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BSC(バランス・スコアカード)とは?役割と作り方のポイントを解説
■BSC(バランス・スコアカード)とは?わかりやすく解説
まずは、BSCの概要や目的など基本情報をおさらいしましょう。
BSCの概要
BSCは、経済的な視点だけでなく、顧客視点、業務プロセス視点、学習と成長視点の4つの視点を含んだ経営指標です。4つの視点は、以下のような役割を担っています。
1. 財務視点
経済的な成果をどのように達成するか。売上高利益率、増益率、労働生産性など。
2. 顧客視点
顧客から自社はどのように見えているか。顧客満足度、ブランド認知率、新規顧客獲得率など。
3. 業務プロセス視点
内部の業務プロセスをどのように改善するか。生産性、品質、リードタイムなど。
4. 学習と成長視点
組織がどのように進化し、成長するか。従業員の満足度、スキル開発、知識の共有など。
これら、4つの視点ごとに必要なアクションと目標を設定し、達成に向けてBSCを運用していきます。これらの視点はそれぞれ独立している訳ではなく、お互いに影響を与え合いながらビジョンと戦略の成功のために運用されます。また、企業によっては、これらの4つの視点だけでは経営指標として不十分な可能性があります。企業の事業・戦略・目標・ビジョンなどに合わせて、適切なBSCを設定することが大切です。
BSCを作る目的
BSCの主な目的は、組織の戦略を明確にすることと、その実行を支援することです。上述した4つの視点に合わせて具体的な目標とアクションプランを設定し、あらゆる事業活動に落とし込むことで、企業の長期的な成長や経営改善が実現できます。
BSCによって得られる効果
BSCを設定し運用することで、企業には以下のような効果が得られます。
1. パフォーマンス改善
BSCには各目標に対するパフォーマンス指標が設定されています。これにより企業は、自分たちのパフォーマンスがどの程度であるのかを定量的に把握することができ、改善点を見つけ出すことが可能になります。
2. 組織全体の一体感
BSCは、組織全体の目標と部門ごとの目標を一致させるためのフレームワークです。これにより組織全体の一体感を醸成し、共通の目標に向かって努力する組織文化を作り出すことができます。
3. 戦略の明確化と共有
BSCは、組織の戦略を明確にし、それを具体的な目標とアクションプランに変換するツールです。これにより戦略が全組織に共有され、各部門や職員が自分たちの役割を理解し、戦略的な行動をとることが可能になります。
4. 長期的な視点の強化
短期的な利益だけでなく、長期的な成功を実現するための要素(顧客満足、業務プロセスの改善、従業員の成長等)を考慮に入れることで、企業は持続的な成長と競争力強化を達成することができます。
■BSC(バランス・スコアカード)を作る際にチェックしたい4つのポイント
BSCは、事業の命運を左右する非常に重要な指標です。経営指標としてBSCの導入を検討している方は、慎重に各項目の目標とアクションを設定しましょう。特に、以下のポイントは必ず漏れがないように進めてみてください。
財務からの視点を取り入れる
組織の経済的な成功は、BSCの一部として非常に重要です。財務視点からの目標は、収益性、成長、株主価値などの財務的な指標に関連しています。具体的な指標を設定し、それらがどのように組織の全体的な戦略と整合しているかを評価することが重要です。
顧客からの視点を取り入れる
顧客満足は、組織の成功に直接関連しています。これには、顧客満足度、顧客保有率、顧客獲得率、顧客忠誠度などの指標が含まれます。これらの指標は、組織が提供する価値が顧客にどのように受け取られているかを反映しています。
業務内容を踏まえた視点を取り入れる
これは組織の内部プロセスに焦点を当て、その効率性と効果性を評価します。主要な指標には、プロセスの効率性、生産性、品質管理、新製品の開発時間などが含まれます。これらの指標は、組織が日々の業務をどのように遂行しているかを評価します。
組織能力を踏まえた視点を取り入れる
これは「学習と成長」の視点であり、組織とその従業員が如何に進化し続けるかを評価します。主要な指標には、従業員満足度、従業員のスキル開発、リーダーシップ開発、知識管理の効果性などが含まれます。これらの指標は、組織が変化と成長を支えるために必要な人的資源をどの程度効果的に管理しているかを評価します。
以上の視点を全て取り入れることで、バランスの取れたパフォーマンス評価が可能となります。
■BSC(バランス・スコアカード)導入のステップと運用の注意点
BSCを導入する際のステップと、導入時の注意点について解説します。
BSCの導入のステップ
BSCの導入は以下の5つのステップで進めていきます。
1. 将来的なビジョンを設定する
BSCを設定する最初のステップは、組織のビジョンを明確にすることです。これは組織がどこに向かいたいのか、その道のりをどう進むのかを理解する基盤となります。
2. BSCの4つの視点・KGI (Key Goal Indicators) の設定
最初に設定したビジョンを踏まえて、財務・顧客・業務プロセス・学習と育成というBSCの4つの視点から、企業の強みや弱みを分析し、具体的な戦略マップに落とし込んでいきます。また、それと合わせて、最終的に到達したいゴール「KGI」を設定します。
3. CSF (Critical Success Factors) の設定
CSFとは、KGI達成に必要な具体的なアクションのことです。BSCの各視点ごとにCSFを設定することで、組織としてやるべきことが明確になります。
4. KPI (Key Performance Indicators) の設定
KPIは組織のパフォーマンスを測定するための数値目標のことです。CSFにて設定したアクションの進捗や達成度合いを把握するために活用します。KPIの数値を達成できるように、各メンバーはアクションを実行していく必要があります。
5. 行動計画の作成
1〜4までに設定した内容を行動計画としてまとめます。
BSCを運用する際の注意点
BSCを確実に運用するためにも、以下のポイントに注意してください。
・BSCの周知と実務への落とし込み
BSCを有効に機能させるためには、全てのステークホルダーがBSCを理解し、それを日々の業務に取り入れる必要があります。そのためには、組織全体にBSCを周知・共有し、各メンバーが実務に落とし込まなければなりません。周知や実務への落とし込みが不十分だとBSCが機能しなくなるため、理解を深めてもらうためのワークショップなどの実施を検討してみてください。
・進捗のチェックと管理・分析
BSC導入後は、KPIの進捗状況のチェックを徹底しましょう。進捗の状況(達成か未達成か)に合わせて、アクションの内容や数値目標が間違っていないかを分析し、必要に応じて改善策を実行することが大切です。KGIを確実に達成するためにも、進捗のチェック・管理・分析を欠かさずに行いましょう。
・結果のフィードバックを実施する
進捗のチェック・管理・分析した結果は、必ずメンバーに共有しましょう。結果をフィードバックすることで、メンバー全員が目標達成に向けての現在地を知ることができます。また、改善が必要なアクションに関してもフィードバックを行い、アクションの精度を高めていきましょう。
■まとめ
BSCは、企業の長期的な成長・成功の実現に欠かせない経営指標です。企業活動のすべてに影響を与える指標となるため、作成は慎重に行い、運用にも細心の注意を払う必要があります。BSCの導入を検討している方は、ぜひ今回ご紹介した内容を参考にしてみてください。