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法人税の電子申告義務化に伴うe-Taxの基本と申告の進め方について解説!
法人税の電子申告の基礎
まずは、電子申告が義務化された背景や、対象となる法人を確認していきましょう。
法人税の電子申告が義務化
2020年4月1日以後に開始する事業年度から、一定規模以上の法人は、法人税をはじめとする一定の税目に対して、電子申告を行うことが義務づけられました。
電子申告とは、税務申告書の提出方法の一つです。作成した申告書のデータを、国税であればe-Tax(イータックス)、地方税であればeLTAX(エルタックス)というシステムを使って税務署や自治体に送信します。
電子申告の義務化が取り決められたのは、2018年度の税制改正です。経済社会のICT化に伴い、申告を行う企業の生産性向上や社会全体のコスト削減といった事を目的としています。
この税制改正は義務であるため、適用開始後に、電子申告の義務化の対象となる法人が書面による申告を行えば、その申告は無効とされて無申告扱いになってしまいます。
後になって電子申告で修正申告をしたとしても、申告期限を過ぎていれば無申告加算税の対象となるのです。
例外的に書面申告ができる場合もある
電子申告を実施できないやむを得ない事情があれば、例外的に書面による申告が認められることもあります。書面申告が認められるのは、「災害その他の理由」によって電子申告ができない状態にある時で、国税庁のe-Tax関連WEBサイトでは、具体的に以下のような例が示されています。
・自然災害、サイバー攻撃、停電等により、企業内のインターネット環境に障害が発生し、オンライン手続が一時的に不能になった場合
・経営悪化などによって、インターネットの利用契約を解除した場合
ただし、書面申告をするには、税務署長の事前承認が必要となります。事前承認を受けるには、あらかじめ電子申告が困難である旨の申請書と、その状況を証明するための書類を、所轄の税務署長に提出しなければなりません。
なお、国税の電子申告をしないことが承認されれば、地方税の書面申告の承認手続きを行う必要はありません。
法人税の電子申告が必要な企業
電子申告の義務化が適用される法人は、日本国内の法人のうち、資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人です。ここで言う法人には、株式会社や合同会社、合名会社、合資会社のほか、公益法人や協同組合も含まれます。
なお、1億円を超える法人であるかどうかは、事業年度「開始の時」の資本金等の額で判定されます。事業年度の開始後に減資を行って資本金等の額が1億円以下になっても、その事業年度は電子申告の義務化の対象となります。
また、資本金や出資金の額が1億円以下であっても、相互会社や投資法人、特定目的会社は電子申告が義務化されます。
電子申告対象となる手続き書類
電子申告の対象となる税目と書類は、以下のとおりです。
対象税目 | 対象書類 |
---|---|
・法人税及び地方法人税 ・法人事業税 ・法人住民税 ・消費税及び地方消費税 |
・確定申告書 ・中間(予定)申告書 ・仮決算の中間申告書 ・修正申告書 ・還付申告書 |
なお、申告書の「添付書類」については、電子申告とデータ送付のいずれかを選択できます。「添付書類」とは、法人税の申告書であれば、貸借対照表、損益計算書、株主(社員)資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、租税特別措置の適用に必要な書類などのことです。
これらの書類は、データ化することでe-Taxなどによって電子申告をすることができます。
データ化にはPDF化のほか、以下のものはCSV形式でも提出可能です。
・別表の明細書の中で「内訳」の記載が必要な部分(※)
・勘定科目内訳明細書
・財務諸表
(※)詳細は以下リンクを確認してください。
参考:国税庁ホームページ「CSV形式による提出が認められる明細記載を要する部分がある法人税申告書別表等の一覧」
なお添付書類のみを、光ディスク(DVDやCDなど)に記録し、それを提出する方法も認められます。(申告書のデータは不可)
この場合、設定するファイル名などに指定があるため、光ディスクへの記録を行う際には、以下のリンクを参照してください。
参考:国税庁ホームページ「光ディスク等による提出に当たっての留意事項」
光ディスクの準備や送付の手間を考えると、特に事情がなければ、申告書データと共に添付書類も電子申告した方がよいでしょう。
電子申告のメリット
従来の書面申告から、電子申告に変更することが面倒だと感じる方もいるかも知れませんが、電子申告によって手続きが簡便化されるというメリットもあります。
いつでも申告できる
電子申告であれば、e-Taxなどのシステムを使用できる環境下で、時間と場所を選ばずに申告ができます。
e-Taxには利用可能時間が定められており、以下より確認できます。
参照:国税庁ホームページ「e-Taxの利用可能時間」
署名押印は不要
書面申告では、代表者などの署名押印が必要ですが、電子申告であれば不要です。
担当者が社長のスケジュールに合わせて署名を貰いに行ったり会社印を使うために使用簿を書いたりといった手間もなくなります。
受信通知のメッセージが届く
書面で申告書を郵送する際は、郵送事故や紛失などによって、書類が税務署に受理されないという悪夢のような事態に陥ることもあり得ます。
申告書の不達というトラブル回避のために、申告書の控えと返送用封筒も添えて、税務署から受理印を押してもらった控えを返送してもらったことのある事業者もいるかもしれません。
電子申告であれば、申告書を送信した後、e-Taxなどのメッセージボックスに申告の受信通知が届き、一定期間保存されます。この通知を印刷又はPDF化して保存しておけば、郵送準備や返送された控えの保存が不要となります。
電子納税も利用すればさらに便利
e-TaxやeLTAXを使えば、納税もインターネット上で行うことができます。電子申告と一緒に、電子納税の準備も進めておけば、申告から納税までを一括で終えることができます。
納税の方法は、インターネットバンキングによる電子納税や、事前に税務署へ届出た預貯金口座から引落とされるダイレクト納付があります。
申告と納税の実務負担を減らすためにも、ぜひ電子納税も検討してみてはいかがでしょうか。
法人税の電子申告のやり方
ここまで電子申告の基礎について確認してきました。ここからは電子申告のやり方について解説します。
電子申告の流れ
電子申告は、国税については国税庁のe-Tax、地方税については地方税共同機構によるeLTAXというシステムを使用します。
電子申告を行うためには、あらかじめ会計ソフトなどを使用して申告書のデータを作成し、そのデータをe-Taxなどの電子申告システムで送信します。
ここでは、法人税の電子申告に使用するe-Taxによる申告の流れを解説します。
電子申告の利用準備
e-Taxを利用するには、事前に「利用者識別番号と暗証番号」「電子証明書」を取得する必要があります。
e-Taxで誰でも申告ができてしまうと、第三者が会社のデタラメな申告データを作成して送信してしまう恐れもあります。第三者によるなりすまし申告を防ぐために、国税庁にe-Taxを利用するための「開始届」を提出し、利用者識別番号と暗証番号を発行してもらう必要があります。開始届の提出はオンラインでも可能であり、税理士に代行してもらうことこも可能です。
本人証明に当たる「電子証明書」の取得は、上記とは別に行います。取得方法はいくつかあり、その一つが、マイナンバーカードと専用のICカードリーダーで取得するというものです。
電子申告に必要な「電子証明書」の発行方法は、以下のリンクから詳細を確認ください。
参照:国税庁ホームページ「電子証明書の取得」
なお、電子申告の義務化対象となった法人は、対象となる事業年度の開始から1ヵ月以内に「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を提出しなければなりません。既にe-Taxによって電子申告を行っている法人も提出対象となるため、注意が必要です。
電子申告の方法
電子申告の方法には、以下の二つの方法があります。
・市販の電子申告ソフトを使う
・国税庁の「e-Taxソフト」を使う
次項から、この二つの電子申告方法について解説します。
市販の電子申告ソフトの利用
市販の電子申告ソフトを活用した電子申告とは、市販の会計ソフトで作成した法人税などの申告データを、e-Taxを使って送信するという方法です。
現状、会計ソフト単品で法人税の電子申告ができる製品は少なく、電子申告ソフトを別に利用しなければならない場合がある事に留意が必要です。
法人税の電子申告については、別途電子申告ソフトの利用が必要となります。
国税庁の「e-Taxソフト」を使用した電子申告
e-Taxソフトとは、国が運営する無料の電子申告ソフトです。e-Taxソフトそのものには、法人の決算書や申告書を作成する機能がないため、まずは会計ソフトなどで申告データを作成した上で電子申告を行います。
どの会計ソフトがe-Taxソフトに対応しているかは、ユーザー側で確認しなければなりません。e-Taxソフトを使うには、国税庁のホームページから、e-Taxソフトをダウンロードする必要があります。
参照:国税庁ホームページ「法人でご利用の方」
まとめ
法人税の電子申告義務化について、e-Taxを中心として説明してきましたがいかがだったでしょうか。
なお、義務化された後の電子申告であっても、従来どおり税理士の代理送信は可能なので、電子申告の対応が難しいときは、税理士に相談しましょう。