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人事労務・総務

人材管理、企業が勝ち残る秘訣とは?現状と改善すべき仕事手法を項目ごとに解説

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人材管理、企業が勝ち残る秘訣とは?現状と改善すべき仕事手法を項目ごとに解説
企業が勝ち残るための人材管理には、どのような手法があるでしょうか。今回は、企業経営において重要な人材管理をテーマに、人材管理を取り巻く環境の変化を分析し、人材管理の手法を採用や人材配置、等級制度、報酬制度、人事評価制度、人材育成、組織のモチベーション管理、人事機能などの項目ごとに解説します。

日本の人材管理を取り巻く3つの課題

産業経済省が2020年にまとめた「事務局説明資料 (経営戦略と人材戦略) 」では、人材戦略上の優先課題として「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化/人生100年時代」の3つを取り上げています。それぞれの具体的な課題は以下です。

・グローバル化
企業のグローバル化を牽引できるような経営人材。または、グローバル化に対応できる多様な人材の育成・確保すること。年功序列ではない、業務内容・業務スキルに対応して柔軟に社員を評価できる人事制度を構築し運用すること。

・デジタル化
デジタル化によって、企業のイノベーションを創出できるような人材を育成・発掘・獲得すること。デジタル化によるビジネスモデルの変化に合わせて、柔軟に従業員を再配置・再教育すること。

・少子高齢化/人生100年時代
「人材・働く動機の多様化」に対応する環境を作ること。従業員の自発的貢献意欲を向上し、個人の自律的なキャリア構築を支援したり、 成長機会を提供したりすること。

今後、人材管理に関わる3つの課題に各企業が対応しなければなりません。

1.グローバル化

グローバル化は世界全体の大きな流れであり、日本企業だけが蚊帳の外にいることはできません。大企業だけでなく、中小企業にもグローバル化の波が押し寄せています。グローバル化は、世界の企業との競争を生むだけでなく、巨大なグローバル市場に進出するチャンスを日本企業に与えています。
世界には、先進国だけでなく途上国も多く、それぞれの国に多様なニーズが存在します。日本企業の持つスキルや技術は、アイデア次第で大きなビジネスチャンスをつかめるでしょう。実際、日本企業の幅広い業種において、海外売上高比率が上昇しています。

2.デジタル化

デジタル化は、世界企業の力関係を大きく変えました。それがよくわかるのが、世界企業の時価総額ランキングです。
以下の表は、1989年と2020年の時価総額上位10企業です。

順位 1989年時価総額順位10位 2020年時価総額上位10位
1 日本電信電話 サウジ・アラビアン・オイル
2 日本興業銀行 アップル
3 住友銀行 マイクロソフト
4 富士銀行 アマゾン・ドット・コム
5 第一勧業銀行 アルファベット
6 IBM フェイスブック
7 三菱銀行 テンセント・ホールディングス
8 エクソン アリババ・グループ・ホールディングス
9 東京電力 バークシャー・ハサウェイ
10 ロイヤル・ダッチ・シェル ビザ
引用元:経済産業省「CGS研究会(第3期)第1回 事務局説明資料」
(出所)米ビジネスウィーク『THE BUSINESS WEEK GLOBAL 100』(1989年7月17日)・Bloomberg(2020年7月1日時点)のデータを元に作成

1989年時点ではテクノロジー産業はほとんど含まれておらず、6位のIBMだけでした。しかし、2020年になると、テクノロジー産業のアップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、フェイスブック、テンセント・ホールディングス、アリババ・ホールディングスといった消費者サービス産業が上位10社に名を連ねています。いずれの企業も、コンピュータやインターネットを介したデジタル化をベースに、急速に事業を拡大してきた企業です。上位10社のうち7社がデジタルテクノロジーに関連する企業であることから、デジタル産業がいかに強力なパワーを持っているかがかわるでしょう。

3.少子高齢化

日本の少子高齢化は、企業の人材確保を困難にしています。日本の人口は減り続け、2050年には約1億人にまで減少する見込みです。今後はさらに高齢化が進み、人口構成における生産年齢人口比率は急激に低下していきます。今後企業は、今以上に人材確保が難しくなるでしょう。

従来の日本型人材管理では勝ち残ることが難しくなってきた

「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」をはじめとする社会環境の変化によって、従来の日本型人材管理では事業の継続が難しくなってきています。

成功していた日本型人材管理

日本型人材管理とは、終身雇用や年功序列制度をベースにした人材管理です。日本型人材管理は、かつて成功していました。その成功を支えていたのは、日本の「人口増加」「高度経済成長」「価値観や目標の共有が容易である単一文化」の3つです。

機能しなくなった日本型人材管理

かつて成功していた日本型人材管理を支えていた3つの要素は、前述の「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」によって崩壊しつつあります。少子高齢化によって企業は人材確保が困難になり、デジタル化とグローバル化の波の中で、高度経済成長は望めなくなっています。

日本の現状に対応するための人材管理のソリューション

日本の現状に対応するための人材管理のソリューション


今後企業が勝ち残るためには、3つの大きな社会環境の変化に対するソリューションが必要です。

グローバル化

グローバル化を制するには、企業の人材管理をグローバル仕様にする必要があります。そのためには、以下の4つの人材管理が必要になるでしょう。

・自社内で最適なスキルと経験のある人材を見つける
・グローバル戦略に対応できる人材を育成する
・社外から最適な人材を採用する
・人材管理と同時にグローバル戦略に対応する組織を構築する

デジタル化

デジタル化への対応は、今後企業が勝ち残っていくための戦略に不可欠です。そのためには、デジタル化による仕事内容の変化に対応できる人材管理体制を構築しなければなりません。

少子高齢化

少子高齢化による人材不足に対応するためには、限られた人材を最大限に活用するような人材管理をしなければなりません。また、社員のモチベーションを保ち、生産性を上げ、人材を自社に留めておくために、社員のエンゲージメントを高める取り組みも必要になるでしょう。さらに、ミレニアル世代と呼ばれるキャリア意識の高い若手社員を育成し、転職を防ぐためにキャリア構築の支援が必要になります。

経営者が人材管理を考える際に重要な3つのポイント

社会環境の変化の中で経営者が人材管理を考える際は、以下の3つのポイントを押さえておく必要があります。

1.経営戦略として人材管理を考える

人材管理は、経営戦略として考える必要があります。具体的には以下の3点に注意しましょう。

・経営戦略と人材管理に一貫性を持たせる
・求職者や既存社員に向けて、他社に負けない人事制度を構築する
・人事部と現場の役割と権限を再構築する

2.社員と企業の成長を目指す

「企業が社員を管理する」という一方的な考え方では、これからの人材管理は成功しません。社員の価値観や働き方が多様化する中、経営者には「企業の成長とともに社員の成長も目指す」という考え方が必要になるでしょう。

3.経営者自身がコミットする

人材管理を人事や各部門のマネージャーに任せるだけでなく、経営者自身が現状を把握し、自社の課題を見つけ、解決に向けた取り組みにコミットする必要があります。

勝ち残る企業の人材管理とは?

勝ち残る企業の人材管理とは、どのようなものでしょうか。それは、かつて成功していた日本型人材管理から、中途採用、再入社などによってメンバーが変化するような環境における人材管理への方向転換です。

今後企業が勝ち残るためには、経営戦略を実現することを念頭に置き、戦略に合わせて新卒、中途採用、再入社などによって機動的に人材を獲得し、そのような人材を適切に管理する体制を構築していかなければなりません。

改善すべき人材管理の手法

人材管理を取り巻く社会環境の変化を分析し、今後勝ち残る企業の人材管理を解説してきました。ここからは、採用や人材配置、人事制度、報酬制度、人事評価制度、人材育成、組織のモチベーション管理、人事機能など、人材管理の項目ごとに手法を解説します。

採用

従来の人材管理における採用では、新卒採用を中心に人材確保が行われ、中途採用は専門的なスキルや経験が必要な場合のみ募集していました。これからの人材管理では、業務に必要な人材を必要な時に採用するような人材管理が必要であり、新卒採用、中途採用にとらわれない柔軟性が求められます。

人員配置

従来の人材管理における人員配置では、1人の社員が多くの職種や部署をローテーションするジェネラルローテーション制を採用し、会社都合の転勤を伴う人事異動がメインでした。
これからの人材管理では、スペシャリストを育成する職種内でのローテーションをメインとしながら、人材が必要なポジションが発生した場合に、社内で社員に向けジョブポスティングを実施する体制を整え、会社都合による転勤は原則実施しないことが望ましいでしょう。

等級制度

従来の人材管理における等級制度は、年功序列をベースとして、年齢による社内での公平性を重視していました。これからの人材管理では、年齢は関係なく、社内に納得感があり、人材確保に資するよう求職者も魅力を感じる等級制度を構築する必要があるでしょう。

報酬制度

従来の人材管理における報酬制度は、勤続年数や社員のスキル、実績、家族構成などを総合的に勘案して決められていました。これからの人材管理では、従来の報酬制度をベースとしながらも、インセンティブの報酬については人材確保を考慮して、他社に負けない競争力のある制度を構築すべきでしょう。

人事評価制度

従来の人材管理における人事評価制度は、どちらかというと昇格や昇給、賞与を決めるために実施されていました。これからの人材管理では、個人のスキルアップ、キャリアアップにフォーカスし、その先に昇格や昇給、賞与があるという考え方で人事評価制度を考える必要があります。

人材育成

従来の人材管理における人材育成は、社員を階層や年次に分け、均質的な教育研修を実施するケースが多くありました。これからの人材管理で優先的に進めるべき人材育成は、今後企業を先導していく幹部候補のグループを選抜し、選抜グループに対して集中的に投資し、同時にリテンションを実行していくことです。

組織のモチベーション管理

終身雇用や年功序列制度が過去のものになりつつある中、これからの人材管理では、企業は組織のモチベーションの維持・向上に資する施策を積極的かつ継続的に実施し、社員のエンゲージメントを高める必要があるでしょう。

人事機能

人事部門の在り方も変わらなければなりません。人事部門は、従来の人材管理の中心であり、人材管理の仕事はすべて人事部門が権限を持ち、主導していました。今後の企業経営にフィットする人材管理を実行するためには、人事部門に権限を集中するのではなく、部門長にも権限を持たせることが望ましいでしょう。

社会環境の変化に合わせ人材管理も変えていきましょう

3つの社会環境の変化「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」は、企業の人材管理の在り方に大きな影響を及ぼします。従来の日本型人材管理では、今後の事業継続は難しくなってきている中、勝ち残る企業の人材管理とは、かつて成功していた日本型人材管理ではなく、中途採用、再入社などによってメンバーが変化するような環境における人材管理といえるでしょう。