集中購買を透明化したい！購買管理の方法と流れを解説

集中購買とは、本社が一括して材料や部品を購買する手法のことです。中央購買と呼ばれることもあります。集中購買では、個々の営業所や工場の単位では購買を行いません。

集中購買の反対は分散購買です。これは個々の営業所や工場単位で必要な材料や部品を購買する手法のことをいいます。購買方法は、集中購買と分散購買の2つに大別されます。

集中購買の最大のメリットは、材料や部品を大量に購入することで価格交渉をしやすくなる点にあります。仕入れコストを下げられれば、それは利益の最大化に直結します。

また、一括して本社で購買を管理することで、取引条件を有利に設定できることもあります。仕入先との関係性の調整もしやすくなるでしょう。

さらに、購買データが本社に蓄積されるため、データを活用することで、仕入れコストを一元的に分析・管理しやすくなります。購買方法や仕入れ先を見直すことで、仕入れコストを削減することも可能でしょう。単純に管理者の人数が減ることで、人件費のカットにもなります。

一方、デメリットとしては、営業所や工場の状況に応じた臨機応変な購買が難しいことが挙げられます。必要なときに必要な材料・部品が行き渡らないことで、ロスやミスが発生してしまう可能性があります。

また、購買を本社に任せきりにすることで、営業所や工場の自主性が失われることも懸念材料です。購買に無関心になることで、かえって材料や部品の無駄遣いが増え、トータルの仕入れコストが上がってしまう可能性があります。

他にも、営業所や工場ごとの購買を管理する体制を構築しなければならないこと、材料・部品の運搬が必要なことなど、細かな仕組みづくりや調整が必要です。

最近では、全国各地に営業所や工場があり、購買管理に苦戦している企業は少なくありません。購買管理は仕入れコストに大きな影響を与えるものですが、「どこから見直しをかけていいかわからない」「実態を把握している社員が誰もいない」といった理由で、放置されてしまいがちです。

しかし、購買管理の体制を見直し、透明化・効率化をはかったことで、仕入れコストの大幅削減に成功した企業の事例もあります。購買管理をおろそかにせず、自社に合った形を模索し、実践的な取り組みまで落とし込むようにしましょう。

また、最近では、購買管理を透明化することが、商品・サービスの品質向上や企業のリスク低減につながるとする見方もあります。これらは、最終的に企業価値の向上をもたらし、さまざまな側面から企業の存続を支えることとなるでしょう。

具体的に購買管理を見直す方法として、購買をソーシングとパーチェシングという2つステージに分けて考える。それぞれの意味や、見直しポイントを詳しく解説します。

ソーシングとは、「安くて質のいい取引先を選ぶこと」を指します。ソーシングのステージで主にすべきことは、取引先の見直しです。まずは業者を一覧にして洗い出し、どの業者からどの材料・部品を購買しているかを確認しましょう。

重複がある場合、取引先ごとの条件もピックアップして記載します。また、納入までの期間や担当者の対応力など、サービスに関する評価項目も設け、取引先ごとに見える化します。

購買状況が一目で確認できるようになったら、次は条件を整理しましょう。具体的には、「価格交渉の余地はないか」「納入期間の短縮を依頼できないか」といった視点で、一つ一つ見直していきます。

交渉の余地が整理できたら、実際に交渉を行います。この過程で重複している取引先は整理し、取引先の数もスリム化します。

パーチェシングとは、「効率的に購買を運用すること」を指します。パーチェシングは主に社内で実行することであり、ソーシングの次のステージといえます。

パーチェシングですべきことは、社内ルールの明確化と徹底です。社内ルールがすでにある場合は、ルールが実態に沿ったものになっているか、効率性の観点から無駄はないか、ルール通りに運用されているかをまず確認しましょう。発注・検収・支払といった段階別に検討していくと、細かな見落としが生まれにくいです。

ルールを確認したら、必要に応じて内容を見直していきます。品目の選定基準を明確化や、発注・検収・支払の全体を俯瞰できるようにする、過去データをすぐに検索できる等、購買が速やかに正確に実行されるような仕組み作りを行います。

社内ルールがない場合は、担当者の意見も踏まえつつ、ゼロから仕組みを作っていくことになります。担当者が変わってもスムーズに運用されるよう、属人的でない仕組みを作ることが大切です。

その後、ルール通りに運用されるよう現場の整備を行います。例えば購買管理システムの導入や、購買管理マニュアルの作成、上司がチェックする体制づくり等といったことが考えられます。

余力があれば、購買データを蓄積・分析できる仕組みも作っておくことが望ましいでしょう。データを過去にさかのぼって参照しようとすると、膨大な時間がかかってしまいます。分析手法に合った方法でデータを蓄積することで、必要なデータを必要なときにすぐ参照できるようになります。

仕組みづくりが遅れるほど、データの蓄積は遅くなり、貴重なデータが埋もれてしまうことになります。早めに蓄積・分析に着手すれば、今後も状況の変化に応じて臨機応変の購買管理を見直せるようになるでしょう。

購買管理を透明化し、実態をつかんだなら、続いては戦略的にコスト削減や品質向上に向けた取り組みを実施していく必要があります。続いては、購買管理を戦略的に運用する方法について、3つの視点から解説します。

購買管理を戦略的に運用したいと考えるなら、目的を明確化し、プロジェクトとして動かしていくことが不可欠です。現場の実態を把握しているか、営業所や工場との調整能力はあるか、膨大なデータを整理するうえで部下を上手に動かせるかといった視点で、プロジェクトリーダーを決定しましょう。

プロジェクトリーダーには、「購買管理の見直しをしたい」と伝えるだけでなく、その目的まで共有しておくことが大切です。

「購買管理を見直すことで、〇％のコスト削減を目指す」「マニュアルを整備し、品質向上・リスク管理に活かす」「購買管理を企業のブランディングに活用する」といったビジョンを示すことで、プロジェクトリーダーは目的意識を持って動けるようになるでしょう。

データ分析が必要なら、数字を扱うことを得意分野とする社員をアサインしたり、システムへの落とし込みを予定しているならITの知識がある社員をアサインしたり、会計とかかわる部分については経理担当者をアサインしたり、プロジェクトの遂行に必要な人材を集めることも大切です。

また、各現場の担当者にもプロジェクトに加わってもらうことで、現場を動かし、意見を吸い上げやすくなるでしょう。

企業の仕入れには、材料原価となる「直接材」と、販売管理費になる「間接材」があります。直接材とは、建築資材や商品の原材料などです。一方間接材とは、従業員が使うパソコンや椅子、全社的な広告宣伝費などです。

直接材・間接材に分けて、どのような品目があるのか、コスト削減に向けた取り組みはできているか、状況を本社で把握できているか、支出金額の合計はどのくらいかといった情報を整理しましょう。情報を整理した上で、コスト削減の余地がどのくらいあるかを判断し、アプローチするターゲットを決めます。

ターゲットが決まったら、その後は調整や実行段階に移ります。

本社で状況を把握できていない場合、営業所や工場との調整が必要となるでしょう。また、コスト削減についても、営業所や工場の協力を仰ぐことは不可欠です。責任者とのミーティングなどを通じて、コミュニケーションの機会を持つことに配慮しながら、購買管理の改善に努めることが必要です。

ルールは徹底されなければ意味がありません。仕組みづくりを行うだけでなく、仕組みが継続的に運用されるよう、現場教育やチェック体制にも注力することが大切です。

具体的には、仕組みを作った上で、次のようなPDCAサイクルを回していきます。

Plan…購買管理の仕組みづくり、現状の見直し、現場の意見の吸い上げ、ルールの整備
Do…新たなルールを適用して実際に購買を運用する
Check…新たなルールを適用して運用した結果を評価する
Action…評価結果をもとに、改善点を反映させ、実行に移す

大切なのは、「Plan」の時点で「Check」項目を決めておくことです。そうしなければ、運用後の「Check」が滞ってしまいます。「Check」項目を意識しながら運用すれば、ルールの問題点にも気づきやすくなる。また、速やかに「Check」できれば、改善に向けた「Action」も起こしやすくなるでしょう。

PDCAサイクルを回していく中で、自社に最も合った購買管理のあり方がきっと見つかるはずです。

購買管理を見直し、透明化・効率化すれば、購買データをもとに公平な取引を実現したり、仕入れコストを大幅に削減したり、商品・サービスの品質向上をはかったりできます。

売上を伸ばすことも大切ですが、仕入れコストを下げることも、利益最大化につながる重要なファクターとなります。購買管理がスムーズになれば、現場で働く従業員の満足度が上がったり、その先にある顧客へのサービスの品質が上がったりといった効果も期待できます。

購買管理をおろそかにせず、自社に合った仕組みを作って運用できるよう、改善していくことが大切です。