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一生ものとは?見つけ方は?服のプロ直伝「結果として」一生ものになる1着との出会い方
ファッションアナリスト・山田耕史さんが買ってよかった"一生もの"は、コムデギャルソンオムプリュスのジャケット。
「これは一生ものになる!」と思い買うのではなく、「結果として一生ものになる」と語る"服オタク"山田さんに、このジャケットの魅力と、着る喜びを教えてもらいました。
一生ものってほんとに存在するのか?
僕は、メディアなどで紹介される「一生もの」という言葉がどうにも信用できません。
これまで本当にたくさんの服を手にしてきましたが、経験上「これは一生ものになる!」と思って買ったアイテムでも、いつの間にか着なくなってしまったり、手放してしまったりと、実際に一生ものになったものがほとんどなかったからです。
ですが、"結果として"一生ものになったものならいくつかあります。そのひとつがこの「コムデギャルソンオムプリュス(以下、ギャルソン)のジャケット」です。
コムデギャルソンとの出会いと熱狂
1999年、大学生だった僕はギャルソンの秋冬コレクションを雑誌で見てファッションにハマりました。
アルバイトで稼いだお金のほぼすべてをギャルソンの購入資金に充てるようになり、直営店からセレクトショップ、古着屋まで行脚してギャルソンのアイテムを買い集めていました。
そんなギャルソン漬けの日々の中、とある古着屋で出会ったのがこのジャケット。
端正なウールギャバジン素材の、オーセンティックな雰囲気のダブルブレストジャケット。
ですが、袖口やポケットが大胆な切りっぱなしになっているという、アヴァンギャルドでありながら、トラディショナルを大切にするギャルソンならではのデザインに、僕は心を奪われました。
古着にしては高価でしたが、間近に控えた成人式用に購入しました。
頭の片隅にいつもある服選びの「核」になった
あれから24年。ファッションが仕事になったり、結婚して子ども授かったりと人生にさまざまな変化がありました。同時に選ぶ服のジャンルやブランドも変化しましたが、僕はまだこのギャルソンのジャケットを愛用しています。
服を選ぶときはいつも「この服はギャルソンのジャケットと合うか?」と考えています。19歳のときに買ったジャケットが、今も服選びの「核」になっているんです。モード一辺倒なコーデだけでなく、たとえば、このようにいつものチノパンと合わせてみたり。
「一生もの」であることを期待して買ったわけではないけれど、気がついたらギャルソンのジャケットは僕の人生に伴走してくれている。少なくとも、43歳の現時点の僕にとって、ジャケットは"結果として"一生ものになっているんです。
「コスパ」よりも「この服好き!」が一生ものを育てる
「コスパ」という言葉をよく耳にします。たとえハイブランドのアイテムであっても、コスパの良し悪しが語られるようになりました。たしかに、どんな服でもコスパは重要です。
しかし、個人的にはコスパを最優先して手に入れたアイテムが一生ものになる可能性は、残念ながら低いと思います。
なぜならコスパ以上に、そのアイテム自体に十分な魅力を感じていることが、なによりも大事だから。
もちろん、僕のジャケットの例のように「好き!」という気持ちで選んだものが必ずしも一生ものになるとは限りません。
それでも「好き!」という気持ちで選ぶことこそ、一生ものに出会う前提条件なのだと思います。
フリーのファッションアナリスト。特にメンズファッションの歴史や知識に造詣が深く、「安くていいもの」から「高価だけれど買って損はないもの」まで幅広い知識を有する。著書に『結局、男の服は普通がいい 世界一かんたん、一生使えるオシャレの方程式』(KADOKAWA)がある。著者
山田耕史
X(Twitter):@yamada0221
ブログ:山田耕史のファッションブログ