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子育て支援には何がある?日本で子どもは育てやすいのか検証してみよう!

日本の出生数は年々減少しており、2022年度の出生数は77万人となりました(注1)。少子化の要因は婚姻数が減少したことも要因のひとつではありますが、日本において子ども1人を育て、教育を受けさせようと考えると、多額の教育資金がかかります。そして教育費の大半を個人の所得から捻出することも負担の一因となっていると考えられます。
この記事では日本の子育て支援には何があるのか、世界と比較して日本は子どもを育てやすい国なのかを検証していきます。

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子どもを育てるために必要な費用は?

子育てにかかる費用はいろいろありますが、おおきく分けると養育費と教育費に分けて考えることができます。

<養育費>
一般的に子どもが社会的・経済的に自立するまでにかかる費用のことです。食費や衣類・服飾雑貨費、生活用品費など衣食住に必要な費用のほか、教育費、医療費などが該当します。

<教育費>
学校の入学金や授業料、学習塾などの費用などを指します。幼稚園から大学までの養育費と教育費を合算した子育て費用の相場については、約2,000万円〜4,000万円程度かかるとされています。公立に行くか、私立に行くかで費用は大きく変わってきます。

また、年齢によってかかる費用は異なります。内閣府の「インターネットによる子育て費用に関する調査」では、ひとりあたりの年間子育て費用総額(第1子について)を算出しています。就学区分別でみる年間子育て費用の総額は下記のとおりです。

1.第1子一人当たりの年間子育て費用額 を参考に抜粋
就学区別年間子育て費用
未就園児約84万円
保育所・幼稚園児約122万円
小学生約115万円(6年間で約696万円)
中学生約156万円(3年間で約467万円)

それ以外にも、出産前にかかる費用も含めて考える必要があります。財団法人こども未来財団の「子育てコストに関する調査研究」によると、妊娠・出産費用の平均額は、約50万4,000円です。健康保険から出産育児一時金として一児あたり42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産の場合は40.8万円)支給されるため、おおむね賄えますが、無痛分娩や帝王切開となった場合を想定するとより多くの費用がかかることも考えられます。

子どもを育てるためには、日本においては多くの費用がかかることが分かりました。共働き、2馬力で家計を回しているという家庭も多いでしょう。ひとり親世帯においては、1馬力のためより多くの金銭的負担がかかることが想定されます。

日本政府による「子ども・子育て支援新制度」には何がある?

日本はGDP比較でみると、子どもにかける予算が先進国の中で少ない国の1つです。具体的には、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、各国の子ども・子育て支援に対する2017年の公的支出は、日本がGDP比で1.79%と、OECD平均の2.34%を下回る結果となっています。子育て支援の充実したフランスやスウェーデンと比較すると、その3分の1しかありません。
少子高齢化や女性の社会進出が進む日本の子育て支援策は、女性の仕事と子育ての両立支援から始まり、働き方の見直し、ワークライフバランスの改善、若者の自立支援を経て、2015年4月からは、国全体で子どもを産み育てやすい社会を形成するための子育て支援制度として「子ども・子育て支援新制度」が立ち上がりました。

2023年3月現在、岸田政権が「次元の異なる子育て支援」の実現を表明し、制度の検討中ですが、まずは既存の「子ども・子育て支援新制度」についておさらいしておきましょう。
内閣府ホームページ上の言葉を抜粋すると「子ども・子育て支援新制度は、幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めていくためにつくられた制度です。 必要とするすべての家庭が利用でき、子どもたちがより豊かに育っていける支援を目指し、取組を進めています。」とあります。具体的にどのような支援を行っているのでしょうか。

<支援1>量の拡充
必要とするすべての家庭が利用できるよう、子どもの年齢や親の就労状況などに応じた多様な支援、待機児童の解消のため受け皿の増加として、幼稚園と保育所の機能や特長をあわせ持った認定こども園や地域型保育を普及。
<支援2>質の向上
子どもたちがより豊かに育っていける支援として、幼稚園や保育所、認定こども園などの職員配置の改善(子どもに対して職員の割合を増加)や職員の給与や研修などの待遇アップを実施。
<支援3>仕事と子育ての両立支援
従業員が働きながら子育てしやすいように環境を整えている企業の支援として、従業員のための保育施設の設置・運営の費用を助成やベビーシッター費用の補助を実施。
<支援4>地域の子育て支援
すべての子育て家庭を対象に、家庭や妊産婦の困りごとに合わせ、一時預かりや病児保育、放課後児童クラブ、子育て支援に関する情報提供、妊婦健康診査などを市町村毎に実施。

また気になる金銭的な面での支援は、「認定区分や保護者の所得に応じて、保育料が決まる」となっています。
 保育料は国が定める上限額の範囲内で、それぞれの市町村が定めます。
①保育料は保護者の所得(市町村民税所得割課税額など)を基に算出されます。
②多子世帯やひとり親世帯などについては、保育料の負担軽減があります。
・きょうだいで利用する場合、最年長の子どもから順に2人目は半額、3人目以降は無料となります。
・年収約360万円未満相当の世帯の場合、軽減措置が拡充されます。
 例)ひとり親世帯などの場合、第1子半額・第2子以降無料となります。
 生活保護世帯や、ひとり親世帯などで市町村民税非課税世帯の場合は、第1子から無料です。

都道府県別の子ども・子育て支援は?

東京都

小池百合子都知事が2023年1月13日の記者会見で、「18歳以下への月額5000円給付」などの新たな子育て支援策を打ち出しました。また2023年度は子ども関連予算を約2000億円増額し、1.6兆円を投じるということを強調し、子育て支援への注力が進められています。

・子ども医療制度各自治体によって異なります。
・児童育成手当(育成手当)
・子育て応援とうきょうパスポート事業
・東京都出産応援事業
・シングルママ・シングルパパ くらし応援ナビTokyo

など数多くの支援があります。「シングルママ・シングルパパ くらし応援ナビTokyo」のようなひとり親になる、なるかもしれない方に向けたサイトがあり、ひとり親家庭への支援が進んでいるのが、特徴的です。

愛知県

・子ども医療制度(通院は義務教育前まで、入院は中学校卒業までが助成の対象)
各自治体によって異なります。
・あいちはぐみんネット
・育児もしもしキャッチ

などの支援があります。子どもの医療費に関しては、2022年4月より高校生まで医療費無料とした自治体が多いのが、特徴的です。上記にあげた以外にも出生率を上げるために、出会いの場の提供など、結婚を支援する制度も存在しています。

大阪府

・子ども医療制度各自治体によって異なります。
・児童いきいき放課後事業大阪市
・まいど子でもカード(関西子育て世帯応援事業)

大阪は大阪市においては、塾代助成事業や放課後子どもを無料で見てくれるなどの制度が充実しています。しかしそれ以外の自治体では行っていない制度であり、自治体によって子育て支援に差があります。

北海道

・子ども医療制度各自治体によって異なります。
・どさんこ・子育て特典制度
・せわずきせわやき隊(地域の子育て・子育ち支援)/北海道すきやき隊(企業・団体の子育て支援)

北海道は、地域で子どもを育てていこうという意識が強くあり、子育てに対して支援や市営団体の活動が活発です。例えば「せわずき・せわやき隊」とは、地域ぐるみで子育てや子育ちを支える活動をする子育てや子育ちに関わるボランティア団体の方々のことを指し、道内70を超える市町村で「せわずき・せわやき隊」の登録があります。

沖縄

・子ども医療制度
各自治体によって異なります。
・おきなわ子育て応援パスポート

子育て支援の内容や充実度が、各自治体によって大きく異なるのが特徴です。そして出生率は、1974年以降47年連続で全国1位であり、多子家庭が多い傾向にあります。同時に離婚率も全国1位であり、シングルマザーやシングルファーザーのようなひとり親世帯が多いと言えるでしょう。

世界の子育て支援と比較してみよう!

日本の子育て支援制度は、都道府県によって異なるだけではなく、その都道府県の各自治体によって異なることが分かりました。では日本と世界ではどのように子育て支援が違うのか、見ていきたいと思います。

ヨーロッパ

子育て支援制度が充実しているというイメージが強いヨーロッパ、一体どんな支援制度があるのか国別に見ていきます。

<ノルウェー>
父親と母親の両方が育児休暇制度を利用しており、育児休暇中も賃金の80〜100%が補償されます。ほとんどの人が赤ちゃんが1歳になるまではこの制度を利用して自宅で子育てを行います。赤ちゃんが1歳になったときには、親の就労状況に関係なくすべての子どもが保育園に通うことができます。

<フランス>
公立であれば幼稚園から大学まで学費がなんと無料です!また、国立大学の入学費や授業費も原則無料となっています。学費の心配がなく、学校以外でかかる習い事などの教育費も年間数万円程度の金額で十分な教育を受けさせることができるため、安心して子育てができます。加えてフランスでは最長3年間は育児休暇が取得でき、育児休暇後も出産前と同等の地位が保障されています。さらにフランスの学校にはバカンス・スコレールという2ヵ月間の長期休暇があり、親も子どもの休みに合わせて、年間5週間もの有給休暇を取得することも可能です。子どもと過ごす環境作りを国全体で後押ししています。

<スウェーデン>
福祉大国として知られ、北欧諸国の中でも男女平等が進んでおり、妊娠・出産後も働き続ける女性が多いとされています。企業だけではなく、女性の社会進出をサポートする男性も多く、日本の男性育児休暇取得率が令和3年度にようやく13.97%なのに対して、スウェーデンでは90%近くに上ります。父親・母親合わせて480日の有給育児休暇を取得できますが、その内の90日は相手に譲ることができないと法律で定まっています。それ以外にも育児休暇の分割ができたり、子どもが8歳になるまで勤務時間を短縮できたりと、夫婦で協力して育児が行える環境が整っていると言えます。

日本と比較してみると、どの国も共働きが当たり前であり、男性の育児休暇取得率が高いと言えます。教育費が高くつく日本においては、フランスの大学までの学費の無料というのは、大きな魅力の1つです。現にフランスは出生率の向上に成功しています。またひとり親世帯とは異なる事実婚という形で、暮らしているカップルも多く存在します。

アメリカ

アメリカは子育て支援や福祉制度が、そこまで充実していません。児童手当などはなく、所得控除や税額控除を子育て世帯に行うことで、税制を通じて子育て支援策として展開しています。それ以外にもWIC(Women、Infants、Children)という妊婦と5歳までの子どもに、受給資格はあるものの、食料品の補助をしてくれる支援プログラムがあります。CHIP(Children Health Insurance Program)という18歳以下の子どものための低料金健康保険などがあります。

アメリカでは日本の産休や育休のような定まった制度がないため、産後すぐに職場復帰をする人が多い傾向があります。自分や家族の病気などで休む場合の休暇で最長12週間取れる制度(Family and Medical Leave Act)はあるものの、ほとんどの企業で無給の休暇となっていることもあり、産後6週間の検診後にすぐ仕事復帰する人が多いのが実態です。日本と比較してみると、日本の方が子育て支援に関しては充実していると言えるでしょう。

中国

2016年に「1人っ子政策」を撤廃した後、出生率の低さから中国政府は、2021年5月に1組の夫婦に3人まで子どもを持つことを認める(3人っ子政策)方針を発表しました。中国では地域ごとに制度の新設や拡充の進行度合いが異なっており、どの地域に住んでいるかで産休や育休の取得可能日数、出産手当金や育児補助金制度を有無などが異なります。

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まとめ

子育てには多くのお金がかかります。日本の子育て支援制度は、ヨーロッパに比べると見劣りしてしまいますが、その他の国に比べると比較的充実しており、国だけでなく都道府県や市町村毎の支援制度も増えています。また、地域によっては結婚への支援制度もあり、結婚新生活支援事業として、一定の年齢と年収条件を満たしていれば、最大60万円の補助金を受け取ることができます。地域による差が大きいため、日本全体が子育てしやすいとは言い切れないかもしれませんが、現在検討されている「次元の異なる子育て支援」など、今後の子育て支援拡充に期待したいところです。

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