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青色申告とは?白色申告との違いや確定申告の方法をわかりやすく解説
本記事では青色申告のメリットや手続きについて紹介します。青色申告で確定申告を行ないたいと考えている事業者は、ぜひ参考にしてください。また「青色申告のハードルが高い」と感じている事業者に向けて、経理・申告業務を効率化する方法も解説します。
青色申告とは
一定以上の事業所得や不動産所得、山林所得のいずれかの所得がある事業者は確定申告が、必須です。青色申告を利用しない確定申告は、一般的に白色申告と呼ばれています。ここでは、確定申告が必要になる対象者や青色申告と白色申告の違いについて、見てみましょう。
青色申告の概要をわかりやすく解説
確定申告の種類のひとつである青色申告は、「複式簿記」もしくは「簡易簿記」で作成した帳簿によって、1年間の所得金額を計算し申告します。
税務署に「開業届」と、青色申告を利用する年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。
ただし1月16日以降に開業した場合は、開業日から2ヵ月以内に提出期限が変更されるので注意しましょう。青色申告には、最大65万円の青色申告特別控除や青色事業専従者給与の必要経費算入など、さまざまな税制上の優遇を受けられるメリットがあります。
確定申告は原則として毎年2月中旬から3月中旬までの定められた期間に行いますが、期限を過ぎた場合、青色申告特別控除が最大10万円に減額されるなどペナルティが課せられます。
そのため、申告書の提出期限は必ず守りましょう。また青色申告特別控除の65万円控除には、複式簿記による記帳が義務付けられています。簡易簿記による記帳では、特別控除額は10万円になります。
青色申告と白色申告の違い
青色申告と白色申告の大きな違いは、税制上の優遇措置と記帳方法です。青色申告は、事業所得や不動産所得、山林所得を対象に、最大65万円の特別控除や赤字の3年間繰り越し、家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」など、節税効果が高い点が特徴です。しかし、複式帳簿の記帳が義務付けられており、正確な帳簿管理と「青色申告承認申請書」の事前提出が求められます。
一方、白色申告は手続きが簡単で「簡易帳簿」による記帳が認められ、事前申請も不要です。ただし、2014年から白色申告者にも記帳や帳簿保存が義務化され、収支内訳書の作成や領収書の保管が求められます。
青色申告に比べて手間は少ないものの実際の負担はそこまで変わらず、節税のメリットもほとんどありません。青色申告は手間がかかる分、節税効果が高く、税制優遇を最大限に活用できる点が大きな利点です。
青色申告の対象者
青色申告は、事業所得・不動産所得・山林所得を得ている個人事業主やフリーランスが対象です。これらの所得が継続的かつ事業活動として認められる必要があります。
一方、給与所得や雑所得は青色申告の対象外です。例えば、会社員の給与やパート収入、副業の収入も事業として認められない場合は雑所得とされ、青色申告は利用できません。副業が事業所得になるには、収入の安定性や継続性が求められ、判断が難しい場合は税務署や税理士に相談すると良いでしょう。
また、不動産所得や山林所得でも、規模が小さい場合などでは青色申告が適用されないケースがあります。青色申告を利用する際は自身の所得区分を確認し、事業所得として認められるか確認が必要です。
青色申告が適している人
青色申告は特別控除や節税のメリットが豊富なため、以下のような事業者に適しています。
白色申告の事業者
現在、白色申告を利用している事業者は、青色申告へ切り替えることで大きな税制上のメリットを得られるでしょう。例えば、最大65万円の特別控除や赤字の繰越控除が適用され、結果として節税につながります。
一方で、青色申告には複式簿記での記帳や申請書の提出が必要となり、事務負担は増加します。しかし、青色申告の税制メリットと事務負担を天秤にかけて考えると、多くの場合、青色申告が有利といえるでしょう。
白色申告でも記帳や帳簿保存が義務化されているため、手間の差はそれほど大きくなく、税制優遇を考慮すれば青色申告を選ぶ価値は十分にあります。
これから事業を始める人
これから新たに事業を始める個人事業主やフリーランスにとって、青色申告を選ぶことは非常にメリットが大きいといえます。事業開始直後から青色申告を選択すれば、控除や税制メリットを最大限に活用でき、初期の資金管理にも役立つでしょう。
例えば、収支の記帳を正確に行う習慣が身につくことで、事業の経営状況やキャッシュフローを把握しやすくなり、経営の安定化にもつながります。
また、特別控除や損失の繰越が可能になるため、事業初期の赤字が発生しても、将来の黒字との相殺により税負担を軽減することができます。早い段階で青色申告に切り替えることが、長期的な経営基盤を支える一助となるでしょう。
節税したい人
青色申告は節税効果を最大限に得たい事業者やフリーランスに適しています。 最大65万円の特別控除や、家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」、赤字を3年間繰り上げられる制度など、節税に役立つ制度が豊富です。
特に収入が増え始めた事業者にとっては、税負担を大幅に軽減するチャンスです。また、支払いの繰越制度により、不安定な収益状況にも柔軟に対応でき、長期的な税負担の軽減が期待できます。個人事業主の節税方法については
以下の記事にもまとめているので税金対策を積極的に進めたい場合は参考にしてください。
【記事】個人事業主の節税方法21選!基本とポイント、裏ワザも解説!
青色申告のメリット
青色申告を利用して行う確定申告は、さまざまな控除を活用できて税金を抑えやすい仕組みになっています。
最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
青色申告者であれば、所得金額から最大65万円控除できる「青色申告特別控除」が受けられます。控除額が大きいほど課税所得金額を減らすことができ、高い節税効果を得られるでしょう。
なお、e-Taxまたは電子帳簿保存を行わない場合は、特別控除額が最大55万円となります。また、それらの適用要件を満たしていない場合でも、青色申告であれば10万円の特別控除を受けられます。
控除額ごとの要件は以下の通りです。
65万円控除
● 55万円控除の要件を満たしている
● e-Taxで確定申告書と青色申告決算書を提出、または電子帳簿保存を利用している
55万円控除
● 不動産所得または事業所得を得ている
● 複式簿記で記帳している
● 必要書類を添付し、確定申告書に青色申告特別控除の適用額を記載している
● 期日以内に確定申告書を提出している
10万円控除
● 55万円控除、65万円控除の要件に該当しない
続いて、青色申告・白色申告それぞれの場合の単純な所得税のシミュレーションを見てみましょう。
例として、以下では所得が500万円の場合を想定します。所得が330万〜694万5,000円に当てはまる場合、適用される所得税率は20%、所得控除額は42万7,500円です。
白色申告の場合の所得税 白色申告の場合、特別控除がないためそのままの所得に対して税額を計算します。 計算式: 5,000,000円 × 20%(所得税率) − 427,500円(所得控除) 所得税額の結果: 5,000,000 × 0.2 − 427,500 = 572,500円 |
青色申告の場合の所得税 青色申告では65万円の特別控除が適用されるため、課税所得が減ります。 課税所得:5,000,000円 − 650,000円(青色申告特別控除) = 4,350,000円 計算式: 4,350,000円 × 20%(所得税率) − 427,500円(所得控除) 所得税額の結果: 4,350,000 × 0.2 − 427,500 = 442,500円 |
所得税の差額 白色申告と青色申告の税額差は以下のとおりです。 計算式: 白色申告の所得税 − 青色申告の所得税 結果: 572,500円 − 442,500円 = 130,000円 |
このように、青色申告で65万円の控除を適用することで、13万円の節税が実現します。
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
貸倒引当金を必要経費にできる
青色申告を利用すると、貸倒損失によるリスクに備えるために貸倒引当金を必要経費に計上できます。貸倒引当金は、売掛金や未収金などが回収不能となった場合の損失金額を見積り、あらかじめ費用として計上するものです。
白色申告でも貸倒引当金を個別評価によって計上できますが、個別評価による貸倒引当金の対象は、事由が破産手続き開始の申立てや債務超過状態が継続し好転見通しがない場合などに限定されています。
青色申告は、年末時点の売掛金など債権残高の5.5%以下(金融業の場合3.3%以下)を貸倒引当金繰入として計上できます。支出を伴わない必要経費で税額を抑えられる点は大きなメリットです。
少額減価償却資産の特例の対象となる
青色申告を行う個人事業主は、事業運営で必要な備品などの減価償却資産のうち、30万円未満の少額減価償却資産について、全額を一括で経費計上できます。この制度は「少額減価償却資産の特例」と呼ばれます。
ただし、年間限度額の上限があり合計300万円までです。それに対し白色申告は、10万円以上の減価償却資産については固定資産として計上し、法定耐用年数で数年かけて減価償却を行います。
そのため、1年間で減価償却費として経費計上できる金額は、償却資産の全額ではなく一部になります。青色申告でも固定資産として法定耐用年数による減価償却も可能なので、上手に特例を活用しましょう。
赤字を3年間繰り越せる
個人事業に損失が出た場合、損失額を翌年以降3年間にわたって合計所得金額から控除できる「純損失の繰越控除」も青色申告のメリットです。
所得税は年間所得金額に対して課税されるため、年間所得が赤字であれば、支払う税金は発生しません。青色申告であれば、繰り越しした損失額を翌年以降の所得額と相殺することが可能です。純損失の繰越控除によって所得金額を減らすことで、税額を抑えられます。
家族への給与は必要経費にできる
家族が青色申告者の事業を手伝っている場合、家族に支払った給与の全額を必要経費に計上できます。
適用を受けるには「青色事業専従者給与に関する届出書」の事前提出が必要であり、適正範囲の金額であることが前提です。白色申告では、家族への給与は原則として経費計上が認められていません。
ただし、給与の一部額までを経費にできる事業専従者控除が使えます。家族に支払った給与の全額を必要経費にできる青色申告の方が、節税メリットは大きいでしょう。
青色専従者の要件は以下の通りです。
● 届出書を納税地の税務署に提出している
● 青色事業専従者に支払われた給与
● 青色事業専従者給与の額が相当
● 届出に記載されている方法・金額の範囲内で支払われている
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
家事関連費を必要経費にできる
自宅で仕事を行う個人事業主やフリーランスは、家事関連費を必要経費にできます。家事関連費には、水道光熱費や電話代、インターネットプロバイダー料金といった毎月発生する費用が該当します。
自宅が賃貸マンションやアパートであれば、家賃も家事関連費の対象です。これら家事関連費にはプライベート使用分が含まれているので、全額を必要経費にすることはできません。事業用としてどこまでの金額なら経費で認められるのかを確認しておきましょう。
参考:国税庁「No.2070 青色申告制度」
個人事業主やフリーランスが経費にできる内容は?
個人事業主やフリーランスが使った費用は、すべてが必要経費となるわけではなく、事業に関係しているお金かどうかが問われます。
経費はあくまで事業用途の出費に限られるため、事業用の経費割合を計算する家事按分が使われます。
個人事業主やフリーランスが経費にできる項目
事業を運営するには、さまざまな必要経費がかかります。
下記は、個人事業主が経費の仕訳をする際、よく使われる勘定科目です。
● 水道光熱費
● 地代家賃
● 租税公課
● 消耗品費
● 新聞図書費
● 専従者給与
● 広告宣伝費
● 接待交際費
● 外注費
● 支払手数料
● 減価償却費
● 旅費交通費
● 通信費
● 雑費
家の費用はすべて経費にできるわけではない
自宅で仕事をする個人事業主やフリーランスでも、自宅に関連する費用を全額経費にはできません。そのため、正しく経費計上するために家事按分の計算を行いましょう。
家事按分で計算する主な勘定科目としては、水道光熱費、通信費、家賃などが挙げられます。これらの費用は事業を行ううえでの必要な支出に該当しますが、プライベートでも使っているでしょう。
家事按分するためには、事業で使用している具体的な根拠を提示する必要があります。自宅の家賃であれば、居住用スペースと事業用スペースの割合から計算する方法や、事業で使用している時間割合から計算する方法が使われます。
水道光熱費や通信費は、事業で使用している時間割合から計算するのが一般的です。会計ソフトを使えば家事按分を簡単に計算できます。
青色申告のデメリット
青色申告には節税効果が高いメリットがある一方で、いくつかの手続きや作業面の負担がデメリットとして挙げられます。
事前に所得税の青色申告承認申請書を提出する
青色申告を利用するためには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出することが必須です。申請の期限は、事業開始日から2ヵ月以内またはその年の3月15日までです。
この期限を過ぎてしまうとその年は白色申告扱いとなり、青色申告の税制メリットを受けることができません。事業を始めたばかりの人や、白色申告から切り替える人は、提出期限に十分注意する必要があります。
65万円・55万円の特別控除は複式簿記での記帳が必須
青色申告で最大65万円または55万円の特別控除を受けるには、複式簿記で正確に記帳を行うことが求められます。複式簿記とは、取引の「借方」と「貸方」を仕訳して帳簿に記録し、仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿を作成する方法です。
白色申告の簡易帳簿に比べて手間がかかり、会計の知識も必要です。そのため、会計ソフトを活用するなど、記帳の負担を軽減する工夫が欠かせません。
65万円の控除を受けるにはe-Taxでの申告か電子帳簿保存が必須
青色申告で最大65万円の特別控除を受けるためには、複式簿記に加えてe-Tax(電子申告)で申告を行うか、電子帳簿保存法に基づき帳簿を電子データで保存することが必須です。紙面での確定申告書類の提出では、最大控除額が55万円にとどまることを把握しておきましょう。
e-Taxを利用するためには、事前に税務署での「利用者識別番号」の取得や電子申告環境の準備が必要です。また、電子帳簿保存の場合も、保存要件を満たすようなシステムやツールの導入が求められます。これらの手続きや環境整備には一定の時間と労力がかかるため、早めの対応を心がけましょう。
青色申告で確定申告する際の流れ
青色申告で確定申告を行うには、事前の手続きから申告書の提出まで、いくつかステップを進めていく必要があります。ここでは、それぞれの手続きの流れを確認しましょう。
1. 税務署に青色申告承認申請書を提出
2. 業務における金銭のやり取りを記帳
3. 所得税青色申告決算書、確定申告書を作成
4. 書類を提出して確定申告する
1.税務署に青色申告承認申請書を提出
個人事業主やフリーランスとして既に事業を開始しており、これから青色申告を利用したいと考えている場合は、青色申告を希望する年の3月15日までに納税地の所轄税務署長へ「青色申告承認申請書」を提出、および承認手続きが必要です。
ただし1月16日以降に新規開業した場合は、開業日から2ヵ月以内に「青色申告承認申請書」を提出しましょう。
提出期限内に承認を受けられない場合は、自動的に白色申告になります。あらかじめ期限を確認し、早めに手続きを進めましょう。
2.業務における金銭のやり取りを記帳
青色申告の記帳方法には2種類あり、複式簿記・簡易簿記のどちらかを選択します。選択は任意ですが、選んだ記帳方法によっては「青色申告特別控除」での最大控除額が変わります。
最大65万円の特別控除を受けるには、複式簿記による記帳が必要です。簡易簿記による記帳の場合は、特別控除額が10万円に減額されます。複式簿記は単式簿記に比べ複雑なため、一定の簿記の知識がなければ難しく感じるでしょう。
そのため、最近では記帳のみならず、申告書作成手続きまで対応できる有料ソフトを活用するケースが増えています。自身での対応が難しい場合は、税理士に依頼するのも良いでしょう。
3.提出書類の作成
青色申告で確定申告を行うためには、帳簿の記録内容をもとに1年間の収支をまとめ「所得税青色申告決算書」を作成します。所得税青色申告決算書は、損益計算書や貸借対照表など全4枚で構成されています。
そして「確定申告書」を作成しましょう。確定申告書は、以前までは給与所得者用の「確定申告書A」、誰でも使える「確定申告書B」の2種類がありました。2023年から確定申告書Aが廃止され、従来の確定申告書Bに書式が一本化されています。現在ではA・Bの区別はなくなり、表記も「確定申告書」に統一されました。
4.書類を提出して確定申告する
確定申告の手続きは原則として2月中旬から3月15日ごろの定められた期間内に、前年1月1日から12月31日までの所得税額を計算し、税務署に所得税青色申告決算書や確定申告書を提出して納税します。提出は郵送やe-Taxを利用する方法、納税はクレジットカード払いや電子納税する方法など、希望に合わせて選びましょう。
申告期限に遅れると、無申告加算税や延滞税などさまざまなペナルティが課せられます。2年連続で期限後申告となった場合は、青色申告取り消しとなります。早めの準備で期限内に申告しましょう。
また、確定申告時に作成した帳簿関係書類は、一定期間の保存義務が定められています。個人事業主の青色申告は、確定申告期限から原則7年間の保存が必要です。
青色申告実施前に作成・提出する書類と提出期限
青色申告を始めるには、いくつかの書類を税務署へ提出する必要があります。すべての書類が必須ではありませんが、事業の内容や状況に応じて該当するものを提出しなければなりません。
適切に手続きを行わないと、青色申告のメリットを受けられなくなる場合もあるため、それぞれの書類と提出期限を把握しておきましょう。主な提出書類は以下のとおりです。
● 青色申告承認申請書
● 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
● 所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書
● 給与支払事務所等の開設届出書
それぞれの詳細を解説します。
青色申告承認申請書
青色申告を利用するためには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。申請は以下の期限までにしなければなりません。
・新たに事業を開始する場合:事業開始日から2ヵ月以内
・白色申告から青色申告に変更する場合:その年の3月15日まで
この期限を過ぎてしまうとその年は白色申告扱いとなり、青色申告の税制上のメリット(最大65万円の特別控除、赤字の繰越控除など)を受けられなくなります。
新たに事業を開始する個人事業主や、これまで白色申告をしていた事業者は、早めに提出を済ませることが大切です。特に事業開始直後は手続きが多く、忙しくなりやすい時期でもあるため、スケジュール管理を徹底しましょう。
青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告では、家族に給与を支払う場合、その給与を必要経費として計上できる青色事業専従者給与の制度が利用できます。ただし、この制度を活用するには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することが必須です。
届出をしないまま給与を支払った場合、その給与は経費として認められません。家族に事業を手伝ってもらっており節税を図りたい場合は、必ず事前に書類を提出しましょう。また、給与額に変更があった場合は、変更届出書の提出が必要となります。
所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書
通常、納税地は住民票が登録されている住所となりますが、事業を行う場所が住民票の住所と異なる場合、納税地を変更する必要があります。例えば、事業用の店舗や事務所が別にある場合、その所在地を納税地として登録することが可能です。その際、提出が求められるのが「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」です。
この書類を提出しないと、税務署からの通知や書類が本来の事業所ではなく住民票の住所に届いてしまい、申告や手続きがスムーズに進まないケースがあります。また、複数の事業所を持つ場合や引っ越しを伴う事業拠点の移転があった際にも、忘れずに手続きを行いましょう。
給与支払事務所等の開設届出書
従業員を雇用し、給与を支払う場合には「給与支払事務所等の開設届出書」の提出が必要です。この書類は、給与の支払いを開始してから1ヵ月以内に税務署に提出しなければなりません。
提出が遅れたり、手続きを怠ったりすると、罰則が科される場合もあるため注意が必要です。特に従業員を初めて雇用する場合、給与の支払いと合わせて所得税や社会保険料の計算、年末調整の準備が必要になるため、早めに税務署へ手続きを行いましょう。
青色申告で確定申告をする場合に必要な書類
青色申告を利用して確定申告を行う際には、提出が求められる書類がいくつかあります。主に「確定申告書」と「青色申告決算書」の2種類が必要です。どちらも青色申告の税制上のメリットを享受するためには重要な書類であり、日頃から正確な記帳と準備が欠かせません。
確定申告書
確定申告書は所得税を計算・申告するための基本書類で、個人事業主やフリーランスが1年間の事業収入、経費、控除額を記載します。青色申告の場合は「確定申告書B」を使用し、事業所得や各種控除を正確に記入する必要があります。
誤りがあると追徴課税の対象になるため注意が必要です。確定申告書は税務署窓口や国税庁のホームページから入手でき、電子申告(e-Tax)の利用など要件を満たせば65万円の特別控除が適用され、節税効果が最大化されます。作成時は会計ソフトや税理士のサポートを活用すると負担の軽減が可能です。
青色申告決算書
青色申告決算書は青色申告を利用する事業者が提出する書類で「損益計算書」と「貸借対照表」を含みます。損益計算書には1年間の売上や経費、利益が記載され、貸借対照表では資産や負債、純資産を一覧で示します。
これらの書類を作成するには日々の取引を正確に記帳・管理することが必須であり、65万円の特別控除を受けるには、複式簿記が必要条件です。不備があると税務調査の対象となる恐れがあるため、正確な記載が求められます。記帳の手間を軽減するためには、会計ソフトを活用しましょう。
青色申告で申告書類を提出する方法
青色申告で確定申告を行う場合、申告書類の提出方法は主に「e-Tax」「税務署窓口への手渡し」「郵送」の3つの方法があります。それぞれの方法に特徴や注意点があるため、自分に合った方法を選びましょう。
e-Taxで申告
e-Tax(電子申告)は、インターネットを通じてスマートフォンやパソコンから確定申告書を提出できる便利な方法です。青色申告で最大65万円の特別控除を受けるにはe-Taxの利用が必須であり、書面による提出では55万円の控除にとどまります。
節税効果を最大化するためにもe-Taxの活用がおすすめです。利用するためには税務署での「利用者識別番号」の取得などが必要ですが、一度環境を整えれば手軽に申告できます。
参考:e-Tax「ご利用の流れ」
手渡しで提出
税務署窓口に直接書類を提出すると、担当者に内容を確認してもらえ、不明点をその場で質問できるため、確定申告に不安がある人におすすめです。
ただし、確定申告の時期(2月16日~3月15日ごろ)は混雑が予想されるため、早めに申告するか空いている時間帯を狙うと良いでしょう。提出前には必要書類を揃え、不備がないか事前に確認しておくことが重要です。
郵送で提出
税務署へ書類を郵送する方法も選択できます。自宅で書類を作成し、税務署宛てに送るだけなので、時間の都合がつかない場合や、税務署へ足を運ぶのが難しい事業者にとって便利な方法です。
郵送で提出する際のポイントは送付期限に注意することです。確定申告の締切日までに税務署へ必着、または消印が押されている必要があります。余裕を持って郵送手続きを行うようにしましょう。
控えに受領印がほしい場合は、申告書のコピーと返信用封筒(切手貼付)を同封し、税務署に依頼します。また、書類が税務署に確実に届いたことを確認するために、簡易書留や特定記録郵便を利用すると安心です。
参考:国税庁「【申告書の提出】」
青色申告する場合に保管しておくべき書類と保管期限
青色申告では、定められた期間は書類を適切に保管する必要があります。 保存期間中に破棄される場合、ペナルティが課せられる場合があるため注意しましょう。
2023年10月からのインボイス制度では、適格請求書発行事業者はインボイス(請求書や領収書など)を発行日がクレジット現金期間の末日から 7年間保存義務があります。
保管の対象となるため、適切な管理が重要です。 消費税の金銭事業者は、その他の関連書類も保存期限を厳守しましょう。
<青色申告の場合に保存が必要な書類・帳簿などの保管期間一覧>
保存が必要 | 保存期間 | ||
帳簿 | 決済帳・現金出納帳・総枠元帳・買掛帳・売掛帳・固定資産台帳など | 7年 | |
書類 | 決算書類 | 貸借対照表・損益計算書・棚卸表など | 7年 |
現金預金取引等関係書類 | 領収証・預金通帳・小切手控・借用証など | 7年※ | |
その他の書類 | 取引の際に作成・受領した上記以外の書類(契約書・請求書・概算・見積書など) | 5年 |
※取引の際に作成・受領した領収証や借用証以外の書類(契約書・請求書・見積書・見積書など)は5年
出典:国税「記帳や簿庁等保存・青色申告書」
白色申告・青色申告を変更する方法
白色申告と青色申告は、手続きや記帳方法、税制上の優遇措置に大きな違いがあるため、状況に応じて変更を検討する事業者もいます。ここでは、白色申告から青色申告へ変更する場合と、青色申告から白色申告へ変更する場合の手続きを把握しておきましょう。
白色申告から青色申告に変更する場合
白色申告から青色申告に切り替えるためには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。この申請書の提出期限は、確定申告の対象となる年の3月15日までです。
手続き自体は申請書を提出するだけとシンプルですが、書類に不備があると承認されない場合もあるため、内容を十分確認したうえで提出しましょう。さらに、青色申告は「青色申告承認申請書」が承認された年の分から適用されるため、提出が遅れた場合その年は白色申告扱いとなります。
青色申告から白色申告に変更する場合
青色申告から白色申告へ切り替える場合は、税務署へ「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する必要があります。この書類の提出期限は、青色申告を取りやめる年の翌年3月15日までです。
青色申告を取りやめる理由としては、複式簿記の記帳の負担や、赤字繰越・特別控除の必要がなくなった場合などが挙げられます。ただし、白色申告に切り替えると青色申告で受けられていた税制上の優遇措置がすべてなくなってしまいます。
例えば、青色申告による最大65万円の控除だけでなく、赤字が翌年以降に繰り越せなくなるなど、節税効果が大きく減少するでしょう。また、白色申告でも2014年から記帳や帳簿保存が義務化されており、完全に記帳の手間がなくなるわけではありません。青色申告のメリットと負担を比較し、変更するか慎重に判断しましょう。
青色申告で悩んだ時の相談先
青色申告は税制上のメリットが大きい一方で、複式簿記の作成や書類の準備など、手続き面で悩むことも多くあります。疑問点がある場合は、以下の相談先を活用しましょう。
● 税務署
確定申告や青色申告承認申請書の提出など、基本的な手続きについて質問できます。
● 会計ソフトのサポートサービス
会計ソフトを利用している場合、操作方法や記帳方法のサポートを受けられます。
● 青色申告会
青色申告会では記帳指導や確定申告のサポートを行っており、青色申告に不安がある場合におすすめです。
● 税理士
専門知識を持つ税理士に依頼すれば、記帳から確定申告までスムーズに進められ、税務リスクも軽減できます。
個人事業主・フリーランスが納める税金
個人事業主やフリーランスが、事業を行ううえで納めるべき税金は以下のとおりです。
● 所得税:1年間の所得に対して課される税金で、確定申告によって納税額が決まります。
● 住民税:前年の所得に応じて課税され、自治体に納めます。
● 個人事業税:事業所得が年間290万円を超えた場合に発生。業種により税率が異なります。
● 消費税:課税売上が年間1,000万円を超える場合などに消費税の納税義務が発生します。
● 固定資産税:事業で使用する土地や建物などの固定資産に対して課税される税金です。
これらの税金を適切に納めるためには、日頃から事業の収支管理を徹底し、計画的に資金を準備することが重要です。また、税金対策として節税方法を理解・活用することも欠かせません。個人事業主が納める税金や節税方法の詳細は、以下の記事を参考にしてください。
【記事】個人事業主が納める税金と計算方法、納税時期|節税の仕方も解説
青色申告の業務負担を減らすには
青色申告は節税効果が大きい一方で、複式簿記や書類作成の手間が発生します。これらの作業を効率化するためには、ビジネスカードを活用するのが効果的です。
ビジネスカードを利用すれば事業用の支払いを一元管理できるため、経費の把握が容易になります。プライベートと事業の支払いを分けることで、領収書や経費の整理にかかる手間が大幅に削減されます。
ビジネスカードは、毎月の利用明細を確定申告時の証明書類として利用できます。また、会計ソフトと連携することで、カードでの経費支払いに関する仕訳ミスを防ぎ、手間なく記帳作業を行えます。
個人事業主でも発行できるおすすめのビジネスカードが、コスパ最強のセゾンプラチナ・ビジネス・ アメリカン・エキスプレス®・カードです。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カードなら、個人用と事業用の支出を容易に区別できることはもちろん、以下のようなメリットがあります。
●ビジネスシーンの一本化
仕入れや公共料金の支払いなどさまざまな経費をカード決済できる。
●社員用の追加カードで経費処理も一本化
社員用の追加カードを発行でき、社員の経費使用状況を的確に把握できる。
●ポイントの活用で経費削減
経費や税金のカード払いで永久不滅ポイントが貯まり活用すれば、経費削減に役立てることができる
青色申告は税制上のメリットが大きくおすすめ
青色申告で確定申告を行うと、税制上の優遇措置など多くのメリットを享受できることを紹介しました。青色申告の事前手続きは、期日までに税務署へ申請書を提出すれば完了します。
ビジネスカードと会計ソフトを活用すれば、記帳や申告書作成まで簡単に行えることでしょう。事業拡大を目指している個人事業主やフリーランスは、本記事を参考に青色申告を始めてみてください。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カードは支払いの1本化などにより経理業務が効率化できるだけでなく、永久不滅ポイントを支払いや納税に使うことで、経費削減や節税にも役立ちます。ビジネスに役立つ特典も豊富なため、ぜひご活用ください。