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キャッシュフローとは?計算書の作成方法や見方を解説
この記事を読んでわかること
・キャッシュフロー計算書では、お金の動きを体系的に把握することができる
・キャッシュフロー計算書は、「営業」「投資」「財務」「手元資金」の4つの側面から分析することができる
・経営の安定、信用力アップ、事業拡大や新規事業への取組みに有効
・収支のプラス・マイナス分析により経営課題のヒントとなり得る
キャッシュフローとはどういうもの?
経営者は自社のお金の流れを正確に掴む必要があります。現状を把握することで、黒字倒産や資金ショートなどのリスクを回避できます。キャッシュフローは、そのための手段であり、事業の経営状況を把握するうえで欠かせないものです。
また、キャッシュフロー計算書を作成することで資金繰りの改善、金融機関からの評価に繋がることもあります。ここでは、キャッシュフローの概要についてわかりやすく解説します。
キャッシュフローとは
キャッシュフローとは、「事業におけるお金の流れ」です。
お金が入ってくることをキャッシュ・イン、お金が出ていくことをキャッシュ・アウトと呼びます。日々の事業活動において、このキャッシュ・インとキャッシュ・アウトが繰り返し発生しているなかで、帳簿上の利益と実際の現金にズレが生じてしまうことは当然あることでしょう。
企業会計における複式簿記は、財政状態を把握するためには有効であるものの、使えるお金の把握としては不十分です。
未収の売上金をあてにした仕入れ発注により、最悪の場合、黒字倒産という事態の可能性もゼロではありません。そういった意味で、入ってくるお金と出ていくお金の把握、つまり、キャッシュフローの把握は、円滑な事業活動にあたって欠かせないものなのです。
キャッシュフロー計算書とは
入ってくるお金と出ていくお金の2つの動きを体系的に表で表したものがキャッシュフロー計算書です。「C/F」と略されることも多くあり、貸借対照表や損益計算書と合わせて財務三表として重要な指標です。
財務三表にはそれぞれ役割がありますが、キャッシュフロー計算書は、財務状況の健全性を判断することが目的です。
・貸借対照表(B/S)との違い
企業の財政状態を表す「貸借対照表(B/S)」は、会社が保有している資産・負債・純資産についての記録です。決算日などある一定の時点における記録であることが特徴です。
つまり、時間の経過とともにお金の流れを示すフロー(flow)であるキャッシュフロー計算書と、ある時点のストック(stock)を示す貸借対照表は役割が異なります。
・損益計算書(P/L)との違い
「損益計算書(P/L)」は、会計期間中における企業の収益・費用を示す記録です。経営の成績表とも呼ばれ、分析のための振り返りや今後の経営姿勢の検討資料として有効です。
ただし、利益が出ていれば企業運営がうまくいっていると思いがちですが、売掛金も含まれる売上の金額では実際の回収まで含まれないことに注意が必要です。具体的に詳細な手元資金を把握することのできるキャッシュフロー計算書は、資金ショートを回避するためにも果たす役割は大きいと言えるでしょう。
キャッシュフロー計算書の作成方法
キャッシュフロー計算書には、直接法と間接法の2種類の算出方法があります。直接法は、現金収入や現金支出を直接計算する方法であり、間接法は、損益計算書の数字を調整して算出する方法です。それぞれについて、もう少し詳しく説明しましょう。
・直接法
直接法は、収入や仕入支出、人件費支出など主な取引ごとに数字を算出したうえで、収入と支出の流れを総額で表します。
直接法での算出は、国際会計基準IFRSで推奨されている方法であり、営業活動の項目ごとにお金のながれ(増減)が分かることが大きなメリットです。ただし、取引の数が多くなると、集計するための手間がかかるというデメリットも考えられます。
・間接法
間接法は、損益計算書の数字をもとに営業活動によるキャッシュフローを算出する方法です。具体的には、当期純利益から売掛金の増減や買掛金の増減等を加算・減算して求めます。
直接法よりも作成が簡単であるため、多くの企業で採用されていますが、収入や経費など項目ごとのお金の流れ(資金の増減)を直接計算しないため、項目ごとのキャッシュの流れが把握できないデメリットもあります。
キャッシュフロー計算書を構成している4つの要素
企業活動においては、商品やサービスの提供にともなう取引のほか、設備投資や借入金などさまざまな場面で入出金が発生しています。
キャッシュフロー計算書では、「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」「フリーキャッシュフロー」の4つの要素を確認することができます。
それぞれがどのようなお金の流れを確認することができるのか詳しく見てみましょう。
営業キャッシュフロー
営業活動キャッシュフローは、本業におけるお金の流れを示したものです。具体的には、入ってくるお金として「売上」や出ていくお金として「仕入」「家賃」「人件費」等の支払があげられます。
事業の目的である営業活動におけるキャッシュフローでは、本業で利益が出せているかどうかの判断材料となるため、継続的にプラス(黒字)であることが理想です。
一方で、マイナス(赤字)である場合には、売掛債権の回収に対する期間短期化や買掛金支払いに対する延期など、資金繰りの改善を検討する必要があります。
財務キャッシュフロー
財務活動キャッシュフローは、資金調達によるお金の流れを示したものです。投資家からの出資による収入や金融機関からの借入・返済などです。
新たな借入によりお金が増えた場合には、キャッシュフローはプラスとなり、借入を返済するとお金が減り財務活動によるキャッシュフローはマイナスとなります。
財務活動キャッシュフローにおいては、プラスであればよい、マイナスは改善が必要というわけではないことに理解と注意が必要です。つまり、金融機関からの借入に対して遅滞なく返済ができていれば、当然に財務活動キャッシュフローはマイナスで表示されます。
また、固定資産取得による支出などが計上されている場合は、設備投資のために資金調達をしたことが推測できるというように、ほかの場面と連携した把握も可能です。
投資キャッシュフロー
投資活動キャッシュフローは、設備投資など事業の将来に向けたお金の流れを示したものです。例えば、土地や建物の取得・売却、有価証券の取得・売却によるお金の流れなどがあげられます。
固定資産の取得による支出は、投資活動キャッシュフローがマイナスとなります。マイナスであることが一概に企業の財務状況を下げる要因とは判断できません。積極的な設備投資による一時的な手元資金の減少も、将来的に収益が期待される設備投資であれば、キャッシュフロー改善の可能性はあります。
キャッシュフロー計算書は、あくまでも現状を把握するための手段であり、把握することによって経営者の判断材料となることを理解しておきたいものです。
フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは、事業活動や設備投資に必要なお金以外で実質的に企業が自由に使えるお金のことです。
フリーキャッシュフローがプラスであれば、本業による収益で設備投資などの資金をまかなえていることになり、手元資金があることで、投資余力を持つ企業であることを意味します。ただし、余裕がありすぎるのは、資金が有効に循環していないという評価もあり得るため、経営者は適切な金額を検討すべきでしょう。
キャッシュフロー計算書に着目するメリット
キャッシュフロー計算書は、貸借対照表と損益計算書とともに財務三表と呼ばれ、企業会計の重要な指標のひとつですが、作成の義務ということではなく、経営における判断材料の手段として活用します。
キャッシュフロー計算書を活用することのメリットは多くありますが、なかでも代表的なメリット3つについて紹介しましょう。
資金ショートを防ぎ経営が安定する
日々の事業活動のなかで、帳簿上の利益と手元の現金にズレが生じることは防ぎようがありません。
しかし、そのズレを把握できていないと資金ショートを起こす可能性もあります。
例えば、大きな利益を上げた後に、仕入れを増やし在庫を充実させようと大口の仕入れを行ったとします。売掛金の回収までに時間がかかると、仕入れ代金を支払えない可能性もあるでしょう。
キャッシュフロー計算書には、こうした時間のズレが詳細に記載されているため、読み込むことで資金ショートの防止にもつながります。
金融機関からの信用度が増す
資金繰りが厳しい状況が続けば、借入金の返済が滞る事態も想定されます。信用情報に傷がついてしまえば、新たな資金調達をスムーズに行えない可能性もあるでしょう。
日頃からキャッシュフローを把握して資金繰りの改善ができていれば、大きな設備投資や新規事業立ち上げの際に資金調達が円滑に行えるメリットがあります。
手持ちの現金を増やせる
キャッシュフローを把握することは、資金繰りの改善にもつながります。キャッシュフロー計算書には、売掛債権の回収率や貸し倒れの状況を記載する必要があるため、理解すれば手元に入ってくる現金のボリュームが把握できるようになります。
手持ちの現金が不足することが早めに予測できれば、早めに対策をすることが可能となります。
事業拡大・新規事業への投資につながる
キャッシュフロー計算書は、これまでの振り返り、現状把握とともに、将来をコントロールすることにも繋がります。
事業拡大や新規事業にむけた見通しや予算、時期の設定は、キャッシュフロー計算書をふまえて検討することでより適切な判断ができるでしょう。
キャッシュフロー計算書の着目ポイントは
ここでは、実際にキャッシュフロー計算書を見るときに着目するべきポイントを紹介しましょう。
営業キャッシュフローはプラスになっているか
営業キャッシュフローは、その企業の本業における収入と支出を表します。
収入と支出の差額はプラスであることが望ましい状態といえます。つまり、プラスであれば、本業によって資金を生み出せている状態ですので、本業が順調であると判断できます。逆に、マイナスである場合には、売掛金の回収や過度な仕入れなど原因を追究したうえで、対策を検討する必要があります。
投資キャッシュフローにマイナスがあるか
投資キャッシュフローは、設備投資や別事業への投資などを表します。
収支がマイナスであれば、将来的に収益を生み出す可能性につながる投資ができている状態と考えられます。逆に、固定資産や有価証券などを売却して現金を得ている場合にはプラスとなります。
資金調達の必要性については、一概には言えませんが、資金ショート回避のための資産取り崩しと判断されるケースもあり、基本的には、マイナスであることが望ましいでしょう。
実際に何に投資をしたのか、何にお金を使ったのかについては、貸借対照表(B/S)で前期との比較をすることで確認します。
借入金の返済額に無理はないか
財務活動におけるキャッシュフロー(財務CF)は、現金の不足分をどのように補ったかを表します。
収支がプラスの場合は、借入金や社債など貸借対照表(B/S)上の負債となる科目での資金調達を読み取ることができ、逆に、マイナスの場合には、貸借対照表(B/S)上の負債を返済したことを読み取ることができます。
一般的には、財務キャッシュフローは、マイナスである方が望ましいものの、さらなる事業拡大のための資金調達の必要性という可能性もあるため、また、経営者の方針にもよるため、一概にプラス(借入れ)が悪いということではありません。
フリーキャッシュフローに余裕はあるか
フリーキャッシュフローは、手元資金を表すため、プラスかつ余裕があるほうが、経営状況が良好といえます。
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おわりに
日々の事業活動のなかで、帳簿上の利益と手元の現金にズレが生じることは防ぎようがありません。
貸借対照表や損益計算書では、過去の振り返りはできるものの、動きのある現状の把握は難しいでしょう。「営業活動」「投資」「財務」「手元資金」と項目ごとのキャッシュフロー計算書において、現状収支を把握することができれば迅速な経営判断を可能にします。また資金ショートを回避することもできます。作成方法には「直接法」「間接法」とありますが、タイミングや手間をふまえたうえで使い勝手のよい方法で活用することをおすすめします。