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輸出品に対する消費税はどうなる?免税となるための条件と税金の還付
では、輸出が多い事業者が免税を受けるためにはどのような手続きを踏めばいいのか、また会計処理をする場合はどのようにすればいいのかについて説明します。
輸出取引に関する消費税とは
まずは、消費税の基本や免税となる取引について解説します。
消費税の基本
消費税が課される条件は以下のとおりです。
1.日本国内で発生した取引
2.事業者が事業として行った取引
3.対価を得て行われる取引
4.物品の販売やサービスの提供
消費税は消費者が負担するものですが、実際に納付するのは物品の販売やサービスを提供する事業者であり、税金を負担する者と実際の納付をする者が異なる性質があります。
消費税の計算の方法は、基本的には以下のとおりです。
【消費税の支払額 = 課税売上にかかる消費税 - 課税仕入にかかる消費税】
すなわち、売上にかかった消費税と仕入や経費にかかった消費税をさし引いた金額を納税することになります。
輸出する商品は消費税が免税
では、輸出する商品には消費税はかかるのでしょうか。結論から言えばかかりません。なぜならば、消費税の課税は原則として国内で行われる商品の販売やサービスの提供に対して行われるためです。国外との取引である輸出に対して消費税を課税するのは、適当ではありません。商品を輸出する場合、その売上にかかる消費税については免税となります。
消費税が免税となる輸出取引に該当するもの
消費税が免税となる輸出取引にはどのようなものがあるのでしょうか。一般企業において免税となる取引は2通りに分けることができ、(1)通常の輸出、(2)免税店における販売があります。それらについて説明します。
(1)通常の輸出
消費税が免税となる輸出取引の例は以下のような取引です。
・国内からの輸出として行われる資産の譲渡または貸し付け
・非居住者に対する特許権、商標権、著作権などの無体財産権の譲渡または貸し付け
・非居住者に対する役務の提供
ここでいう非居住者とは、基本的に日本国内で住所や住んでいる場所を持たない人を指します。すなわち、輸出取引は、日本国内にある商品などを外国人や外国の会社等外国にいる人に提供する取引のことです。ただし、相手が外国人などであっても商品の引き渡しや役務の提供などが国内で行われるものについては免税とはなりません。
(2)免税店での販売
直接輸出の手続きなどをとらない場合でも、免税店で非居住者に対して、免税対象物品を一定の方法で販売した場合は、消費税が免税されます。免税対象物品とは通常の生活に使われる物品であって、同じ非居住者に対して同じ免税店が一日に、消耗品(食料品、化粧品など)については5,000円以上50万円以下、それ以外の商品(家電製品、バッグなど)については5,000円以上販売したものを指します。
輸出のために仕入れた商品にかかる消費税は還付される
では改めて、輸出された商品に関して、それを仕入れるために商品代金と一緒に支払った消費税はどうなるかについて説明します。結論から先に述べると、輸出する商品を仕入れるために支払った消費税は還付されます。
例えば、税抜で1万円する商品(消費税1,000円)を輸出した場合を考えます。支払った消費税は1,000円ですが、輸出取引のため売上にかかる消費税はありません。この取引に関して納付すべき消費税の金額は、
0(円) - 1,000(円) = △1,000(円)
となり、1,000円支払うのではなく、還付されることとなります。
輸出の際の消費税免税および還付の手続き
輸出を行う会社について、消費税が還付される場合があることは先程述べたとおりです。では、輸出を行った際の消費税を免税にする手続きや消費税の還付を受けるために事前、事後に行うべき手続きにはどのようなものがあるでしょうか。また、そのためにはどのような条件が必要となるでしょうか。
輸出を行う業者が消費税の還付を受けるには最低でも消費税課税業者となるべき
輸出をする業者が消費税の還付を受けるなど、消費税法上有利な扱いを受けるためにはどうすればいいのでしょうか。基本的には以下の2つの条件を満たす必要があります。
・消費税課税業者となる
・消費税の課税方式が本則課税(売上と仕入・経費の両方から消費税額を計算すること)であること
消費税課税業者、すなわち消費税の申告を行う業者でないと、消費税の還付を受けることができません。また、消費税の課税方式が本則課税ではない簡易課税の場合、売上のみからでしか消費税の計算が行われません。仮に仕入・経費に係る消費税が売上に係る消費税を超えたとしても仕入・経費に係る消費税を反映することができないため、やはり消費税の還付を受けることができません。
それらの適用を受ける場合の手続きはどのようにすればいいでしょうか。
まず、消費税課税業者となる方法について説明します。消費税課税業者となるのは(ア)2期前の課税売上高(消費税の対象となる売上高)が1,000万円以上であるか、(イ)2期前の課税売上高が1,000万円未満や設立間もない場合であっても消費税課税業者となる手続きしている場合です。
(ア)の条件を満たしている場合は、すでに提出している場合を除き、消費税の課税業者となったことを税務署に伝えるため、消費税課税事業者届出書を税務署に提出します。(イ)の場合は、消費税課税事業者選択届出書を提出することによって、任意で消費税課税業者となります。ただし、この場合、適用開始してから最低2年間は適用をやめることはできません。
次に、課税方式の条件を満たすためにはどうすればいいのか説明します。消費税の課税方式を本則課税にするには、基本的には何もする必要はありません。
しかし、消費税簡易課税制度選択届出書を出して、消費税の課税方法を簡易課税としている場合は、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出して簡易課税の適用をやめる必要があります。ただし、一度簡易課税制度を適用した場合、2年間やめることはできないことになっています。
以上に挙げた手続きは適用する、あるいは適用をやめる会計期間が始まる前までに行う必要があります。
消費税免税事業者はどうなる?
中には現在、消費税の申告義務がない、消費税免税業者で輸出を行おうと考えている事業者もいると思われます。その事業者はどうすればいいでしょうか。
消費税免税業者であるうちは消費税の申告ができないため、還付が受けられる取引があったとしても還付を受けることができません。消費税の還付を受けるためには消費税課税事業者選択届出書を提出して、消費税申告ができるようにしなければなりません。また、簡易課税ではなく本則課税の適用を行うことが必要となりますが、消費税簡易課税制度選択届出書を提出して、簡易課税の適用を受けていなければ何もする必要はありません。
消費税が免税となるために必要な書類は?
消費税が免税となるためには、免税であることを示す書類が必要です。単純に輸出や役務の提供などで免税とする場合に必要な書類は以下のとおりです。
・物品の輸出の場合は輸出許可書、それが発行されない場合は帳簿または書類
・役務の提供、無体財産の場合は契約書(取引する者の住所氏名、日付、対価の額が書かれている必要がある)その他書類
また、免税店において販売したときは、購入記録情報を作成し、その記録を7年間保存しなければなりません。
消費税還付の手続きはいつまでに行えばいい?
消費税還付の手続きは、通常の消費税を納税するときの手続きと同じく、決算後2ヵ月以内に消費税の申告書の提出をもって申告します。なお、その際、通常の申告書に加え、還付申告明細書を作成する必要があります。これは、消費税が還付となる場合、輸出によって還付となる場合はその旨や、主な輸出先の名称、住所、取引金額などを記載して提出します。
消費税は還付となるので、申告書の記載の際は還付する税金の振込先となる口座に関する情報も記載する必要があります。
輸出に関する消費税が還付されたときの会計処理
輸出を行った会社が、消費税の還付金額の確定から還付に至るまで会計処理を行う場合どのような仕訳を切ることとなるのかについて説明します。
消費税抜き方式を採用している場合
経理を税抜方式で行っている場合の仕訳の切り方は以下のとおりです。
(1)消費税の還付金額の確定時
仮受消費税 xxxx / 仮払消費税 xxxx
未収金 xxxx / 雑収入 xxxx
仕訳の切り方は次の通りとなります。まず、仮受消費税と仮払消費税を消し、消費税申告書の作成で求めた還付金額を未収金に計上します。最後に貸借の差額について雑収入勘定に計上します。
(2)還付金が入金された時
現金預金 xxxx / 未収金 xxxx
還付金が入ったときは、未収金を現金預金に振り替える仕訳を切ります。
消費税込方式を採用している場合
経理を税込方式で行っている場合の仕訳の切り方は、以下のとおりです。
(1)消費税の還付金額の確定時
未収金 xxxx / 雑収入 xxxx
税抜方式の場合と異なり、仮受消費税、仮払消費税勘定がないため、単純に還付される金額を雑収入として上げるのみです。
(2)還付金が入金された時
現金預金 xxxx / 未収金 xxxx
消費税税抜方式と同じく、還付金が入ったときは未収金を現金預金に振り替える仕訳を切ります。
国外取引での売り上げは消費税免税に。消費税課税業者が対象となることがポイント
消費税は納付するばかりではなく、場合によっては還付されることもあることもあります。輸出する場合がその一つの例ですが、具体的に何をすればいいのかについての情報はあまりなかったかと思われます。そこで本稿では、消費税についての基本的な説明から始め、手続き、書類の整備、経理方式まで、輸出で免税する場合について説明しました。