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経営

M&A後のPMIとは?適切にランディング・事業継承をすすめるためのポイント

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M&A後のPMIとは?適切にランディング・事業継承をすすめるためのポイント
PMIとは、M&A後の事業継承プロセスを指す言葉です。今回は、PMIの概要やM&A後のPMIをスムーズに進めるためのポイントについて解説します。

■M&A後のPMIとは?

■M&A後のPMIとは?

まずはPMIの概要や役割、重要性について解説します。

PMIとは?

PMIは、Post-Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、企業の合併(Merger)や買収(Acquisition)が完了した後に、両社の事業やオペレーションを効率的に統合し、相乗効果を最大化するための一連の活動を指します。PMIの主な目的は、M&Aの目的に沿って、組織・文化・システム・プロセスなどの面で両社を効果的に統合し、事業価値を最大化することです。

PMIの役割

PMIの役割を細分化すると以下のような要素にまとめられます。

・ビジョンと戦略の明確化
M&A後の新しい組織のビジョンと戦略を明確化し、組織全体に浸透させることが重要です。

・組織構造の統合
合併や買収後の組織構造を決定し、役割と責任を明確にすることが求められます。

・文化統合
両社の企業文化の違いを理解し、新たな共通の文化を創出することが大切です。

・システム・プロセスの統合
両社のITシステムや業務プロセスを統合し、効率化やシナジー効果を追求することが重要です。

・人事・労務管理
人事評価制度や報酬制度の統合、労働組合との交渉など、人事・労務面での調整が求められます。

・コミュニケーション

内外のステークホルダーへの情報共有やコミュニケーションが重要であり、従業員の不安や疑問を解消し、組織の一体感を醸成することが求められます。

PMIは、M&Aの成功において重要な要素であり、効果的な統合が実現できるかどうかが、M&Aの成果を大きく左右します。

■PMIで整備が必要な6つのポイント

■PMIで整備が必要な6つのポイント

M&A後のPMIでは、以下の6つの要素を結合し、運用する必要があります。

経営管理体制

M&A後において、新たな経営管理体制の構築が重要です。これには、経営陣や役員の選任、役割分担の明確化、意思決定プロセスの確立、統合後の組織構造の設計が含まれます。適切な経営管理体制が整うことで、組織全体の目標に向かって効率的に動くことができます。

人事・労務

M&A後の人事・労務面では、報酬制度や評価制度の統合、従業員の雇用条件の調整、労働組合との交渉などが重要な課題となります。従業員のモチベーションや働きやすさを維持しながら、新たな組織に適応できるように取り組むことが求められます。

人員配置

M&A後の人員配置では、従業員のスキルや能力を考慮し、最適な役割に配置することが重要です。組織の効率や生産性を向上させるために、適切な人材を適切なポジションに配置し、新組織での役割や責任を明確化します。

経理・財務

経理・財務面では、財務報告や税務対応の統合、経費削減やシナジー効果の追求、資本構造の最適化などが重要な課題となります。適切な財務戦略や経理管理が整うことで、組織の経済的な安定性や成長をサポートします。

業務環境・システム

M&A後には、両社のITシステムや業務プロセスを統合し、効率化やシナジー効果を追求することが重要です。これには、情報システムや業務手順の統合、データのマイグレーション、セキュリティ対策の強化などが含まれます。

企業文化・風土

企業文化は、従業員の行動や意思決定に大きな影響を与えます。両社の企業文化を適切に統合することで、従業員のモチベーションを維持・向上させ、組織の一体感を強化することができます。これは、新たな組織での協力関係を築く上で重要な要素です。また、企業文化の違いがコミュニケーションの障壁となることがあります。企業文化を統合し、共通の価値観やコミュニケーションスタイルを確立することで、新組織内での情報共有やコミュニケーションが円滑に行われるようになります。

セゾンフクリコセゾンフクリコ

■PMI完了までの流れ

M&AからPMI完了までの流れについて解説します。

結合方針を決める

まずは、PMIの結合方針を決定します。結合方針は、M&A後の統合プロセスで両社がどのように統合されるべきかを決定するための指針です。経営陣や統合チームがM&Aの目的を達成するために、どのような戦略や手法を採用するかを明確化します。PMIの効率と効果を最大化するために重要な要素で、結合方針の決定後に具体的なランディングプランの策定に進みます。

ランディングプランを策定する

結合方針をもとにランディングプランを策定します。ランディングプランとは、統合プロジェクトの各フェーズがスムーズに移行し、統合プロセス全体が円滑に進行するための具体的な実行計画のことです。M&A後の統合に関するリスクを最小限に抑え、相乗効果を最大限に引き出すことを目的としています。PMIのランディングプランでは、以下のような要素が含まれることが一般的です。

・タイムラインとマイルストーン
統合プロセス全体のタイムラインやマイルストーンを設定し、各フェーズの進捗状況を明確にします。これにより、プロジェクトの遂行状況を可視化し、効果的な管理が可能となります。

・責任者と役割分担
各フェーズやタスクの責任者を明確にし、役割分担を行います。これにより、統合プロセス中のコミュニケーションや意思決定が円滑に行われるようになります。

・リソースと予算
必要な人員や資材、予算を計画し、適切なリソースが確保されるようにします。これにより、統合プロセス中のリソース不足や予算超過のリスクを回避することができます。

・リスク管理

統合プロセス中に発生する可能性のあるリスクを特定し、対策を立てます。これにより、リスクの早期発見と対応が可能となり、統合プロジェクトの成功確率を向上させることができます。

・コミュニケーションプラン
内部および外部ステークホルダーとのコミュニケーションプランを策定し、統合プロセス中の情報共有や認識の統一を図ります。

100日プランを策定する

ランディングプラン策定後、M&A完了後の最初の100日間に実施される統合活動の具体的な計画を策定します。これを100日プランと呼びます。この期間は、新組織が効果的に機能し始めるための基盤を築くための重要なフェーズです。100日プランは、以下のような要素を含めて策定するのが一般的です。

・短期目標の設定
M&A完了後の最初の100日間で達成すべき短期目標を明確に設定します。これには、組織の構造や経営陣の決定、業務プロセスの統合、人事や労務の調整などが含まれます。

・責任者と役割分担
各タスクやフェーズの責任者を明確にし、役割分担を行います。これにより、100日プランの進捗状況を効果的に管理し、コミュニケーションや意思決定が円滑に行われるようになります。

・タイムラインとマイルストーン
100日プランのタイムラインやマイルストーンを設定し、各フェーズの進捗状況を明確にします。これにより、プロジェクトの遂行状況を可視化し、効果的な管理が可能となります。

・リソースと予算
必要な人員や資材、予算を計画し、適切なリソースが確保されるようにします。これにより、100日プラン中のリソース不足や予算超過のリスクを回避することができます。

・コミュニケーションプラン
内部および外部ステークホルダーとのコミュニケーションプランを策定し、100日プラン中の情報共有や認識の統一を図ります。

結合の進捗確認と効果検証

結合方針・ランディングプラン・100日プランを策定した後、プランに合わせて結合施策を実施していきます。この際に重要になるのが、各プロジェクトの進捗を管理することです。日次・週次・月次の進捗確認を行い、遅れが出ている場合は原因を把握して修正するための施策を実施します。また、結合後の効果検証を実施することも重要です。当初想定していた効果が出ていなかったり、トラブルが発生したりした場合は、対策を考え実行します。効果検証は、結合後の運用フェーズと並走する必要があるため、長期的に実施することを想定しておきましょう。

■PMIを成功させる4つのポイント

■PMIを成功させる4つのポイント

PMIを成功させるためのポイントについて解説します。

PMIスケジュールを設定・明確化する

PMIプロセスを効率的かつ効果的に進めるためには、明確なスケジュールと目標を設定することが重要です。スケジュールを設定することで、各フェーズの進捗状況を把握しやすくなり、必要なリソースや責任者が適切に配置されるようになります。また、明確なスケジュールがあることで、関係者が期待される成果や進捗状況について認識を共有しやすくなります。

PMIを実行するための人員配置

PMIプロセスの成功は、適切な人員配置が不可欠です。統合チームには、両社の業務や企業文化を理解し、問題解決能力やコミュニケーションスキルを持つメンバーを配置することが重要です。また、PMIプロジェクトにおける役割分担や責任範囲を明確化し、チーム間のコミュニケーションが円滑に行われるようにすることも重要です。

被買収会社の従業員とのコミュニケーションが重要

M&Aが発表された後、両社の従業員は不安や疑問を抱くことが一般的です。そのため、被買収会社の従業員とのコミュニケーションが重要です。経営陣や統合チームは、従業員に対して統合プロセスの目的や計画を明確に伝え、透明性を確保することが求められます。また、従業員が統合プロセスに積極的に参加できるように、意見やフィードバックを求める機会を設けることも重要です。

経営陣がリーダーシップを持って対応する

PMIの結合方針やランディングプランは双方の経営陣によって策定されます。そのため、経営陣が明確な方針・プランを立てて、各プロジェクトの目的を理解できるように説明し、適切な人員配置でプランを実行する必要があります。方針・プランと経営陣の意見にブレがあると、部下に不安が生まれプロジェクト全体に悪影響を及ぼすため、経営陣がリーダーシップを持って対応する必要があります。

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■まとめ

PMIはM&A後の事業継承プロセス全般を指す言葉です。異なる事業・経営方針・文化を持つ企業をひとつにまとめる行為のため、失敗すると経営に大きな悪影響を及ぼします。M&A後のPMIの流れや方法について知りたい方は、ぜひ今回紹介した内容を参考にしてみてください。