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雇用保険などの電子申請が義務化!電子申請のメリットややり方は?
この記事では、雇用保険などの電子申請のメリットややり方について詳しく解説していきます。
雇用保険などの電子申請の義務化
最初に雇用保険などの電子申請義務化についての概略を見てみましょう。
電子申請とは
電子申請とは、行政に対する申請や届け出などの手続きをインターネット経由でパソコンから行えるようにするものです。これまでもCD-Rや光ディスクなどの電子媒体での提出が義務化されるなど、行政手続きの電子化が進められてきました。しかし、電子申請はそれとは異なります。電子申請の義務化では、インターネットを利用した手続きのみが認められ、CD-Rや光ディスクなどの電子媒体による提出は認められません。(やむをえない場合を除く)
義務化の対象となる法人
電子申請義務化の対象となるのは「特定の法人」でその内容は以下のとおりです。
・資本金または出資金の額が1億円を超える法人
・相互会社
・投資法人
・特定目的会社
したがって、資本金が1億円以下の中小規模企業・ベンチャー企業は義務化の対象となっていません。しかし、電子申請の流れは今後拡大することが見込まれます。また電子申請には24時間いつでも申請できるなどのメリットもあります。中小規模企業・ベンチャー企業も電子申請に対応できるように準備しておくことが望ましいといえるでしょう。
義務化の対象となる手続き
義務化の対象となる申請・届出の内容は以下のとおりです。
保険の種別 | 申請・届出の内容 |
---|---|
健康保険・ 厚生年金保険 |
●被保険者報酬月額算定基礎届 ●被保険者報酬月額変更届 ●被保険者賞与支払届 |
労働保険 | ●継続事業(一括有期事業を含む)を行う事業主が提出する以下の申告書 ●年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書) ●増加概算保険料申告書 |
雇用保険 | ●被保険者資格取得届 ●被保険者資格喪失届 ●被保険者転勤届 ●高年齢雇用継続給付支給申請 ●育児休業給付支給申請 |
雇用保険などを電子申請するメリットとデメリット
雇用保険などの申請・届出を電子申請によって行うメリットとデメリットは以下のようなものがあります。
電子申請の3つのメリット
電子申請のメリットとして以下の3つが挙げられます。
1.申請に費やす時間や交通費などのコストを削減できる
電子申請は、わざわざ役所まで足を運ぶ必要がなく家や会社から手続きができます。また、役所へ行けば複数の窓口をまわらなければいけない場合も、すべて一括して申請することが可能です。24時間いつでも申請できるため、スキマ時間を有効に利用することができます。
2.書類の紛失を防止しセキュリティを向上できる
書類は、役所へ持ち運ぶ場合に紛失する可能性もあります。しかし、電子申請なら書類は持ち運ばないため、紛失のリスクはなくセキュリティの向上が期待できるでしょう。
3.手数料を電子納付できる
電子申請では、手数料もインターネットバンキングなどを利用して電子納付ができます。会計ソフトなどを利用して銀行の利用履歴を取り込んでいる場合には便利でしょう。
電子申請の3つのデメリット
一方で、電子申請には以下のような3つのデメリットがあります。
1.電子申請を導入するためにコストがかかる場合がある
電子申請を利用するためには、パソコンやインターネット接続、ICカードリーダーなどの設備が必要です。それらが現状ない場合には、設備投資のためのコストがかかることになります。
2.手続きが完了するまでの期間が遅くなることがある
役所へ書類を持ち込むと受付の際に確認してもらえるため、もし書類に不備があってもその場で修正することが可能です。一方、電子申請では、送信時に人の目による確認がないため、書類の不備が後日になって判明し、書類が返戻される可能性が否めません。そのため、手続きが完了し離職票などの書類が送付されてくるまでに書面での手続きより遅くなることがあります。
3.電子申請に不慣れだとかえって時間がかかることがある
電子申請は、慣れれば役所へ行くより時間を節約できるでしょう。しかし、不慣れでまだ電子申請のやり方を十分に理解できていないときには、書面の作成よりかえって時間がかかることもありえます。
雇用保険などの電子申請の方法
雇用保険などを電子申請する方法として以下の2つがあります。
・e-Govから申請する
・API連携したソフトを使用する
それぞれの概略を見てみましょう。
e-Govから申請する
電子申請の方法の1つとして、「e-Gov」から手続きすることが挙げられます。e-Govは、総合的な行政情報ポータルサイトです。社会保険・労働保険関係手続きを始めとして、国の行政機関に対する申請・届出等をオンラインで行えます。
e-Govから電子申請を行うためには以下のような流れが必要になります。
手続きの流れは、以下の5つです。
1.利用準備 :電子申請アプリケーションのインストール・アカウント作成・ログイン
2.申請・届出 :手続きの選択・必要書類の添付・申請書の入力、提出
3.処理状況等の確認:申請した手続きの処理状況をマイページで確認
4.手数料等の納付 :手数料等の納付が必要な場合は適宜の方法で納付
5.公文書取得 :申請が受理された後、公文書をダウンロード
電子申請の入力方法には、複数の手続きをまとめて申請する「グループ申請」があります。グループ申請は、複数の申請・届出の手続きをパッケージングしたものです。グループ申請を利用することで、各申請届出様式の記載項目に同じ内容を何度も入力する手間が省けます。複数の申請・届出が必要な場合は、個別に行うよりも短時間で申請作業が完了するため、ぜひ活用しましょう。
参考:e-GOV「電子申請について」
API連携したソフトを利用する
「API(Application Programing Interface)」とは、情報システムを外部のソフトウェアから利用する際の規格を定めたものです。電子申請はAPI連携に対応しているため、外部のソフトウェアから電子申請のデータを利用し操作することが可能です。電子申請とAPI連携しているソフトウェアは多く販売されており、特に人気なのが労務・会計管理のクラウドソフトです。
労務・会計管理のクラウドソフトを電子申請に使用するメリットは主に以下の4つです。
・労務・会計ソフトウェアのデータを電子申請に利用できる
API連携している労務・会計ソフトウェアを使用することにより、ソフトウェアに登録されているデータが電子申請にそのまま利用が可能です。そのため、データを新たに入力する労力が軽減されます。
・労務・会計ソフトウェア上からすべての操作ができる
API連携している労務・会計ソフトウェアを使用すれば、ソフトウェアから電子申請に関するすべての操作が可能です。ソフトウェアの慣れた操作の延長上で操作ができるため、操作を覚える時間を短縮することができるでしょう。また、多くの労務・会計ソフトウェアは、同種の操作を反復して行うことができるようになっています。
そのため、大量の反復的な申請を行う際には、労力の大幅な削減を見込めるでしょう。
・手続きの進捗管理をしやすい
電子申請後に取得される到達番号は、労務・会計ソフトウェア上で従業員のデータと紐付けされるため、手続きの進捗管理がしやすいです。
・Windows以外のパソコンからも利用できる
e-Govを利用して電子申請を行う際に、パソコンのOSはWindowsでなければなりません。一方、労務・会計ソフトウェアによる電子申請は、OSについての制約がなくなります。
以上のように、API連携している労務・会計ソフトウェアから電子申請を行うことは、e-Govから行うことと比較して大きなメリットがあります。ただし、労務・会計ソフトウェアを導入するためにはそれなりのコストがかかることは認識しておきましょう。労務・会計ソフトをこれから導入するのなら、電子申請のみならず労務・会計ソフトウェアを社内で使用するニーズをしっかりと見極める必要があります。
雇用保険を電子申請するに当たっての留意点
雇用保険などを電子申請するにあたっての留意点を見てみましょう。
電子申請の費用は?
電子申請をするためには「電子証明書」を取得することが必要です。電子証明書は、証明期間に応じて以下の費用がかかります。
証明期間 | 3ヵ月 | 6ヵ月 | 9ヵ月 | 12ヵ月 | 15ヵ月 | 18ヵ月 | 21ヵ月 | 24ヵ月 | 27ヵ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
手数料 | 1,300円 | 2,300円 | 3,300円 | 4,300円 | 5,300円 | 6,300円 | 7,300円 | 8,300円 | 9,300円 |
最長の証明期間である「27ヵ月」の場合、費用は9,300円(1ヵ月あたり約344円)となります。役所へ足を運ぶための人件費や交通費、郵送するための郵便費用などと比較すれば十分元を取ることはできるのではないでしょうか。
審査の期間は?
電子申請による審査は書類に不備がない場合、数日で終了し離職票などの公文書をダウンロードすることが可能です。しかし、前述のとおり書類に不備がある場合には「数週間」かかるケースもあることは認識しておきましょう。書類の不備は書面で提出する場合、窓口の担当者の確認で修正できるケースが多いでしょう。
ところが電子申請の場合には、提出時の修正ができないため、どんなに小さな不備であっても書類が返戻されます。修正は一度で完了すればよいものの、場合によっては数度にわたり返戻される可能性もあります。そうなると審査の期間は大幅に伸びてしまいます。電子申請にあたっては、書面で提出するとき以上に書類の記載内容をしっかりと確認することが重要です。
雇用保険などの手続きは電子申請を利用して効率的に行いましょう
大企業については、義務化された雇用保険などの電子申請は2020年4月時点では資本金が1億円以下の中小・ベンチャー企業については義務化されていません。しかし、電子申請の流れは今後拡大していくことが見込まれます。書面での申請と比較して申請のための時間と労力および費用を軽減することができるのが電子申請の大きなメリットです。積極的に導入し業務を効率化させましょう。