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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?導入するメリットを解説
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?
サプライチェーンマネジメントの「サプライチェーン」とは、企業が製品の原材料を調達するところから、完成した製品を消費者が購入するまでのプロセス全体のことです。つまり、サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、この一連のプロセスを最適化させることを意味します。
簡単に挙げるだけでも、サプライチェーンには調達や生産、物流、販売などの工程が含まれます。これら全ての工程の無駄を省き、物流と資金の流れを最適化することは決して簡単ではありません。
しかし、企業のサプライチェーンを最適化すると、業務効率やリードタイムが大幅に改善されることから、最近では多くの企業がサプライチェーンマネジメントに興味を示しています。
サプライチェーンマネジメントの必要性と注目される背景
では、なぜ現代になってサプライチェーンマネジメントが注目され始めたのでしょうか。
主な要因としては、「ビジネスモデルの変化」と「グローバル化」が挙げられます。例えば、最近ではインターネットを活用したECサイトが世界中に台頭した影響で、ニーズのある製品のみを製造・配送するビジネスが主流になりつつあります。特にアパレルや家電、家具などの業界では、このような変化が顕著に表れているでしょう。
また、トラックドライバーをはじめ、物流業界全体の人材不足が深刻化している点も、サプライチェーンマネジメントに注目が集まる要因です。現代では、物流ルートや仕入れ量の適正化などにより、徹底的にムダを省かないと存続できない企業が増えてきています。
つまり、モノを大量生産すれば売れる時代は終わりつつあり、「必要なものを必要な分だけ販売する」ビジネスが浸透してきています。このような時代の変化に取り残されると、企業はたちまち競争力を失ってしまうため、その打開策として最近ではサプライチェーンマネジメントに多くの注目が集まっているのです。
サプライチェーンマネジメントを導入するメリット
企業がサプライチェーンマネジメントを導入すると、具体的にどのようなメリットが発生するのでしょうか。
1.在庫の最適化によるコストカット
サプライチェーンマネジメントを導入すると、原材料の仕入れ量や販路を見直すことになるため、必然的に在庫が最適化されます。つまり、在庫の運送料や場所代を削減できるので、大幅なコストカットが実現可能となります。
また、メーカーと小売業者が販売情報を共有するようなシステムを構築すれば、急激な需要変化に対応することも可能です。メーカー側は過度な在庫を抱えず、小売業者側はムダな運送が不要となるため、サプライチェーンマネジメントは両者にとってメリットが生じる施策となります。
2.人的資源の活用・人材不足の解消
製造工程や物流システムを見直すことで、人材をより有効活用できる点もサプライチェーンマネジメントを導入するメリットです。例えば、ニーズに合わせて製品の製造量を調整すると、工場内で稼働させる人員やトラックドライバーの必要数を減らせます。
そして、余った人員を必要なところに再配置すれば、人材不足の解消や業務の効率化、人材費の削減など、企業にはさまざまな人的メリットが発生するでしょう。
3.低コストで海外進出を狙えるようになる
サプライチェーンマネジメントには、海外進出のハードルを下げる効果もあります。ここまで解説したように、サプライチェーンを見直すとコスト削減やリードタイムの短縮を実現できるため、より低コストで海外進出を狙えるようになるのです。
特に資金や人脈などが限られた中小企業にとって、海外進出のハードルが下がることは非常に大きなメリットといえます。
サプライチェーンマネジメントを導入するデメリット
サプライチェーンマネジメントの導入前には、デメリットも細かく把握しておきたいところです。特に以下で挙げる2点は致命的なデメリットになり得るため、ひとつずつ確認していきましょう。
1.多くの導入コストが必要になる
サプライチェーン全体を見直すとなると、場合によっては高額な設備や機器、システムが必要になります。また、さまざまな分野にIoTやITが導入されている現代では、「IT技術の活用」も欠かせない要素です。
これらのものを万全にそろえられる資金力がないと、サプライチェーンマネジメントを進めることは難しいでしょう。特に中小企業においては、優れたIT人材の確保・教育のハードルが非常に高いため、ITに関する問題は真っ先に考える必要があります。
2.社内全体で意識を統一する必要がある
サプライチェーンマネジメントを進めるには、社内全体の意識を統一する必要があります。それぞれの部署や各工程で情報共有ができなければ、仕入れや物流などの調整が難しくなるためです。
つまり、サプライチェーンマネジメントは、巨大な組織ほどハードルが高くなります。また、実際の施策による負担の増加や、社内に浸透している企業文化によっては、一部の従業員が拒絶反応を示す恐れもあるでしょう。
しかし、そのような従業員も含めて意識統一ができないと、かえって業務プロセスが悪化してしまう可能性もあります。
中小企業におけるサプライチェーンマネジメントの課題とは?
中小経営者がサプライチェーンマネジメントを導入する際には、「中小企業における課題」も事前に把握しておくべきです。実はサプライチェーンマネジメントにはいくつか課題があり、その影響で施策を進められない企業も多く存在しています。
では、前述で紹介したデメリット以外にどのような課題があるのか、以下で詳しく解説します。
1.導入コストだけではなく、システムの保守・運用コストも必要になる
システムの保守・運用コストが常に発生する点は、中小企業にとって軽視できないポイントでしょう。サプライチェーンマネジメントは複数の企業間で取り組むことが基本とはなりますが、それでも導入する設備や機器、システムの内容によっては、継続的に多くのランニングコストが発生することになります。
また、それぞれの企業が異なる管理システムを利用していると、連携作業に多くの手間を費やすことになるので、人的なコストも深刻な問題点になります。このようなコストの問題を解決するには、IoTやクラウドなどの技術を積極的に活用し、運用コストや連携コストを抑えやすい体制を構築することが必要です。
2.サプライヤーの幅を広げる必要がある
大企業に比べると、中小企業のサプライヤーの幅は限られています。例えば、地方の中小企業は仕入先の選択肢が少ないため、なかには仕方なくコストの高いサプライヤーから原材料を調達している企業もいるでしょう。
しかし、サプライチェーンを理想的な形に持っていくためには、サプライヤーも含めた全体の工程を見直す必要があります。つまり、地方企業だからと言って特定のサプライヤーにこだわっていると、スムーズにサプライチェーンマネジメントを導入することは難しいといえます。
IoTなどの発達により、最近では地方でもサプライヤーの選択肢が増えてきているので、中小経営者は広い視野で今後の施策を考えていきましょう。
多くの事例に目を通し、自社に最適な導入方法を見極めましょう
現代ではサプライチェーンマネジメントの必要性が高まっているものの、中小企業に関しては導入を阻む課題がいくつか存在します。ただし、IoTやクラウド、他社のSCMシステムを利用するなど、工夫をすれば導入できる中小企業も多いはずです。
サプライチェーンマネジメントにはさまざまな導入方法があるため、関心のある経営者はより多くの導入事例に目を通し、自社により適した導入方法を見極めていきましょう。