税務調査とは?対象になりやすい法人・個人、調査の流れ、注意点を解説
税務調査とは?

法人税や所得税、相続税など多くの税金は、納税者の申告に基づいた「申告課税方式」で決定されています。税務調査とは、そうした税額の申告にミスや虚偽がないか、国税庁や税務署が調査を行うことです。全納税者のうち3%前後の法人、1%前後の個人が、毎年税務調査の対象となっています。
税務調査の種類
税務調査の種類は、任意調査と強制調査の2種類に分けられます。
・任意調査
脱税の疑いが薄い法人・個人に対して、申告内容の確認を目的に行われる税務調査です。あらかじめ税務署から日程や内容が通知され、それに則って行われます。日程調整はできますが、正当な理由のない拒絶、妨害行為などは認められません。
・強制調査
脱税の疑いが強い法人・個人に対して、立件を目的に行なわれる税務調査です。犯罪調査の一環であり、国税庁査察部が裁判所の令状に基づいて行います。任意調査のような事前通知はなく、日程調整や拒絶は認められません。
税務調査が入るタイミングは「突然」
税務調査は確定申告の提出期間前後を避け、税務署の人事異動が終わる7月以降に多く行なわれると言われています。ただし、これはあくまで傾向であり、「いつ」「どこで」「誰に」入るかは分かりません。強制調査は事前通知がなく、任意調査も事前通知の2〜3週間後には行われます。突然の税務調査に対処するためには、日頃からの正しい納税申告、そして関連書類の整理が大切です。
調査対象は法人・個人を問わない
税務調査の対象は、確定申告を行った法人あるいは個人です。そのため一般社員や個人事業主、あるいは相続税の納税者なども対象になり得ます。ランダムに対象を選んでいると考える方もいますが、業種や経営状態など様々な基準が設けられているようです。ただし、法人より売上が低い分、個人の方が対象となる割合も低い傾向にあります。
税務調査の対象になりやすい個人・法人の傾向とは?

税務調査は「納税額が正しいか」の確認を目的としており、一定の特徴を満たす個人・法人に対して入りやすい傾向があります。
過去に指摘を受けている
過去の税務調査で指摘を受けた個人・法人は、正しい納税申告がなされているかをチェックされやすい傾向にあります。指摘内容が改善されているかの確認も含め、一定期間後に再び税務調査の対象になることも少なくありません。
売上変動が大きい
売上が増加しているが利益が少ない
納税額は売上ではなく、経費などを差し引いた利益から算出されます。つまり、売上が増えても利益が伴わなければ、納税額は増えません。そのため売上が増加しているにも関わらず利益が少ない個人・法人は、故意またはミスによる利益の過少申告が疑われます。納税額が修正される可能性が高いことから、税務調査の対象にも選ばれやすくなります。
事業規模が大きい
売上が高いほど納税額も高く、ミスによる影響も大きくなります。事業規模が大きい個人・法人はその影響の大きさから、税務調査の対象に選ばれる可能性が高い傾向にあります。
申告内容に不審点がある
税務署から見て申告内容に不審点がある場合、申告ミスや脱税、あるいは不正への加担が疑われます。そのため、以下のような個人・法人には、税務調査が入りやすい傾向があるのです。
・売上に対して経費の占める割合が高い
・同業他社より利益率が低い
・在庫や売掛金が極端に減った
・買掛金や未払金が極端に増えた
・貸借対照表項目に異常な変動がある
・退職金や貸倒損失など大きな一時的損失があった
税務調査の手順と調査のポイントは?

正しく納税申告を行っていれば、税務調査を過剰に恐れる必要はありません。冷静かつ適切に対処するために、税務調査の手順と調査のポイントを知っておきましょう。
調査全体の流れ
1. 事前通知
実際の税務調査の10日から2週間ほど前に、税務署から日程や内容が通知されます。通知される内容は、主に以下のとおりです。
・開始日
・開始場所
・調査目的
・調査対象税目
・調査対象期間
正当な理由があれば、日程の変更を依頼しても構いません。すぐに返答できない場合は、折り返しでの返答も可能です。
2. 調査
会社の規模により異なるものの、税務調査は2~3人の調査員により、1~3日程度かけて行われるのが一般的です。調査はお昼休憩を挟んで午前から夕方まで行われ、その間は質問や要求に応えられるよう、会社の代表者や経理責任者が同席しなければなりません。
税務署の職員は質問調査権を持っており、正当な理由なく質問や検査、提示、提出などを拒むと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。ただし、税務署の職員もまた、営業を停止させたり、威嚇したりしてはいけないという制約も負っており、過剰に厳しい態度を取ることはありません。
3. 調査結果の連絡
税務調査の結果は、1週間から1ヵ月程度で、年度・税目別に連絡されます。問題がなかった場合はその旨の書面が届き、問題があった場合はその内容が伝えられるでしょう。
4. 修正申告書の作成・提出
指摘事項に異論がなければ、修正申告書の作成・提出に進みます。修正申告とは、税務署の指摘を認め、その内容にそって納税額を修正することです。修正申告で納めるのは、主に以下の3つの金額です。
・不足していた税金
・延滞税
・過少申告加算税
不正の内容が悪質だと判断されると、上記に加えて重加算税が課される場合があります。
税務調査でチェックされるポイントは?
税務調査では主に、ミス・不正の起こりやすい以下のポイントがチェックされます。
・売上
売上の金額や計上時期は、税額に大きな影響を与えます。そのため税務調査では、現預貯金の動きや納品書などを元に、売上の計上漏れや計上時期のずれなどがチェックされるのです。
・仕入れ
架空の仕入れをすると経費が上がり、利益が減るぶん税額が少なくなります。仕入れを利用した不正を防ぐため、税務調査では主に、仕入れの実態や経費としての計上時期などがチェックされます。
・在庫・棚卸資産
税額の算出システム上、在庫・棚卸資産が少ないほど売上が減り、税額も少なくなります。また、在庫・棚卸資産は会社内のみで管理できるため、不正の手段として使われることも珍しくありません。これらのことから、税務調査では主に、在庫・棚卸資産の計上漏れ、評価方法などがチェックされます。
・交際費
交際費は経費の一つであり、多いほど利益が減り、税額が少なくなります。そのため、税務調査では主に「私的な費用を交際費として計上していないか」「交際費に分類されない費用を計上していないか」などがチェックされるでしょう。
・人件費
人件費は経費の中でも大きな割合を占める項目であり、多いほど利益が減り、税額が少なくなります。人件費を利用した不正を防ぐため、税務調査では主に「架空の人件費が計上されていないか」「役員の報酬や退職金が適正か」などがチェックされます。
・グループ間取引
グループ内で赤字と黒字を交換すると、黒字を圧縮して税額を故意に少なくできるのです。そうしたグループ間取引による不正を暴くべく、税務調査では主に、グループ間取引の金額や実態などがチェックされます。
参考:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
事前通知が届いたらどう対処すればいいのか?

任意調査の事前通知が届いた場合は、当日に適切な対処ができるよう、あらかじめ準備をしておく必要があります。調査前には何をするべきか、具体的な対処方法を見ていきましょう。
調査書類を準備して取り出しやすい状態に
税務署の指示に応じて、3〜5年分の調査書類を準備し、取り出しやすい状態にしておきましょう。主な調査書類としては、以下のようなものが挙げられます。
・納品書
・領収書の控え
・総勘定元帳
・請求書
・稟議書
・契約書
・議事録
代表者・経理担当者のパソコンの中身を整理しておくと、より安心して税務調査に臨めるでしょう。なお、調査員が必要と判断した書類は、税務署に一旦回収される場合があります。無くなると業務に支障が出る書類は、念のためコピーを取っておくと安心です。
調査中は従業員の会話に注意
先ほども解説したとおり、税務署の職員は、営業を停止させたり、威嚇したりしてはいけないという制約を負っています。そのため、税務調査中は必要以上に緊張せず、一般の従業員は通常通り業務を進めて構いません。
ただし、従業員の不用意な発言は、不正の疑いを招く可能性があります。例えば、「経営陣がよく近くで外食をする」という話が出れば、「交際費に私的な食事代を計上していないか」と疑われかねません。
従業員には、あらかじめ業務外の私語を慎み、聞かれたこと以外には答えないよう指導しておきましょう。そうすれば、より安心して税務調査を迎えられます。
調査前に税理士に連絡を
税理士は税金の専門家であり、税務調査の意味や内容、流れも詳しく把握しています。調査前に連絡すれば、適切な対処法やアドバイスが聞けるでしょう。さらに、調査当日の立ち会いを依頼すれば、一部の質問に代わって回答したりなど、対処をサポートしてもらえます。なお、顧問税理士が「税務代理権限証書」を提出している場合は、顧問税理士にも同じく事前通知がなされます。
参考:国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
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まとめ
税務調査とは、国税庁や税務署が「申告された税額が正しいか」を調査することです。その目的から、大規模な事業者、申告内容や売上に不審点がある法人・個人などに入りやすいといわれています。
税務調査には任意調査と強制調査の2種類があり、任意調査は実施の10日から2週間前に事前通知が入ります。実際に調査を受けた後は、1週間から1ヵ月前後で知らされる結果に従い、必要に応じて修正申告を行うようにしましょう。
なお、税務調査の前には、税務署から指示のあった書類を準備し、税理士に連絡をとっておくのがおすすめです。また、従業員にあらかじめ業務外の私語、質問に関係のない解答を慎むよう促しておけば、安心して税務調査に臨むことができるでしょう。
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