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VUCA(ブーカ)が注目される理由は?予想される動きと組織やリーダーに求められるスキルは?
VUCA(ブーカ)とは?注目される理由
VUCAの意味と注目される理由について詳しく解説します。
VUCAの概要
VUCAとは元々、1990年代後半にアメリカで使われていた軍事用語です。アルカイダによる軍事手法の複雑さから「国と国との戦争」という構図は覆され、戦略を立てることが難しくなりました。そんな予測不能かつ不透明で複雑化した状況をVUCAと呼び、ビジネスシーンにおける現代のような「前例が通用しない」「変化が著しい」「複雑で将来が不透明」という状況をVUCA時代と表すようになりました。
VUCAは以下4つの単語の頭文字から作られた造語です。4つの単語それぞれが意味する状態について解説します。
・変動性(Volatility)
テクノロジーの急激な進歩による変化。IT業界の新技術によって環境は大きく変動し、それに伴い消費者のニーズも短期間で変動すると考えられます。変動スピードは早く、予測も難しくなっています。
・不確実性(Uncertainty)
確信がなく予測が難しい状態を意味し、金融市場などの不透明感を表す際にも使われる言葉です。過去のデータで予測できる範囲を超えるような大きな災害が毎年のように起こっています。唐突に起こる自然災害やそれらによる影響に対しての対応方法を確立させることは困難になっています。
・複雑性(Complexity)
ひとつの課題において原因がさまざまで複雑化しているため、解決方法が単純ではなくなっている状態を意味しています。ビジネスにおいては国による法律の違いや慣習の差などから、求められる対応方法はさまざまです。
・曖昧性(Ambiguity)
情報社会で消費者のニーズも複雑化し、ビジネス構図が曖昧になっている様子を意味しています。今までのやり方が通用しないことも多く、確実な解決方法を見つけづらい曖昧な状態を意味しています。
VUCAが注目される理由と国の動き
ありえないと思われていた事が実際に起こる現代。2008年のリーマンショックや過去に類を見ない自然災害、新型コロナウイルス蔓延など予測もつかないような大きな出来事が次々と起こっています。国の動きとしては2019年に経済産業省から「人材競争力強化のための9つの提言」が出されています。その中でも特に「VUCA時代において経営トップから率先し、組織・企業文化の改革を進めること」という内容が3つの大原則のうちの1つとなっています。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の実行をトップである経営陣が再度意識し、イノベーションの芽を摘むようなことなく改革を進めていくことが求められています。
参考:経済産業省「人材競争力強化のための9つの提言(案)〜日本企業の経営競争力強化に向けて〜」
VUCA(ブーカ)時代に予想される動き
VUCA時代において、今後想定される世の中の動きについて解説します。
想定できない事象が発生する
新型コロナウイルスのような予測不能な感染症のように、今後も想定できないような事象が経済やビジネス、環境問題などにおいて発生すると考えられます。ロシアによるウクライナ侵攻、またそのことによる影響も今後どのように変化していくか予想するのが難しい状況です。日本においては少子高齢化が進み、今後も加速していくと見られていますが、将来においてのさまざまな影響についてはまだまだ予想できていない側面があります。情報収集し、できる範囲での予測を立てて行動することが求められます。
市場の概念を覆すようなイノベーション
破壊的イノベーションといわれる市場の概念を覆すようなイノベーションも生まれています。Uberの配車サービスやNetflix、Airbnbなどが代表的な例です。「タクシーをつかまえる」「レンタルショップにDVDを借りに行く」「ホテルを予約する」という今まで当たり前にあったサービスが覆され新しいビジネス手法が増えつつあります。
これまでの常識と非常識の境目が曖昧になる
コロナ禍によってリモートワークやリモート面接が増え「出社する」という常識は変わりつつあります。有人レジは減ってセルフレジでの会計となり、スマホは一人一台が当たり前に。テクノロジーの進化やその他の要因も重なり、環境は目まぐるしく変わっていきます。少し前まで非常識に思えた出来事も今では常識となり、常識と非常識の境目が曖昧になっていくのもVUCA時代の特徴です。
VUCA(ブーカ)時代のビジネスパーソンに求められるスキルは?
曖昧で不安定なVUCA時代を生きるビジネスパーソンに求められるスキルについて解説します。
高度な情報収集・処理能力
情報が溢れる世の中において常にアンテナを働かせ、最新の情報をいち早くキャッチし処理する能力が求められます。今までの常識に囚われることなく、柔軟に新しい情報を収集し処理することが大切です。インターネットだけでなく顧客や取引先などから得られる情報も貴重なため、コミュニケーション力も必要です。
先端テクノロジーへの理解と経験
テクノロジーの進化によって新たな技術は次々と生まれます。AIやIot、5Gコネクティビティなど、先端技術を情報としてキャッチするだけではなく、理解し実際に活用することが求められます。
不測事態に臨機応変に対応する力や問題解決力
VUCA時代は複雑で曖昧で物事が変動しやすい特徴があります。不測の事態に直面することも少なくないでしょう。従来の方法だと行き詰まる可能性も想定し、問題が起きた場合の対応策をいくつか事前に準備し臨機応変に対応できる問題解決力が求められます。
VUCA(ブーカ)に対応する組織マネジメントとリーダーのあり方
予測不能なVUCAに対応するためにはどのような組織マネジメントとリーダーが必要になるのか、それぞれのあり方について解説します。
VUCAに対応する組織マネジメントのポイント
まずはVUCAに対応する組織マネジメントについて詳しく解説します。
・先端テクノロジーの利活用
AIなどの先端テクノロジーを駆使し、業務の効率化を図ります。人口減少による人手不足への対策や、先端テクノロジーを迅速に利活用することによる新たなイノベーション創出も意識すべきポイントです。
・アジャイル型の経営・開発
アジャイルは「俊敏な」を意味し、アジャイル型開発とは仕様変更を前提に実装とテスト実行を繰り返しながら開発することです。経営や開発に、スピーディーかつ臨機応変な対応が求められます。
・人材マネジメントの刷新
VUCA時代を生き抜くためには、人材マネジメントも刷新する必要があります。常識に囚われずスピーディーで柔軟な対応を実現できる人材の確保、また育成が求められます。
・ステークホルダーへの積極的な発信
株主・経営者・従業員・顧客・取引先など、組織に対して何らかの利害関係を有するステークホルダーへの積極的な発信も重要です。組織を取り巻く環境が目まぐるしく変わるVUCA時代には、現場での臨機応変だけでなくステークホルダーへの発信も組織マネジメントにおいて求められるポイントです。
・OODA(ウーダ)ループを取り入れる
OODAループとは、以下の4つの頭文字を取ったフレームワークです。
Observe(観察)
Orient(状況判断)
Decide(意思決定)
Act(実行)
計画から始まるPDCAサイクルに比べ、OODAループは観察から始まり状況判断→意思決定→実行へと、目の前の課題に対して柔軟かつスピーディーに対応する特徴があります。環境が変化しても、まずは状況を見極めOODAループを意識した組織マネジメントが必要です。
VUCA時代のリーダーのあり方
次にVUCA時代におけるリーダーのあり方について解説します。
・明確なビジョンの設定
将来への予測が難しいVUCA時代において明確なビジョンの設定は必要不可欠です。不規則に変化する環境の中でも一貫した対応をするためには、明確なビジョンを設定した上でリーダーとして柔軟に課題に向き合う姿勢が大切です。
・率先して新しい情報をインプット・アウトプットする
常に情報収集へのアンテナを張り、リーダー自ら率先して新しい情報をインプット・アウトプットすることが求められます。従来の手法に囚われることなく、新しい情報や技術をいち早く取り入れ実行することが求められます。
・データに基づいた客観的な意思決定
主観的な意見や感情に左右されることなく、データや分析結果を元にした客観的な意思決定が求められます。データに基づいた論理的で信頼性の高い意思決定は組織の意思統一を促す上でも大切な要素といえます。
まとめ
昨日までの常識が非常識となるのがVUCA時代です。先行き不透明な環境において、新しい情報に敏感で過去の常識に囚われない柔軟さが求められます。組織としても個々としても新技術は積極的に取り入れ、観察・検証し、課題があれば迅速に対応するOODAループ、またスピード感を意識した働き方こそVUCA時代に求められるスキルです。