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ストックオプションの税金には注意!種類別の課税時期と節税方法
ストックオプションの種類と税金
ストックオプションについて、聞いたことがあるものの、そもそもストックオプションがどういうものなのか分からないという方もいると思います。そこでまずはストックオプションがどういうものなのか、どういう種類があるのかという点について解説します。
ストックオプションとは?
ストックオプションとは企業の株式を従業員等に付与する権利を与えることを指します。このストックオプションを行使することで企業の株式を取得できます。
ただし各企業がストックオプションの権利行使するための条件を設定していることが一般的です。主な条件としては、勤務条件、勤続年数、業績条件などがあります。
通常、ストックオプションを行使した際に取得する株式の取得価額は、市場の株式価格より低く設定されています。ストックオプションを権利行使して取得した株式の取得価額と市場における株式の価格との差額がいわゆる、従業員等に対する報酬となっています。
ストックオプションは大きく分けて3つの種類があります。適格ストックオプションと非適格ストックオプションは無償のストックオプションの分類となります。これらの種類に応じて課税される時期について解説していきます。
適格ストックオプションの課税の時期
適格ストックオプションとは、主に次の要件に当てはまるストックオプションのことを指します。適格ストックオプションの要件は細かく多岐にわたるので、ここでは主な要件について記載します。
1.会社法に沿って発行された新株予約権であり無償発行に限る 2.上場株式の場合発行済株式総数の10分の1超(非上場株式の場合は3分の1超)を超えた株式を保有する大口株主とその親族等でない 3.新株予約権の権利行使価額が年間1,200万円を超えない 4.新株予約権の契約において次に掲げる要件が定められていること (1)新株予約権等の行使は付与決議日から2年超10年以内に行うこと (2)権利行使価額は、契約の締結時における額以上であること (3)新株予約権は譲渡してはならないとされていること (4)新株予約権の権利行使により取得した株式は、金融商品取引業者などの営業所等に保管の委託等がされていることです。 |
ここまでの要件を見れば、要件が厳しいということが分かるでしょう。適格ストックオプションは行使時においては課税はなされず、新株予約権を行使して取得した株式を譲渡した時点において課税がなされます。
次に説明する非適格ストックオプションと異なり、ストックオプションの権利行使を行って取得した株式の譲渡を行った場合に、譲渡所得として一括課税されます。そのため課税の繰り延べという整理になり所得税の減免とはならない点について留意してください。
非適格ストックオプションの課税の時期
非適格ストックオプションとは、上記で述べた適格ストックオプションの条件に該当しないストックオプションです。
非適格ストックオプションは、行使して株式を取得した時点、およびその後行使において取得した株式を売却した時点のそれぞれで課税がなされます。
有償ストックオプションの課税の時期
有償ストックオプションとは上記で述べた適格ストックオプションおよび非適格ストックオプションとは異なり、企業が発行しているストックオプションを役員や従業員が当該ストックオプションの発行価額を支払うことにより取得するものをいいます。
これはストックオプションの行使価格や、行使期間並びに好条件を踏まえて自主的に投資を行うか判断することとなります。当該ストックオプションは株価連動型や業績達成型などが一般的であり、これは企業の従業員等に対してインセンティブを与えることを目的として導入する企業が増えてきています。
有償ストックオプションは権利行使して取得した株式を売却するまでは、役員や従業員は当該ストックオプションの払い込みだけしかなく、経済的利益を受けていないことから課税されません。
権利行使して取得した株式を売却したときにはじめて経済的利益を受けるため、その時点において課税がなされます。なお、留意点は、新株予約権の公正価値より低い額で取得すれば経済的利益が発生し取得時に課税される点です。
確定申告における取扱
ここでは、上記で説明した各種ストックオプションについて、所得区分と取り扱いについて説明します。
適格ストックオプションの課税時期は、上記で説明した通りストックオプションの権利行使により取得した株式を譲渡するまでは非課税として取り扱われ課税がなされず、当該株式を譲渡した際に初めて課税がなされます。
この場合における所得区分は一般的に取得した株式を譲渡するのと同様であることから譲渡所得として取り扱われます。株式を譲渡した時点において譲渡所得として取り扱われ課税がなされることから、確定申告を行う必要があり、その際には、株式の売却時における添付書類に加え、新株予約権契約書の写しや、特定権利行使株式分がある場合の計算明細書を添付する必要があるので留意してください。
非適格ストックオプションの課税の所得区分と取扱
非適格ストックオプションは、権利行使時と権利行使により取得した株式を譲渡した時の2つの場合において課税がなされます。
まず、権利行使時において説明していきます。権利行使を行った際には、権利行使時における株価と権利行使価格との差額において経済的利益を受けたと考えるため、当該差額について課税がなされます。
この場合における所得区分ですが、株式発行会社との間で雇用契約またはそれらに準じる関係に起因している場合には、給与所得として取り扱われます。また、退職に起因してストックオプションを取得したと認められる場合には退職所得として取り扱われます。
これに加え、ストックオプションを付与されたものの営む業務に関連して当該権利を取得した場合と認められる場合には、事業所得または雑所得として取り扱われます。その他、いずれにも該当しない場合においては原則として雑所得として取り扱われます。
次に、権利行使を行って取得した株式を譲渡した場合においては、他と同様、譲渡所得として取り扱われるため、詳細説明は割愛します。非適格ストックオプションにおける論点は権利行使時における所得区分の取り扱いとなるため、慎重にどの所得区分に該当するか検討していただきたいです。
有償ストックオプションは、権利行使により取得した株式を譲渡したときに課税され、当該所得区分は、譲渡所得として取り扱われます。
ストックオプションにおいて節税することはできる?
最後に、ここまで説明してきたストックオプションについて節税することが可能であるか説明していきます。結論としては節税というより、所得区分による税金計算に着目することで税金を少なくできると考えられています。
例えば、適格ストックオプションと非適格ストックオプションの違いに着目してスキームを計画することです。具体的には、非適格ストックオプションは、権利行使により取得した株式を譲渡した際に譲渡所得として取り扱われるため、譲渡所得にかかる税率計算だけとなります。
一方、非適格ストックオプションにおいては、権利行使時点において課税され、所得の分類に応じて税金計算が行われ、権利行使後の取得株式の譲渡は適格ストックオプションと同様の取り扱いとなるため、権利行使時点においての所得区分によって、どちらが税金計算上有利になるかシミュレーションを行うことが挙げられます。
しかしながら、非適格ストックオプションの権利行使時における所得区分の判定については、判例事例も多くあることから慎重に検討する必要があります。
ストックオプションの種類ごとの課税の違いを理解しましょう
今回は、ストックオプションの各種類に対する所得の取り扱いや課税時期について説明しました。権利行使時までにおける課税の取り扱いはそれぞれのストックオプションの種類に応じて異なるため、適切に理解することが重要です。
共通点としては、権利行使により取得した株式を譲渡した場合においては、いずれも譲渡所得として取り扱う点です。またストックオプションの所得区分による税金計算を用いた税金額を圧縮することは可能性として考えられますが、相応のリスクもあるため注意が必要です。