2024年10月に火災保険が値上げ!理由と今後の火災保険の選び方を徹底解説
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2024年10月に火災保険料が値上がりすることをご存じでしょうか。そもそも火災保険って必要なの?火災保険にはどんな種類や補償があるの?なぜ値上がりしたの?火災保険を自分で選びたいけれどどう選べば良い?など、さまざまな疑問が出てくるでしょう。
日本には「失火責任法」という法律があり、隣家からのもらい火で自分の家が焼失してしまったとしても、その火が起きた原因が隣家の「重大な過失」であると認められない限りは、隣家に損害賠償請求をすることができません。(注1)
そのため、自分の家の建物や家財の補償を受けるためには、自分で火災保険に入っておかなければならないのです。
この記事では、火災保険の仕組みや保険料値上げの背景だけでなく、値上がり後の火災保険の選び方や加入方法まで、見るべきポイントを徹底解説していきます。
火災保険ってどんなもの?
火災保険とは、突然起きた事故や突発的に起きる災害によって、建物や家財が受けた損害を補償してくれる損害保険商品のひとつです。損害保険は、事故や災害など思わぬアクシデントによる損害を補償してくれます。
火災保険が補償するのは、「建物や家財が火災などにあったときの焼失・損壊・破損などによる損害」ですが、実は…補償される事故・災害は火事だけとは限りません。
補償内容は保険商品ごとに異なりますが、火災保険には落雷や水災、風雪による被害などが含まれる商品や選択できる商品があります。
中には水濡れによる被害や盗難、車の衝突などによる建物の破損なども補償の対象になる火災保険もあります。ただし地震や噴火、またはこれらに起因する津波が引き起こした損害は火災保険では補償されず、別途地震保険に加入する必要があるので注意が必要です。(一部の火災保険では、地震火災費用保険金をお支払いする場合があります。)
火災保険は任意であり、法的に加入が義務付けられているわけではありません。しかし住宅ローンを組むときには、ほとんどの金融機関は火災保険加入を必須条件にしているため、現実的には「加入必須」な保険と言えます。また、先述のように自分の家の建物や家財は自分で守る必要があるため、持家でも賃貸でも、火災保険に加入しておく方が安心です。
火災保険の種類
火災保険には、一般の住宅などを対象とした個人向けの火災保険と事業者を対象とした企業向けの火災保険があります。
個人向けの火災保険には、補償範囲(内容)が決まっているパッケージ型の保険商品と自分で補償を選択できる商品があります。
【ここを覚えておこう!】
補償選択型の火災保険では保険会社により異なりますが、最低限の補償「火災、破裂・爆発」のみが必須で、他はすべて自分で自由に補償を選べます。補償選択型の保険の場合は、自分の居住地域や考え方に合わせて必要な補償だけを自分で選ぶことができれば、保険料が節約できることが多い傾向にあります。名称を覚えておく必要はありませんが、補償範囲が選べるということを知っておきましょう。
知っておきたい火災保険にまつわるキーワード
住宅の購入や賃貸時に検討することになる火災保険。専門用語が多く、難しいと感じる方も多いことでしょう。そんなときに知っておくと便利なキーワードをひとつひとつ解説していきます。火災保険選びや見直しの参考にしてください。
参考純率
参考純率とは、各保険会社が保険料を算出するときに目安として使用できる純保険料率のことです。純保険料率というのは、火災による損害や自然災害による損害などが発生したときに、保険会社が支払う保険金に充てられる部分の保険料率です。
参考純率は損害保険料算出機構が、会員である各保険会社から収集した大量の契約・支払データのほか、各種の外部データも活用して算出しています。(注2)
2014年から段階的に数パーセント引き上げられてきた参考純率ですが、2021年6月16日、損害保険料率算出機構が火災保険の参考純率を全国平均で10.9%上げると発表したことにより、この参考純率をもとに火災保険料を設定している各保険会社も火災保険料を値上げすることになりました。
そして、2023年6月28日、損害保険料算出機構は火災保険の参考純率を全国平均13.0%引き上げることを発表しました。火災保険の参考順率は2014年から過去4回にわたって引き上げがありましたが、2024年10月に実施される今回の引き上げ幅は過去最大となっています。
今まで一定だった「水災料率」が2024年10月から見直される!
料率とは保険料を計算するための基になる数値のことを指します。「水災料率」は、火災保険料を計算するにあたって、水災リスクを保険料に織り込むためのものです。
今までも台風(風災)や雪災などの料率は、地域ごとに差を設けていました。しかし、水災の料率は地域ごとのデータが不十分であったことから全国一律となっていました。
しかし、近年、水災による損害が増加していることから、2022年10月の火災保険の引き上げ時には行われなかった「水災料率」の見直しが、2024年10月の引き上げ時には見直されることになりました。水災料率の細分化は市区町村単位で行われ、保険料が最も安いグループである「1等地」から最も高いグループである「5等地」までの5区分としています。この区分により、保険料が最も高い地域は、最も安い地域に比べて、約1.2倍の保険料になります。
損害保険料率算出機構のウェブサイトでは、水災料率の等地情報が確認できます。
住宅を保有している方も、そうでない方も、お住まいの場所を確認し、防災に備えましょう。
▶水災等地検索システム
保険期間
保険期間とは、保険会社が補償の責任を負う期間のことであり、この期間中に保険契約に定められた事故や災害が起きたときに保険金を受け取ることができます。ただし保険期間中であっても、保険料の支払いが滞っているときに保険事故が発生した場合には、保険金が支払われないことがあるため注意しましょう。
また、2022年10月以降は10年だった最長保険期間が5年に短縮されています。これも近年の自然災害の増加が要因で、将来発生する災害の規模や頻度を予測することが非常に難しく、保険会社は長期的なリスクを抱えられない状態になっているためです。
保険金額と評価額(新価)
保険金額とは、保険契約で設定する契約金額のことを言い、保険事故が発生したときに保険会社が支払う限度額です。
火災保険の保険金額は適正な評価のもと、設定されます。その評価額には再調達価額(新価)と時価の2つの基準があります。
「再調達価額」
「再調達価額」とは、保険の対象となる「財物」と同等(同じ構造、用途、規模など)のものを、現時点で再築または再購入するために必要な金額をベースとした評価額です。
正確な評価方法は非常に煩雑なものではありますが、簡単に説明すると、新築物件や新品で購入した家財であればその購入時の金額を、中古物件や中古で購入した家財であればそれと同等のものを新築や新品で購入するときにかかる金額が評価額となります。
「時価額」
「時価額」とは、再調達価額から経年・使用による消耗分(減価)を差し引いた金額をベースとした評価額です。「再調達価額」と「時価額」の関係を算式で示すと、次のようになります。
●「時価額」=「再調達価額」ー経年減価額(経年・使用による消耗分)
給付金
火災保険の給付金とは、自然災害による被害や意図せず発生した偶発的被害を、保険会社に申請することによって受け取れる保険金のことを言います。自然災害による被害や、意図せず発生した偶発的被害のことを、保険事故と呼びます。
火災保険による保険事故には、以下のようなものが事故の例としてあげられます。
●火災、落雷、破裂もしくは爆発
●風災、ひょう災、雪災
●水災
●盗難
●給排水設備事故の水漏れ等
●車両又は航空機の衝突等
●建物の外部からの物体の衝突
●その他偶然な破損事故等
【ここを覚えておこう!】
火災保険の対象となる保険事故が起きたとき、場合によっては数百万円~数千万円の大きな額の給付金を受け取ることもあり、税金がかかるのかどうかが気になるという方も多いのではないでしょうか。保険料を支払っている人(保険契約者)が上記のような保険事故で保険金を受け取ったとき、原則として課税はされません。(注3)
費用保険金
費用保険金は、建物や家財の損害のほかに、さまざまな費用が必要となるため、その費用をサポートするために支払われる保険金です。※保険会社により損害の内容によっては、保険⾦が支払われない場合もあります。
具体的には
●損害を受けた保険の対象の残存物を片付けるための費用(残存物取片づけ費用保険金)
●失火・爆発事故により隣近所に損害を与えたときの費用(失火見舞費用保険金)
●仮住まいなどに使うことができる費用(臨時費用保険金)
●地震による火災で保険の対象に一定の条件で損害が発生した場合の費用(地震火災費用保険金)
●火災保険事故による損害の発生や拡大を防止するための費用(損害防止費用保険金)
などがあります。
火災が起きてしまったとき、焼け残ってしまうものや消火作業によってダメになってしまうものが意外と多く発生する場合があります。それらの残存物を片付けるのに想像以上の費用がかかってしまうことがあり、そんなときに使えるのが残存物取片づけ費用保険金です。
また、最初にお伝えしたように日本には失火責任法という法律があるため、たとえ自分の家から出た火が隣家に燃え移ったとしても、重大な過失がない限りは損害賠償請求をされることがありません。補償をする義務がないため、隣家のために自分の保険を使うこともできません。とはいえ、道義的な対応として被害にあった隣家に見舞金を支払うときに使うことができるのが失火見舞費用保険金です。
それぞれがどんなときに使えるものなのかを理解し、万一のとき自分に必要かどうかを想像した上で、補償を選んでいきましょう。
ハザードマップ
ハザードマップとは「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」とされています。防災マップ、被害予測図、被害想定図、アボイド(回避)マップ、リスクマップなどと呼ばれる場合があります。
ハザードマップは、国土交通省や各都道府県で出されています。各種ハザードマップも参考にして、本当に水災補償を外しても大丈夫なのかどうか確認すると良いでしょう。
割引
各保険会社固有の割引制度があります。新築の住宅に対する新築割引や、ホームセキュリティ割引、オール電化割引などがあります。また地震保険については、国土交通省の定める耐震等級を有している建物や免震建築物の基準に適合する建物などについては、地震保険の割引制度がある場合もあります。
保険料を安く抑えるためには、具体的にどのような割引制度があるのか、今一度確認することのをおすすめします。
火災保険引き上げの理由は?
火災による被害は、防火設備の向上にともない年々減少傾向にあります。それにもかかわらず、なぜ「火災保険」の保険料が値上げされるのでしょうか。答えはうえでも触れたように、自然災害が増えているからです。
火災保険で対応する事故のうち6割超の原因を自然災害が占めるようになっています。
「ジェイアイ傷害火災保険株式会社」が2022年7月に全国を対象にインターネットで実施したアンケート調査では、「不安に思う災害ランキング」は以下のグラフのとおりで、多くの方が不安を感じていることがわかります。
「火災保険」の多くは、火災だけでなく、自然災害その他に広く対応しています。台風による風災や集中豪雨での水災をはじめ、大雪の被害、落雷、ガス漏れなどによる爆発、水漏れなど、広く補償しているものが多く、こうした被害が日本では、年々増えています。そのため、先述した「参考純率」が上がり、結果として火災保険料の値上げに繋がっているのです。
【重要】火災保険を見直すタイミングっていつ?
就職、転勤、一人暮らし、両親との同居、結婚、子どもの誕生など「生活環境の変化」は人生の中で何度も訪れます。こうした生活環境の変化のときには、住居の購入や引っ越しをすることも多いでしょう。そのときは火災保険への加入をさまざまな角度で検討し、火災保険を選びましょう。また、転居などがない場合でも火災保険を見直すタイミングは訪れます。具体的には、以下で示したタイミングで補償の範囲・契約内容を見直すことをおすすめします。
火災保険料が値上がりするとき
前回は2022年10月に火災保険が引き上げられました。現在(2024年8月)は、2024年10月の引き上げ前にあたる時期ですので、火災保険を見直すにはよい時期だと言えるのではないでしょうか。自然災害が増えている日本では、今後もいつ、また、火災保険料の値上ががあるか分かりません。
2009年以降、参考純率が変更される場合には、その改定内容や趣旨などが損害保険料率算出機構の公式サイト上に掲載されることとなっています。その前後には各新聞社などがニュースとして取り上げますので、もし次に値上がりするという情報を得たときには、実際に値上がりしてしまう前に自分の火災保険の内容を確認し、見直す機会にしてみてください。
引っ越しやリフォームをしたとき
引越しをする場合には、「賃貸→賃貸」「賃貸→持家」「持家→賃貸」などのパターンがあります。それぞれで対応は異なりますが、基本的には一度火災保険を解約し、契約し直すという方が多いです。
そういったときは、補償内容や価格を見直す良い機会です。自宅をリフォームにより、増改築した場合は火災保険の見直しが必要です。増築や改築があると「面積・建物構造の変化」によって住宅の再評価・必要保険金額の再設定が必要になり、火災保険の保険料も変わってくるからです。
家族構成が変わったとき
火災保険において、家財への補償をつけている場合
●子どもが生まれた
●高齢になった親との同居
●子どもが成長し独立した
など、同居する家族が増えたり減ったりした場合、家財も増減しますので、家財保険の補償金額を見直す必要があります。子どもが産まれたなど家族が増えて、家財が増える場合は補償を手厚くする必要があります。子どもの進学や独立などで家族が減る場合は、補償を減らしても良いでしょう。
保険料が家計の負担になってきたとき
住宅や生活を守るために大切な火災保険ですが、その保険料が家計の負担になっていてはいけません。災害やトラブルから住宅を守ることも大事ですが、日々の生活も同じぐらい大事です。そういった場合は、減らせる補償はないか、少しでも安くなる火災保険はないか、今一度火災保険を見直しましょう。
火災保険の選び方
火災保険は、戸建てやマンション、賃貸などその生活環境によって選ぶ際に注意すべきポイントは異なります。
戸建て
戸建ては建物の設定金額の決め方から基本補償範囲の選定など火災保険選びは難しく、水災・風災の有無と地震保険に加入するかが、大きな選び方のポイントになります。自分の家の環境だけではなく、立地や近隣の住民など周辺環境も考えて、火災保険選びをするようにしましょう。
購入物件なら建築会社や住宅ローンを契約した銀行から特定の火災保険を推奨されるケースなどもありますが、その場ですぐに決めることはおすすめしません。必ず複数の保険会社から見積りを取り、保険料や補償内容を比較した上で自分に合った保険商品を選ぶようにしましょう。適切な保険会社とプラン選びをすれば、保険料を大幅に節約できる場合もあります。
マンション
マンションは共用部分の補償を管理組合が行うため、居住者は専有部分について自分で補償を準備する必要があります。
マンションの火災保険選びにおいて、重要なのは水濡れリスクです。発生個所がどこかによって、上の階か管理組合に損害賠償を請求することができます。
マンション管理組合又は管理会社に「マンション管理組合で加入している保険に個人賠償保険を付帯していますか?」と確認してみましょう。
加入していれば、マンション管理組合又は管理会社にその保険を使って賠償してもらうことができますし、万一自分が賠償請求された場合にも使うことができます。
これからマンションを購入するのであれば、管理組合に確認してみるのが良いでしょう。
もし管理組合が加入していない場合は、自分の火災保険あるいは自動車保険などの特約に「個人賠償責任保険」に入っているかを確認しましょう。
両方とも該当しない場合は、自分の火災保険あるいは自動車保険などに特約として個人賠償責任保険を付帯しましょう。月々数十円~数百円の保険料で、水濡れ以外にも自分や家族が他人を傷つけてしまったり他人の物を壊してしまったときに使うことができます。
賃貸
賃貸物件の場合は大家さんが火災保険の加入を必須条件にすることが一般的です。家を借りている人は、建物の所有者である大家さんに対して原状回復義務を負っています。万一、入居中に建物を焼失させたり壊してしまったりした場合は、自分で元の状態に戻さなければならないのです。そのため、賃貸物件に住む場合は自分の家財に対する火災保険と、大家さんに対する借家人賠償特約と隣人に対する個人賠償責任特約をセットするのが一般的です。
また、賃貸契約を結ぶときには仲介する不動産会社から火災保険の見積提示を受けることもあります。高すぎる、と感じた場合はご自身で調べることで支払う保険料が安く抑えられる場合もあります。
賃貸契約に必要な条件を確認した上で、なるべく自分自身で保険会社とプランを選んで加入するようにしましょう!
火災保険の加入方法
火災保険に加入する方法は、以下のような方法があります。
●自分でインターネット加入する
●専業の保険代理店や来店型保険ショップで加入する
●銀行で加入する
●不動産業者で加入する
加入方法によってさまざまなメリット・デメリットがありますが、自分で必要な補償を選んで、少しでも安く火災保険に入りたいという場合には、インターネットから加入する方法がおすすめです。対面や郵送のように事務コストがかからない分、保険料が安くなることが多くあります。
まずは見積もりをシミュレーション
各保険会社や保険代理店では、ネット上もしくは紙面にて、見積もりをとることができます。一番簡単で早いのは、やはりネット上で見積もりをとることです。簡単な情報を入力するだけで大体の見積もりを出してくれるので、参考になります。
保険加入に必要な書類
火災保険の契約に必要な書類は保険会社によって、異なります。
以下は、一般的に必要とされる書類ですので、になります。参考にしてください。
<戸建ての場合>
●建築確認申請書(第1面~第5面)
●確認済証
●検査済証
●建築住宅性能評価書
●全部事項証明書
●物件の仕様書・図面・パンフレットなど
●金融機関口座の情報・届け出印(口座引き落としの場合)
<マンションの場合>
●重要事項説明書
●全部事項証明書
●売買契約書
●金融機関口座の情報・届け出印(口座引き落としの場合)
<賃貸の場合>
●賃貸契約書
●金融機関口座の情報・届け出印
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火災保険料が値上げされる今、月々の保険料を少しでも安く抑えたいという方、なるべく早く、手軽に保険に入りたい方には、ダイレクト型のインターネット火災保険がおすすめです。
ご自宅の火災保険、 見直してみませんか?
まとめ
私たちの生活に欠かせない住宅や家財、それらを守る保険である火災保険は、どの保険会社を選ぶのか、どのような補償内容にするかよく考えて選ぶことが大切です。保険料を払う必要があるのですから、その対価に見合った補償をしっかりと受けられるような保険に入っておけると安心ですね。
自分の家の建物や家財は自分で守らなければなりません。万一に備え、ハザードマップなどを活用して、必要な補償を自分で選べるようにしましょう。