二酸化炭素排出量とは?計算方法や見える化の必要性をわかりやすく解説
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近年、地球温暖化による気候変動などにより、さまざまな自然被害が確認されていることから、二酸化炭素の排出量を抑えるための脱炭素化が進んでいます。企業においてもこの動きは加速しており、多くの企業が二酸化炭素の排出量の見える化と削減に取り組んでいます。
この記事では、二酸化炭素の排出量を見える化する必要性や計算方法、企業が二酸化炭素の排出量を見える化するメリットと注意点について紹介します。
二酸化炭素排出量とは
二酸化炭素排出量とは、その言葉のとおり、排出された二酸化炭素の量のことです。
1985年頃から全世界の課題として掲げられるようになった地球温暖化は、温室効果ガスによって進行していると言われています。温室効果ガスには、二酸化炭素をはじめ、メタンや一酸化二窒素、代替フロンなど4ガスの種類があります。環境省の「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)」によると、2022年の温室効果ガス排出量の内訳は、二酸化炭素が91.3%、メタンが2.6%、一酸化二窒素が1.5%、代替フロンなど4ガスが4.5%と、二酸化炭素の割合が群を抜いて多いことが分かります。
私たちの生活と二酸化炭素は密接に関係しているため、完全に切り離すことはできません。しかし、地球温暖化の進行を食い止めるためには、二酸化炭素排出量を削減していかなければならず、その第一歩として企業は自社がどの程度の二酸化炭素を排出しているのかを把握する必要があるのです。
世界における二酸化炭素排出量
環境省の「世界のエネルギー起源CO 排出量(2021年)」によると、2021年における世界の二酸化炭素排出量は、約336億トンです。排出量の多い国トップ10は次のとおりです。
【世界における二酸化炭素排出量ランキング】
順位 | 国名 | 二酸化炭素排出量 |
---|---|---|
1位 | 中国 | 106.5(31.7%) |
2位 | アメリカ | 45.5(13.6%) |
3位 | EU27ヵ国 | 25.8(7.7%) |
4位 | インド | 22.8(6.8%) |
5位 | ロシア | 16.8(5.0%) |
6位 | 日本 | 10.0(3.0%) |
7位 | イラン | 6.4(1.9%) |
8位 | 韓国 | 5.6(1.7%) |
9位 | インドネシア | 5.6(1.7%) |
10位 | カナダ | 5.1(1.5%) |
※単位:億トン
日本は世界のなかでも6番目に二酸化炭素排出量が多い国で、2021年には約10億トン(二酸化炭素(CO2)換算、以下同じ。)もの二酸化炭素を排出しています。国内における二酸化炭素排出量の推移においては、1990年度は約11.6億トン、2013年度は約13.1億トン、2021年度は約10.0億トンと時間はかかっていますが、確実に排出量の削減に成功しています。
二酸化炭素排出量の見える化の必要性
特に先進国においては、地球温暖化や気候変動に対する取り組みが非常に活発になっています。具体的には、工場や自動車から排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを減らすための政策や技術開発が進められているのです。このような取り組みは、地球全体の気温上昇を抑えるために重要であり、現在では世界中で二酸化炭素排出量の削減が求められる大きな流れとなっています。
日本はこれまでに、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の開発など、二酸化炭素(CO2)排出量の削減において一定の成果を上げてきました。しかし、カーボンニュートラル(CO2の実質排出ゼロ)や脱炭素社会を実現し、持続可能な社会を築くためには、これからも継続してCO2排出量の削減に取り組む必要があります。
二酸化炭素の排出量削減において、どの分野でどのような対策を講じるべきかを計画し、実行していくためには、まず明確な削減目標の設定が重要です。そしてこの目標を設定するためには、現時点におけるCO2排出量を正確に把握することが不可欠です。交通や産業部門での排出削減技術の導入や、再生可能エネルギーのさらなる普及など、地球温暖化を抑制する具体策を講じるためにも、二酸化炭素排出量の見える化が重視されているのです。
二酸化炭素排出量を削減するのはなぜ?
二酸化炭素の排出量を削減しなければいけない理由は、いくつかあります。まず話題に上りやすいのが地球温暖化です。温暖化が進むと、熱波や洪水、干ばつなどの極端な気象現象や気候変動が起こります。これにより、農業生産量の低下や水資源の枯渇など、多くの問題が発生します。
また、温暖化による気候変動は、動植物の生息地を破壊し、絶滅のリスクも高めます。このような生物多様性の喪失は、食糧供給や水の浄化、気候の調整などといった人間の生活に欠かせない生態系サービスを脅かすため、経済活動へのダメージも避けられません。人類をはじめ、地球上に生きるすべてのものの存続を脅かす地球温暖化は、1つの国が頑張ってもどうにもできないのです。地球温暖化は国境を越えた問題であり、国際的な協力のもとでの取り組みが求められています。
2015年にはパリ協定により「産業革命以前と比べて世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える努力をする」ことが採択され、先進国・途上国関係なく地球温暖化・気候変動への取り組みが強化されています。二酸化炭素の排出量を減らす地球温暖化への取り組みは世界的な約束であるため、国際的な責任を果たすためにも重要です。
また、CO2の増加は大気汚染を悪化させるリスクも含んでいます。大気汚染は、呼吸器系や心血管系の疾患を引き起こすとされており、特に都心部ではすでに深刻な問題として解決が急がれています。私たちの健康や経済活動をはじめ、生態多様性の保護、気候変動の抑制、国際的な責任などの理由から、CO2排出量の削減は地球規模で取り組むべき重要な課題となっています。
日本における二酸化炭素排出量の削減目標
日本では二酸化炭素排出量の削減目標として、「日本は2030年度において温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続ける」 ことを目標に掲げています。2013年の二酸化炭素排出量は約13.1億トンなので、約6.1億トンもの二酸化炭素排出量を削減する必要があります。
この目標は2015年のパリ協定で合意したものであり、2021年に閣議決定しています。日本政府は、この国際社会との約束を実現すべく、法律を制定して事業者に対して下記のような義務を課しています。
🌎 地球温暖化対策推進法(温対法)
東京取引証券所の最上位「プライム」に上場する企業に対して、温室効果ガスの排出量を算出して報告することを義務づける法律
🌎 エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)
エネルギー使用量が一定以上ある事業者に対して、エネルギー使用状況などの定期報告義務、非化石エネルギーの使用目標を提出することを義務づける法律。また、エネルギーを使用するすべての事業者に対する努力義務もある
そのため、事業者は自社の二酸化炭素排出量の把握、削減目標の設定など二酸化炭素排出量の削減に向けた取り組みをステークホルダーと共有し、推進していくことが求められています。
二酸化炭素排出量の計算方法
二酸化炭素の排出量の基本式は、「活動量(ガソリンやガス、電気など)×排出原単位」です。
活動量とは、使用した原材料の量や生産時のエネルギー利用量、輸送量、廃棄量、焼却量などを指します。排出原単位は、「原料やエネルギーごとに規定された単位当たりの二酸化炭素排出量」です。これらをかけ合わせることで、自社の二酸化炭素排出量を把握できます。
サプライチェーンを含めた緻密な計算をする場合
さらにサプライチェーンも含めたより精緻に排出量を計算する場合は、Scope1(直接排出)、Scope2(間接排出)、Scope3(サプライチェーンによる排出)の3種類の数値を合計して算出します。
これらのデータを算出することは容易ではありません。しかし社会責任を担う企業体として、環境問題に真摯に取り組むために、自社の二酸化炭素排出量を見えるようにし、把握する必要があるのです。
- Scope1(直接排出)
燃料燃焼や生産プロセスなど、企業の事業活動によって排出する二酸化炭素
計算式は活動量✕排出原単位- Scope2(間接排出)
他社から供給されたエネルギー(電気・熱など)の使用に伴い間接的に排出する二酸化炭素のこと。排出係数とは、「事業活動における単位生産量・消費量等あたりで排出される二酸化炭素を示す数値」のことで、環境省のウェブサイトで公表されており、各業種・業界の排出実態に沿って試算されている。
計算式は活動量✕排出係数- Scope3(サプライチェーンによる排出)
企業の事業活動に伴い他社が排出する二酸化炭素。輸送、配送、通勤、出張など15のカテゴリでそれぞれ計算する。
計算式は活動量✕排出原単位(カテゴリ別)
企業が二酸化炭素排量の見える化や削減に取り組む理由
2006年に国連から「責任投資原則(PRI)」が公表されたことを受け、欧州の機関投資家は「社会的責任への投資(ESG投資)」をより積極的に行うようになりました。さらに近年、気候変動による被害が目に見えて悪化したこともこの動きを後押ししています。つまり、企業が気候変動に関する情報を開示することは、投資家にとって重要な判断材料となっているのです。具体的には、二酸化炭素排出量の見える化や削減など、気候変動への対策について適切な情報を提供することが求められています。これにより、企業は持続可能な社会の実現に貢献し、信頼を得ることができます。
また、2022年4月から一部の上場企業において、主要国の金融当局が立ち上げた「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づく気候変動リスクの情報開示が実質的に義務づけられています。
さらに多くの事業者は自社のみならず、事業活動に関わるサプライチェーン全体で二酸化炭素の排出量を削減する取り組みが求められています。サプライヤーに対しても二酸化炭素排出量の報告や削減を求められることもあるため、取引先に報告できるよう二酸化炭素排出量の見える化・削減への取り組みが必要なのです。
企業が二酸化炭素排出量の見える化を行うメリット・注意点
二酸化炭素排出量の見える化には、次のようなメリットと注意点があります。
- メリット
・社会的な信頼感・好感度の向上
・他社との差別化
・自社ブランディングに役立つ
・エネルギーコストの削減に役立つ- 注意点
・多くの手間がかかる
・ツールの導入などにコストがかかる
二酸化炭素排出量の見える化を行うことで、企業は環境問題に積極的に取り組む「地球に優しい企業」というイメージを持ってもらうことが期待できます。
これにより、企業の信頼感や好感度の向上も期待できます。また、環境問題への積極的な取り組みは、他社との差別化にも繋がります。
とはいえ、サプライチェーンを含めた事業活動全体の二酸化炭素排出量を見える化することは、手作業ではほぼ不可能です。そのため、ソフトウエアやITツールの導入が欠かせません。もちろん、これらの導入にはコストがかかり、運用には手間もかかります。しかし、これらのツールを活用して二酸化炭素の発生要因を分析すれば、優先的に削減すべき箇所を特定でき、エネルギーコストの削減にも役立てることができます。
二酸化炭素排出量に対するクレディセゾンの取り組み
最後に、二酸化炭素排出量に対する私たちクレディセゾンの取り組みを紹介します。
セゾンエコチャレンジ
クレディセゾンでは、社員一人ひとりが環境や生態系保全の重要性を理解し、職場や日常生活の中でエコ活動、啓蒙活動に取り組む意識の醸成を目的に、全社員参加型のCO2削減プロジェクト「セゾンエコチャレンジ」を実施しています。実施期間中に40トンの二酸化炭素削減を目標に、下記のようなエコ推進活動に取り組みます。
🌱 マイバッグ・マイボトルの使用
🌱 環境に配慮した商品の購入
🌱 エコに関わるボランティア活動
🌱 フードロスに向けた値引き商品の購入
🌱 ペーパーレス会議
これらの活動を写真に収め、Webアプリケーションに投稿することで、アクション数に応じた二酸化炭素削減量をリアルタイムで確認できるようになります。セゾンエコチャレンジへの社員参加率と、実際に削減できたCO2の量は以下のとおりです。
クレディセゾンでは、一人ひとりのほんの少しの行動の変化で二酸化炭素の排出量を削減でき、地球環境の負荷低減に繋がることを実感できたという声が多く上がっています。
弊社ではセゾンエコチャレンジをきっかけとして、今後も全社的にエコ推進活動を継続し、持続可能な社会に貢献していきます。
あなたも参加できる!利用明細書から二酸化炭素排出量を可視化できる日本唯一のカードの提供
クレディセゾンでは、カーボンニュートラルな選択を後押しする “環境価値”流通プラットフォーム「becoz(ビコーズ)」と連携して、利用明細書から二酸化炭素排出量を可視化できる日本唯一のカード「SAISON CARD Digital for becoz」を提供しています。申し込みから最短5分でアプリ内のカードまたは電子決済から決済可能です。カード番号や利用明細もアプリ内で確認できるため、プラスチックカードの発行や利用明細書の発行がない、環境に最大限配慮されたカードです。
また、利用額1,000円に対して1ポイントの永久不滅ポイントが付与されます。付与されたポイントは1ポイント最大5円換算で利用可能。キャンペーンなどで倍増するポイント以外の基礎的なポイントは、月の請求の合計額に対して付与されるため、取りこぼしも最小限(最大999円)に抑えることができます。カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向けて一個人として取り組んでみたいという人は、ぜひ環境にも家計にも優しい、先進的なbecozカードを持つことからはじめてみませんか。
企業体としてのクレディセゾンの具体的な取り組み
株式会社クレディセゾンも気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に対し、企業サイトでESGの取り組みに関するデータを公表しています。具体的には決済データに基づきCO2排出量を可視化できるクレジットカードの提供や、生物多様性の保全および次世代への自然環境の継承を目的とした赤城自然公園の運営、環境に配慮した材料の使用などです。詳細な取り組みやデータに関しては、各ページをご確認ください。
まとめ
地球温暖化は日本だけでなく世界における喫緊の課題です。大きな視点で見れば自社は関係ないと思いがちですが、因数分解していけば、二酸化炭素を排出しているのはそれぞれの一企業・一個人です。そのため、一人ひとりが当事者意識を持ち、企業という組織単位で二酸化炭素排出量の削減に取り組まなければ、地球温暖化の進行を止められず、次世代の未来を潰しかねません。
まずは自分がどのくらいの量の二酸化炭素を排出しているかを把握することからはじめてみませんか?
そのうえで、社会全体を良くするために、削減目標に対してどのようにアプローチできるのかを考えていきましょう。