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情報銀行とは?必要とされる理由や活用方法、課題について徹底解説!

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情報銀行とは?必要とされる理由や活用方法、課題について徹底解説!
近年、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)が注目され、企業が持つビッグデータを有効活用する動きが盛んになってきています。しかし、ビッグデータには個人情報が含まれているため、本人の許諾を得なければ利用できません。

この問題を解決するために誕生したのが「情報銀行」という事業形態。本記事では、情報銀行が必要とされている理由や活用方法、課題について徹底解説します。

情報銀行とは?

情報銀行とは?

情報銀行は、システムを活用して個人のデータを管理し、ほかの事業者に提供する事業です。EUがGDPR(一般データ保護規則)を2016年に制定し2018年から施行されるなど、「企業中心」から「個人中心」のデータ活用を目指す世界的な潮流を背景に登場しました。

GDPRは、EU域内での統一的なルールで、パーソナルデータに関する個人の基本的権利を保護するための法律ですが、内容は多岐に渡っています。

そのなかで消費者にとって最も重要と思われる条項は「データポータビリティ権」で、21世紀の人権宣言といわれる画期的なものです。

個人のデータはその人自身のものという考えに基づき、企業等がサービスを通じて収集・蓄積した個人に関するデータを本人の意見でいつでも引き出し、ほかのサービスへ移転できることをいいます。そして、それを可能にする権利を「データポータビリティ権」と呼びます。

これまで個人のデータは一旦企業側に渡ってしまうと、消費者は近づくこともできず、なすすべがありませんでした。これからは自身の個人データにアクセスできるだけでなく、その持ち出しや移転も可能になり、自身の個人データをコントロールできるようになります。

それによって、あるサービスで蓄積された個人データをほかのサービスで元から利用することや個人データを異なるサービス間で相互運用することも可能になります。このように個人データを自分自身でコントロールできるようになるので、新たな事業機会が生まれると期待されています。

しかし、その一方で膨大な個人情報を自分自身で管理しなければならず、それは簡単ではありません。これからのデータ量の増大により、ますます困難になると思われます。

そこで必要とされるのが、個人データを一括受託して各事業者への情報提供を本人に代わって管理する仲介事業者です。

この事業者には2種類あります。1つは個人データのうち、制御と許諾を本人に代わって整理して流通を可能にするPDS(Personal Data Store)と呼ばれる事業者です。

もう1つが、PDSで整理された個人データを使って、企業群にデータを販売したり、そこから上がった利益をデータを提供した個人に還元する一種のマーケティング会社の「情報銀行」です。今後、2種類の仲介事業者が共同で個人データの販売を行うことが予想されています。

日本においては、2016年6月2日に閣議決定された「日本再興戦略2016年〜第4次産業革命に向けて~」のなかで、IoTやAIが重要な役割を果たすことになる第4次産業革命を促し、日本経済を成長させるためにデータを流通させる環境整備が必要であると主張され、情報銀行に関心が集まっています。

情報銀行はすでに複数行が認可されており、「データポータビリティ権」が創設された場合は、より注目度が高まるでしょう。

消費者自身でデータを管理するためにPDSの仕組みが活用される

PDS(Personal Data Store)は、個人が自らの意思で個人データを管理するためのプラットフォームであり、企業にデータを提供する機能を有します。PDSは、情報銀行が主体となってデータの第三者使用を許諾する仕組みではありません。あくまでも消費者が許諾を判断する主体となっています。

PDSにはさまざまな種類が存在し、情報銀行以外でも利用が検討されています。例えば、東京大学からは、ブロックチェーン技術を用いた「PLR」(Personal Life Repository)という分散型PDSが開発されています。ただし、分散型PDSではデータが特定のサーバーに集中保管されません。

日本における情報銀行は、「集中型」と呼ばれるタイプのPDSを使用するビジネスの一例です。集中型PDSでは、個人情報を含むデータが情報銀行事業を営む企業が設定するサーバーなどに格納され、消費者の設定・指示に基づいて第三者(企業)に提供されます。

ビジネスにおいて情報銀行が必要とされる理由

ビジネスにおいて情報銀行が必要とされる理由

ビジネスにおいて情報銀行が必要とされている理由は、個人情報を含むさまざまなデータを流通させることにより、ほかの企業でも活用できるようにして、新しいサービスを生み出したりビジネスを効率化したり経済の活性化を図ったりするためです。

現在インターネットの世界では、デジタルプラットフォーマーと呼ばれるアメリカの超巨大IT企業にビッグデータが集積し、それを分析することによりさらに利益を上げるという構造が成立しています。情報銀行は、そのような巨大IT企業へのデータの一極集中を切り崩し、新しいサービスを創造できるかもしれません。

またIoTやAIの普及により、事業者のなかにお金を出してでもデータを集めるべきであるという認識が広まっています。例えば、インターネット閲覧履歴や通販の購入履歴といったビッグデータを分析すれば、効果的なプロモーションに役立てたり潜在的な需要を探ったりすることが可能です。

情報銀行の登場により、観光や金融(フィンテック)、医療・介護・ヘルスケア、人材といったさまざまな分野において、個人情報を含むデータをビジネスに活かすことが期待されています。

情報銀行の役割

情報銀行には、以下に示す5つの役割が存在します。

(1)パーソナルデータを安全な環境で管理する
(2)パーソナルデータが消費者個人のものであることを明確にしておく
(3)第三者に提供したデータの用途(どこで、どのように使用されているか)を明らかにする
(4)データの使い道は消費者自身がコントロールできる
(5)パーソナルデータを活用して獲得した便益を消費者に還元する

重要なのは、データを預託している消費者本人の意思を重視しているという点です。情報銀行では、消費者本人が制御できる形でなければ、データを利用することができません。

参入が期待される企業

情報銀行には民間団体による認定制度が存在します。認定の種類は、「通常認定」と「P認定」の2つ。P認定は、サービス開始に先立ち、計画、運営・実行体制が認定基準に適合していることを認定するものです。

認定は、2016年7月に設立された「一般社団法人日本IT団体連盟」が実施しています。日本IT団体連盟に加盟しているIT関連企業は数千社以上です。ただし、日本IT団体連盟による認定を受けなくても情報銀行の事業を営むことは可能であり、取得が義務とされているわけではありません。

情報銀行事業への参加が期待される企業としては、金融機関や広告会社が挙げられます。金融機関は、決済情報を大量に保有するため、情報銀行事業に適しているといえるでしょう。

ちなみに、日本IT団体連盟から現時点で情報銀行の認定を受けているのは、金融や電力、ITといった分野の事業を営む企業です。認定を受けていなくても、さまざまな企業が実証実験や参入をアナウンスしています。

情報銀行の課題および今後の展望

情報銀行には課題があります。具体的には、プライバシーを保護できるか、個人のデータが充分に集まるかという問題です。個人情報を第三者へ提供されることに不安や抵抗感を抱く方も多いため、データが充分に集まらない可能性があります。

この状況を打開して充分なデータを情報銀行に集めるためには、個人に対してデータをコントロールする権限(データポータビリティ権)を付与し、データを持つ企業と個人の関係を対等なものにして相互の信頼を高めていかなければなりません。使われ方のフィードバックや管理体制の透明化、自分のデータの行き先を追跡可能な仕組みも必要でしょう。

ただし、情報銀行を利用するのに手間がかかり過ぎることも、データが集まらなくなる要因になりかねません。消費者本人の許諾・制御を根本に置きつつ、手間を削減することが可能なシステムを構築することも重要です。

法制度面では、2020年6月5日に個人情報保護法改正法案が国会で可決されました。「データの消去権」が盛り込まれて個人の権利が拡充されるとともに、「匿名加工情報制度」が導入されることにより個人データのビジネスにおける活用拡大が期待されています。

改正個人情報保護法は交付後2年以内に施行される予定となっていますが、具体的なガイドラインはまだ作成されていません。情報銀行の利便性を高めるためには、制度面と運用面のそれぞれで改良が必要です。

よくある質問

Q1 情報銀行とは?

情報銀行は、システムを活用して個人のデータを管理し、ほかの事業者に提供する事業です。EUがGDPR(一般データ保護規則)を2016年に制定し2018年から施行されるなど、「企業中心」から「個人中心」のデータ活用を目指す世界的な潮流を背景に登場しました。

Q2 ビジネスにおいて情報銀行が必要とされる理由は?

ビジネスにおいて情報銀行が必要とされている理由は、個人情報を含むさまざまなデータを流通させることにより、ほかの企業でも活用できるようにして、新しいサービスを生み出したりビジネスを効率化したり経済の活性化を図ったりするためです。

まとめ

AIの普及により、ビッグデータを分析してマーケティングなどに有効活用することが広まってきています。そのため、有償でも個人情報を含むデータを入手したいと考える企業が増えてきました。

個人が自分自身のパーソナルデータをコントロールしながら、ビジネスで活用するためには、PDSの仕組みを利用した情報銀行が必要不可欠です。

現在、さまざまな企業が情報銀行に参入しつつある状況です。個人情報保護法改正など法整備も進んできており、ビジネスを展開しやすい環境が構築されています。情報銀行が成功するためには、個人情報の保護とビジネスの発展を両立していくことが大切です。

ビッグデータの時代に入り、情報銀行は企業側にとっても一般消費者側にとっても重要になることが予想されます。

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この記事を監修した人

岩田 昭男
岩田 昭男
月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動するが、メインはクレジットカード&デビットカード、電子マネーなど。とくにSuicaは2001年のサービス・スタート以来の愛好者で、通勤から買い物まで活用している。年に4回ほどクレジット&電子マネーのムックを出版しており、最新情報にも詳しい。2020年東京オリンピックを目指して始まったキャッシュレス促進の利用者側に立ったオピニオンリーダー。NPO法人「ICカードとカード教育を考える会」 の理事長も兼ねており、毎月全国各地の商店街を対象にキャッシュレス導入や促進に関する講演会を行なっている。ネットフリックスの熱狂的なファンとして知られる。