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営業マニュアルの活用で自社の営業力の底上げを!作成のポイントと注意点
この記事では、営業マニュアル作成のポイント、および注意点を紹介します。
営業マニュアルの作成はなぜ必要なのか
営業活動は、サービスや商品を販売する販売活動や、販売調査、販売計画、納品、代金回収、クレーム処理、広告宣伝など、具体的・個別的な活動は多岐にわたります。これら多くの活動を通し、売上を上げることにより、会社の経営を支えることを目的としていることはいうまでもありません。
営業活動の成果を上げるためには、活動の内容を標準化、効率化することが重要です。その際に必要となるのが営業スタッフへの教育です。営業マニュアルは、営業スタッフへの教育効果をより高めることを目的として作成します。
これまでの営業活動により積み上げられたエッセンスがまとめられるため、新人スタッフの役に立つのはもちろんのこと、中堅スタッフが学び直すためにも有効です。また、職務のマンネリ解消のために行うジョブローテーションも、マニュアルがあればスムーズに行えるでしょう。
営業マニュアル作成のポイント
営業マニュアルを作成する際の5つのポイント、および注意点を見ていきます。
まず、営業マニュアル作成時の5つのポイントは以下のとおりです。
1.わかりやすい言葉で作成する
営業マニュアルは、読者が読みやすいこと、および理解しやすいことが重要です。できる限りわかりやすい言葉で作成する必要があります。営業経験が全くない新人スタッフにとっても読みやすく、理解しやすいことが大切になります。
経験者のあいだでは当たり前に使われる社内用語や専門用語は、解説なしで使うのを避けるため、社内用語や専門用語の解説ページを作るのもよいでしょう。また、図や画像、マンガなどを使用して、視覚に訴えるようにするのも有効です。
2.フォーマットは統一する
フォーマットを統一するのも、営業マニュアル作成時のポイントです。マニュアルは、複数の営業スタッフなどで作るケースもあり、執筆者ごとにフォーマットが異なると読みにくく、使い勝手が悪くなりやすいです。
マニュアルのどこに、何が書かれているかが直感的にわかるよう、フォーマットを工夫しましょう。特に、業務のゴールを冒頭で具体的に設定すること、および、いつ、誰が、何を、なぜするかを明記することは重要です。
3.営業シーンに分けてマニュアルを作成する
営業活動には、事前準備やテレアポなどから始まり、初回のアプローチ、顧客の話を聞くヒアリング、自社のサービスや商品の説明をするプレゼンテーション、契約締結に向けたクロージング、契約後のフォローアップなど、多くのシーンがあります。マニュアルは営業シーン別に分けて作成し、営業活動の大きな流れを全体として把握できるページを用意するのも重要です。
4.現場の事例を交えて作成する
営業マニュアルは、現場の事例を交えて作成しましょう。営業活動は、現場の状況により臨機応変な対応が要求されるため、事例はできるだけ多く集めたほうがよいでしょう。
ただし、現場事例を多く盛り込み、雑然としてしまうのでは意味がありません。事例は種類別・場面別に分類して整理し、全体をどのように構成するかをよく検討することが必要です。
5.ブラックボックスをなくす
マニュアルを作る際に大切なのは「ブラックボックス」をなくすことです。ブラックボックスとは、インプットとアウトプットだけがわかっていて、そのあいだのプロセスが不明なもののことをいいます。業務の分業が行われ、専門性が高まるとブラックボックスが発生しやすくなります。
ブラックボックスを解消するには、フローチャートで業務のプロセスを可視化するのがよいでしょう。業務が流れで図示されるため、専門性がないスタッフでも理解しやすくなります。
営業マニュアルの実効性の確認とフィードバックが必須
営業マニュアルを作成する際の注意点として重要なのは、「作って終わり」にならないことです。マニュアルを作ったら、実際に新人スタッフなどに、マニュアルの内容通りに実践してもらうのがよいでしょう。それにより、マニュアルの実効性を確認し、現実に即さない部分についてはマニュアルの修正が必要です。
また、営業活動の現場や業務内容は時間がたつにつれ変化するため、マニュアルの定期的なアップデートも欠かさずに行いましょう。
営業マニュアルの5つのNG
続いては営業マニュアル作成時の5つのNGポイントについてです。
1.なぜ営業マニュアルが必要か明確でない
まず、必要性が明確でない営業マニュアルはNGです。何のために営業マニュアルを作ったのかを社内で明確にしましょう。
最も良くない例は、営業マニュアルを絶対視してしまうことです。マニュアルは本来、職場の仕事を指導員なしで自律的に回せるようにするためにあり、マニュアルの内容はルールとは異なり「絶対」ではないからです。
マニュアルを絶対視してしまうようになれば、マニュアルに縛られて業務がかえって非効率化したり、あるいは「現場はマニュアルとは違う」とマニュアルが利用されなくなったりすることになりがちであるため特に注意しましょう。
2.営業マニュアルの読者の設定が曖昧
読者の設定が曖昧なことも、営業マニュアルとしてはNGです。営業マニュアルは新人スタッフに向けて作られるものと、中堅スタッフに向けて作られるものとがあります。それぞれで、使用する用語も書き方も異なったものとなるため、両者を区別せずに読者を曖昧にしてしまえば、どちらにも伝わりにくくなってしまう可能性があります。
3.内容が偏りすぎて普遍性がない
営業マニュアルが、少数のスタッフの経験と意見に基づいて作られてしまうことがあります。その場合には、内容が偏りすぎて普遍性がない、NGなマニュアルになりがちです。
マニュアルは、できる限り多くのスタッフの経験と意見、および事例を収集し、個人の意見によらない、誰にでも通用するものを目指す必要があります。特に、営業フローやノウハウは、最善・最適であるかについて十分な確認が必要でしょう。
4.営業活動の具体的な進め方が書いていない
精神論や考え方などに偏って、営業活動の具体的な進め方が書いていないマニュアルもNGです。もちろん、「営業の心構え」などを短く記すことは必要ですが、マニュアルは、考え方や体験を開陳するものではなく、具体的な方法を記すものです。豊富な事例に基づいて、営業の最善・最適な方法を詳細に記述することを心がけましょう。
5.マニュアルの存在が周知されていない
営業マニュアルは、往々にして使われなくなってしまいがちです。使われるようにするためには、まずはマニュアルの存在を周知する必要があります。
ですが営業マニュアルが使われなくなるのは、「営業に大切なのは『カンと経験』でありマニュアルではない」との先輩社員の考え方が原因となることもあります。営業マニュアルの目的・必要性を確認すること、あるいはマニュアルのアップデートを行うことも、マニュアルが使われるようにするためには重要な要素だといえるでしょう。
営業マニュアルに記載すべき項目の事例
次に営業マニュアルに記載すべき項目の事例を見ていきましょう。
1.顧客へのアプローチ方法
顧客へのアプローチ方法は、営業マニュアルに記載すべき内容として重要です。自社が実際に行っているアプローチ方法に基づいて記載しましょう。特に近年、顧客へのアプローチで重要になっている、マーケティング部門との連携方法については詳しい記載が必要です。
2.商談時のマナー
営業スタッフにとって、アプローチした顧客からよい第一印象を持ってもらうことは非常に重要です。図や写真・マンガなどを使用し、服装や挨拶、名刺交換など、商談時のマナーについては詳細に記載しましょう。
3.トークフロー
商談時やアプローチ時などのトークフローは、営業マニュアルとしてメインの内容ともいえます。営業シーンごと、あるいは顧客の反応ごとなど複数のケースについて、事例に基づいて記載しましょう。
4.会社が取り扱うサービスや商品の情報
会社が取り扱うサービスや商品の情報も、営業マニュアルには必須です。顧客が抱えている課題別に、どのサービス・商品をどのように勧めるかも記載しておけば、営業マンごとに説明に齟齬が出てしまうこともありません。
5.クレームへの対処法
クレームへの対処法も、クレームの種別ごとにしっかりと記載しましょう。また、クレームなどのトラブル時の連絡経路をはっきりとさせておくことも大切です。
6.顧客のデータ管理方法
顧客のデータ管理方法は、営業マニュアルの重要なテーマの1つです。顧客データが重複しない、あるいは随時確実にアップデートされるためのルールやツールの使用方法を記載し、効率的な管理を営業全体で行っていくことが重要です。
営業マニュアルを作成して営業力を底上げしよう
つい「カンと経験」に頼ってしまいがちな営業活動は、マニュアルを作成することにより全体の実力の均一化が可能です。会社の営業スタンスをスタッフのそれぞれが共有し、最善・最適と考えられる標準化された方法で営業活動を行うことで、スタッフによるばらつきを抑えられます。
営業マニュアルを作成するにあたっては、目的と対象を絞って読みやすく、理解しやすいこと、営業シーンや現場事例を取り入れるなどして具体的であること、個人の経験や精神論などに偏りすぎず普遍的であることが重要です。経営者として、営業マニュアルをしっかり作り、営業力を底上げしていくことが会社の成長にもつながるでしょう。