税の対象となる恐れがあるため、法令遵守の観点からも経費精算ルールは不可欠です。

公平な経費利用の実現

経費精算規定を全社員に適用することで、公平性が担保されます。ルールがないと部署や個人ごとに異なる基準が適用され、不公平感が生じる懸念があります。例えば、同じ内容でも特定の社員の経費申請は認められ、別の社員の経費が却下されると、社内の不満が高まるでしょう。
統一されたルールがあれば経費精算の基準が全員に共有され、誰もが同じ条件で申請・承認を受けることができます。経費利用に透明性が保たれることで、社員間の信頼関係が強まり、企業全体の健全な運営にもつながります。

税金対策

経費精算規定を整えることで、税務対策にも有効です。例えば、出張時に「1日当たりの日当」を経費として計上できるようルール化すれば、課税対象となる所得を抑えることができます。
また、適切なルールのもとで経費処理を行えば、税務署からの指摘による追徴課税のリスク低減にもつながります。日頃から領収書や証明書類を入念に管理し、経費の正当性を証明できるようにしておくと、税務調査の際にも安心です。また、柔軟な経費設定をルール化できていれば、法的なリスクを冒さずに節税を行うことができます。

経費精算ルールを作る目的として、経費削減・業務効率化・経費の不正受給の防止などがありますが、これらは社内用クレジットカード(コーポレートカード)を導入することでも解決が可能です。
【記事】コーポレートカードとは?利用するメリットや法人カードの限度額について解説

経費精算のやり方とは?基本的なステップ

経費精算のやり方とは?基本的なステップ

ステップ① 従業員が経費を立て替える

業務で発生した交通費や宿泊費用などを従業員が立て替えて支払います。

ステップ② 領収書を受け取る

立て替えた費用に対して、従業員は領収書を必ず受け取ります。日付、取引相手(支払先)の名称、取引金額や購入した(支払った)品物の名称の明記が必要です。また、領収書の宛名は個人名ではなく、会社名を記載する必要があります。

ステップ③ 経費精算書と領収書を上長に承認してもらい経理部に提出

従業員は直属の上司に経費精算書と領収書を提出し、確認のうえ承認印をもらいます。各部門やチームで取りまとめて指定の期日までに経理部門へ提出します。

ステップ④ 経理部が領収書を確認し仕訳や会計処理をする

経理部門で経費精算書と添付提出された領収書の内容を確認し、承認作業を行います。もし記入漏れやミスがある場合、従業員に差し戻しをします。

ステップ⑤ 従業員の口座に立て替えた費用を振り込む

内容に問題がなければ、従業員が立て替えた費用を会社ごとに定めた期日や方法で、従業員の口座に振り込むという流れが一般的です。

経費精算規定(ルール)をつくる際のポイント

経費精算規定を作成する際には、企業内で経費管理が適切に行われるよう、いくつかのポイントを押さえる必要があります。ルールが曖昧では無駄な支出や不正が発生しやすく、経理業務にも混乱が生じるため、事前に明確な規定を定めることが重要です。

以下で、経費精算規定を策定するうえで押さえておくべきポイントを解説します。

経費の基準や金額の上限

経費精算では、支出可能な範囲と金額の上限を明確に設定することが重要です。基準が不明確な場合、不適切な経費申請が増えるリスクがあります。
例えば「会議費は1人2,000円以下」「宿泊費は1泊15,000円まで」など、具体的な上限を定めて周知すれば、無駄な支出や不正利用を防止できます。

自己決済の禁止

事前承認なしの自己決済を禁止することも重要です。自己判断による支出が認められると、適正でない経費が発生するリスクが高まります。例えば、急な出張費やタクシー代なども、上長や経理部門の事前承認がなければ精算不可とするルールなどを設けることで、不必要な支出や重複精算を防げます。

ルールを徹底することで経費の適正管理が進むだけでなく、従業員にも「経費は事前に確認が必要」という意識が高まり、申請内容がより正確になるでしょう。適切なフローを定めて、全社員に共有することが重要です。

申請期限

経費精算の申請期限を設けることで、精算の遅れや未処理の経費発生を防止できます。例えば「経費の申請は支出日から10日以内」「月末締めで翌月5日までに提出」など、明確な期限を設定しましょう。

申請期限を設けることで経理部門は計画的に業務を進められ、月次決算や予算管理にも役立ちます。また、従業員に期限を守る意識が根付くことで経費処理がスムーズに進み、会社全体の業務効率化にもつながります。

領収書やレシートが無い場合の対応もルール化

領収書やレシートを紛失した場合の対応方法も、事前にルール化しておきましょう。書類がない状態での経費申請は不正や誤解を生む原因となるため、代替手段を明確に定めることが重要です。

例えば「紛失時は上長の承認を得た証明書を提出する」「内容を記載した申立書を作成する」といった代替対応をルール化することで、不正防止と経理業務の透明性が保たれます。領収書の提出を原則としつつ、例外対応も明確にしておくことでトラブルを最小限に抑えられます。

ただし、会社規模が大きくなるほど領収書がないケースが増え、対応が大変になります。その場合、社員用のクレジットカード(コーポレートカード)の導入がおすすめです。「いつ・どこで・誰が・どのくらい」使っているかをすべて可視化でき、代替ルールを決める必要もなくなります。

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例外の禁止

経費精算ルールにおいて、特定の社員や部署に対して例外を設けないことが大切です。例外が認められると不公平感が生じ、社内の不満やトラブルの原因となります。

ルールは全社員に対して一律に適用し、例外のない運用を徹底することで、経費利用の公平性が担保されます。信頼性の高い運用のために「例外はいっさい認めない」という明確なスタンスを示すことを心がけましょう。

フォーマットを用意する

経費精算の効率化には、統一されたフォーマットの提供が欠かせません。経費申請書や領収書添付用の書類を統一することで、記入漏れや申請内容の不備が減少し、経理担当者の確認作業が大幅に効率化されます。

例えば、精算書に「日付」「利用目的」「金額」「添付書類」などの項目を設定して必須記入欄を明確にしておくことで、従業員も迷わず申請できるでしょう。さらに、デジタルフォーマットを導入すればペーパーレス化やデータ管理の一元化も可能になり、経費精算業務全体の効率化につながります。

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経費の種目ごとに定めるべきルール

経費精算の透明性と効率化を実現するためには、経費の種目ごとに具体的なルールを定めることが重要です。経費の用途や支出基準が曖昧な状態では、従業員の混乱や不正利用が発生するリスクが高まります。
以下では、主要な経費項目ごとに定めるべきルールのポイントを紹介します。

交通費規定

交通費は多くの企業で発生するため、明確なルール設定が重要です。例えば、公共交通機関の実費精算を原則とし、タクシーの利用は「最寄り駅がない場合」や「深夜0時以降のみ」と限定することで、不必要な費用を削減できます。

自家用車の利用についても「ガソリン代は距離に応じて支給」「高速料金は事前承認が必要」など具体的な基準を定め、透明性と公平性を確保しましょう。これらのルールを設定することで、交通費の適正管理とコスト削減が実現します。

出張費規定

出張費は宿泊費、移動費、日当など複数の項目が含まれるため、明確な基準設定が不可欠です。宿泊費は「国内出張は1泊10,000円まで」「海外は現地の物価に応じて調整」と上限額を地域ごとに設定し、無駄な出費を防ぎます。

日当は食事代や雑費を補う目的で「国内では1日3,000円」のように定めることで、シンプルな処理が可能です。移動費については「経済的で合理的な交通手段を利用する」といったルールを設け、飛行機や新幹線は事前承認を必須としましょう。また「出張終了後10日以内に精算する」と期限を設定することで、経理業務をスムーズに行えます。

会議費規定

会議費は社内外で頻繁に発生するため、不適切な利用を防ぐ明確なルール設定が重要です。まず「飲食費」「会場費」「資料作成費」など、会議費用として認められる項目を具体化し、それ以外の経費は対象外としましょう。

飲食費には上限として「1人当たり2,000円まで」のように設定することで過剰な支出を防げます。社外取引先との会議では、領収書の提出とともに利用目的や参加者の記載を必須とし、透明性を確保しましょう。

さらに、社外会場を借りる場合は「事前申請」を義務付け「会場費は1回30,000円まで」のように上限額を設定することで、不必要な費用の発生を抑制できます。業務遂行に必要な費用だからこそ、明確な基準と徹底した運用が不可欠です。

経費精算で経理担当者が抱える悩み

経費精算で経理担当者が抱える悩み

経費精算には多くのデータと確認・申請作業が発生するため、経費精算にかかる業務負担を減らしたいと考える担当者も多いでしょう。経費精算業務で発生しやすい、よくある課題を紹介します。

金額の記入や確認でミスが起こる

経理担当者は受け取った領収書を精算する際、会計ソフトなどに入力します。その際、いくつかまとめて精算すると、計算ミスや入力ミスを起こす場合があるでしょう。

申請と承認作業、差し戻しといった作業を繰り返し行う中で、ミスが決して発生しないとは言い切れません。その他、経理に関する質問対応や、経費精算の期日の呼び掛けといったアナウンスも担当業務のひとつのため、一定の人的コストがかかる点も課題といえます。

領収書や経費精算書の管理が煩雑

経費精算書の領収書は、最低でも7年間の保存が必要です。現在は電子帳簿保存法により、紙ではなく電子データでの保存も認められています。

しかし、経費精算は従業員一人ひとりが毎月頻繁に行う場合もあるため、管理すべき書類・データが膨大になっているかもしれません。

従業員が多い場合は申請作業に膨大な時間・手間がかかる

経費精算では、申請内容の確認作業が必要です。例えば、交通費の精算では申請された運賃が正しいかどうかを細かく確認する必要があります。その際、ひとつずつ手作業で確認するとなると膨大な作業コストが必要です。

従業員の多い支店や営業所などの拠点を複数有する企業であれば、その分精算の申請も増えるため、経理担当者のほかの業務を圧迫するという事態を招きかねません。そうなると、作業にかかる人員や時間を増やす、あるいは経費を削減することも検討する必要が生じます。

経費申請の経理担当の悩みを解消するには?

健全な経営には正しい会計処理が欠かせず、誤った会計処理をしてしまうと税務調査で指摘を受けることになり、税負担が増えかねません。経費精算業務に関する課題を解決し、業務を効率化させる方法を紹介します。

経費精算の業務をアウトソーシングする

経費精算業務をアウトソーシングすることで、金銭的なメリットや時間を削減できるといったメリットが生まれます。経費精算業務に毎年多くの費用をかけている場合は、アウトソーシングを活用することでコストを半減できるかもしれません。

ただし、アウトソーシング先に頼り過ぎると、社内に経理のノウハウが蓄積されないというデメリットもあります。

経費精算システムを導入する

経費精算システムとは、経費精算業務を効率化するツールのことです。導入することで「入力」「申請・承認」「経理業務」の3つの点で効率化が期待できます。

<メリット>
コーポレートカードと経費精算システムを連携した場合は、経費の入力作業が不要になる
・経費精算規定の自動チェックにより、不正申請や差し戻し作業の負担軽減につながる

<デメリット>
・利用方法の周知や運用方法の整備といった、導入や運用をするまでの準備が必要
・搭載機能が自社の仕組みに合わないなど、導入目的が明確でないとコストがかかる

クレディセゾンが提供する経費精算システム「Concur Expense」はコーポレートカードのカードデータを自動連携することができ、経費申請入力の手間が省けるうえ、規定も自動でチェックしてくれるため大幅な業務効率化につながります。

>>経費精算システム「Concur Expense」

コーポレートカードやビジネスカードを導入する

先述の通り、コーポレートカードやビジネスカードの導入も経費の見える化や不正防止に役立ちます。社員にカードを配布して経費利用をカードに1本化することで、経費の見える化・仮払いや立替経費の廃止などを実現できます。
カードの付帯サービスを活用できたり、ポイント還元などで経費削減にもつながります。

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経費精算のルール決めは効率化に必須

「働き方改革」が推進される中、多くの企業にとって経理業務の効率化は急務といえるでしょう。経理業務は属人化しやすいために問題点が見えにくく、改善策も立てにくい点があります。

経理業務のルール決めや可視化を実施することは、効率化を行うにあたって重要なステップになります。業務フローの見直しや経費精算システムの活用により、ぜひ自社に合った方法を見つけてください。

おすすめはクレディセゾンが提供する「コーポレートカード経費精算システム「Concur Expense」を連携する方法です。経費申請入力の手間を省くために、ぜひご活用ください。