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事業計画書を作るだけではもったいない!社内向けに活用できるポイントをご紹介
一般的には「外部から融資を受けるための書類」とされる事業計画書
株式公開用語辞典によると、「事業計画とは、事業概要・経営方針・事業内容・経営環境・事業展開戦略・財務計画等を3〜5年間(上場までが一般的)策定したもの(目標数値)。 事業計画書とはそれらを記した資料」と定義されています。
これに加えて「金融機関や投資家などから事業に対して融資を受けたい事業主が、審査やアピールのために用意する対外的な書類」という見方も、おおむね一般的でしょう。しかしながら、実際に対外的な書類として事業計画書を扱う以外にも活用方法はあります。
社内共有すると方針が周知され事業遂行に役立つ
事業計画書には特に法定の書式などはありませんが、事業の概要や収支計画だけでなく、方針や展開戦略なども盛り込まれるのが一般的です。これらは事業を遂行するにあたって社内のメンバーとあらかじめ共有しておきたい情報ともいえます。
社内向け事業計画書に載せておきたい8つの項目
続いて、社内向けの事業計画書にはどんな項目を記載すればよいかについてご説明します。
ここでは、日本政策金融公庫のWebサイトから社内向けに取り上げたい項目をピックアップしてご説明します。
・事業計画書(中小企業経営力強化資金用)の書式
・事業開始時の利用者を対象とした創業計画書の書式
日本政策金融公庫のWebサイトでは他にも、資本制ローン利用者を対象とした事業計画書や生活衛生貸付の振興事業貸付利用者を対象とした事業計画書など、企業の属性や受けたい融資の種類によって多数の書式が提供されています。
まずはこれらを参考に、自社の状況や社内のメンバーと共有したい情報に合わせて書式や項目を選ぶとよいでしょう。
1.現況
・取扱商品・サービスの内容
・セールスポイント
・販売ターゲット・販売戦略
・競合・市場など企業を取り巻く状況
・現状における強み・弱み
・現状において抱えている課題 など
これらは、既存事業を強化するために事業計画書を作る場合は必須の項目です。新規事業立ち上げの際には必須とまではいきませんが、社内の現状認識をすり合わせ、既存事業と新規事業の立ち位置を確認する意味でも、あらためて挙げることをおすすめします。
2.新規事業の概要
・取扱商品・サービスの内容
・セールスポイント
・販売ターゲット・販売戦略
・競合・市場など企業を取り巻く状況
・予測される強み・弱み
・この事業によって解決される課題 など
新規事業立ち上げに際して作成する事業計画書では、既存事業とは別途に概要をまとめておくとよいでしょう。起業時の事業計画書でも、こちらの項目が適切です。取扱商品・サービスの内容はもちもん、他に挙げた項目も新規事業の進め方に関わる重要なポイントになってきます。
内容についてはじっくり吟味し、場合によってはデータや図表を取り入れて視覚に訴えるなど、伝え方にも工夫するとよいでしょう。
3.課題・重点取組項目
・経営全般:経営戦略の策定、IT化の遅れ、事業の「選択と集中」、事業承継・後継者問題、その他
・売上・収益:営業力の強化、販路拡大、市場の競争激化、商品開発力、採算分析、原価・経費の削減、その他
・人材・マネジメント:管理者層の育成、必要な人材の採用、店舗マネジメントの向上、その他
・財務:設備投資計画の策定、資金繰り計画の策定、売掛金の回収期間長期化、在庫の削減、その他
既存事業を強化するために計画を策定し、事業計画書を作る場合は上記のような「会社経営全般に関わる課題項目」をひとつひとつチェックして確かめるとよいでしょう。
これらの項目を参照した事業計画書(中小企業経営力強化資金用)の書式では、経営全般、売上・収益、人材・マネジメント、財務の各カテゴリで上に挙げた課題項目が図表化されており、あてはまるものに〇をつけた上で、別欄にカテゴリごとの具体策を自由記述するようになっています。
4.必要な資金と調達方法
「必要な資金」については、設備資金・運転資金に分けて内訳と金額を記載します。設備資金の場合は見積もり先も併記するとよりわかりやすいでしょう。
「調達方法」については、自己資金、家族友人など身内からの借入と金融機関からの借入に分けて内訳と借入金の返済方法、金額を記載します。
「必要な資金」と「調達方法」はそれぞれ合計金額を算出し、両者の額がそろうようにしておくとよいでしょう。
5.事業の見通し
・売上高
・売上原価(仕入れ高)
・経費(人件費、家賃、支払利息、その他、経費合計)
・利益(売上高-売上原価-経費合計) など
収支計画書の部分にあたります。「月ごとに1年分」、「事業開始時と1年後の月平均」など必要に応じて図表化するとわかりやすいでしょう。売上高や売上原価を算出した根拠もしっかり記載しておくことをおすすめします。
6.業績推移と今後の計画
・売上高
・売上原価
・販売管理費(人件費、減価償却費)
・営業利益
・営業外収益
・営業外費用
・経常利益
・特別損益
・法人税等
・当期利益
・総資産
・総負債
・自己資本 など
既存事業を強化するために計画策定する場合は、これらの項目を前期実績・今期見込み・計画1期目~最終目標まで年度ごとにまとめて図表化するとわかりやすいでしょう。
7.借入金・社債の期末残高推移
・既存借入金(金融機関別に)
・社債
・新規借入金
・合計 など
こちらも前期実績・今期見込み・計画1期目~最終目標まで年度ごとにまとめて図表化しましょう。
8.定量目標、行動計画など
「定量目標」では、借入負担年数の短縮、経費削減など数値化できる目標を挙げ、「行動計画など」では、定量目標を達成するために取り組む具体策を記載するとよいでしょう。この「定量目標+行動計画」については、1つに絞るだけではなく、いくつか挙げてみることをおすすめします。
資金調達不要でもビジョン確認・共有のために丁寧に作成しましょう
今回は、資金調達用の事業計画書を例にとって説明しました。
事業計画書をアレンジするためには、金融機関には出さなかった内部資料などを加えて、より確かな根拠を持った事業のビジョンが伝わりやすい内容が望ましいです。そうすることで、会社の方向性が明確となり、社員一人一人が自発的に行動するきっかけになるでしょう。
そのためには、具体的なアクションプランを明記し、経営者から社員へのメッセージを盛り込むなど、当初の事業計画書には記載していない内容も加えておくと、なおよいでしょう。ここでしっかりと内容を固め、アレンジすることで社外用の営業資料などにも役立てられます。
社内向け事業計画書は事業遂行における重要な柱
事業計画書のような資料作成は煩雑に思えるかもしれません。しかし、ひとたび十分に作り込んでおけば、社内向けに共有できるのはもちろん、社外向けの説明資料にアレンジすることもできます。
そのうえ、エンドユーザー向けのWebサイトやパンフレットの内容などにも活かすことができるでしょう。事業計画書を作成する際は、提出書類をただそろえるのではなく、資料作成に何度でも使えるひな型を作るつもりで作成するとよいでしょう。