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税金・節税対策

棚卸資産評価で使用する低価法とは?原価法との違いも解説

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棚卸資産評価で使用する低価法とは?原価法との違いも解説
低価法とは棚卸資産の評価方法の一つです。低価法を用いることにより、経営上重要な指標である棚卸資産の評価額の実態を把握することができます。棚卸資産評価法と低価法の基礎知識に加えて原価法との違いを解説します。

棚卸資産を評価するための低価法とは?

低価法とは棚卸資産を評価する方法の一つです。資産の取得原価と期末における時価とを比較し、金額の低いほうを棚卸資産の評価額とするものです。

はじめに棚卸資産とはどのようなものなのか。その評価方法について見ていきます。

棚卸資産

棚卸資産とは、いわゆる「在庫」と呼ばれるものです。具体的には以下のものが該当します。

・商品 …販売目的で仕入れたものが、販売されずに残っている
・原材料 …加工目的で仕入れたものが、加工されずに残っている
・半製品・仕掛け金 …加工目的で仕入れたものが、加工途中で残っている
・製品・完成品 …加工が完了したものが、販売されずに残っている
・消耗品 …購入した消耗品などが、未使用のまま残っている

棚卸資産の管理と評価は、経営上重要な意味をもちます。なぜなら棚卸資産は利益を左右し、納税額を左右するからです。

たとえば、ある商品のその年度の売上高が「1,000万円」、仕入高が「800万円」だったとしましょう。その場合、利益は、「1,000万円 - 800万円」で計算し「200万円」とすることが多いです。

しかしこの場合は「在庫」が考慮されておらず、それを配慮する必要があります。期末に在庫として仕入れた商品のうち「100万円」分が残っていたとしましょう。この100万円分の商品はまだ販売されていないのだから、売上には貢献していないことになります。

会計基準の重要な原則として「費用収益対応の原則」があげられます。これは「費用として計上できるのは収益に対応する部分のみ」というものです。この原則からみた場合、上の例で在庫として残った商品の仕入高100万円は、収益に対応していないのだから費用として計上できません。「棚卸資産」として計上しなければならないからです。

したがって、利益を算出するには、棚卸資産100万円を仕入高から差し引いて、「1,000万円 - (800万円 - 100万円)」と計算し、「300万円」としなければなりません。棚卸資産は、貸借対照表の資産の部に「流動資産」として計上されます。

棚卸資産は以上のように利益を左右するため、その管理と評価は経営上重要な課題です。棚卸資産の数量を確認するため、決算前は在庫の詳細を目で確かめながら数えていく「実地棚卸」を行うことが一般的です。

棚卸資産の評価方法

棚卸資産の金額を決定するには、その単価と数量を明らかにしておくことが必要です。数量については実地棚卸で把握することができます。あとは棚卸資産の単価がわかれば、棚卸資産の金額を決定できるわけです。

棚卸資産の単価の評価方法には、以下で見るとおり大きく分けて「原価法」と「低価法」の2つがあります。

棚卸資産を評価する「原価法」と「低価法」の違い

原価法

原価法は、棚卸資産を仕入れたときの原価をそのまま、棚卸資産の単価とするものです。ただし、仕入原価は値動きをするものなどなら、仕入れるたびに異なってくる場合もあります。そこで、それを評価するための方法として、以下の6つがあります。

1.最終仕入原価法
2.先入先出法
3.個別法
4.総平均法
5.移動平均法
6.売上還元法

これらのそれぞれについて概略を見ていきましょう。

1.最終仕入原価法

最終仕入原価法は、最後に仕入れたときの原価を、棚卸資産の原価とするものです。税務署に「棚卸資産の評価方法の届出」をしていない場合には、この最終仕入原価法が自動的に選択されることになります。

最終仕入原価法は計算が簡単なのがメリットです。しかし、棚卸資産のなかに最後に仕入れたもの以外のものが含まれている場合には、計算結果が実態を反映しないケースもでてくることになります。

2.先入先出法

先入先出法は、在庫を最初に仕入れたものから順次払い出されていくと考え、期末時点での棚卸資産の数量分だけ、期末から過去にさかのぼって仕入単価を拾っていくものです。棚卸資産の数量が最後に仕入れた数量より少ない場合は、最終仕入原価法と計算結果がおなじになります。

先入先出法は最終仕入原価法より、より実態に即した計算結果になりやすいのがメリットです。ただし、仕入単価を過去にさかのぼって確認しなければならないため、計算の実務は複雑になりやすいです。

3.個別法

個別法は、棚卸資産一つ一つの実際の仕入単価をそのまま、棚卸資産の単価とするものです。したがって、計算結果が実態を完全に反映することになります。

ただし、大量に仕入れるものなどについてはこの方法では、膨大な手間がかかることになります。通常、宝石や貴金属、不動産など個別性の高い取引について採用される方法です。

4.総平均法

総平均法は、仕入高の合計額を、仕入れたものの数量で割ったものを棚卸資産の単価とする方法です。1年分をまとめて計算すれば、計算は比較的ラクだといえます。

ただし1年分をまとめて計算するのでは、原価計算を年度の途中で行えないことになってしまいます。したがって、総平均法を用いる場合は1ヶ月単位などで区切って計算することが多いです。

5.移動平均法

移動平均法は、仕入れのたびに仕入単価を計算する方法です。売上原価を適時に把握することができるかわりに、計算の実務にかなりの労力が必要となってきます。

6.売上還元法

売上還元法は、棚卸資産の売り値に原価率をかけたものを仕入原価とするものです。原価率は、種類の近い商品ごとにグループ化して決定します。

個別商品の原価を調べる必要がないため、スーパーなど取扱商品が多い場合は労力を大幅に省けることになります。一方、グループ化にそれなりの手間がかかること、およびグループ化の際に恣意性が入る可能性があることがデメリットといえます。

低価法

原価法は、以上で見たとおり仕入原価をそのまま棚卸資産の単価とするものです。しかし、衣料品や電化製品などの場合には、仕入れてから時間がたち新商品・新製品が発売されたりすると、販売価格が下落することがあります。販売価格が下落した場合には、仕入原価を棚卸資産の単価としてそのまま使うと、棚卸資産の金額は実態を反映しないことになってしまうわけです。

そこで用いられるのが低価法です。低価法とは、棚卸資産を販売する場合の時価が、上で見た原価法での評価額より低い場合は、時価を棚卸資産の単価として使用できるというものです。低価法を用いることにより、棚卸資産の評価額は原価法より正確に実態を反映できることになります。

時価として用いられるのは以下のものです。

・売価 …「売価 - 見積追加製造原価(未完成品の場合)- 見積販売直接経費」で計算される「正味売却可能価額」を用います。
・再調達原価 …原材料などの場合は、その時点で再調達するとした場合の原価を用いることもできます。

低価法と原価法のメリットとデメリット

これまで低価法と原価法の概要と違いを解説してきました。この章ではそれぞれのメリットとデメリットを解説します。

低価法のメリット

低価法のメリットは、まず前述のとおり販売価格の下落などを含みこむことができるため棚卸資産の評価額が原価法より実態に即したものとなることです。

販売価格の下落などによる損失は、原価法の場合には、実際に商品などを販売あるいは廃棄するまで表面化してきません。したがって、損失は先送りされるわけです。それにたいして低価法を用いれば、収益性の低下が早期に認識できることになります。

近年の会計基準は、減損会計をはじめとし収益性の低下を早期に認識して損失を先送りしないようにする流れとなっています。それを受けて、企業会計基準委員会が2008年に発表・改定した「棚卸資産の評価に関する会計基準」では低価法が強制適用されることとなっています。

また、低価法のもう一つのメリットとして「節税効果」もあげられます。販売価格が下落した分を損失として計上するため、その分利益が低くなるからです。

低価法のデメリット

低価法のデメリットは、第一に計算に手間がかかることだといえます。低価法を用いるためには、まず原価法で棚卸資産を計算し、次にその時点での時価を調べてから、原価法での計算結果と時価とを比較しなければならないからです。

そのほかに、低価法では、以下もデメリットといえます。

・時価をどのように判断するか検討の必要がある
・時価の判断材料とした資料(注文書やレシート、契約書など)を税務調査対策として保存の必要がある

原価法のメリット

原価法を低価法と比較した場合のメリットは、低価法とは反対に計算の手間がかからないことです。特に、最終仕入原価法は最後に仕入れた際の価格を用いるだけでよいため、計算の実務は容易になります。

原価法のデメリット

原価法のデメリットは、販売価格下落などの損失を早期に認識できないことです。また、損失をその年度に計上しないため、損失が実際に出ている時点での節税ができないこともデメリットだといえます。

低価法適用の場合の会計方法

低価法適用の場合の会計方法には「切放法」と「洗替法」の2つがあります。ただし、法人税申告に際しては洗替法を用いることが義務付けられているため、ここでは洗替法の仕訳方法のみを解説します。

洗替法では、当該商品の価格の切り下げを、商品から直接行うのではなく、「商品低価評価勘定」を設けることにより間接的に行います。また、「評価損」として計上した場合には、翌期首に「戻入益」を計上します。具体的な仕訳は、「期末の帳簿価額 …1,000円」「期末の正味売却価格 …800円(損失200円)」を例に取ると以下のようになります。

・決算整理仕訳

借方 金額 貸方 金額
商品評価損 200 商品低価評価勘定 200

・翌期首
借方 金額 貸方 金額
商品低価評価勘定 200 商品低価評価勘定戻入益 200

このように仕訳を行うことにより、繰り越した商品の帳簿価格は下がらないわけです。

低価法を選定する場合には届出が必要

低価法を棚卸資産評価法として選定する場合には、税務署へ「棚卸資産の評価方法の届出」を提出する必要があります。提出しない場合は、評価方法は法定の方法である最終仕入原価法を用いることが必要です。

ただし評価方法は毎年のように変更することは認められません。一度変更したら、最低でも3年間は継続することが必要です。

低価法で経営実態をより正確に把握できる

低価法を用いることにより、計算のための労力はかかるものの、棚卸資産の実態をより正確に把握できるようになります。また、実際に損失が発生した年度に節税できる効果もあります。低価法を利用して、経営実態の正確な把握に努めましょう。