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財務・経理

売掛金はどのように回収する?会計処理や回収が遅れた時の対応を解説

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売掛金はどのように回収する?会計処理や回収が遅れた時の対応を解説
事業での収益が即座に入ることは、一般消費者に対しての販売以外ほとんどなく、大抵の場合は売掛金を立てることで後日精算されます。今回は、売掛金の回収がどのように行われるのか、その会計処理や税務処理について解説します。

売掛金の回収が遅れ始めた時の対応を知りたい方は「売掛金の回収が遅れ始めた時の対応」からご覧ください。

売掛金の概要と回収の注意点

売掛金とは、商品やサービスの提供後に受け取る代金を指し、多くの場合「月末締め翌月末払い」などの条件で発生します。これは、取引先との信頼関係に基づいて設定されるものです。

しかし、売掛金が回収されない場合、資金繰りが悪化し、もし取引先が倒産すれば損失として計上せざるを得ません。このような事態を防ぐためには、取引を始める前に相手先の信用状況を調査し、支払い条件や遅延時の対応を契約書で明確にすることが重要です。

また、売掛金の管理体制を整え、未回収の債権を早期に把握して支払い計画を確認するなど、迅速な対応を心がけることが健全な経営を維持するための重要な鍵となります。

売掛金の回収パターンとは

売掛金の回収には、どのようなパターンがあるのでしょうか。主な回収のパターンを紹介します。

期日通りに回収される

多くの場合、売り手が指定した日までに買い手が銀行へ振り込むことで代金を入金します。売掛金はこのケースで回収できることがほとんどです。

手形で支払われる

売掛金は現金や預金によって精算することが大半ですが、中にはそうではないケースもあります。そのひとつが、売掛金を手形で精算するケースです。これは、売掛金を割引手形のような換金性の高い手形に変えて、後日手形の決済をもって支払う方法です。

買掛金など仕入債務と相殺する

現金や預金以外で精算する方法として、仕入債務との相殺も挙げられます。通常、商取引は売り手と買い手が固定されている場合がほとんどですが、中にはお互いが買い手と売り手の両方の立場になることがあります。

その場合、ともに相手方に対する売掛金と買掛金の両方を持っていることになり、それぞれを現金や預金で精算するよりも相殺した方が、手続き上負担が減るでしょう。その場合は、お互いの同意の上で処理を行うことがあります。

売掛金が回収できないことや貸し倒れが生じることも

これまで説明したケースは、いずれも売掛金が予定通り回収されるケースです。しかし、中には回収自体が失敗に終わる、または失敗ではないものの難航する場合があります。

代表的なものとしては、相手が支払いに応じないか何らかの事情があって支払われないケースです。回収が難しくなった場合、何らかの法的な手段を講じて回収に努めても、最終的に全額を回収できないことがあります。

裁判や民事調停の結果、こちらの訴えが認められなかった場合などがそれに該当します。また、訴えが認められても相手が自己破産を申し立てるなど、回収がほぼ不可能になる場合も考えられるでしょう。

回収が滞った場合の対応や法的手段などの詳細は後述の「売掛金の回収が遅れ始めた時の対応」をご覧ください。売掛金の未回収対応をゼロにしたいという方は、回収をアウトソーシングすることがおすすめです。

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【基本編】売掛金回収の会計処理

ここでは基本的な取引として、売り手から買い手への100,000円の売上を売掛金で計上して、それを回収するまでの取引内容と仕訳について見てみましょう。

売上計上時

まず、売上が発生した時、借方に将来金銭が入る権利を得たという意味で売掛金100,000円を計上し、貸方にその原因である売上高を同額計上します。

借方 貸方
売掛金 100,000 売上 100,000

決済時

期日になり、売り手のもとに売掛金が入金された場合は、貸方に売掛金を100,000円計上して売掛金を消し、借方に現金預金として100,000円を計上しましょう。

借方 貸方
現金預金 100,000 売掛金 100,000

手数料を負担することになった場合

取引によっては振込手数料を売り手が負担する場合もあります。この場合、売り手の手元にはその手数料分を差し引いた金銭が手に入ることになります。

例えば、手数料が440円であった場合は、以下のような仕訳になります。

借方 貸方
現金預金 99,560 売掛金 100,000
支払手数料 440  

これは支払手数料の支払いがあったために、現金預金がそれだけ減ったことを示しています。

【手形支払いの場合】売掛金回収の会計処理

支払手形で売掛金が支払われた場合、資金回収までどのような手順を踏むことになりますのでよろしくお願いします。ここでは、売掛金100,000円を手形で精算する場合について見てみましょう。

手形の受取

売掛金の支払い方法は、当事者同士の契約内容によって決められます。以下のとおりです。

借方 貸方
受取手形 100,000 売掛金 100,000

ただし、実務上は手形に貼る印紙代(10万円以上は印紙が必要)や、それを送付するための郵送料を売り手が負担することがほとんどです。

例えば、200円の印紙と500円の送料を負担することとなった場合、仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
受取手形 100,000 売掛金 100,000
租税公課 200 現金預金 700
通信費 500  

資金回収(手形の期日が来た場合)

手形の資金回収が行われる場合、手形の期日が来て手形を換金する場合があります。仕訳は以下のとおりです。

借方 貸方
現金預金 100,000 受取手形 100,000

資金回収(手形を割り引いた場合)

手形の資金回収が行われる場合として、期日前に手形を銀行などに持参し、手数料を支払った上で引き取ってもらい換金する方法があります。これを「手形の割引」といいます。

手形の発行から資金化までに時間がかかる場合は、手形の割引を利用すれば費用はかかるものの、早期の資金化が可能です。

仮に5,000円の手数料がかかった場合、仕訳は以下のとおりです。

借方 貸方
現金預金 95,000 受取手形 100,000
手形売却損 5,000  

手数料は手形売却損の科目で計上します。損益計算書上、手形売却損は支払利息と同じ営業外費用の項目に区分されます。

【相手方の仕入債務と相殺する場合】売掛金回収の会計処理

取引の相手方に売掛金と、仕入の対価を支払う義務である買掛金の両方がある場合、それらを相殺して売掛金を精算することも可能です。

例えば、売掛金と買掛金の両方がある相手方について考えてみましょう。100,000円の相殺を行う場合は、相殺する意思表示が到達したあと、以下のような仕訳をします。

借方 貸方
買掛金 100,000 売掛金 100,000

【貸倒れた場合】売掛金回収の会計処理

内容証明や売掛金が回収できずに貸倒れる場合もあります。この場合はどのようなケースがあるのでしょうか。会計処理と併せて説明します。
訴訟などの甲斐なく、売掛金が回収できずに貸倒れる場合もあります。この場合はどのようなケースがあるのでしょうか。会計処理とあわせて説明します。

貸倒れのケースと会計処理

売掛金が貸倒れとなるケースには、以下のようなケースが挙げられます。

・相手が破産などの法的措置をとった場合
・相手方が法的な措置をとっていないものの回収できないと判断した場合
・相手が夜逃げなどをして、連絡が取れない場合

こういった場合にはどのような会計処理を行えばよいのでしょうか。
ここでは、100,000円の売掛金が回収不能となり、貸倒れた場合の会計処理について解説します。

貸倒れの可能性が高くなった場合(全く貸倒引当金を立てていなかった場合)

相手の業績が急激に悪化したことにより、貸倒れのリスクが高まった場合は貸倒引当金を計上します。例えば、全額貸倒れの懸念がある場合は以下の仕訳をします。

借方 貸方
貸倒引当金繰入額 100,000 貸倒引当金 100,000

実際に全額貸倒れた場合(貸倒引当金を計上している場合)

ケースとしては貸倒引当金が設定されている場合と設定されていない場合がありますが、まずは貸倒引当金が計上されている場合について見てみましょう。

貸倒引当金が計上されている場合は、貸倒れた売掛金と貸倒引当金を相殺する処理をします。

借方 貸方
貸倒引当金 100,000 売掛金 100,000

なお、消費税課税業者である場合は、消費税の控除があるため消費税10%を含めた仕訳を切ります。

借方 貸方
貸倒引当金 90,910 売掛金 100,000
仮受消費税 9,090  

実際に全額貸倒れた場合(貸倒引当金を計上していない場合)

同じく、貸倒引当金が設定されていない場合は損失を計上しましょう。

借方 貸方
貸倒損失 100,000 売掛金 100,000

貸倒損失は貸借対照表の上では通常、特別損失の項目に区分されます。また、消費税を考慮すれば、以下のような仕訳となります。

借方 貸方
貸倒損失 90,910 売掛金 100,000
仮受消費税 9,090  

売掛金の回収が遅れ始めた時の対応

 ここまでは、売掛金が無事に回収された場合や、貸し倒れになった場合の会計処理について説明してきました。

 売掛金の回収が遅れ始めた場合、迅速かつ適切な対応をとることが、未回収のリスクを考慮するために重要です。では、具体的な対策3つのステップに分けて見てみましょう。

出荷を止める

回収が遅れている取引先に対しては、新たな取引を一時的に停止することで、未入金リスクを抑えましょう。特に、大口の取引先で回収が遅れている場合、追加の売掛金が発生しないようにすることがリスクの軽減につながります。

出荷を停止する際は、取引先に事前に通知を出すことが重要です。突然の停止は、取引先との関係を悪化させる恐れがあるため、メールや書面で支払いが確認できない限り新たな出荷ができない旨を伝え、対応を促します。

また、出荷停止後も継続的に回収交渉を続けることが必要です。取引先との信頼関係を維持しながら、支払い計画の再確認や分割払いの提案など柔軟な解決策を模索することで、スムーズな回収を目指します。

相殺できる債権を探す

売掛金の回収が進まない場合、取引先との間で相殺可能な債権を探す方法があります。相殺とは、売掛金と取引先に対して自社が負っている買掛金やその他の債務を差し引きして債権を消滅させる手法です。

相殺する場合、まず取引先に対する債務内容を確認し、双方の合意を得ることが必要です。この過程では、相殺に関する契約内容や取引条件を確認し、相殺後の未解決部分がないか慎重に見極めます。

相殺は現金が動かないため、取引先の負担を軽減しつつ、自社のリスクも抑えることができる有効な手段といえます。ただし、相殺後の関係継続を考慮し、円滑な交渉を心がけることが大切です。

契約書を確認する

売掛金の回収が遅れている場合、契約書の内容を確認し、請求権を法的に裏付けることが重要です。契約書には、支払い条件や遅延時のペナルティ、法的手段に関する記載が含まれている場合があります。

特に、遅延損害金の有無やその算出方法、支払い猶予期間の取り決めなどを精査しましょう。これにより、取引先に対して具体的な請求内容を提示しやすくなります。

契約書の内容を基に、必要に応じて弁護士など専門家に相談し、法的措置を含めた対応策を検討します。法的手段に進む前に、契約に基づく支払請求の正当性を十分確認することが、円滑な解決のために必要です。

ここまで売掛金の回収が遅れ始めた時の対応を説明しました。売掛金未回収を事前に防ぎたいという方は、売掛債権回収のアウトソーシングを検討してみてください。

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売掛金回収が遅れている時の回収の流れ

売掛金の回収が遅れている場合には、適切な手順を踏むことで、未回収リスクを最小限に抑えることができます。ここでは、具体的な回収の流れを6つのステップに分けて解説します。

1. 取引先に連絡・催促する

最初のステップは、取引先に連絡して支払いの意識を促すことです。支払い期日が過ぎても入金が確認できない場合、まずは電話やメールで早急に状況を確認しましょう。

単なる見落としや事務的な遅れであるケースも多いため、穏やかな態度で対応し、支払いを催促することが重要です。また、一度連絡しただけで解決しない場合もあるため、定期的にフォローアップを行い、支払いが完了するまで取引先に意識付けを続けることが求められます。

2. 決算書を求める

取引先の支払いが遅れる背景には、財務状況の悪化が関係しているケースがあります。このような場合、取引先に決算書の提出を求め、財務状況を把握することが次のステップです。

決算書を分析することで、取引先の支払い能力を客観的に評価できます。特に、資産や負債の状況、キャッシュフローの動向などを確認することで、リスクの度合いを見極めることができます。得られた情報を基に回収方法を柔軟に検討し、必要に応じて取引条件を見直すことも大切です。

3. 債務確認書の作成を依頼する

取引先に支払い意思がある場合でも、債務内容を明確化するために「債務確認書」を作成することが有効です。この文書には、未払い金額や支払い期日を具体的に記載し、取引先から署名をもらいます。

債務確認書は法的な証拠としても利用できるため、将来的にトラブルが発生した際に役立ちます。また、債務を明確にすることで、取引先の支払い意思を再確認し、支払いのモチベーションを高める効果も期待できるでしょう。

4. 買主へ催促・交渉する

場合によっては取引先と直接交渉を行い、支払い条件の再調整を図ることが必要です。例えば、分割払いの提案や支払い期日の延長など、柔軟な条件を提示することで、取引先が支払いに応じやすくなる場合があります。

交渉の際には、具体的な支払い計画を取引先と共有し、双方が合意できる形で解決を目指します。こうしたプロセスを通じて、スムーズな回収を実現すると同時に、取引先との関係維持にも配慮しましょう。

5. 商品を引き揚げる

取引先が未払いのままで商品を保有している場合、未払い商品を引き揚げることも選択肢のひとつです。これは、損失を最小限に抑えるための実務的な手段です。

商品を引き揚げる際は事前に契約書や法律上、引き揚げが可能であることを確認して、適切な手順を踏む必要があります。また、引き揚げる際にトラブルが発生しないよう、取引先に通知を行い、十分な説明をした上で進めることを意識しましょう。

6. 買主の振込先口座を変更する

取引先が支払いに協力的である場合、指定する自社の口座への直接振込を提案することも有効です。これは取引先が意図的に支払いを遅らせているわけではなく、単に手続き上の問題で遅れている場合に効果的です。

ただし、取引先が経営破綻している場合や、振込先口座の変更に応じない場合には、この手段は利用できません。そのため、事前に取引先の状況を十分に確認した上で提案を行うことが必要です。

費用・期間を抑えつつ法的手段により売掛金を回収する方法

上記の手続きを踏まえても、売掛金を回収できない場合もあります。その場合は法的手段を取ることも検討しなければなりません。まずは費用を抑えつつ、法的手段により売掛金を回収する具体的な方法を解説します。

内容証明郵便を送る

売掛金の回収が遅れている場合、内容証明郵便を利用して支払いを促すのは有効な方法です。内容証明郵便は、送付内容を郵便局が証明するもので、支払い催促を公式に記録として残すことが可能です。これにより、催促した事実をあとから証明できるだけでなく、相手方に心理的プレッシャーを与える効果もあります。

さらに、弁護士に依頼して内容証明郵便を送ることで、より強い効果が期待できます。弁護士名での送付により、法的手段を視野に入れていることを相手に伝えられ、支払いの可能性を高められるでしょう。また、内容証明郵便の次に進む法的手続き(支払督促や訴訟)への準備もスムーズになります。

加えて、支払い義務を公正証書として作成することで、強制執行を直接行えるようになります。公正証書は公証役場で作成する法的効力のある文書で、支払いを履行しない場合でも裁判を経ずに財産差押えの実行が可能です。内容証明郵便と組み合わせて活用すれば、回収の可能性を高めることができるでしょう。

即時和解

売掛金の回収において、迅速な解決を目指す場合には即時和解を検討することが有効です。即時和解とは、訴訟を起こす前に双方の合意に基づいて問題を解決する方法であり、特にその後も信頼関係を維持したい場合に適しています。

和解の際には、支払い金額や期日、分割払いの条件などを明確に取り決めることが重要です。

また、和解内容を文書化して署名を取り、法的な証拠として残しておくことで、万が一約束が守られなかった場合に備えることができます。即時和解は時間とコストを節約できるだけでなく、取引先との関係を維持しながら円満な解決を目指せる手段です。

民事調停

民事調停は、簡易裁判所で行われる話し合いによる解決方法です。調停では、裁判官や調停委員が第三者として仲裁に入り、双方の意見を聞きながら公平な解決策を提案します。これは裁判ではありませんが、調停で合意が成立すると「調停調書」が作成され、判決と同じ法的効力をもちます。

調停調書が作成されると、それを基に強制執行を行うことが可能です。このため、調停での合意は、売掛金の回収を効率的に進める手段となります。さらに、民事調停は通常の裁判に比べて迅速かつ費用負担が少ないため、法的解決を目指しながらコストと時間を抑えたい場合に適した選択肢です。

支払督促

支払督促は、簡易裁判所に申し立てを行い、裁判所から相手方に督促状を送ることで支払いを求める手続きです。この方法は、裁判所に出向く必要がなく、書類の提出のみで進められるため、訴訟や調停よりも迅速かつ容易に行うことができます。

支払督促には以下のメリットがあります。

・訴訟に比べて費用負担が少なく、早ければ数週間で解決する場合がある
・相手方が遠方の場合でも、郵送で手続きを進められる
・相手方が異議を申し立てずに督促が確定すれば、そのまま強制執行に移行できる

ただし、相手が異議を申し立てた場合には、通常の裁判に移行する点に留意が必要です。支払督促は、明らかな未払いがあり、相手方が支払いを争う意思がない場合に適した手段です。

訴訟による売掛金の回収方法

売掛金が回収できず、他の方法でも解決が難しい場合、訴訟による法的手段も検討する必要があります。訴訟は最終的な手段となるため、慎重に準備を進め、適切な方法を選ぶことが重要です。ここでは「仮差押え」と「訴訟・少額訴訟」について見てみましょう。

仮差押え

仮差押えは、債務者の資産を保全するための法的手段です。売掛金の回収が滞っている場合、債務者が資産を隠したり処分したりするリスクがあります。このような事態を防ぐため、裁判所に申し立てを行い、債務者の資産を一時的に差し押さえることができます。

仮差押えを行う際には、債務者に対する請求が正当であることを証明する書類(契約書や請求書など)を用意し、裁判所に申請しましょう。裁判所が仮差押えを認めると、債務者の預金、不動産、動産などの資産が保全され、最終的な判決までこれらを処分されることを防げます。

仮差押えのメリットは債務者が財産を隠すリスクを回避できること以外にも、最終的な判決後に迅速に回収手続きが進められることや、債務者に対して支払いを促すプレッシャーとなることなども挙げられます。

ただし、仮差押えには保証金が必要な場合があり、費用が発生する点に注意が必要です。

訴訟・少額訴訟

売掛金回収を目的とする訴訟は、請求金額や事案の性質に応じて、通常の訴訟または少額訴訟を選ぶことができます。

●通常の訴訟
請求金額が140万円を超える場合は、地方裁判所で訴訟を行います。通常、訴訟には複数回の期日が設定され、数ヵ月から1年以上かかることがありますが、判決が下されれば強制執行が可能です。

●簡易裁判所での裁判

請求金額が60万円から140万円以下の場合は、簡易裁判所での通常訴訟が適用されます。この手続きは地方裁判所での訴訟よりも簡略化され、比較的短期間での進行が可能です。

弁護士を依頼せずに自分で申し立てることもでき、費用を抑えたい場合に適しています。ただし、証拠の提示や弁論の準備が必要なため、計画的に進めることが重要です。

●少額訴訟
請求金額が60万円以下の場合は、簡易裁判所で少額訴訟を利用できます。少額訴訟は原則1回の弁論で終了するため、迅速かつ低コストで解決が可能です。判決が短期間で下されるため、時間の節約につながります。弁護士費用や裁判所の手続き費用が少なく、個人でも申し立てが可能です。

少額訴訟の場合は1日で結論が出る場合が多く、時間の節約につながります。また、弁護士費用や裁判所への費用負担が少ないためコストを抑えられ、複雑な手続きも不要です。

訴訟を経ても回収不能の場合は強制執行をする

訴訟を経ても売掛金を回収できない場合、強制執行により未回収金を回収する手段があります。強制執行は、判決や調停調書を基に債務者の資産を差し押さえ、売却や回収につなげる法的なプロセスです。主な強制執行の方法を紹介します。

買主の債権に対する強制執行

買主が第三者に対して請求権を持つ場合、その債権を差し押さえる方法は、売掛金の回収において有効な手段です。この方法では、債務者が他社に対して保有している未回収債権を差し押さえ、それを直接回収に充てることができます。

方法としては、まず判決や調停調書を基に裁判所へ申し立てを行います。裁判所が差し押さえ命令を発行すると、第三者からの支払いを直接差し押さえ、未回収金の補填にすることが可能です。ただし、第三者が債務の存在を認めない場合や、別途法的手続きが必要な場合もあるため、事前に状況を入念に確認しましょう。

預金差し押さえ

債務者の銀行口座を差し押さえる方法は、強制執行の中でも迅速かつ効果的な手段のひとつです。この方法では、債務者が利用している銀行を特定し、裁判所に差し押さえを申し立てることで、口座内の資金を直接回収します。

預金差し押さえは手続きが比較的早く進み、預金残高が十分であれば回収金額を確保できる可能性が高いのが特徴です。ただし、銀行口座の情報を事前に正確に把握しておく必要があります。この方法は回収可能性が高く、特に迅速な解決を目指す場合に有効です。

現金や動産に対する差し押さえ

現金や動産(設備、車両、備品など)を差し押さえる方法も、回収手段として利用可能です。差し押さえた動産は競売にかけられ、売却代金が未回収金の回収に充てられます。この手段では、まず差し押さえ対象となる資産を特定し、その市場価値を評価します。

動産の差し押さえは、回収金額が資産の市場価値に左右されるため、高額な動産を対象とする場合に効果的です。ただし、動産の管理や売却には時間や手間がかかることがあります。

不動産に対する差し押さえ

債務者が所有する不動産を差し押さえる方法は、大きな未回収金を回収する際に非常に有効です。不動産は動産に比べて価値が高いため、確実性の高い回収手段といえるでしょう。

この方法では、まず債務者が保有する不動産を特定し、裁判所に申し立てを行います。その後、裁判所の差し押さえ命令が発行され、不動産が競売にかけられます。

売却代金から回収金額を確保する流れとなりますが、手続きには時間がかかり、場合によっては高額な費用が発生することに注意が必要です。不動産差し押さえは、資産の保全と回収を同時に行える有効な手段です。

その他強制執行の方法

売掛金の回収が難航する場合、資産差し押さえ以外にも強制執行の選択肢があります。その中でも、生命保険や法人税・消費税の還付金に対する強制執行は、状況に応じて有効な手段です。

●生命保険に対する強制執行
生命保険に対する強制執行では、債務者が保有する生命保険契約の解約返戻金が対象です。この場合、裁判所を通じて保険会社に差し押さえを指示し、返戻金を回収する流れとなります。

ただし、契約によっては解約返戻金が発生しない場合もあるため、事前の確認が必要です。保険契約が高額な場合には、確実な回収手段として検討する価値があります。

●法人税の還付金に対する強制執行

債務者が過払いなどで法人税の還付を受ける予定がある場合、その還付金を差し押さえることで回収を進めることが可能です。これは税務署を通じて行う手続きであり、還付金が発生していることが確認できれば、比較的スムーズに回収を実現できます。

●消費税の還付金に対する強制執行
同様に、消費税の還付金も差し押さえの対象です。特に、輸出企業や設備投資が多い企業では消費税還付が発生することが多いため、有効な手段となる場合があります。

これらの方法は、債務者の資産状況や取引内容に応じて選択できますが、いずれも事前の情報収集と準備が重要です。生命保険や還付金に関する情報を適切に把握し、必要な手続きを迅速に進めることで、未回収リスクを最小限に抑えることができるでしょう。

ただし、これらの強制執行には専門的な知識が必要となるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めることを推奨します。

未回収金に関する注意点

売掛金の未回収は、企業の財務状況や資金繰りに直接的な影響を与える重大な課題です。未回収金を適切に管理するためには、以下の2つの注意点を押さえることが重要です。

売掛金には時効がある

売掛金には法律で定められた時効があり、一般的な商取引では5年とされています。時効が成立すると法的に請求できなくなり、企業の財務状況に大きな損失をもたらす恐れがあるため、未回収金への迅速な対応が欠かせません。

時効を防ぐためには、取引先への催促を継続し、請求事実を内容証明郵便などで公式に記録することが有効です。また、訴訟や支払督促などの「催告」により時効を延長することもできます。

売掛金の管理では、日々の債権状況を把握し、時効リスクを防ぐ仕組みを整えることが重要です。専門家の助言なども活用しながら、適切な対応を行うことで未回収リスクを最小限に抑えましょう。

税務上、貸倒損失を計上できる場合が限られている

税務上、貸倒損失を計上できる場合は限られています。

①以下の事情によって金銭債権が切り捨てられた時
・法律の規定によって切り捨てられた時
・行政機関や金融機関のあっせんにより合理的に切り捨てられた時
・債務者の債務超過の状態が長期化し、弁済が難しくなった場合にその債務者に書面で免除した場合の債務免除額
②債務者の資金状態によって売掛金全額が回収不能になることが明らかになった時
③少なくとも1年以上取引がなかった場合、取り立て費用が売掛金より多く、支払いを催促しても弁済がない時


これら以外のケースでは、貸倒損失として会計上処理しても、税務申告では認められず、調整が必要となる場合があります。また、未入金のまま売掛金を放置することは、企業の資金繰りに悪影響をおよぼしかねません。

売掛金の滞留が長期化すると、運転資金の不足や事業活動の停滞につながるため、日頃の請求管理が極めて重要です。取引先の状況を定期的に確認し、支払い期限を過ぎた場合は速やかに催促を行い、回収リスクを最小限に抑える努力が求められます。

適切に売掛金を管理することで未回収リスクを防ぎ、健全な資金繰りの維持につながります。そのためには日々の請求管理の徹底を心がけましょう。

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売掛金について、その発生から回収・貸倒れに至るまでの流れや仕訳、回収できない場合の対応などを解説しました。

売掛金はいわゆる「ツケ」のようなものであり、取引先の経営状況によっては回収できない場合もあります。そのため、取引先の経営状況に加え、売掛金の回収が滞らないよう、相手方へすぐに連絡できるようにしておくことが大切です。

それでも、売掛金を回収できない場合は法的手段を考える必要もあるでしょう。また、未回収金額や入金の状況を適切に把握するためにも、正しい仕訳を行うことが重要です。

未回収リスクをゼロにするためには、適したサービスの活用が有効です。中でも「セゾンインボイス」は取引先の与信審査や請求業務を一括で代行し、未回収リスクを完全に回避できます。

また、取引内容を登録するだけで最短翌日には入金されるため、キャッシュフローの改善にも大きく貢献します。売掛金の管理に課題を抱えている場合は、ぜひ導入をご検討ください。

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