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会計監査とは?会計と監査の関係性・重要性について詳しく解説!
会計とは?
会計とは、企業の経営成績や財政状態及びキャッシュ・フローの状況を把握するために必要な処理を行い、報告することを指します。その成果物が財務諸表です。このほかにも経営計画や将来予想を立てる場合にもこの会計の知識が利用されます。すなわち会計は、「企業の状況を数値に落とし込んで開示するために必要な作業を行う」ことだといえます。
監査とは?
監査とは、第三者の立場から客観的に監督、検査を行うことをいいます。一般的な監査には、内部監査・内部統制監査・会計監査などがあります。
内部監査
内部監査とは、次のように定義されています。
「内部監査とは、組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールに関連する経営諸活動の遂行状況を、内部監査人としての規律遵守の態度をもって評価し、これに基づいて客観的意見を述べ、助言・勧告を行うアシュアランス業務、および特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務である」
(一般社団法人 日本内部監査協会・第130回理事会認証 内部監査基準より)
要約すると、第三者の立場から業務活動が適切に整備・運用がなされているかを監査しているということです。内部監査は、企業内部で行われるものであり、一般的には監査室や内部統制室といった部署が担当する業務です。当業務を担当する部署は第三者の立場として実施されることから、経営者から直属の部署として位置付けられています。
内部監査は、内部監査計画を策定し、経営者及び取締役会に報告・承認を経た上で計画に沿って行います。具体的には以下の観点から細かくチェックしていきます。
・業務活動についてマニュアル等で文章化されているか
・各部署における業務活動について
・企業が定めている基準やマニュアルに則して業務が行われているか
・業務活動における統制行為が適切であるか
・不正などが行われていないか など
また、監査結果について定期的に経営者及び取締役会で報告する必要があり、一般的には月に1度取締役会で報告されることが多いです。1年間、内部監査を行った上で最終報告として、内部監査報告書を作成する必要があります。この内部監査報告書が内部監査における最終的な成果物となります。
内部統制監査
内部統制監査とは、「経営者による財務報告に係る内部統制の有効性の評価結果に対する財務諸表監査の監査人による監査」と定義されています。
具体的にいうと、財務諸表に影響を与える内部統制について、企業が評価した内部統制の有効性を会計監査人も同様にチェックし、その有効性について評価を行います。その結果、最終的に経営者が作成した内部統制報告書が適切であるかについて会計監査人が意見を表明します。この意見表明における成果物が、内部統制監査報告書です。
内部統制の有効性における具体的な検証方法は、会社が内部監査において評価した業務プロセスに対して、業務内容を文章化するなどして適切に整備しているか、また文章化されたマニュアル等に従って適切に運用されているかを、会社担当者へのヒアリングや関係証憑の閲覧によって検証します。なお、内部統制監査は上場企業において義務付けられていることに留意しておく必要があります。
会計監査
会計監査とは、「経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明すること」と定義されています。
つまり、会計監査は会計監査人(公認会計士ないし監査法人)によって、企業が作成した財務諸表について客観的な立場から適切に作成・開示がされているかを監査するものと言い換えられます。会計監査の結果については、監査報告書にまとめて提出することが求められています。この会計監査は会計数値について、適正に処理・表示がなされているかを検討している点で上記の2つの監査とは異なります。
会計と監査の関係性
ここでは、上記で説明した監査の中で会計監査人が行う監査について焦点を当てます。特に上場企業であれば会計と監査の関係性は重要なポイントのため、しっかりと理解しておきましょう。
会計監査人の監査とは?
会計監査人の監査には、「内部統制監査」と「会計監査」があります。いずれも、会計監査人の監査の対象となります。
会計監査人の監査対象
会計監査人の監査範囲は、監査の種類によって異なります。内部統制監査では、企業が作成した内部統制報告書が監査の対象です。これは企業が実施した内部監査の対象となった内部統制について、適切に整備されているか、整備されている業務フロー通りに業務が運用されているかという視点で、内部統制監査を実施します。
これに対して、会計監査では、企業が作成した財務諸表が監査の対象です。これは財務諸表に開示されている勘定科目に対して、監査手続を実施し計上されている数値が適正であるか、会計処理が適正に行われているかを検討します。また、財務諸表の開示方法や開示項目について適正であるかという視点で会計監査を実施します。
監査の限界
会計監査人が実施する監査には限界があります。監査報告書において意見表明をするわけですが、この適正意見について企業が作成している財務諸表に間違いは全くないということを表明しているわけではない点に留意が必要です。あくまでも全体として財務諸表の利用者が判断を誤らせない程度の適正さを保証しているにすぎません。これは監査、特に会計監査において、財務諸表は経営者の見積もりや判断が多く介入していることや、内部統制には状況に応じて機能しないことが注目点として挙げられます。
また、監査手続はすべてに対して厳密に実施する精査ではなく、試査による監査が原則であることから、監査には限界があるといわれています。
加えて、会計監査人の監査は企業の不正を発見することと認識している方も多いと思います。しかしながら、監査の目的というのは、企業が作成している財務諸表が会計基準に則って適正に作成・開示がされていて、重要な虚偽表示がないことを保証するものであり、不正を発見することではありません。このように、社会が監査へ期待するものと、実際の内容に差異があることを「期待ギャップ」と呼びます。
会計監査人の成果物
会計監査人による成果物は監査報告書であり、「内部統制監査報告書」と「監査報告書」がそれに該当します。内部統制監査報告書は、上記で説明した内部統制監査を実施した結果、意見を表明するものです。監査報告書は会計監査を実施した結果、意見を表明するものです。
この意見表明には下記の4つがあります。
・適正に表示している場合(無限定適正意見)
・一部を除いて適正に表示している場合(限定付適正意見)
・適正に表示していない場合(不適正意見)
・そもそも適正か否かも判断がつかない場合(意見不表明)
会計監査人は、このいずれかの意見を表明しなければなりません。
監査はなぜ必要?それぞれの監査の役割
ここでは、「業務監査」「内部統制監査」「会計監査」を取り上げて、監査の必要性について説明します。
業務監査
業務監査は、企業の内部で実施されるものであり経営者の直属の部署により、第三者の立場から行われます。企業が適正に運営、活動していく中で日々の業務に対するけん制やチェックは重要です。そこで日々の業務活動について、監査室などが内部監査を行います。そうすることによって、日々の業務が適切に行われるようにけん制機能がはたらくことに加え、問題を未然に防ぐことができます。
また、仮に問題が生じた場合には経営者に直接内容が伝達されるため、防止策や対応策について迅速に対応することも可能です。企業に対して内部・外部から第三者の立場で監査を行うことで、企業の経営活動について透明性が確保され、外部からの信頼を確保することができます。
内部統制監査
内部監査は原則として、経営者直下の部署が第三者の立場から実施します。とはいえ、企業内部の社員が行っているため完全な第三者の立場というのは難しく限界があります。そこで内部統制監査では、完全に第三者である会計監査人が内部監査を実施した結果を踏まえ、適正に整備されているか、運用されているかを監査していきます。そのため、より信頼性が高まります。
しかしながら、この内部統制監査における意見表明では、内部統制基準に準拠して内部統制報告書が適正に表示していることを保証している点に注意が必要です。
会計監査
会計監査による成果物である監査報告書は、財務諸表利用者に対して影響が大きいです。主な理由としては、会計監査の対象が財務諸表である点が挙げられます。財務諸表は企業の経営成績や財政状態、キャッシュ・フローの状況を表示するものであり、投資家はこの財務諸表をもとに様々な判断を行います。
この財務諸表に対して会計監査人の監査報告書が付されていると、会社が作成した財務諸表には一定以上の保証があることの証明となります。そのため、財務諸表利用者は信頼して当財務諸表を利用できます。
また、企業としても会計監査人の監査報告書が付される財務諸表は信頼性の担保となるため、非常に重要です。企業としても企業外部の第三者にとっても非常に有用性があるといえます。
監査は経営する上で欠かせない
今回は、監査の種類や会計と監査の関係性、また会計監査の重要性について説明してきました。ここで重要なことは、「監査を行うことは企業を経営していく中で必要なことである」ということです。会社の内部と外部、それぞれの監査を行っていくことで、透明性のある企業活動の遂行が可能となるでしょう。ひいては第三者に対して企業の信頼性を確保することにもつながります。