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障害者雇用とは?企業側のメリットや注意すべき点などをわかりやすく解説

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障害者雇用とは?企業側のメリットや注意すべき点などをわかりやすく解説
一定規模の事業主は障害者を雇用する義務があります。障害者の雇用はいくつかのメリットがありますが、一定の環境整備や知識などが必要になるので事業主側に負担がかかることが想定されます。

そのため、障害者を雇用する際には、メリットや注意点などを知っておくと良いでしょう。本記事では障害者雇用の基礎知識やメリット、注意すべき点などを解説します。

障害者雇用とは?

障害者雇用は障害に関係なく希望や能力に応じて職業に就くことができ、社会参加できる共生社会実現を目的としている制度です。

従業員数が一定以上の規模の事業主は、常時雇用している労働者に占める身体障害者や知的障害者、精神障害者の割合を法定雇用率以上にする義務があると、障害者雇用促進法43条第1項で定められています。次の表は、障害者雇用の概要をまとめたものです。

  概要
障害者を雇用する必要がある民間企業の規模 労働者43.5人以上の事業主
法定雇用率 民間企業:2.3%
国や地方公共団体:2.6%
都道府県などの教育委員会:2.5%
常時雇用する労働者の定義 1年間の所定労働時間が20時間以上で1年を超えて雇用される見込みがある、あるいは1年を超えて雇用されている
上記の要件に当てはまるなら、パートやアルバイトも常時雇用する労働者に含まれる
障害者のカウントの仕方 週所定労働時間が30時間以上の労働者を常用労働者、20時間以上30時間未満の労働者を短時間労働者とする
常用労働者で重度の身体障害者と知的障害者は1人を2人してカウントする
短時間労働者は1人を0.5人とカウントする
短時間労働者で重度の身体障害者と知的障害者は1人としてカウントする

例えば、常用雇用している労働者が100人の事業主の場合は障害者を2人以上雇用します。

● 100人×2.3%=2.30人(小数点以下は切り捨て)

なお、障害者は障害の状態や週所定労働時間によって、1人を次のようにカウントします。

  常用労働者
(週所定労働時間が30時間以上)
短期労働者
(週所定労働時間が20時間以上30時間未満)
身体障害者 1人 0.5人
重度身体障害者 2人 1人
知的障害者 1人 0.5人
重度知的障害者 2人 1人
精神障害者 1人 0.5人(※)

例えば、重度の身体障害者1人を週所定労働時間30時間以上の常用労働者として雇用する場合は、1人で2人とカウントできるので、常時雇用する労働者を100人雇っている事業主は法定雇用率を満たしたことになります。

法定雇用率以下の事業主に対してはハローワークから行政指導が行われ、企業名が公表される可能性があるので注意しましょう。

(※)新規雇い入れから3年以内の方や、精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方で、令和5年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方は1人としてカウントする

障害者雇用の企業側のメリット

障害者雇用の企業側のメリットは以下のとおりです。

● 労働力の確保につながる
● 職場環境を改善するきっかけになる
● 助成金や優遇措置が利用できる

上記のメリットを順番に解説します。

労働力の確保につながる

障害者の特性は強みになる場合があり、貴重な労働力や戦力の確保につながる場合があります。

例えば、独立行政法人高齢・障害・休職者雇用支援機構が公表した「障害者の職場定着と戦力化」によると、次のような事例が報告されています。

● 仕事ぶりはゆっくりだが丁寧なので、間違いが少なく信頼できる
● 一定の作業量を確実にこなす
● 人手不足のなか、戦力として会社を支えてくれる
● 地道な作業でも真剣に取り組んでくれる

障害者を雇用したことで、業務の効率化が期待できるのは大きなメリットです。

(※)出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の職場定着と戦力化」(https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/employment_casebook.html)(2023年6月14日)

職場環境を改善するきっかけになる

障害者を受け入れる場合、障害者にとって働きやすい職場環境づくりが必要です。障害者にとって働きやすい職場づくりは、同時に健常者にとっても働きやすい職場環境づくりのきっかけとなるので、障害者の雇い入れを積極的に進めましょう。

助成金や優遇措置が利用できる

障害者を雇い入れる場合には、次のような補助金が交付されます。

  助成金の種類 概要
試験的に雇い入れる場合 トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) 就職が困難な障害者をハローワークから紹介され、一定期間試験雇用する場合の助成金
トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース) 週所定労働時間20時間以上が厳しい障害者を、3ヵ月~12ヵ月の期間をかけながら、20時間以上勤務を目指して試験雇用する場合の助成金
継続して雇い入れる場合 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) 就職が困難な障害者をハローワークから紹介され、継続して雇用する労働者として雇い入れた場合の助成金
特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) 発達障害者や難病患者をハローワークから紹介され、継続して雇用する労働者として雇い入れた場合の助成金

上記以外には、有期雇用(パートやアルバイト)などから正規社員へ転換することで支給される「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」があり、この助成金は障害者以外の助成金と併用して活用されることが多いです。

また、障害者を継続して雇用するために必要な設備の導入や介助者の配置などを行う場合、次の助成金を受けられます。

  概要
障害者作業施設設置等助成金 障害者の特性による就労上の課題を克服する作業施設の設置や整備に対する助成金
障害者介助等助成金 障害者に必要な介助者の配置に対する助成金
職場適応援助者助成金 ジョブコーチ(職場適応援助者)による援助を必要とする障害者のための助成金
重度障害者等通勤対策助成金 障害者が通勤を容易にするための必要な措置に対する助成金

ほかにも、令和2年4月1日より、次のような支援制度が始まっています。

  概要
週20時間未満の障害者を雇用する事業主に対する特例給付金制度 支給対象となる短時間労働者の障害者を雇用する場合に給付される制度
中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度) 障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度
認定を受けた事業主は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品や広告などに取り付けられる

助成金は、原則として計画の申請から助成金の支給までの期間が1年以上かかるため、計画から支給申請までの期間における取組を計画的に行うことが重要です。

また、助成金の申請代行は社会保険労務士のみが行うことができる業務となるため、利用を検討される場合は、助成金に強い社会保険労務士に相談をしましょう。

しかし、実際のところ、助成金に特化した社会保険労務士は全国的に見ても少ない(顧問社労士では、社会保険の手続きや給与計算などの業務が中心となるため、助成金の申請まで手が回らないというのが現状です)といえます。

障害者雇用で注意すべき点

障害者雇用で注意すべき点は以下のとおりです。

● 社内の受け入れ態勢を整える
● 障害の特性に留意しながらコミュニケーションを取る

上記の注意点を順番に解説します。

社内の受け入れ態勢を整える

障害者を雇用する場合、社内の受け入れ態勢が整っていないと難しいです。

例えば、ハード面では建物や設備、工程、工具などを障害者が能力を発揮できるように変更する必要があります。ソフト面では障害者を雇用するうえでの勤務形態の導入や職務配置、コミュニケーション方法などを考えましょう。

障害者を雇用する際は、次のポイントに注意しながら社内の受け入れ態勢を整えると良いです。

  雇用管理面で配慮すべきポイント
人間関係の改善 職場単位で障害者の特性を事前に確認し合う
上司は定期的に聞き取りを行い、問題が起きたら解決するように導く
個人やグループでの話し合いの場を設けて、人間関係を深める
仕事以外の場面で話し合いや懇談の機会を設けるなど
職場の安全管理 障害者が働きやすい環境を整える
安全に作業できるように責任体制を整える
万一の事態が起きたときの対策を考えるなど
健康管理 障害者の特性に即した健康管理の方法を決める
障害者が休憩や早退、年休などを取りやすい雰囲気を作るなど
勤務時間管理 障害者が健康を保って、本来の能力が発揮できるように配慮する
障害者の特性に合わせて勤務時間を対応するなど
教育訓練 障害者に対して長期的な人材育成の企画を立てて推進する
必要に応じて障害者の特性に対して個別的なOJTを行うなど

障害の特性に留意しながらコミュニケーションを取る

障害者は障害の特性によって次のような苦痛や不便を感じます。

● 気が散りやすく、好きなことをやっていても多動(じっとしていられない)になりやすい
● 活動の切り替えが苦手で、作業がやりっぱなしになる
● 対人関係が苦手
● こだわりが強い
● 非言語的コミュニケーションができない
● 大きな音や突然の音に嫌悪感を覚える
● 強い光や点滅に敏感など

そのため、事業主は障害者の特性に合わせて環境に配慮する必要があります。

例えば、気が散りやすく、好きなことをやっていても多動になりやすい障害者の場合は、落ち着いて勤務できる場を提供したり、簡易的な仕切りを設置したりして集中できる環境を整えてみましょう。

また、障害者とのコミュニケーションを取るときは次のポイントを心がけてみると良いです。

● 穏やかな対応を心がける
● 気持ちを言葉で伝える
● まじめであることを評価する
● 仕事内容をはっきりと明示する
● 雇い入れたばかりなら休憩を多くしたり、安全なストレスレベルから始めたりするなど

特に、精神障害は総合失調症や気分障害などの傷病ごとに特性が異なるので、細かな配慮が求められます。障害者の受け入れが難しいと感じられたら、相談窓口で相談してみましょう。

障害者雇用する際の相談先

障害者雇用する際の相談先は以下のとおりです。

● ハローワーク
● 地域障害職業センター
● 障害者就業・生活センター

上記を順番に解説します。

ハローワーク

ハローワークでは、障害者の就職活動を支援するための取り組みを行っています。

例えば、事業主に対して障害者雇用制度の内容や情報、支援策などの知識を提供するセミナーを開催しています。また、実際に障害者を雇用している企業見学会を開催しており、担当業務の選定や雇用管理などの話を聞くことが可能です。

ほかにも、障害者を段階的に雇い入れるトライアル雇用をハローワークは行っているので、障害者を段階的に雇い入れて障害者雇用への理解が深められます。

ハローワークによっては就職支援ナビゲーターや精神障害者雇用トータルサポーター・発達障害者雇用トータルサポーターが配置されている場合があるので、障害者雇用で疑問があったら相談してみましょう。

なお、全国各地にある労働局でもセミナーや見学会などの取り組みや、障害者に対する職場実習などを行っているので、障害者を雇うイメージがわかない方は労働局にも相談すると良いです。

地域障害職業センター

地域障害職業センターは独立行政法人高齢・障害・休職者雇用支援機構の施設で、事業主に対する障害者の雇用管理の相談や援助などを行っています。

例えば、事業所にジョブコーチを派遣してもらい、障害者が仕事に適応できるように支援したり、事業主が障害を適切に理解して配慮するための助言をしたりするなど、専門的な援助を受けられます。

また、独立行政法人高齢・障害・休職者雇用支援機構では、障害者作業施設設置等助成金や障害者介助等助成金などの、障害者の雇用を継続するための助成金が受けられるので、利用を検討してみましょう。

障害者就業・生活センター

障害者就業・生活センターは、障害者の雇用の促進と安定を図ることを目的として全国に設置されており、障害者の身近な地域で就業面と生活面の一体的な支援を行っています。

事業主への支援としては、個々の企業へのニーズに応じて、雇用前後の支援や情報提供、コーディネートなどを行っているので、雇用や職場定着に関して相談してみましょう。

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障害者の雇い入れは事業主に対して、ハード面とソフト面の両方にある程度の負担を要求します。障害者の雇い入れをスムーズに行うためには事業や業務の効率化が必須になるので、セゾンインボイスや支払い.comなどの活用がおすすめです。

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まとめ

一定規模の事業主は法定雇用率に従って障害者を雇用する義務があります。民間企業の場合、常時雇用する労働者43.5人以上に付き障害者1人の雇用が目安です。なお、障害者によって人数のカウントの仕方が異なるので注意しましょう。

障害者を雇用するメリットは以下のとおりです。

● 労働力の確保につながる
● 職場環境を改善するきっかけになる
● 助成金や優遇措置が利用できる

障害者雇用はビジネスにプラスの影響を与える可能性があるので、雇い入れる際は前向きに進めましょう。ただし、ある程度の負担は発生するので、セゾンインボイスや支払い.comなどのビジネスに役立つサービスの導入を行い、作業の効率化を図ると良いです。

この記事を監修した人

岡崎 壮史
岡崎 壮史
社会保険労務士として、主に助成金に関する手続きやコンサルタント業務を行いながら、FPとしてお金に関するwebライター(主に、カードローン・生命保険・税金など)として、お金に関する情報の発信を行っています。資産運用・保険の見直し・家計の見直しなどの個人単位の相談や最近では、個人事業主や中小企業の事業主などの経営者からも同様の相談を受けることが増えてきました。現在は、名古屋市千種区で開業をしており、You Tubeなどで動画で情報発信を行う事業なども行っています。

【保有資格】
CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、社会保険労務士、日商簿記1級