棚卸とは？言葉の意味から方法や手順、評価の方法までまとめて解説

棚卸(たなおろし)とは、会社や工場、商店などで、保有している商品や原材料の在庫を数え上げ、数量や品質などを確認する作業のことです。

棚卸は、小さな小売店から大きな工場まで多くの場所で行われています。期末に行われるのが一般的ですが、業種・業態によっては毎月行われる場合もあります。

棚卸の主な目的は、保有する商品や原材料の在庫数を正確に把握することです。

在庫数は日々帳簿や在庫管理システムなどで管理しますが、帳簿上の在庫と実際の在庫は入力ミスや記載忘れなどにより、一致しない場合があります。

在庫数は、会社や商店の利益計算で大切な数値です。そのため、棚卸により在庫の正確な数を調査し、実際の在庫数を把握することが重要となります。

会社や商店などの利益を計算するとき、仕入れた金額や製造した金額から売上原価を計算して最終的な利益を算出します。

注意したいのは、仕入金額や製造金額がそのまま売上原価とならない点です。

通常、売れ残り(在庫)が発生するので、仕入金額や製造金額から売れ残り分を差し引く必要があります。

棚卸により在庫を正確に把握すると、会社の利益を適切に計算でき、経営状況の把握に役立ちます。

棚卸資産回転期間とは？

棚卸資産回転期間とは、売上高に対する棚卸資産の割合のことです。

商品を仕入れてから販売するまでにどれくらいの期間がかかったかがわかる指標であり、棚卸資産回転期間が短いほど、効率的に商品を販売できていると推測できます。

棚卸により会社の在庫(棚卸資産)を適正に把握しておくと、「仕入れた商品を早期に収益化できているか」「過剰在庫や販売期間が長期化していないか」などを判断するための指標が得られます。

棚卸には主に下記の2つの方法があります。

● 実地棚卸
● 帳簿棚卸

各方法の詳しい内容を説明します。

実地棚卸とは、倉庫や商品の陳列棚などで、実際に在庫を数え上げる方法です。

商品や原材料を目視で確認するので正確な在庫数を把握できる一方、確認作業に多くの時間と労力がかかるという問題があります。

実地棚卸の方法には、帳簿から在庫管理表などのリストをつくって照らし合わせる「リスト方式」や確認した数量を記載したタグを商品に貼り、その後タグを集計していく「タグ方式」などがあります。

帳簿棚卸とは、棚卸表や在庫管理表、在庫管理システムなどに記録された数値を確認する方法です。

実地棚卸と比較すると手間や労力がかからないメリットがありますが、帳簿棚卸の数値はあくまで「帳簿上の理論値」である欠点があります。

そのため、実務上は実地棚卸と帳簿棚卸を併用して行う方法が一般的です。

在庫管理では、帳簿に日々の在庫数を正確に記入すると同時に、定期的に実地棚卸を実施して帳簿上の在庫と実際の在庫とのズレを修正する必要があります。

実地棚卸の主な手順は下記のとおりです。

1. 棚卸のスケジュール計画
2. 棚卸の方法を選定
3. 在庫を数え上げる
4. 不良在庫などの処理を行う
5. 棚卸結果を報告

以下、各手順の内容を説明します。

初めに、棚卸を実施するスケジュールを決定します。

実地棚卸には、業務を一時的に停止して一斉に行う「一斉棚卸」、棚卸する箇所を区分けして少しずつ行う「循環棚卸」などの種類があります。自社の状況に合わせ、適したスケジュールを組みましょう。

そのほか、担当者の確保や担当範囲の割り振りも大切です。作業マニュアルをつくっておくと、当日の作業を効率化できます。

棚卸のスケジュール計画とともに、棚卸方法も選定しておきましょう。先述のように、実地棚卸には「リスト方式」や「タグ方式」といった方法があります。

棚卸当日は、現地へ担当者を派遣し、在庫の実数を目視で数え上げます。担当者に事前説明会を行うなど実施方法の周知徹底を行っておくと、カウントミスや時間のロスを防ぐことに効果的です。

また、カウントミスや重複確認を減らすには、2人セットで在庫確認を行う方法もあります。

在庫のなかには、不良在庫もあるので注意しましょう。現物にシールを貼るなどの処理をして、正常な在庫と区別できるようにしてください。

棚卸が終了したら、担当者から棚卸表を回収し、棚卸集計表などに集計を行います。その後、集計結果をまとめて、帳簿や在庫管理システムの数値と照合し、管理部門への報告を行います。

実地棚卸を行って正確な在庫数を把握できたら、棚卸資産の評価を行います。棚卸資産の主な評価方法は下記の2つです。

● 原価法
● 低価法

それぞれの評価方法の詳細を解説します。

原価法は、在庫の取得価額をそのまま棚卸資産として評価する方法です。原価法は棚卸資産の評価の仕方により、下記の6つに分類されます。

● 個別法
● 先入先出法
● 総平均法
● 移動平均法
● 最終仕入原価法
● 売価還元法

例えば、個別法は商品一つひとつの取得価額をもとに評価する方法です。難しい計算が必要ない半面、商品や原材料数が多い場合には計算に時間がかかり、管理が煩雑となるデメリットがあります。

低価法は、原価法で得られた取得価額をもとに、期末の時価とくらべて低い価額で評価する方法です。上場企業では、低価法による評価が義務付けられています。

以前は「洗い替え低価法」と「切放し低価法」の2種類から選択できましたが、現在では洗い替え低価法での評価が求められています。

棚卸を行う際には、正確な把握を心がける必要があります。一方、多くの商品や原材料数の確認が必要なため、効率的に行う点が課題です。

棚卸は実地での目視確認やデータ入力が必要なので、人的ミスに注意しましょう。担当者の確認後に別の担当者がダブルチェックを行う、日ごろから商品を整理整頓しておくなど、ミスを軽減する工夫が大切になります。

多くの商品や原材料を取り扱う業種では、在庫管理システムの導入も有用です。取り扱う商品数が多くなるほど、日々の在庫管理業務の負担は大きくなります。

在庫管理システムには人的ミスの軽減や在庫管理業務の効率化、在庫状況の可視化などさまざまなメリットがあり、在庫管理業務の作業時間短縮が見込めます。

在庫は棚卸資産として会計処理が必要で、税務申告にも利用します。会社や事業の効率化をより図りたい場合には、会計システムとの連携がおすすめです。

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棚卸は、商品数や原材料数の正確な把握や会社の利益の計算のために大切な作業です。

ただし、実地での棚卸には多くの人手や時間がかかる場合があります。事前にしっかりと準備を行い、場合によってはシステムを導入することが効率的な棚卸を行うコツです。

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