更新日:
公開日:
人事労務・総務

人事・採用業務について経営者が知っておきたいポイントを解説!

  • Facebook
  • X
  • Line
人事・採用業務について経営者が知っておきたいポイントを解説!
人事採用は企業経営の要となる業務です。中小企業の人事採用業務は、担当者任せにせず経営者も把握しておくことが大切です。今回は、人事採用をテーマに、採用業務の内容から採用担当者の選び方、求人募集方法まで、経営者が知っておきたいポイントを解説します。

人事採用業務とは?知っておきたい4つのポイント

人事採用業務とは、企業が必要とする人材を採用する業務です。人事採用業務は、年間を通してこなしていかなければならない業務が多くあります。新卒採用のように、年間でほぼスケジュールが決まっている業務もあれば、中途採用、パート・アルバイト採用、派遣スタッフ採用など、部門の人材ニーズに合わせて対応していく業務もあります。

1.人事採用業務は実務をこなすだけではない

人事採用業務は、単に実務をこなしていくばかりではなく、現在から将来に向けて、どのような人材が必要なのかを絶えず考える役割もあります。

人工知能(AI)やロボットの劇的な進化、グローバル化など時代の変化とともに企業の仕事内容が変わり、それに伴って社員に求められる能力やスキルも変化しています。しかも変化のスピードは加速し、部門では変化に対応できる人材を求めています。

2.部門が必要とする最適な人材を採用しなければならない

人事採用業務は、採用した人数を求められているのではありません。現在から将来に向けて、部門が必要とする最適な人材を採用することが求められているのです。

現場が必要としている人材と採用した人材との間にギャップが起こらないように、「どのような人材を採用したいのか」という一貫した明確な人事採用基準を採用に関わるスタッフ全員に共有化することが重要です。

3.人事採用業務を必ずしも人事部に担当させなくてもいい

採用業務は必ずしも人事部に任せる必要はありません。企業の実態に合わせて、面接や採用の決定を部門が実施することも可能です。人材が必要な業務が決まっていて、その業務をこなせる即戦力を求める採用などは、部門での採用が効果的です。人事採用業務は部門ごとに実施し、人事部は事務的なサポートを行う体制を採用している企業も増えています。

4.不測の事態も企業の採用に大きな影響を与える

近年は、災害やパンデミック(感染症の世界的大流行)など、不測の事態も企業の採用に大きな影響を与えています。不測の事態が起きたときのリスク管理も必要となります。

2019年末頃から世界的に大流行している新型コロナウイルスは、これまで対面でのコミュニケーションを重視していた日本社会や企業に大きな影響を与えました。感染拡大により、東京や大阪などの都市では緊急事態宣言も出され、多くの企業が会社説明会を中止・延期にせざるを得ない事態となりました。

不測の事態において、企業がテレワークなどに柔軟に対応しているかどうかといった部分は、採用候補者にも見られることとなるでしょう。

新卒の人事採用業務の進め方

新卒の人事採用業務の進め方


人事採用業務の進め方のポイントは、新卒採用、中途採用によって変わってきます。

新卒採用は、年間を通して人事採用業務が計画化・スケジュール化されて進められていきます。採用担当だけでなく、リクルーターとして部門ごとに若手社員を動員するなど、他部署との連携も必要となります。中小企業では経営者も含め、全社をあげて取り組む企業が多いです。新卒採用の進め方の例として次の4ステップの実施が挙げられます。

STEP1. 採用計画

採用計画は、最も重要なステップです。人材は必要ですが、人件費は企業経営にとって非常に大きいコストとなります。用計画は会社業績や企業を取り巻く景気動向に影響を受けやすいです。費用対効果を考え、自社がどのくらいの人数を採用できるのか検討する必要があります。

そして最も重要なのが、のような人材を採用したいのかという明確な人事採用基準です。基本となるのは、自社の企業理念や目的を達成するために必要な人材を採用するという視点でしょう。さらに採用計画は、自社の中期・長期の経営計画や経営戦略達成を意識することが重要です。

自社がどのくらいの人数を採用できるのか、どのような人材を採用したいのか、どのように自社をアピールしていくかという計画が決まったら、実際にどのように採用を実行していくかという具体的な計画スケジュールを立てていきます。

STEP2.求人募集

採用計画が決まったら、計画したスケジュールをこなしながら修正と改善を行います。求人についてはさまざまな媒体があるので、費用対効果を想定しながら選択します。昨年度の実績で費用対効果が優れた媒体を見直しながら活用していくのがよいでしょう。コストが許せば新たな媒体にチャレンジするのもよいでしょう。

求人媒体は大手求人サイトを活用するのが一般的ですが、近年は採用オウンドサイトやSNSを活用する企業も増えています。

STEP3.セミナーや説明会の実施

セミナーや説明会では、一般的に講師が多数の候補者に向けて自社について説明しますが、他社と差別化をはかるためには工夫が必要となるでしょう。

自社をアピールしてインパクトを与えるため、自社の社員を動員して求職者一人一人とコミュニケーションをとる場面を設ける企業もあります。

STEP4. 面接・選考、内定者の決定

求人媒体からの応募、セミナーや説明会からの流入などから、企業に採用候補者の情報が入ります。ここで重要になるのが、採用候補者のデータ管理です。採用候補者は一人一人進捗が異なり、自社のメンバーも複数人が採用に関わることになります。

つまり、データの一元管理と共有化ができるツールがあると効率的に進められ、人事採用業務の精度も上がります。採用候補者のデータ管理については多くのデータ管理ツールが提案されているので、自社の実情に合わせて採用することが望ましいでしょう。

面接・選考から内定者決定までの場面では、どのような人材を採用したいのかという明確な人事採用基準によって、現場が必要としている人材と、採用した人材とのギャップが起こらないようにする必要があります。

さらに、内定・入社後にギャップが生じないように、自社の企業理念、存在意義、人事制度、報酬福利厚生などの、伝えなければならない基本事項とともに、内定者のキャリアアップや働き方に対する考え方を自社で実現していく将来像を伝えます。

内定後は、内定辞退が起こらないように定期的にフォローしていくことも重要な人事採用業務の一つです。内定者とは継続的に連絡を取り、懇親会など社内イベントへの参加を促していくとよいでしょう。

中途の人事採用業務の進め方は?

リクルートワークス研究所による「中途採用実態調査」の2020年度実績のデータを見てみると、中途採用の採用実績は前年度の1.48人から1.18人へと、-20.2%減少しています。採用において、中途採用の割合が減少している傾向がみられます。

業種別でみても、ほとんどすべての業種で採用実績が減少しています。中でもコロナ禍の影響が大きい飲食店・宿泊業の減少幅が大きく、前年度比が-53.0%となりました。

経験者・未経験者の採用実績をみると、経験者の採用人数は1社あたり0.71人と前年度より0.16人減少しています。未経験者は、1社あたり0.52人と前年度より0.10人減少しています。ともに過去6年間で最小の採用実績となりました。特に経験者の採用実績が大きく減少しており、過去最低を更新しています。

未経験者は経験者の採用が大きく減少したことで、採用割合としては増加しています。前年度の41.6%から42.1%と0.5%ポイント上昇し、過去最高を更新しました。これは、コロナ禍で企業がスキルの高い経験者を保持するようになった結果でしょう。反対に、将来的な人材不足の対策として、一部の企業において未経験者の採用需要が維持されました。その結果、未経験者の採用割合が増加したと考えられます。

中途採用は、社員の退職や経営を改善するための人材の見直し、新規事業のスタート、グローバル化やシステム化に対応する人材の必要性など、企業運営や業務継続のためにリソースが必要となったときに発生する採用であり、年間を通して採用が行われます。

新人採用と比較すると、中途採用はどのような人材が欲しいかという人物像が具体化されやすく、即戦力を求める色合いが濃いのも特徴です。

中途採用の進め方は、新規採用と同様に採用計画、求人、面接・選考、内定の順で進められるのが一般的ですが、新規採用より短期間で選考が進められる傾向があります。求人媒体は求人サイトの他、人材紹介会社、リファラル(社員紹介)などが代表的です。

最近では、採用手法が多様化しており、人材データベース・SNSなどを通して企業が求職者に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」といった手法も登場しています。求人サイトを活用した既存の「待つ」採用だけでなく、ダイレクトリクルーティングのような「攻め」の採用手法を取り入れていくことも、今後重要になっていくでしょう。

人事採用業務の効率化をはかるには?

企業経営にとって採用は最重要課題であるが、採用には採用媒体の活用や会社説明会などのコストがかかることを忘れないようにしましょう。採用計画を立てるときにはコストも含め検討する必要があります。

金銭以外にも、採用に関わる社員のリソースや人事採用業務にあたる時間といったコストが発生します。このように、人事採用業務は大きなコストが必要になる業務であるため、効率化によってコストダウンをはかることは、企業経営に良い影響を及ぼすことが期待できます。

採用業務の効率化をはかるには、まず人事採用業務の棚卸が必要です。業務を行う流れや業務内容を改善することで、一定の効率化が進むでしょう。

大きく効率化をはかるためには、人事採用業務自体を見直すことが必要です。たとえば、採用管理システムやアウトソーシングの導入です。この2つの解決策には劇的に効率化がはかれる可能性があるのと同時にコストが発生します。現状と比較し、将来に向けて企業運営上の費用対効果があるかどうかを十分に検討することが重要です。

人事採用基準はどうやって決める?確認ポイント4つ

人事採用で最も重要なのは、「どのような人材を採用したいのかという一貫した明確な人事採用基準」です。人事採用基準が最適化され明確に共有化されていれば、採用後にギャップが生まれることがなくなり、早期退職の防止にもつながります。

人事採用基準の最適化と共有化のチェックポイントは以下の4点です。

1.人事採用担当と現場面接官との間に面接評価におけるギャップが生じていないか
2.採用選考評価が面接官によってばらつきが多くないか
3.人事採用基準が高すぎて不採用者が多くないか
4.早期退職が多発していないか

人事採用の求人募集方法はさまざま

採用にはコストがかかることを先に述べましたが、人事採用の求人募集方法でコストを考慮するならば、比較的コストが低いハローワークや採用オウンドメディアを活用するのをおすすめです。

ただし、コストには金銭的な面以外にもリソースと時間があります。期間を限定して採用結果を出す確率を高めるには、自社の状況に合わせてセミナーや会社説明会の開催、求人サイト、人材紹介会社などを活用する必要があるでしょう。

管理システムなども活用し効率的に人事採用を進める

人事採用業務は、単に実務をこなしていくばかりではなく、現在から将来に向けて、どのような人材が必要なのかを絶えず考える役割もあります。年間を通して多忙であるという厳しい実情も考慮して、費用対効果によっては採用管理システムやアウトソーシングの導入も検討するなど、人事採用業務の見直しもしていくとよいでしょう。