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2023年4月納付分から社会保険料が値上げ!改定内容や具体的な計算例を紹介
従業員を雇用している企業は、保険料の一部または全部を負担しなければなりませんが、2023年4月納付分から、一部の社会保険の保険料が値上げされたことをご存じでしょうか。
本記事では、「社会保険とはどのようなものなのか」をご紹介したうえで、「今回の改定によって、どのくらい値上げされたのか」を詳しく解説します。企業で経理や労務を担当している方は、ぜひ参考にしてください。
2023年4月納付分から社会保険料が値上げされた
社会保険料のうち、2023年4月納付分以降の「一部の都道府県における健康保険料、および、全都道府県における介護保険料」(全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の場合)と「雇用保険料」の値上げが実施されました。
協会けんぽの健康保険料は、都道府県ごとに異なる「保険料率」に基づいて算出され、「高齢者の割合が多い都道府県」「所得水準の低い都道府県」の保険料率が高くなることを把握しておきましょう(介護保険料は、今回の改定で全国一律上昇)。
また、雇用保険料は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」に基づき、雇用保険財政の状況を踏まえ、年度ごとに変更されています。
社会保険料の仕組み
社会保険とは、政府や公的機関による社会保険事業であり、生活が困難になる事象(病気・ケガ・身体の障害・死亡・老齢・失業など)に直面した場合に一定の給付が実施される仕組みになっています。
なお、「狭義」の社会保険は、以下の3種類です。
● 公的年金保険(厚生年金保険・国民年金など)
● 公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)
● 介護保険(40歳以上の方が加入)
「広義」では、上記に加えて、労働保険(労働者災害補償保険(労災保険)および雇用保険)も社会保険に含まれます。
企業は、雇用している従業員の社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、労災保険料、雇用保険料)の一部、または全部を負担しなければなりません。
ちなみに、厚生年金保険料や、協会けんぽの健康保険料・介護保険料は労使折半で負担しますが、健康保険組合管掌健康保険の場合、組合ごとに労使の負担割合が異なることを把握しておきましょう。
次の章以降で、企業が従業員を雇った場合に保険料の一部または全部を負担することになる「厚生年金保険」「健康保険・介護保険」「労働保険」の概要をご紹介します。
厚生年金保険
厚生年金保険とは、会社や官公庁など(厚生年金保険の適用事務所)で勤務している方が加入する公的年金保険です。
短時間労働者であっても、一定の要件を満たす場合は、被保険者となるのでご注意ください。
保険料は、給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)に保険料率を乗じて算出され、従業員と事業主が半分ずつ負担する仕組みになっています。
2017年9月以降、保険料率は「18.3%」に固定されており、2023年も同じままです。
健康保険・介護保険
健康保険とは、病気やケガで医療機関を受診した場合に、負担を軽減する仕組みです。日本では「国民皆保険制度」が実施されており、全国民が何らかの健康保険に加入しなければなりません。
健康保険の適用事務所で勤務している場合は、「組合管掌健康保険」「協会けんぽ」のいずれかに加入することになります。
短時間労働者も、一定要件を満たす場合は被保険者となるのでご注意ください。
なお、40歳以上の従業員は介護保険にも加入することになり、介護保険料は健康保険料と一緒に企業が源泉徴収し、納付する必要があります。
協会けんぽの場合、保険料は労使折半となりますが、組合管掌健康保険の場合、組合ごとに労使の負担割合が異なるので注意しましょう。詳細については、各組合にお問い合わせください。
労働保険(労災保険・雇用保険)
労働保険(労災保険および雇用保険)も、広義では社会保険に含まれます。
労災保険とは、業務上の事由や通勤による傷病などに対し、必要な給付を実施する制度です。なお、雇用形態や労働時間を問わず、全従業員が対象とされています。
保険料は、2018年以降、値上げされていません(事業主が全額負担)。
雇用保険とは、失業者や教育訓練を受ける方などに対し、給付を実施する制度です。一定の要件を満たす従業員が被保険者となり、事業主が雇用保険料の一部を負担することになります。業種ごとに労使の負担割合が異なるので、厚生労働省の公式サイトで詳細をご確認ください。
社会保険料の改定により、どのくらい値上げされたのか?
以下、協会けんぽの場合の健康保険料・介護保険料、および、雇用保険料について、「2023年の保険料改定により、どのくらい値上げされたのか」をご紹介します。
健康保険料
上述したように、協会けんぽの保険料率は、都道府県ごとに異なります。
2023年4月納付分からは、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、福岡県の13都府県で保険料率が上昇しました。それ以外の道県では、同じままになっているか、低下しています。
下表に、保険料率が上昇した13都府県の保険料率をまとめました。
都府県 | 2022年度の保険料率 | 2023年度(2023年4月納付分以降) の保険料率 |
栃木県 | 9.9% | 9.96% |
群馬県 | 9.73% | 9.76% |
埼玉県 | 9.71% | 9.82% |
千葉県 | 9.76% | 9.87% |
東京都 | 9.81% | 10% |
神奈川県 | 9.85% | 10.02% |
山梨県 | 9.66% | 9.67% |
愛知県 | 9.93% | 10.01% |
京都府 | 9.95% | 10.09% |
大阪府 | 10.22% | 10.29% |
兵庫県 | 10.13% | 10.17% |
奈良県 | 9.96% | 10.14% |
福岡県 | 10.21% | 10.36% |
なお、組合管掌健康保険の場合、組合ごとに取り扱いが異なります。詳細については、各組合にお問い合わせください。
介護保険料
介護保険料は、加入している公的医療保険ごとに設定されている保険料率に基づいて算出されます。介護保険料は労使折半で負担する仕組みになっており、各企業は健康保険料と一緒に従業員の給与から源泉徴収し、納付しなければなりません。
なお、協会けんぽの場合、2022年4月納付分~2023年3月納付分の保険料率は1.64%でしたが、2023年4月納付分から1.82%に引き上げられました。
健康保険と異なり、保険料率は全国一律です。組合管掌健康保険の場合は、組合ごとに取り扱いが異なるので注意しましょう。
雇用保険料
雇用保険料は、業種ごとに設定されている雇用保険料率に基づいて算出されます。下表に、2023年4月1日~2024年3月31日の保険料率をまとめました(カッコ内は従前の保険料率)。
事業の種類 | 労働者負担分 | 事業主負担分 | 雇用保険料率(労働者負担分 と事業主負担分の合計) |
一般の事業 | 6/1,000(5/1,000) | 9.5/1,000(8.5/1,000) | 15.5/1,000(13.5/1,000) |
農林水産・清酒製造の事業 | 7/1,000(6/1,000) | 10.5/1,000(9.5/1,000) | 17.5/1,000(15.5/1,000) |
建設の事業 | 7/1,000(6/1,000) | 11.5/1,000(10.5/1,000) | 18.5/1,000(16.5/1,000) |
なお、「園芸サービス」「牛馬の育成」「酪農」「養鶏」「養豚」「内水面養殖」「特定の船員を雇用する事業」に関しては、「農林水産」ではなく、「一般の事業」の保険料率が適用されるのでご注意ください。
値上げ後の社会保険料の計算例
ここからは、以下のような人物を想定して、値上げ後の社会保険料(1ヵ月あたり)の計算例を示します。
● 40歳の正社員(出版業)
● 地域:東京都
● 1ヵ月あたりの賃金:400,000円(標準報酬月額:410,000円、等級:24)
● 賞与なし
● 協会けんぽに加入
経理・労務を担当している方は、ぜひ参考にしてください。
厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料の計算
上述した人物の場合、厚生年金保険料は410,000円×0.183=75,030円、健康保険料は410,000円×0.1=41,000円、介護保険料=410,000円×0.0182=7,462円と算出されます。
なお、労使折半なので、企業側の負担は上記金額の半分となることにご注意ください。
労働保険料の計算
出版業の場合、労災保険料率は2.5/1,000です。
また、出版業は「一般の事業」に分類されるため、雇用保険料率は15.5/1,000となることを把握しておきましょう。
以上より、1ヵ月あたりの労働保険料(労災保険料+雇用保険料)は、400,000円×(2.5+15.5)/1,000=7,200円と算出されます(労災保険料分は全額を事業主が負担し、雇用保険料分は事業主・労働者双方で負担)。
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まとめ
2023年4月納付分から、協会けんぽの健康保険料(13都府県)や介護保険料(全国)、雇用保険料が値上げされました。
経理・労務担当者は、これらの改定を踏まえて社会保険料を計算し、正確に源泉徴収する必要があります。不明な点がある場合は、1人で悩み続けるのではなく、上司や同僚、社会保険労務士などにご相談ください。
なお、経理・労務担当者は、社会保険料の計算以外にも、「支払い」「請求」「福利厚生」といった業務にも携わっており、日々、負担を感じているのではないでしょうか。
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