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財務・経理

個人事業主になったら開業届は必要?手続きやメリットは

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個人事業主になったら開業届は必要?手続きやメリットは

事業を立ち上げようとした際に「すぐに開業届を提出しなければならない」と認識している方もいるかもしれません。提出が遅れると罰則を課されると思い込んでいる方もいるでしょう。
この記事では、開業届の提出の流れと、提出することで得られるメリット・デメリットを解説します。この記事を読めば、「開業届を提出する必要性」や「提出時期」、「適切な手続き方法」について理解を深められるでしょう。ぜひ参考にしてください。


この記事を読んでわかること
・開業届は税務署に提出する書類のことで未提出でも罰則はない
・開業届を提出することで最大65万円の青色申告特別控除を活用できる
・65万円の控除を受けるためには「複式簿記」で帳簿管理する必要がある
・事業用の銀行口座や法人用クレジットカードを活用すれば、帳簿管理がスムーズになる



開業届とは?提出の流れも解説

開業届とは?提出の流れも解説


まずは開業届の概要と提出するまでの流れをみていきます。

開業届とは?

開業届とは、新たに事業(事業所得、不動産所得又は山林所得)を開始した際に、税務署へ提出する書類のことです。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届書」といいます。
また、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したときや、事業そのものを廃止した場合も提出が必要となります。

開業届の提出期限は?

開業届の提出期限は、原則として事業の開始から1カ月以内と定められています。提出が遅れたことや、提出しなかったことによる罰則等はありません。
ただし、提出しなくても罰則はありませんが、青色申告を選択できないため、後述する最大65万円の控除を受けられなくなる点に注意が必要です。

開業届提出に必要な書類は?

開業届は税務署に提出しますが、その際に次の書類が必要になります。
 

【必要な書類】

    ・開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
    ・マイナンバーカード・通知カード+本人確認書類
    ・事業開始等申告書

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
開業届は所轄税務署の窓口からすぐに受け取れます。また、国税庁のサイトからでもプリントアウトすれば取得可能です。

マイナンバーカード・通知カード+本人確認書類
開業届を提出する際に、マイナンバーカードや通知カード+運転免許証などの本人確認書類が必要になります。ただし、マイナンバーカードがあれば、運転免許証などの本人確認書類の提出は不要です。

事業開始等申告書
事業開始等申告書とは、個人事業の開業をした際に所轄の都道府県税事務所に提出する書類です。各都道府県によって提出先などは異なり、提出も任意のため特に罰則等は設けられていません。

提出する際は、申告書類や提出先、提出期限などを各自治体の窓口やサイトで事前に確認しておきましょう。

開業届提出の手順は?

開業届の提出は次の手順です。

    ・開業届の作成
    ・税務署に提出

以下で順にみていきましょう。

開業届の作成
開業届を所轄税務署の窓口または国税庁のサイトからプリントアウトすれば入手できます。
そして、開業届に屋号や事業内容などの必要事項を記載し、開業届を作成しましょう。作成は手書きとパソコン入力から選択可能です。手書きの場合は開業届を2部作成しておくことで控えとして利用できます。

税務署に提出
開業届は、税務署の窓口に直接提出する方法と郵送またはオンラインで提出する方法の3通りを選択できます。
税務署に直接届ける場合は受領印を押印してもらい、1部を税務署へ、もう1部を控えとして保管しておきましょう。業務などが忙しくて窓口に出向けない方は、郵送またはオンラインでの提出がおすすめです。

開業届を提出するとどんなメリットがあるの?

開業届を提出するとどんなメリットがあるの?

ここからは、開業届を提出するメリットについてみていきます。

青色申告ができる

1つ目のメリットは「青色申告が適用される」ことです。所得が20万円超になった際に確定申告が必要になりますが、開業届を提出している個人事業主の場合は青色申告と白色申告を選択します。
青色申告を選択すると最大で65万円の青色申告特別控除を受けられ、所得税や住民税など節税効果が期待できます。ただし、青色申告を選択する場合は開業後2カ月以内に「青色申告承認申請書」の手続きが必要です。
青色申告特別控除は65万円、55万円、10万円と控除額が決まっています。各控除の条件は次のとおりです。

・65万円:複式簿記による帳簿と電子申告
・55万円:複式簿記による帳簿
・10万円:単式簿記による帳簿

事業用の銀行口座を開設できる

2つ目のメリットは事業用の銀行口座を開設できることです。個人で事業を開始すると、屋号を名義とした事業用の銀行口座を開設できます。個人用の銀行口座で事業を進めていくことも可能ですが、どうしても事業と個人とで混合してしまうため管理がむずかしくなります。
その点、事業用の銀行口座を開設すればきちんと区別ができて経理事務もしやすくなるでしょう。
また、個人事業主は法人用クレジットカードの作成も可能です。個人の支出と事業に関する支出を明確に分けることで、経理の管理が効率化し、経費処理も容易になります。事業用の銀行口座と共に、法人用クレジットカードの導入も検討してみてもいいでしょう。

就労証明になる

3つ目のメリットは「就労証明になる」ことです。保育園や学童を利用する際に、就労証明書(就労状況申告書)の提出が必要になります。個人事業主の場合は就労証明書の添付書類として、開業届の写しを求められることが多いです。
もし、保育園や学童に通っている子がいる場合や、これから通わせる予定の人は開業届を提出しておくことで、子どもを保育園や学童に預けやすくなるでしょう。

融資の審査やオフィス契約にも使える

4つ目のメリットは「融資の審査やオフィスの契約にも使える」ことです。事業内容によっては自宅とは別に事務所や倉庫の賃貸が必要な方もいるでしょう。その際の賃貸借契約にも開業届の写しが必要となるケースがあります。
また、事業規模によっては、運用資金として金融機関から融資を受けたいこともあるかもしれません。そのような場合にも開業届の写しが必要です。

開業届を提出するデメリットはある?

開業届を提出するデメリットはある?

開業届を提出するメリットについて解説してきましたが、その一方でデメリットも存在します。ここからは開業届を提出するデメリットについてみていきましょう。

扶養を外れる可能性がある

1つ目のデメリットは「扶養から外れる可能性がある」ことです。いままで健康保険や年金などの社会保険について配偶者の扶養に入っていた場合は、個人事業主となり、開業届を提出することで扶養から外れてしまう可能性があります。
扶養から外れる要件は各健康保険組合によって異なり、一定以上の所得を超えた場合に外れる組合もあれば、開業すると原則扶養から外れる組合も存在します。したがって、開業した後も配偶者の扶養に入ることを希望している場合は、事前に配偶者側の健康保険組合の規定を確認しておくといいでしょう。
もし扶養から外れてしまうと、第1号被保険者に該当することになり、国民年金や国民健康保険などの社会保険料を自己負担することになるため注意が必要です。

失業給付がもらえない可能性がある

2つ目のデメリットは「失業給付がもらえない可能性がある」ことです。失業給付は失業中の方が生活に困窮することなく次の再就職先を見つけられるよう支援する制度です。開業届を提出すると自分で事業を進めていくため、再就職の意思がないとみなされてしまい、その結果、失業給付をもらえなくなる可能性があります。
ただし、失業給付をもらえなくなった場合でも、再就職手当が支給される可能性がありますので、気になる方は一度ハローワークに確認してみてもいいでしょう。

青色申告の場合経理事務が発生する

3つ目のデメリットは「青色申告の場合は経理事務が発生する」ことです。前述で解説したとおり、開業届を提出し、青色申告を選択することで最大65万円の青色申告特別控除が適用されます。しかし、65万円の控除を適用するためには、売上や費用が発生した都度、仕訳を行う「複式簿記」での帳簿管理が必要です。
白色申告の場合や10万円の控除を選択した場合は、単式簿記といわれる現金や預金の入出金をベースにする「現金主義会計」を用いた簡単な経理処理で済みます。単式簿記に比べて仕訳処理が複雑な複式簿記を面倒に感じる方もいるかもしれません。
もし、10万円の控除で問題ないと考えている方は単式簿記を選択してもいいでしょう。また、複式簿記の仕訳が苦手だけど、65万円の控除をどうしても活用したい方は、税理士などに仕訳を代行してもらうのも選択肢の一つです。

開業届よくある疑問を解消!

開業届よくある疑問を解消!

ここからは開業届によくある疑問を解消していきましょう。

副業でも開業届は必要?

副業の場合でも、青色申告を行って節税したい場合は開業届を提出してもいいかもしれません。基本的に副業の場合は年間所得が300万円以下であれば雑所得か一時所得に該当されます。
しかし、青色申告を選択して複式簿記で確定申告を行う、さらに反復継続性があり、事業性が高いと判断されれば事業所得として扱われる可能性が高くなるのです。

開業届は会社にバレる?

基本的には開業届の提出が要因で会社にバレることはありません。副業が会社にバレる要因の1つとして「確定申告を行うことで翌年の住民税が増えてしまう」ことが挙げられます。
副業で得た収入は総所得に加算され、翌年の住民税が増えてしまいます。この増加分が会社の給与から天引きされるため、会社の経理担当から不審に思われてしまうのです。
諸事情により会社に副業をバレたくない方もいるかもしれません。副業の収入が給与所得以外であれば、確定申告をする際の申告書で「住民税に関する事項」について、「普通徴収」を選択するようにしましょう。そうすることで、副業で得た所得に対しての住民税が会社ではなく、自宅に届くようになります。

おわりに

今回は個人事業主の開業届について解説しました。もし最大65万円の青色申告特別控除を活用したい場合は開業届と青色申告承認申請書を提出し、複式帳簿を付けて青色申告で確定申告を行いましょう。
そうすることで大幅な節税効果が期待できます。
複式帳簿を付ける際は法人用クレジットカードの活用がおすすめです。法人用クレジットカードがあれば事業用と個人用の区別ができ、スムーズに仕訳処理ができるでしょう。

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