2025年からはじまる大学無償化の条件とは?手続き方法や注意点をわかりやすく解説
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大学無償化制度とは
大学無償化は、経済的な理由で高等教育の機会が制限されることなく、より多くの学生が大学や専門学校などの高等教育機関に進学できるようにするための支援策です。具体的には、授業料や入学金の免除、または補助することで、学生及びその家族の負担を軽減します。
文部科学省が公表した「学校基本調査」によると、2023年度の大学(学部)進学率は57.5%と過去最高でした。大学進学率が上昇する一方で問題視されているのが子どもの進学費用です。特に大学は専門性が高いため、授業料が高額になるのが一般的です。そのため、教育費の負担を気にして子どもを作らない、もしくは第二子・第三子を設けない選択をする世帯もあるでしょう。
また、日本学生支援機構が公表した「令和4年度 学生生活調査結果」によると、大学学部の昼間部にて奨学金を受給する生徒の割合は55.0%と、2年前の49.6%から大幅に増加しています。奨学金を受給する場合は卒業後の返済負担が重くのしかかる、奨学金を受給しない場合はアルバイトで進学費用を補わなくてはならず、その負担から進学を諦める学生もいることが懸念されています。
上記の問題を解決するために導入されることになったのが、大学無償化制度です。大学無償化制度とはどのようなものか詳しく見ていきましょう。
高等教育の修学支援新制度の概要
大学無償化制度とは、しっかりとした進路への意識や進学意欲がある場合、家庭の経済状況にかかわらず、大学・短期大学・高等専門学校、専門学校に進学する機会を得られるようにサポートするための制度で、文部科学省が2020年4月に「高等教育の修学支援新制度」として制定しました。
参照:文部科学省|高等教育の修学支援新制度
この制度では低所得世帯の大学・短期大学・高等専門学校、専門学校に進学する機会を得られるようにする一方、2025年に導入が予定されている制度では多くの子ども(3人以上)がいる世帯の進学費用の負担を軽減することを目的としているという点で異なります。
高等教育の修学支援新制度は誰でも利用できるわけではなく、利用するには要件を満たさなくてはなりません。まずは対象となる世帯年収の目安と支援額です。
【支援を受けられる年収の目安と支援額】
支援対象者 | 年収の目安 (両親・本人(18歳)・中学生の家族4人世帯の場合) | 年収の目安 (両親・本人(19~22歳)・高校生の家族4人世帯の場合) | 支援額 |
住民税非課税世帯の学生 | ~270万円 | ~300万円 | 満額 |
住民税非課税世帯に準ずる | ~300万円 | ~400万円 | 満額の2/3 |
世帯の学生 | ~380万円 | ~460万円 | 満額の1/3 |
※基準を満たす世帯年収は家族構成や構成員の年齢などによって変化
支援は授業料等減免と給付型奨学金に分類されます。
【授業料等減免の上限額(昼間制:年額)】
国公立 | 私立 | |||
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約17万円 | 約39万円 | 約25万円 | 約62万円 |
高等専門学校 | 約8万円 | 約23万円 | 約13万円 | 約70万円 |
専門学校 | 約7万円 | 約17万円 | 約16万円 | 約59万円 |
【授業料等減免の上限額(夜間制:年額)】
国公立 | 私立 | |||
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約14万円 | 約27万円 | 約14万円 | 約36万円 |
短期大学 | 約8万円 | 約20万円 | 約17万円 | 約36万円 |
専門学校 | 約4万円 | 約8万円 | 約14万円 | 約39万円 |
【授業料等減免の上限額(通信課程:年額)】
私立 | ||
入学金 | 授業料 | |
大学 | 約3万円 | 約13万円 |
短期大学 | ||
専門学校 |
【給付型奨学金の給付額(昼間制・夜間制:月額)】
国公立 | 私立 | |||
自宅生 | 自宅外 | 自宅生 | 自宅外 | |
大学 短期大学 専門学校 | 29,200円 (33,300円) | 66,700円 | 38,300円 (42,500円) | 75,800円 |
高等専門学校 | 17,500円 (25,800円) | 34,200円 | 26,700円 (35,000円) | 43,300円 |
※()内は生活保護世帯で自宅から通学する学生及び児童養護施設などから通学する学生の金額
【給付型奨学金の給付額(通信課程:年額)】
私立 | ||
自宅生 | 自宅外 | |
大学 短期大学 専門学校 | 51,000円 |
支援を受けられる年収の目安と支援額支援額にあるように、世帯年収によって上記の金額の満額が支給されるのか、2/3または1/3に減額されるのかが異なります。
従来の大学無償化制度は、上記のように世帯収入や資産の要件を満たすだけでなく、進学先で学ぶ意欲がある学生に限られていました。しかし、2024年4月からは、多子世帯や理工農系の学生といった中間層(世帯年収約600万円)も対象に含めることで制度の拡充を図っています。
多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化
昨今話題に取り上げられる大学無償化制度は、多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化です。これは2023年12月に閣議決定された「こども未来戦略」に盛り込まれたものです。
2025年4月1日から導入される予定です。多くの子ども(3人以上)を持つ世帯の進学費用の負担を軽減して、少子化を防ぐ目的があります。所得制限がなく、大学無償化が拡充されたと思いがちですが、多くの子どもを持つ世帯に限られているため、制度の導入によって実際に負担を軽減できたと感じる方はそこまで多くはないでしょう。
また、この制度は複雑で注意点があるので、理解を深めていくことが大切です。
ここからは、多子世帯の授業料・入学金の無償化について、掘り下げていきます。
2025年からはじまる大学無償化制度の利用条件
2025年からはじまる大学無償化制度は、誰でも対象というわけではありません。所得制限はありませんが、扶養される子どもが3人以上の世帯に限られている点に注意が必要です。
将来的な教育費の負担を考慮し、子どもを多く持つ選択をあきらめたという家庭もあったと思われます。しかし、この制度の導入によって将来的な教育費の問題が解決すれば、子どもを多く持つ選択をする家庭が増えることで少子化問題の解決も期待できます。
ただし、制度が導入される2025年4月時点では、すでに大学在学中の子どもに制度が適用されるのかは定かではありません。子どもがすでに大学在学中の方については、どのような利用条件になるのかを適宜確認する必要があります。
2025年からはじまる大学無償化制度の注意点
2025年からはじまる大学無償化制度でのトラブルを未然に防ぐには、以下の注意点を押さえておくことが大切です。
✓ 3人以上が「同時に」扶養されている必要がある
✓ 支給額には上限がある
それぞれの注意点を詳しく解説していきます。
3人以上が「同時に」扶養されている必要がある
多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化には扶養される子どもが3人以上の世帯という利用条件がありますが、重要なのは扶養される子どもという点です。3人以上が同時に扶養されていなければ、条件を満たさないという点に注意が必要です。
例えば、上記のように子どもが3人いて第1子が大学に進学した場合、第1子は支給対象です。また、第1子に加え第2子も大学に進学した場合、第2子も支給対象となります。
しかし、第1子が大学を卒業して扶養から外れた場合、扶養される子どもが3人という利用条件を満たさなくなります。支給対象であった第2子だけでなく、あとで大学に進学した第3子も支給対象外となるので注意が必要です。
支給額には上限がある
多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化という言葉を聞いて、完全に無料で大学に進学できると考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、無償化という言葉がついているものの、完全無償化というわけではありません。
多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化では、高等教育の修学支援新制度と同じ授業料・入学金のサポートを受けられます(以下参照)。
【授業料等減免の上限額(昼間制:年額)】
国公立 | 私立 | |||
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約17万円 | 約39万円 | 約25万円 | 約62万円 |
高等専門学校 | 約8万円 | 約23万円 | 約13万円 | 約70万円 |
専門学校 | 約7万円 | 約17万円 | 約16万円 | 約59万円 |
進学先の入学金や授業料が上記を上回っている場合、差額を支払わなくてはなりません。また、高等教育の修学支援新制度のように給付型奨学金は支給されない点にも注意してください。
2025年からはじまる大学無償化制度の手続き方法
2025年からはじまる大学無償化制度(多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化)は、進学先(大学)から手続きとされていますが、2024年4月現在では詳細はまだ発表されていません。開始時期が近づくにつれて徐々に詳細が公表されていくことが予想されるため、最新情報を常に確認し、手続きが遅れないように注意が必要です。
現行制度に似た手続き方法が採用される可能性があるため、現行制度の手続き方法を確認しておきましょう。現行の高等教育の修学支援新制度は、予約採用または在学採用のいずれに該当するかによって手続き方法が異なりました。
予約採用は高校3年生または高校卒業から2年以内で大学などに進学していない人、在学採用はすでに大学などに在学している人が選択する手続き方法です。
「予約採用」と「在学採用」の主な流れは以下のとおりです。
予約採用の主な流れ
- 1. 入学前年度の4月下旬以降
高校から関係書類をもらってJASSOに申し込む
- 2. 秋以降
JASSOから高校を通して予約採用の採用候補者決定通知が届く
- 3. 入学時
JASSOへの進学届の提出・進学先への決定通知提示および授業料等減免申請を行う
- 4. 入学後
4月より支援開始
予約採用の主な流れ
- 1. 4月以降
在学中の学校で書類をもらい、JASSOに給付型奨学金、学校に授業料等減免の申請をする
- 2. 7月以降
JASSOから学校を通して在学採用の採用候補者決定通知が届く
- 3. 7月以降
支援開始
10月分から支援を受けたい場合、流れは同じであるものの、時期が5か月ずつズレます。
子どもの教育資金は計画的な準備が必要
2025年からはじまる大学無償化制度や他の支援制度を利用することで子どもの教育資金の負担を軽減できますが、完全に無料というわけではありません。支給額を超えた分については自腹で負担する必要があることや、教科書代、制服代、通学費用がかかること、下宿する場合は家賃だけでなく、共益費や光熱費などのなどの費用も発生する点に注意が必要です。
教育費用がかかるのは大学だけではありません。文部科学省が実施した「学習費調査(令和3年度)」と日本政策金融公庫が実施した「教育費負担実態調査(令和3年度)」を参考に、高校3年間、大学4年間でかかる費用の目安をまとめると以下のとおりです。
- 高校は学習費調査の高校の学習費(公立・私立)の1年分を3倍して算出
- 大学は教育費負担の実態調査結果(各大学)から高校にかかった費用を差し引いて算出
学校種別 | 卒業までにかかる費用 |
公立高等学校 | 1,538,913円 |
私立高等学校 | 3,163,332円 |
国公立大学 | 4,812,000円 |
私立大学文系 | 6,898,000円 |
私立大学理系 | 8,216,000円 |
教育資金を計画的に増やすには新NISAがおすすめ!
資金不足に陥らないようにするためにも、いくらかかるのかを明確にし、計画的に貯蓄しておきましょう。
教育資金を計画的に貯蓄するには新NISAがおすすめです。新NISAとは、旧NISA制度の抜本的拡充・恒久化を目的とした新制度で、非課税で資産形成ができる制度です。
投資で得た利益に対して通常約20%の税金が課されますが、新NISAでは投資で得た利益をそのまま非課税で受け取れるため、教育資金を効率よく貯められるでしょう。
新NISAは、長期的な視点で資産を増やすことを目指しており、投資商品によってはインフレの影響を受けにくい運用が期待できます。長期的な投資を行うことで、市場の変動があっても時間をかけてリスク分散させることができる点がメリットです。さらに、運用商品の選択肢が広がっているため、自身のリスク許容度に合わせた投資が行える点も大きなメリットです。市場の変動リスクはありますが、長期的な運用を通じてインフレに打ち勝ち、子どもの将来のための資金を着実に増やしていくことが期待できます。
そして、非課税の利点を活かし、市場の成長に連動したリターンを期待できるため、教育資金の積立には選択肢の1つとしても考えられます。
金融庁の「NISA早わかりガイドブック」によると、「国際分散投資」で「積立投資」を5年間継続した場合と20年間継続した場合の比較があり、継続期間が5年の場合は、投資を始めたときの経済の状況によって元本割れのリスクがある一方で、20年という長い継続期間で積立投資をしている場合は、どの時点から始めても、利益は安定し、少なくとも、1989年以降のデータでは元本割れとなったケースが発生していない状況が確認されています。
資産を大きく育てようと思ったら、「長期」「積立」「国際分散投資」を意識して、投資信託を選ぶとよいでしょう。
投資信託は長期でコツコツと資産を育てていくのに適した商品です。
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まとめ
文部科学省が2020年4月から高等教育の修学支援新制度を実施したことによって、大学・短期大学・高等専門学校、専門学校に進学できる教育機会の均等化と経済的負担の軽減が図られました。しかし、世帯収入といった要件を満たすことが必要で、すべての進学希望者が対象というわけではありません。
2025年4月からは、多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化によって、扶養される子どもが3人以上の世帯は進学負担を軽減できるようになります。しかし、無償化とはいうものの、支給額を上回る部分については自己負担であることを理解し、それに備えた計画的な資金計画をしておくことが大切です。
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