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【2025年最新】電子帳簿保存法とは?要件や対象書類・改正点をわかりやすく解説

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さまざまな帳簿や書類を電子的に保存できると定めた「電子帳簿保存法」。この法律を活用すれば、業務の効率化やコストの削減が実現します。しかし、電子帳簿保存法に従って電子保存するためには、手続きや保存要件を知っておかなければなりません。

そこで今回は、電子帳簿保存法の概要や活用方法、電子保存で注意すべき点などについて、詳しくご紹介します。

電子帳簿保存法とはどんなもの?

電子帳簿保存法とはどんなもの?

まずは、電子帳簿保存法の目的や概要から見ていきましょう。

2024年1月から本格化「帳簿・書類の電子データによる保存方法を定めた法律」

「電子帳簿保存法」とは、国税関係の帳簿類や証憑書類を電子データで保存することを認めている法律のことです。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿の保存方法等の特例に関する法律」といいます。

会計帳簿や決算書などの書類は紙による保存が原則だったため、電子文書をわざわざ紙に印刷して保存していた企業も少なくありませんでした。電子帳簿保存法は、このような手間を解消するための法律です。

電子帳簿保存法の対象者は法人と個人事業主

電子帳簿保存法の対象者となるのは、大企業から中小企業までのすべての法人や個人事業主など、国税関係の帳簿類や書類の保存義務を負う事業者です。

電子帳簿保存法ではいくつかの制度が設けられていますが、中でも電子取引データ保存の制度は義務化されているため、対象となるすべての事業者が対応しなければなりません。また、副業の場合は、前々年分の副業の収入金額が300万円を超える際は、その業務に関する領収書や請求書といった現金預金取引等関係書類を保存しなければならないと定められているため、電子取引がある場合はこの制度の対象者となります。

電子帳簿保存法の対象・対象外となる書類は?

電子帳簿保存法で電子保存が認められている帳簿類は限られています。また、電子帳簿保存を利用するためには、保存要件を満たさなければなりません。

電子帳簿保存法で保存が認められている帳簿や書類は以下表のとおりです。

  種類 電子データ保存 スキャナ保存
帳簿 総勘定元帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、
仕訳帳、補助元帳、現金出納帳など
×
決算書類 損益計算書、株主資本など変動計算書、
貸借対照表など
×
証憑書類 請求書、領収書、レシート、納品書、契約書など

表内の「電子データ保存」とは電子データを電子データのまま保存すること、「スキャナ保存」とは紙の書類をスキャナなどでデータ化して保存することを指します。

また、電子データ保存の対象となるのは、パソコンなどで作成した帳簿や書類、メールなどで授受した書類です。スキャナ保存の対象となるのは、取引先などと紙による授受を行った書類などです。

●対象書類の保存期間
電子帳簿保存法の対象書類の保存期間は、法人の場合、原則7年間です。個人事業主で青色申告を行っている場合は原則7年間、白色申告の場合は法定帳簿が7年間で、その他の書類は5年間保存する必要があります。

副業の場合は、前々年分の副業の収入金額が300万円を超える際は、その業務に関する現金預金取引等関係書類を5年間保存しなければなりません。

●インボイス制度に関する書類への対応は?
電子帳簿保存法の対象となる書類の中で、インボイス制度にも関係するのが「適格請求書(インボイス)」です。インボイス制度とは、正しい消費税率と税額を伝え、納付することを目的とした制度で、適格請求書等保存方式、またはインボイス方式とも呼ばれます。

適格請求書とは、登録番号や適用税率、消費税額などを記載した請求書のことです。インボイス制度では、この適格請求書を適切に保存しておかなければ、原則として、仕入税額控除を受けることができません。そのため、適格請求書は、電子帳簿保存法とインボイス制度の2つの要件を満たしたうえで保存する必要があります。

電子帳簿保存法の要件を満たすには、紙で受け取った適格請求書は紙のまま保存、もしくはスキャナ保存の要件に従いデータ化して保存します。データで授受した適格請求書は、電子取引データ保存の要件に従って電子データのまま保存します。

インボイス制度については以下の記事もご参考ください。
【記事】2023年10月開始のインボイス制度とは?概要や対応方法をわかりやすく解説

電子帳簿保存の導入手順は?

電子帳簿保存法に従った帳簿や書類の保存を行うには、事前に管轄の税務署長への届出が必要でしたが、2022年の電子帳簿保存法改正により、事前承認は不要となりました。

なお、2022年以前は、以下のような手順・申請が必要でした。

<2022年以前に行われていた電子帳簿保存法の導入手順>

導入するには税務署への申請が必要
電子帳簿保存を利用するためには、申請書と添付書類を所轄の税務署に持参、または送付しなければなりません。

申請書類は保存する方法によって異なります。自社のプログラムで保存する場合は、「国税関係帳簿の電磁的記録による保存などの承認申請書」が必要です。

一方で、市販のソフトウエアを使う場合は、「国税関係帳簿の電磁的記録による保存などの承認申請書」を用意します。なお、この申請書には「使用するソフトがJIIMAの認証を受けている」と記載されていなければなりません。ソフトウエアの名称やメーカー、バージョンの記入も必要です。

申請書は1部で構いませんが、以下に該当する場合は2部必要になります。

・法人税及び消費税に関する書類
・製造場などの酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、航空機燃料税、石油ガス税、石油石炭税、印紙税、電源開発促進税及び国際観光旅客税に関する書類

申請書と併せて以下の3点も提出します。

・システムの概要を記載した書類
・電子計算機処理に関わる事務手続きの概要(外部委託の場合は契約書の写し)
・申請書の記載事項の補完や参考となる書類

なお、申請手数料は無料です。

提出時期は、電子保存に切り替える日の3ヵ月前の日までとなっています。申請後すぐに、電子保存を導入できるわけではないので注意しましょう。

このように、改正前には電子保存を行うためのソフトウエアやシステムなどの策定を行い、事前に申告する必要がありました。事前承認制度が撤廃されたことにより、事業者の事務負担が軽減され、制度の導入が行いやすくなりました。

電子帳簿保存法3つの制度

電子帳簿保存法には、「電子帳簿等保存(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存」、「スキャナ保存」、「電子取引データ保存」の3つの区分があります。このうち、「電子取引データ保存」については2024年1月より義務化されており、対象となるすべての事業者が実施しなければなりません。それぞれの制度の概要や要件について、詳しく見ていきます。

【任意】①電子帳簿等保存(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存)
【任意】②スキャナ保存
【義務】③電子取引データ保存

なお、国税関係帳簿書類はCOM(電子計算機出力マイクロフィルム)による保存も認められています。現代ではあまり一般的ではないため、ここでは参考までに、その要件の一部を以下に述べるにとどめます。

COMによる保存の要件
 ● COMの作成・保存に関する事務提要と、COMの作成責任者などが記載された書類を備え付ける
 ● 索引簿を備え付ける
 ● COMごとに記録事項の索引を出力する
 ● マイクロフィルムリーダプリンタなどを備え付ける
 ● 保存当初の3年間は、COMに出力した電磁的記録の保存と、その他の検索機能を確保する

【任意】①電子帳簿等保存の要件

電子帳簿等保存(国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存)の制度は、会計ソフトなどパソコンを使用して電子的に作成した帳簿書類を、印刷せずに電子データのまま保存するための要件を定めたものです。この電子データは、事業者自身が一貫して作成する電子データである必要があります。

パソコンを使用して電子的に作成したデータをBlu-rayディスクやハードディスクなどの記録メディアで保管する他、クラウドサービスを利用してサーバー上に保管する場合も、この制度の要件に該当します。

電子帳簿等保存の制度を適用するかどうかは任意であり、電子的に作成した帳簿書類などのデータを紙に印刷し、保存するのでも構いません。

●電子帳簿等保存の対象となる書類
電子帳簿等保存の対象となるのは、会計ソフトで作成する仕訳帳、総勘定元帳、売上帳、仕入帳などの国税関係の帳簿、貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類、パソコンで作成した請求書、領収書、納品書などの書類を取引先に紙で渡した場合の控えなどです。

国税関係帳簿 国税関係書類
仕訳帳、総勘定元帳、売上帳、仕入帳など 決算関係書類 取引関係書類
貸借対照表、損益計算書、棚卸表など 請求書(控)、領収書(控)、納品書(控)など自社が発行した書類の写し

また、取引相手から受け取った紙の書類や、データを出力して加筆した書類は、以下に解説する「スキャナ保存」の制度を利⽤してデータ化して保存することができます。

●電子帳簿等保存のルール

パソコンなどで作成した帳簿・書類をデータで保存するためには、記録事項の訂正・削除・追加と内容を確認できるシステムを使う、各帳簿間の記録事項の関連性を確認できるようにする、システム関係書類などを備え付ける、ディスプレイ、プリンタなどを備え付けるといった要件を満たす必要があります。保存のルールの詳細は以下のとおりです。

パソコンなどで作成した帳簿・書類をデータで保存するためのルール
要件概要 帳簿 書類



記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる電子計算機処理システムを使⽤すること
通常の業務処理期間を経過した後に入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算機処理システムを使⽤すること
電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること
システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること
保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
検索要件 取引年⽉日、取引金額、取引先により検索できること
※3
日付又は金額の範囲指定により検索できること
※1
※3
2以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること
※1
税務職員による質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておくこと
※1
※2
※3

※1 :検索要件①〜③について、ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②③の要件が不要。
※2 :「優良」欄の要件を全て満たしているときは不要。
※3 :取引年月日その他の日付により検索ができる機能及びその範囲を指定して条件を設定することができる機能を確保している場合には、ダウンロードの求めに応じることができるようにしておくことの要件が不要。
引用:国税庁「電子帳簿保存法はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存(電子帳簿等保存)【令和6年1⽉以降⽤】」

上記表の「優良」欄の要件をすべて満たしている場合、「優良な電子帳簿」とされます。優良な電子帳簿で保存し、あらかじめ届出書を提出していれば、もしその電子帳簿に関する過少申告が判明した場合にも、過少申告加算税の軽減措置の適⽤を受けられます。

なお、訂正・削除履歴が残らない帳簿の場合でも、以下の要件を満たせば電子データのまま保存することが可能です。

• システムの説明書やディスプレイなどを備え付けている
• 税務職員からの電子データのダウンロードの求めに応じることができる

【任意】②スキャナ保存の要件

スキャナ保存の制度は、紙の書類をスキャンしたりスマートフォンで撮影したりすることにより、電子データに変換し、電子文書として保存するための要件を定めたもので、適用は任意です。要件を満たせば、紙の書類を保管せずに、データで保存することが認められます。

スキャナ保存を行うための手続きは必要なく、任意のタイミングで開始できます。ただし、スキャナ保存の開始日より前に作成・受領した重要書類をスキャナ保存する場合は、税務署への届出が必要です。

スキャナ保存の要件は、改ざんなどを防止するために、利用するシステムや日数の制限などについて細かく定められています。制度を導入する際には、制度に適応したソフトやシステム、サービスを利用すると良いでしょう。

●スキャナ保存の対象となる書類
スキャナ保存の制度の対象となる書類は、取引先から紙で受け取った書類、手書などで作成して取引先に紙で渡す書類の写しなどです。契約書、見積書、注文書、納品書、請求書、領収書など、決算関係書類を除いた国税関係書類が該当します。

●スキャナ保存のルール
スキャナ保存を行うには、入力要件やシステムの要件などを満たす必要があります。詳しい要件は以下のとおりです。

スキャナ保存できる書類は「重要書類」と「一般種類」に区分されます。保存要件は一般書類のほうが緩やかで、入力期間の制限がなく、白黒階調での読み取りも可能です。また、一般書類を、重要書類の要件に従い保存することもできます。

ルール 書類の区分
重要書類
(資金や物の流れに直結・連動する書類)
一般書類
(資金や物の流れに直結・連動しない書類)
書類の例 契約書、納品書、請求書、領収書など 見積書、注文書、検収書など
入力期間の制限 次のどちらかの入力期間内に入力すること
①書類を作成または受領してから、速やか(おおむね7営業日以内)にスキャナ保存する(早期入力方式)
②それぞれの企業において採用している業務処理サイクルの期間(最長2か⽉以内)を経過した後、速やか(おおむね7営 業日以内)にスキャナ保存する(業務処理サイクル方式)
※②の業務処理サイクル方式は、企業において書類を作成または受領してからスキャナ保存するまでの各事務の処理規程を定めている場合のみ採用できます
  一般書類の場合は、入力期間の制限なく入力することもできます(注)
一定の解像度による読み取り 解像度200dpi相当以上で読み取ること
カラー画像による読み取り 赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調以上(24ビットカラー)で読み取ること
  一般書類の場合は、白黒階調(グレースケール)で読み取ることもできます(注)
タイムスタンプの付与 入力期間内に、総務大臣が認定する業務に係るタイムスタンプ(※1)を、一の入力単位ごとのスキャナデータに付すこと
※1スキャナデータが変更されていないことについて、保存期間を通じて確認することができ、課税期間中の任意の期間を指定し、一括して検証することができるものに限ります
※2入力期間内にスキャナ保存したことを確認できる場合には、このタイムスタンプの付与要件に代えることができます
ヴァージョン管理 スキャナデータについて訂正・削除の事実やその内容を確認することができるシステム等又は訂正・削除を行うことができないシステム等を使用すること
帳簿との相互関連性の確保 スキャナデータとそのデータに関連する帳簿の記録事項と の間において、相互にその関連性を確認することができる ようにしておくこと (不要)
見読可能装置等の備付け 14インチ(映像面の最大径が35cm)以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びに操作説明書を備え付けること
  白黒階調(グレースケール)で読み取った一般書類は、カラー対応でないディスプ レイ及びプリンタでの出力で問題ありません(注)
速やかに出力すること スキャナデータについて、次の①~④の状態で速やかに出力することができるようにすること
①整然とした形式
②書類と同程度に明瞭
③拡大又は縮小して出力することができる
④4ポイントの大きさの文字を認識できる
システム概要書等の備付け スキャナ保存するシステム等のシステム概要書、システム仕様書、操作説明書、スキャナ保存する手順や担当部署などを 明らかにした書類を備え付けること
検索機能の確保 スキャナデータについて、次の要件による検索ができるようにすること
①取引年⽉日その他の日付、取引金額及び取引先での検索
②日付又は金額に係る記録項目について範囲を指定しての検索
③2以上の任意の記録項目を組み合わせての検索
※税務職員による質問検査権に基づくスキャナデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、②及び③の要件は不要

(注)一般書類向けのルールを採用する場合は、事務の手続(責任者、入力の順序や方法など)を明らかにした書類を備え付ける必要があります(特設サイトにサンプルを掲載しています。)
引用:国税庁「電子帳簿保存法はじめませんか、書類のスキャナ保存【令和6年1⽉以降⽤】」

【義務】③電子取引データ保存の要件

電子取引データ保存の制度は、2024年1月から義務化された制度です。取引に際して、注文書、契約書、領収書、見積書、請求書などに相当する電子データをやり取りした場合に、その電子取引データを保存しなければならないこと、また保存の要件について定めています。

取引書類を電子データで発行した場合は控えを、電子データで受け取った場合はその書類を、要件を満たしたうえで保存しなければなりません。例えば、PDFの請求書を電子メールで送付した、ECサイトの利用後に適格請求書をダウンロードした、見積書をUSBメモリ(記録メディア)で受け取ったといった場合などには、電子取引データの保存が必要です。

●電子取引データ保存の対象となる書類

電子取引データ保存の制度の対象となるのは、電子メール、WEBサイト、クラウドサービス、EDIシステム、記録メディアなどを介して、電子データとして授受した注文書、契約書、領収書、見積書、請求書などの書類です。電子データでやり取りしたものが対象であり、紙でやり取りしたものをデータ化する必要があるというわけではありません。
 
●電子取引データ保存のルール

電子取引データ保存の制度では、「可視性の確保」と「真実性の確保」を満たす必要があります。

可視性の確保
・モニター・操作説明書などの備付け
・検索要件の充足

ディスプレイやプリンタなどを備え付け、日付・金額・取引先で検索できるようにしておく必要があります。ただし、2課税年度前の売上高が5,000万円以下の場合、または電子取引データをプリントアウトするなどして日付や取引先ごとに整理している場合は、税務職員による電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件の充足については不要です。

真実性の確保
・改ざん防止のための措置を講じる

タイムスタンプの付与や履歴が残るシステムでの授受・保存を行うといった方法の他、改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて遵守するという方法を取ってもかまいません。事務処理規程のサンプルは国税庁のWEBサイトに掲載されているので、必要があれば確認してみましょう。

参考:国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」、「電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください【令和6年1⽉以降⽤】」

●検索要件を簡単に満たすための方法はある?
可視性の確保における検索要件は、専⽤のシステムを導入していない場合でも、以下の方法により対応することが可能です。

①表計算ソフトなどで索引簿を作成する
Excelなどの表計算ソフトで索引簿を作成し、その機能を用いて検索を行う方法です。索引簿のサンプルを確認したい場合は、国税庁のWEBサイトをご覧ください。

②規則的なファイル名を付ける
データのファイル名に「日付・金額・取引先」を、例えば「20250131_120000_(株)霞商店.pdf」のように規則性のある形で入力し、特定のフォルダにまとめます。これにより、フォルダの検索機能を活⽤できるようにします。

電子保存で得られるメリット

電子保存で得られるメリット


電子保存によって、主に以下3つのメリットが得られます。それぞれを詳しく見ていきましょう。

業務を効率化できる
データの消失リスクを減らせる
コストの削減が可能

業務を効率化できる

帳簿や書類が電子化されると、書類の整理やファイリングなどの手間と時間が削減できます。また、情報を検索しやすくなるので、欲しい情報をすぐに見つけることが可能になります。ネットワーク上でデータをやり取りすれば、書類の到着を待つ時間もなくなります。

データの消失リスクを減らせる

電子データはバックアップなどをとって、分散管理もできます。書類の紛失や誤って処分してしまうなど、紙の書類に多いトラブルも防げるでしょう。火災や水害の発生時に、データの復旧がしやすいというメリットもあります。

コストの削減が可能

業務で使う書類は膨大になるので、電子化によって大きなコストダウンが望めます。紙の使用量だけではなく、コピーのインク代や保管用のファイル代などのコストも不要になります。書類の整理に必要な人件費の削減にもつながるでしょう。

電子保存によるデメリット

電子保存によるデメリットには、主に以下のような点が挙げられます。

システムや会計ソフト導入によるコスト上昇
運用ルールを策定する必要がある

システムや会計ソフト導入によるコスト上昇

電子帳簿等保存やスキャナ保存の制度では、不正や改ざんの防止を目的に多くのルールが規定されています。これに適応するには、要件を満たせるシステムやソフトの導入が不可欠です。

新たなシステムやソフトを導入する際には、導入費用や維持・管理費がかかり、コスト面に問題を抱える可能性があるでしょう。また新しいシステムの選定から導入までにマンパワーも必要になります。運用するうえではデータ管理やシステム障害への対応を行う必要もあり、担当者の負担が増えることも懸念点のひとつです。新たなシステムやソフトを導入する際は、コストパフォーマンスの他に、効率化が図れるかどうかといった点についても検討すると良いでしょう。

運用ルールを策定する必要がある

電子帳簿保存法の制度に取り組むには、業務の手順を見直したり、運用する際のルールを整備する必要があります。また、要件を満たし、適切に取り組むために、セキュリティ対策に関する社員教育が必要になる可能性もあるでしょう。さらに、新しいシステムやソフトを導入する場合は、それを扱う社員の教育も必要です。

制度を導入したあとの運用に問題が生じないように、導入前に、業務の手順や運用のルール、社員教育についてしっかりと検討を重ねましょう。

電子帳簿保存法に対応しないと罰則が科せられる?

先述のとおり、電子帳簿保存法における「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」の制度の導入については任意で、「電子取引データ保存」の制度は義務化されています。それぞれの制度を導入し、法律に定められた要件を満たしていない場合、または書類などを保存する際に悪質な改ざんや隠蔽などがあった場合は、追徴課税や会社法違反による過料が科せられる可能性があります。

税務調査において、スキャナ保存や電子取引データ保存に関して悪質な改ざんなどがあった場合には、追徴課税額に重加算税が10%加重されます。また、電子取引データ保存の制度に適応しなかった場合、ただちに青色申告の承認が取り消されるということはありませんが、税務調査を拒否するといった行動を取った場合などには、法人税法や所得税法における青色申告の承認取消事由に当たるため注意が必要です。

なお、災害などが起こったために制度に適応できない場合にも、ただちに法律違反となり罰則が科せられるということはありません。

電子帳簿保存法の改正内容

電子帳簿保存法は、これまで改正を重ねてきました。ここでは、2020年までの改正内容について簡単に触れながら、2022年に行われた大きな改定と、2023年(令和5年)税制改正による改定内容について詳しく解説していきます。自社が行っている制度への取り組みが改定された内容に即しているか、今一度確認しましょう。

2020年の改正内容

電子帳簿保存法は適用要件が多く、法律の施行当初は導入に消極的な企業が多かったため、数回にわたる改正によって適用要件が緩和されています。

1998年 電子帳簿保存法制定
2005年 スキャナ保存の規定追加。領収書や請求書は3万円未満に限定
2015年 金額上限の撤廃、電子署名が不要に
2016年 デジカメやスマホでの撮影も可能に
2020年 電子的に受け取った請求書や領収書などの保存要件緩和

2020年の改正内容は以下のとおりです。

⑶ 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
ロ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
※施行規則8条1項

2020年の改正前までは、以下の保存方法のみが認められていました。
1. 電磁的記録を受領した受領者が遅滞なくタイムスタンプを付与する
2. 改ざん防止などのための事務処理規程を作って運用する

しかし、この要件に対応することはたいへん困難でした。そこで、2020年の改正からは以下2点が緩和されました。
3. 発行者のタイムスタンプがあれば受領側は不要
4. 受領者側が自由にデータを改変できないシステムやサービスを使って保存できる

受領者側のタイムスタンプがなくなったことは大きなポイントです。この改正点によって、クレジットカードや交通系ICカードの利用明細が領収書として使えるようになり、電子データ化と生産性向上が容易に実現するようになりました。

・従来
支払い→領収書発行→領収書を撮影して電子化→タイムスタンプ→経費精算システム

・改正後
クレジットカードやICカードによる支払い→利用明細データ→経費精算システム

上記を見てもわかるように、2020年の改正で行われた「電子的に受け取った請求書や領収書などの保存要件緩和」の背景には、キャッシュレス決済の普及があると考えて良いでしょう。

2022年の改正内容

2022年の電子帳簿保存法改正では、3つの区分において、次のような改正が行われました。それぞれについて詳しく見ていきます。

<①電子帳簿等保存の主な改正点>
・税務署長の事前承認制度の廃止
電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、所轄の税務署長による事前承認が必要でしたが、事業者の事務負担の軽減を図るため、不要となりました。

・優良な電子帳簿にかかる過少申告加算税の軽減措置の整備
一定の国税関係帳簿について、優良な電子帳簿の要件を満たして保存を行い、この軽減措置の適用に関する届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出している場合は、その国税関係帳簿に記録された事項に申告漏れがあった場合には、課せられる過少申告加算税が5%軽減されことになりました。ただし、申告漏れについて、改ざんや隠蔽がある場合には、軽減措置は適用されません。

・電磁的記録による保存などが可能となる帳簿の拡大
最低限の要件を満たす電子帳簿についても、正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記録されるものに限り、電磁的記録による保存などが可能になりました。

<②スキャナ保存の主な改正点>
・税務署長の事前承認制度の廃止
電子帳簿等保存の区分に関する改正事項と同様、スキャナ保存の区分においても、税務署長による事前承認が不要になりました。

・タイムスタンプ要件、検索要件などの緩和
タイムスタンプの付与期間が、最長約2ヵ月と概ね7営業日以内とされました。また、電子データの訂正または削除を行った場合に、これらの事実や内容を確認することができるクラウド上などにおいて、入力期間内にそのデータの保存を行ったことを確認できる時は、タイムスタンプの付与に代えることができるようになりました。さらに、受領者などがスキャナで読み取る際の書類への自署が不要となり、検索要件の記録項目については、取引年月日、取引金額、取引先に限定されることになりました。

・適正事務処理要件の廃止
相互牽制、定期的な検査や再発防止策の社内規程整備といった適正事務処理要件が廃止されました。

・不正があった場合の重加算税の加重措置の整備
スキャナ保存を行った国税関係書類に関する電子データに、改ざんや隠蔽などがあった場合には、その不正により生じた申告漏れなどに課せられる重加算税が10%加重されることになりました。

<③電子取引データ保存の主な改正点>
・タイムスタンプ要件、検索要件の緩和
「スキャナ保存」の区分に関する改正内容と同様に、タイムスタンプの付与期間が最長約2ヵ月と概ね7営業日以内に変更され、検索要件の記録項目が取引年月日、取引金額、取引先に限定されました。また、基準期間の売上高が1,000万円以下の事業者は、税務職員による電子データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件のすべてが不要とされました。

・適正な保存を担保する措置の見直し
申告所得税や法人税における電子取引データの取り扱いについて、その出力書面などの保存をもって、電子取引データの保存に代えることができなくなりました。また電子取引データの保存に際して、改ざんや隠蔽があった場合は、それにより生じた申告漏れなどに課される重加算税が 10%加重されることになりました。

2023年の改正内容

ここでは、2023年度(令和5年度)税制改正による電子帳簿保存法の改定内容について、3つの区分ごとに解説していきます。

なお、2024年度(令和6年度)の税制改正による改定はありませんでした。2025年度(令和7年度)税制改正による改定内容の概要は、以下のとおりです。

2025年度(令和7年度)税制改正による改定内容の概要
・電子取引データに関連する改ざんや隠蔽など行為について、重加算税を10%加重する措置の対象から、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用し、一定の要件に従った保存が行われている電子取引データを除外(令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用)。
・青色申告特別控除の控除額65万円の適用要件について、優良な電子帳簿の保存または電子申告を行っていることの他、上記システムを使用し、一定の要件に従った電子取引データを保存している場合にも適用できる(令和9年分以後の所得税について適用)。

それでは、2023年度(令和5年度)税制改正による電子帳簿保存法の改定内容について見ていきましょう。ここでご紹介する改定内容は、2024年(令和6年)1月1日以降に適用されました。

<①電子帳簿等保存の主な改正点>
・「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の対象となる帳簿の範囲の見直し
「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の適用を受ける場合の、優良な電子帳簿を作成しなければならない帳簿の範囲が、以下のように見直されました。
見直し前 見直し後
①仕訳帳
②総勘定元帳
③その他必要な帳簿(すべての⻘⾊関係帳簿)
①仕訳帳
②総勘定元帳
③その他必要な帳簿(以下の記載事項にかかるものに限定)

「見直し後」の③における記載事項
帳簿の具体例
売上げ(加工その他の役務の給付等売上げと同様の性質を有するものを含む。)その他収入に関する事項 売上帳
仕入れその他経費(法人税は、賃金・給料・法定福利費・厚生費を除く。)に関する事項 仕入帳、経費帳、賃金台帳(所得税のみ)
売掛金(未収加工料その他売掛金と同様の性質を有するものを含む。)に関する事項 売掛帳
買掛金(未払加工料その他買掛金と同様の性質を有するものを含む。)に関する事項 買掛帳
手形(融通手形を除く。)上の債権債務に関する事項 受取手形記入帳、支払手形記入帳
その他の債権債務に関する事項(当座預金を除く。) 貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿
有価証券(商品であるものを除く。)に関する事項(法人税のみ) 有価証券受払い簿(法人税のみ)
減価償却資産に関する事項 固定資産台帳
繰延資産に関する事項 繰延資産台帳
引用:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜」

<②スキャナ保存の主な改正点>
・解像度、階調、大きさに関する情報の保存要件の廃止
スキャナで読み取った際の解像度、階調、大きさに関する情報の保存が不要になりました。ただし、スキャナで読み取る際の解像度(200dpi以上)や階調(原則カラー画像)などの要件に変更はありません。

・入力者情報の確認要件の廃止
スキャナ保存を行う際に記録事項の入力を⾏う者、もしくはその者を直接監督する者に関する情報を確認できるようにしておかなければなりませんでしたが、この対応が不要になりました(電子取引データ保存についても同様の変更)。

・帳簿との相互関連性の確保が必要な書類の整備
スキャンした際に、帳簿と相互に関連性を確認できるようにしておかなければならない国税関係書類が、「重要書類(資金や物の流れに直結・連動する書類)」に限定され、「一般書類(資金や物の流れに直結・連動しない書類)」については相互関連性の確保が不要になりました。

<③電子取引データ保存の主な改正点>
・検索機能を不要とする対象者の見直し
検索機能を不要とする対象者の範囲が、基準期間の売上高が1,000万円以下から5,000万円以下の場合に拡大されました。また、対象者に、電子取引データを印刷した書面を、取引年月日や取引先ごとに、提示できるように整理している事業者が追加されました。

・宥恕措置の廃止
2022年度(令和4年度)税制改正で措置された「宥恕措置」が、2023年(令和5年)12月31日をもって廃止されました。

・新たな猶予措置の整備
保存要件に従って電子取引データを保存できなかったことについて、所轄の税務署⻑が相当の理由があると認める場合、税務調査などの際に電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合などには、改ざんや隠蔽の防止や検索機能の要件を満たした保存の必要はなく、単に電子取引データを保存しておくことが認められるようになりました。

電子帳簿保存法に対応するなら経費精算システム「ConcurExpense」

この記事では、電子帳簿保存法の3つの区分や要件、改正内容などについて紹介し、具体的な対応方法やメリット・デメリットについて解説しました。

コストカットや効率化は、ビジネスシーンにおける常時の課題です。電子帳簿保存法に沿って業務を整えれば、帳票類の電子保存が実現します。そのためにも、事業主や経理部門の担当者は、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入を検討してみましょう。

電子帳簿保存法に対応する際に、まず導入を検討したいのが「コーポレートカード」などの法人カードです。法人カードを使って経費を決済すれば、WEB上に利用明細がまとめられるため、そのまま領収書代わりにできます。追加カードを発行すれば、社員による立替精算も発生しないので、経費精算処理全体の流れを効率化することも可能です。

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なお、帳簿や書類をスムーズに電子化するためには、経費精算システムを導入する必要があります。「Concur Expense」は、法人カードの利用データを自動で連動できるため、業務の効率化と電子化を同時に実現できます。読み取り機器に交通系ICカードをタッチするだけで、経路と金額のデータが移行されるため、交通費の清算も簡単です。

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