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中小企業のテレワーク導入は難しい?テレワークの課題と導入のポイント
中小企業のテレワーク導入率はどの程度なのか
最初に、中小企業のテレワーク導入率はどの程度なのかを見てみましょう。総務省『令和3年版 情報通信白書』によれば、企業のテレワーク導入率は下図のように推移しています。
図の通り、テレワーク導入率は大企業と中小企業で大きな差があるのが現状です。
出典:総務省『令和3年版 情報通信白書』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd123410.html
中小企業のテレワーク導入が遅れている理由
中小企業のテレワーク導入が遅れている理由を見てみましょう。
テレワークの導入が遅れている業種
総務省『令和3年版 情報通信白書』によると、業種別のテレワーク実施状況は下図の通りです。
情報通信業と学術研究、専門・技術サービス業のテレワーク導入率が4割を超えて飛び抜けて高くなっている一方、医療、介護、福祉や運輸・郵便業が非常に低い実施率となっています。
テレワークでの対応が難しい業務とは
テレワークでの対応が難しい業務とはどのようなものでしょうか。まず、建設業、製造業、運輸・郵便業などの現場での業務や、卸売・小売業、サービス業などでの接客対応は、テレワークで行うことはできません。テレワークの導入が可能なのは基本的にはオフィス業務です。
オフィス業務でも、業務の種類は大きく分けて以下の3つがあります。
・デスクワーク …自分のデスクで行うスケジューリングや資料・レポートの閲覧・作成、情報検索、メール送受信、決裁などの業務
・ミーティング …社内や他社、あるいは顧客などとの打ち合わせなどの業務
・オペレーション …実物や実機などを使用して行う業務。製造・制作や検査、出荷、配送、あるいは顧客へのデモンストレーションなどの業務
このうちデスクワークについては、テレワーク導入が可能でしょう。資料やレポート、情報、メール、決裁文書などがデジタル化されていれば、オフィス以外の場所からでもインターネット回線とパソコンを使用して閲覧、編集、作成などができるからです。
また、ミーティングについてもテレワークを導入できます。Web会議システムを利用すれば、相手の顔を見ながら複数の人と打ち合わせができ、またビジネスチャットを利用すれば、テキスト文字による簡単な打ち合わせも可能です。
ただし、オペレーションに関しては、現状ではテレワーク導入は困難でしょう。実物や実機を使用するには物理的な操作が必要です。将来的に遠隔操作ができるロボットなどが導入されればテレワークも可能ですが、現状ではロボットはあまり導入されていません。
以上のように、中小企業においては現場での業務や接客対応、オペレーション業務など、テレワークに対応できない業務が多くあり、これが中小企業のテレワーク導入が遅れている大きな要因だといえます。
中小企業のテレワーク導入における業務内容以外の課題とは?
中小企業のテレワーク導入が遅れているのは、テレワークに対応できない業務が多くあることが1つの要因でした。ここでは、東京商工会議所の資料から、テレワーク導入についてそれ以外にどのような課題があるかを見てみましょう。
出典:東京商工会議所『新型コロナウイルス感染症への対応について』
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1021763
上の図は、従業員規模別の、中小企業がテレワークを導入するにあたっての課題を示したものです。グラフで右から2番目の「テレワーク可能な業務がない」が、回答数としては最大になっています。
そのほかに、中小企業がテレワークを導入するにあたっての課題として、以下の3つがあげられています。
・社内体制が整っていない(仕事の管理・労務管理・評価など)
・パソコンやスマホ等の機器やネットワーク環境(LAN等)の設備が十分ではない
・セキュリティ上の不安がある
これらの課題を解決することが、中小企業がテレワークを導入するにあたって重要だといえるでしょう。
中小企業がテレワークを導入するために必要なこと
中小企業がテレワークを導入するために必要なことを、上で見た3つの課題のそれぞれについて見ていきましょう。
1. 社内体制を整える
社内体制を整えるためには、
・情報セキュリティポリシーの策定
・労務管理方法の検討
・導入のための教育・研修
が必要です。
テレワークの導入に際しては、多かれ少なかれ社内の情報が社外に持ち出されることになります。したがって、守るべき機密情報をまず明確にするとともに、機密情報を扱う対象者の範囲も明らかにすることが必要です。
また、テレワークを実施する際にも、労働基準法は守らなければなりません。変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制、あるいは事業外みなし労働時間制などを活用し、就業規則にテレワーク勤務に関する規定を定める必要があります。
教育・研修については、テレワークの目的や必要性、テレワーク時の業務管理や評価の方法、社内・社外でのコミュニケーションの方法、およびテレワークに必要なツールの操作方法などを、対象となる社員に理解させることが重要です。
2. パソコンやネットワークなどの環境を整備する
パソコンやネットワークなどの環境(ICT環境)整備は、ハードウェアとソフトウェアの両面が必要です。
ハードウェアの環境については、現在の状況を確認の上、必要に応じて新たな機器を導入することになります。社員が使用するパソコンは、会社のものをただ持ち帰ってしまえば、盗難や紛失等による情報漏えいが発生する恐れがあります。「リモートデスクトップ方式」や「仮想デスクトップ方式」を使用すれば、作業内容はオフィスにある端末またはサーバに保存され、手元にデータが残らないため、セキュリティ上有利になるでしょう。
ソフトウェアに関しては、以下のものが必要となる代表的なアプリです。
・Web会議
Web会議は、Web上で会議ができるアプリで、顔を見て、声を聞きながら会議ができ、さらに必要に応じて資料の共有も可能です。
・グループウェア
グループウェアは、社内外の関係者と情報共有をするためのアプリで、スケジュールや掲示板、ファイルなどの共有が可能になります。
・ビジネスチャット
ビジネスチャットは、テキスト文字を使用してリアルタイムで情報交換ができるアプリで、Web会議とは異なり、作業をしながら手軽なコミュニケーションを取ることができます。
・オンラインストレージ
オンラインストレージは、多数のファイルを整理して共有するアプリです。ただし、セキュリティの関係上、使用を禁止するほうがよいケースもあります。
3. セキュリティ上の不安を解消する
セキュリティ上の不安を解消するには、以下の対策を講じることが有効です。
・パスワードを複雑にし、多要素認証を使用する
・OSやソフト、アプリなどを常に最新のバージョンにアップデートする
・不審なメールに注意し、添付ファイルは安易に開かない
・通信を暗号化する
・パソコンなどの端末が盗難・紛失しないようにする
・社外の人がいるところで画面を覗き見られたり、話し声を聞かれたりしないようにする
・アクシデントがあった場合の連絡手順を確認する
中小企業のテレワーク導入に関連する助成金や給付金
最後に中小企業のテレワーク導入に関連する、助成金や補助金を紹介します。
IT導入補助金
経済産業省による補助金。中小企業および個人事業主がITツール導入の際に利用できる補助金です。テレワーク導入(特別枠)にあたっては、補助率が最大3/4、450万円まで補助されます。
参照:https://www.it-hojo.jp/first-one/
働き方改革推進支援助成金
厚生労働省による助成金。中小企業がテレワークを導入する際に、補助率1/2、最大100万円まで補助されます。レンタルやリースの費用も補助の対象です。
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html?_fsi=haZ5aFoG
事業継続緊急対策(テレワーク)助成金
東京しごと財団による助成金。2020TDMプロジェクトに参加していることを条件に、テレワーク導入費用の10/10、最大250万円まで補助されます。
参照:https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/kinkyutaisaku.html?_fsi=FSkMtWYM
課題を適切に解決してテレワークを導入しよう
中小企業のテレワーク導入率は、大企業に比べればまだまだ低い水準だといえます。中小企業の場合には、テレワークでの対応が難しい業種や業務が多いほか、社内体制やパソコン・ネットワーク環境、セキュリティなどの課題があるからです。
ただし、これらの課題は、適切に対処すれば解決も可能といえます。また、中小企業を対象とした補助金や助成金もあるため、これらを積極的に活用して、テレワークを導入していきましょう。