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オフィス備品の仕訳に用いる勘定科目は?会計処理の方法も解説
特に少額なものは軽視されがちですが、備品は正しく計上しないと、思わぬ弊害が生じる恐れがあります。仮に計上する勘定科目を間違えると、修正申告を行う必要があるうえに、場合によっては追徴課税が発生することもあります。税務調査のリスクが高まるのはもちろん、将来的にかえって手間がかかってしまう可能性もあるので、仕訳については正しい知識を身につけておくことが重要です。
そこで本記事では、備品を購入した時の勘定科目の仕訳ポイントから、経理担当者や個人事業主が押さえておきたい会計処理の方法まで徹底的に解説します。
オフィス備品は経費になる?仕訳に用いる勘定科目の種類
パソコンや小型プリンター、家具、応接セット、事務用品など、オフィスで使用する備品を購入した場合、経費になるのでしょうか。また、それらの備品の仕訳をする場合、どのような勘定科目を用いることができるのでしょうか。
オフィス備品が経費になるかどうかは、その購入価額によって判断します。仕訳の際に用いる勘定科目は、経費として計上する場合には、消耗品費、備品費、雑費といった勘定科目が想定できるかもしれません。経費にならない価額で購入した場合は、工具器具備品(固定資産)として計上します。
次章よりそれぞれの勘定科目について、仕訳のポイントを詳しく解説していきますが、その前に、勘定科目における留意点をお伝えします。
会社内で勘定科目のルールをつくり会計処理を効率的に進めよう
勘定科目は、うまく使い分ければ、会社のお金の動きを項目別に管理するのに役立ちます。
どの勘定科目を用いるのかについては、法律で定められているわけではありません。ただし、会計処理における同じ取引については同じ勘定科目を使うのが好ましく、また、使用する勘定科目が一貫していることは正確な財務管理にもつながります。
そのために必要なのは、社内の仕訳ルールを定めることです。仕訳の基準が似ているものは適切な勘定科目に振り分けておくことで、スムーズな作業が可能になります。
例えば、振込手数料や証明書の発行費はまとめて「支払手数料」、清掃に関するものは「衛生費」のように仕訳のルールを決めておけば、迷うことなく会計処理を進められます。こうした工夫も取り入れながら、適切に運用し、誰が見てもわかりやすい帳簿や決算書を作成していきましょう。
それでは次より、オフィス備品の仕訳のポイントを勘定科目ごとに解説していきます。社内のルールづくりに役立ててください。
消耗品費とは?仕訳のポイント
「消耗品費」とは、文房具や日用品などの消耗性のある物品を購入した場合に、その費用を計上する勘定科目のことです。物品ごとの明確な定義などは設けられておらず、一般的には以下のいずれかの基準を満たしたものが消耗品費として会計処理されています。
【1】使用可能期間が1年未満のもの
【2】取得価額が10万円未満のもの
上記の基準を見れば、多くの備品が消耗品に当てはまることがわかります。判断はそれほど難しくないと思いますが、上記【2】の基準にはひとつ注意しておきたいポイントがあります。
それは、「税込経理方式・税抜経理方式」のどちらを採用しているのかによって、基準となる金額が若干変わってくる点です。税込経理方式では税込で10万円未満、税抜経理方式では税抜で10万円未満が基準となるため、自社の経理方式を一度見直しておきましょう。
以下に、消耗品費に該当する費用を簡単にまとめました。購入した備品が該当するかどうか、参考にしてください(使用可能期間や取得価額によっては会計処理の方法が変わることもあります)。
ジャンル | 消耗品費に該当する費用の一例(※いずれも10万円未満) |
事務用品 | 文房具、印鑑、封筒、伝票、用紙、インク、トナー、コピー代金など |
工具や機器 | 机、椅子、本棚、一般工具、ロッカー、電話、携帯電話、FAX、カメラ、掲示板など |
パソコン関連 | キーボード、マウス、ケーブル、小型プリンター、ソフトウエア、USBメモリなどの記憶ストレージ、CDなどのディスク類、ソフトウェア、ライセンス料など |
日用品 | タオル、石鹸、洗剤、掃除用品、食器類、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、電球、蛍光灯、電池、観葉植物など |
その他 | ガソリン、灯油、オイル交換代、収入印紙など |
備品費とは?仕訳のポイント
一般的な勘定科目ではありませんが、企業によっては「備品費」という費用の科目を設け、仕訳を行うケースもあります。取得価額が10万円未満で、かつ消耗品費ほど短い使用期間ではないものを振り分けます。
以下に、備品費に該当する費用を簡単にまとめました。購入した備品が該当するかどうか、参考にしてください(使用可能期間や取得価額によっては会計処理の方法が変わることもあります)。
ジャンル | 備品費に該当する費用の一例(※いずれも10万円未満) |
工具や機器 | 机、椅子、本棚、一般工具、ロッカー、電話、携帯電話、FAX、カメラ、掲示板など |
パソコン関連 | キーボード、マウス、ケーブル、小型プリンター、ソフトウエア、USBメモリなどの記憶ストレージ、CDなどのディスク類など |
雑費とは?仕訳のポイント
消耗品費と同じく、「雑費」も明確に定義されていません。そのため、雑費として処理している費用は事業者ごとに異なりますが、一般的には以下の条件を満たす場合に、雑費として処理されるケースが多いです。
【1】発生した費用が、他の科目に該当しない場合
【2】一時的な費用である場合
【3】高額ではない場合(※金額については、後述で解説)
【4】発生の頻度が低い場合
雑費に該当する具体的な費用としては、資料費や書籍費、各種手数料などが挙げられます。物品が定義されていない影響で、あらゆる備品の費用を計上できるので、雑費は「使い勝手が良い科目」として好んで使われるケースが見受けられます。
ただし、雑費に多くの費用を計上すると、あとから帳簿を見直した時に詳細がわかりづらくなります。たしかに、雑費を選べばスムーズに会計処理はできますが、経営管理の面ではかえって膨大な手間がかかります。
そのため、可能であれば雑費としての会計処理は避けて、発生頻度が高いもの、重要度が高いものに関しては消耗品費や別の勘定科目に計上したり、新たな勘定科目を設けたりすると良いでしょう。備品代を会計処理する際には物品そのものだけではなく、発生頻度や金額、事業における重要性なども意識しながら、適した勘定科目に振り分けてください。雑費は「最終手段となる勘定科目」として認識しておきましょう。
以下に、雑費に該当する費用を簡単にまとめました。参考にしてください。
ジャンル | 雑費に該当する費用の一例 |
清掃に関するもの | 清掃代、クリーニング費、粗大ゴミの処理費用など |
手数料に関するもの | 振込手数料、登記手数料、安全協力費、証明書の発行費など |
資料類 | 書籍、新聞、雑誌など |
その他 | テレビの受信料、引っ越し費用、警備費用など |
雑費は計上する金額にも注意!目安はどれくらい?
雑費は勘定科目の中で、唯一「使用用途が不明瞭」な科目です。その影響で、雑費は使途不明金の温床になりやすいため、第三者からチェックされやすい勘定科目と言えます。
したがって、雑費に多くの費用を計上していると、税務調査において指摘されるリスクが高まってしまいます。また、雑費が多い決算書は見栄えが悪い(=信用性を損ないやすい)ので、金融機関からの融資にも悪影響を及ぼす可能性があります。
雑費の金額に細かいルールは設けられていませんが、一般的には経費全体の5%〜10%程度が望ましいとされています。勘定科目としての使い勝手は良いものの、雑費に計上できる金額はそれほど多くないため、使い方次第で「危険な勘定科目になる」点はしっかりと理解しておきましょう。
工具器具備品とは?仕訳のポイント
消耗品費の基準に該当しない、取得価額が10万円以上のオフィス備品は、建物や設備、車両運搬具などと同様の「固定資産」として計上します。勘定科目は「工具器具備品」を使用します。
固定資産であるオフィス備品は、「固定資産台帳」を用い、それぞれ管理しなければなりません。
また、会計処理を行う際は、耐用年数にわたって費用として計上する「減価償却」を行います。主な備品の耐用年数を以下にまとめましたので、参考にしてください。
主な器具・備品の耐用年数
品目 | 耐用年数 |
事務机、事務椅子(金属製のもの) | 15 |
応接セット(接客業用以外のもの) | 8 |
冷房用・暖房用機器 | 6 |
パソコン | 4 |
ラジオ、テレビジョン | 5 |
カメラ | 5 |
カーテン | 3 |
では、減価償却とはどのような処理方法なのでしょうか。その概要と仕組みを次に解説します。
事業者がしっかりと押さえたい減価償却の基本
減価償却とは、税法上の耐用年数に応じて、複数年かけて一定額を計上していく処理方法のことです。使用可能期間が1年以上であり、かつ取得価額が10万円を超える備品の費用については、固定資産に計上したうえで減価償却を適用しなければなりません。
簡単な例になりますが、仮に15万円の高額なカメラを購入したとします。カメラの耐用年数は税法上で5年と定められているため、毎年3万円ずつを費用として計上し、5年かけてすべての費用(3万円×5年間=15万円)を償却していきます。つまり、使用可能期間が長く、かつ高額な備品に関しては、購入した年度の費用として全額を計上することは原則できません。
ただし、取得価額が10万円以上~20万円未満のものは、一括償却資産として3年で一括償却することも可能で、通常どおりの減価償却を行うか、一括償却を行うかを選択できます。
また、一定の要件を満たす事業者は、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」が適用されることにより、購入した年度内に全額費用処理をすることが認められています。この特例については、次の項目で解説しますので、しっかりと理解を深めておきましょう。
個人事業主にも適用「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」とは?
この特例が適用された事業者は、取得価額が30万円未満の減価償却資産であれば、購入した年度内の費用として全額を計上できます。特例が適用される主な要件は以下のとおりです。
・青色申告をしていること
・常時使用する従業員の数が500人以下であること
・法人の場合は資本金または出資金の額が、1億円以下であること
個人事業主はもちろん、中小企業であればさまざまな法人が対象に含まれますが、大規模法人に一定数の株式を所有されている法人や、受託法人は適用を受けられません。また、確定申告書に明細書を添付するなど、税務申告の際に処理・手続きが必要になる点も、しっかりとチェックしておきたいポイントです。
なお、この特例には期限が定められており、将来的には制度の概要が変わる可能性があるので、常に最新の情報を確認しておきましょう(※2024年4月現在では、令和8年3月31日までに取得した資産が対象)。
オフィス備品の会計処理の方法
オフィス備品の会計処理はどのように行えば良いのでしょうか。費用として計上する場合、工具器具備品として計上する場合のそれぞれの仕訳例を見ていきます。
費用として計上する場合の仕訳例
取得価額が10万円未満のオフィス備品を消耗品費で計上する場合の一般的な仕訳は次のとおりです(消費税は考慮していません)。
例)3万円の本棚を現金で購入
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
消耗品費 | 30,000 | 現金 | 30,000 |
また、文房具やコピー用紙などをまとめて購入すると、期末に未使用分が生まれる場合があります。その際は、購入時に費用として計上して決算時に資産計上する、もしくは、購入時に資産計上して使った分を決算時に費用として計上する、といった処理が必要です。未使用分は「貯蔵品」、使用した分は「消耗品費」などの勘定科目に振り替えます。
例)1箱2,000円のコピー用紙を3箱現金で購入し、うち1箱が未使用であった
<購入時に費用計上、決算時に未使用分を資産計上する場合>
購入時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
消耗品費 | 6,000 | 現金 | 6,000 |
決算時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貯蔵品 | 2,000 | 消耗品費 | 2,000 |
<購入時に資産計上、決算時に使用分を費用計上する場合>
購入時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貯蔵品 | 6,000 | 現金 | 6,000 |
決算時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
消耗品費 | 4,000 | 貯蔵品 | 4,000 |
工具器具備品として計上する場合の仕訳例
取得価額が10万円以上のオフィス備品の会計処理は、固定資産として計上することとなり、購入時と決算時のそれぞれに仕訳が必要です。
処理方法には、「直接法」と「間接法」の2パターンがあります。直接法は固定資産から減価償却費を直接差し引く方法で、間接法は「減価償却累計額」という勘定科目を用いて減価償却費を累計していく方法です。
以下に、一般的な仕訳例をご紹介します(取得日や事業供用開始日、消費税は考慮していません)。
例)16万円のパソコンを現金で購入(パソコンの耐用年数4年)
購入時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
工具器具備品 | 160,000 | 現金 | 160,000 |
<直接法の場合>
決算時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | 40,000 | 工具器具備品 | 40,000 |
<間接法の場合>
決算時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | 40,000 | 減価償却累計額 | 40,000 |
また、10万円以上~20万円未満までの備品は、耐用年数にかかわらず、一括償却資産として3年間にわたって均等に償却することで経費として計上できる金額が増えるため、節税につながります。
例)15万円のパソコンを現金で購入し、一括償却資産として計上
購入時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
一括償却資産 | 150,000 | 現金 | 150,000 |
決算時 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | 50,000 | 一括償却資産 | 50,000 |
オフィス備品の勘定科目に関するよくある質問
オフィス備品の勘定科目に関する、よくある質問とその回答をご紹介します。
扱いに悩まされがちな備品!セット商品の扱いは?
数ある備品の中でも、特に「セット商品」は会計処理の際に悩みやすいもののひとつです。例えば、以下の3点がセットになっている商品は、消耗品費に計上できるでしょうか。
・パソコン本体(80,000円)
・ディスプレイ(20,000円)
・キーボード(5,000円)
(※いずれも使用可能期間は1年以上)
結論から言えば、上記のセット商品は合計で10万円を超えるため、消耗品費としては計上できません。つまり、セット商品は単体の物品価格ではなく、「セット価格」が取得価額として判定されます。
上記の例の他にも、椅子とテーブルの応接セット、カメラと専用アクセサリーの撮影セットなど、ビジネスに関係するセット商品は数多く存在するので注意しましょう。取得価額が10万円を超えるセット商品は、消耗品費ではなく「資産」として計上することになります。
事務用品費とは?消耗品費との違いは?
消耗品費に類似する勘定科目に「事務用品費」があります。事務用品には、文房具、デスク周りの備品、事務所に配置する備品などが挙げられます。いずれも消耗品費に含まれるものですが、事務用品費は業務に関連するものに限られるという点に注意が必要です。より詳細な管理を行いたい時などには、事務用品費を補助科目として設定すると良いでしょう。
ただし、勘定科目のルールは、無理に複雑にする必要はありません。会社の方針に沿って、適切に運用してください。
オフィス備品の仕訳では勘定科目を使い分ける。管理体制を見直して会計処理をスムーズに
オフィス備品の仕訳は、取得価額によって消耗品費と工具器具備品の勘定科目に振り分けて行うのが一般的です。工具器具備品に計上する時には、減価償却を適用し、購入時と決算時に仕訳を行います。
勘定科目をうまく使い分けるのは、会計処理を行ううえで重要です。とはいえ、性質の似ている勘定科目は、振り分ける際、非常に迷いやすいでしょう。
会計処理をスムーズに進めるには、自社の管理体制から見直す必要があります。管理体制の見直しには手間がかかるものの、いま見直しておけば将来的に生じる多くの手間(=無駄な時間)を削減できます。事業者にとって会計処理は常に発生する業務なので、この時間を毎回節約できる意味合いは非常に大きいでしょう。
まずは備品の各費用をどのように処理しているのか、税込経理方式と税抜経理方式のどちらを採用しているのか、といった点などを、今一度確認してみてください。
また、費用の会計処理を効率的に行うには、会計ソフトやビジネスカードの利用が便利です。会計ソフトにビジネスカードを紐付ければ、備品を購入した際の明細が記録されるため、管理が容易になります。
セゾンのビジネスカードを使えば、経理などの事務処理が効率化されるだけでなく、貯まった永久不滅ポイントを使って経費を削減することが可能。また、法務や会計といったビジネスに役立つサービスの優待特典も数多く付帯していてお得です。
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