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割賦販売法ってどんな法律?改正割賦販売法のポイントや経緯・目的も解説
「割賦販売法」というものをご存知でしょうか?これは商品やサービスの分割払いに関わる法律で、制定当初はクレジットカードの産業の育成・発展を目的に制定されました。
以来、消費者保護の観点からの改定が数度行われ現在に至っています。今回は割賦販売法の概要と目的について解説したうえで、2018年6月1日に施行された「改正割賦販売法」の内容にも触れていきます。
クレジットカードを利用している方、これから利用することを考えている方は、この法律によってクレジットカードの利用者がどのように守られているかチェックしてみましょう。
Contents
記事のもくじ
割賦販売法の概要と制定の目的
割賦販売法は、割賦販売などの取引を公正にし、事業の健全な発展を図ることを目的に1961年(昭和36年)に制定された法律です。
割賦販売とは、商品やサービスの購入者が代金の支払いを2ヵ月以上の期間で、かつ3回以上に分割して受けることを条件に商品やサービスを提供すること、およびクレジットカードによる販売をいいます。
割賦販売では商品やサービスの購入者の支払いが滞り、それによって店舗側が代金の回収ができなくなるケースがあります。
また、消費者側でも購入者に不当に不利になるような事例の防止や、割賦販売の条件を分かりやすく消費者に表示する必要があるのではないか、などという問題提起もなされていました。
これらの意見を受けて、後払いで商品を購入したり、サービスの提供を受けたりする「クレジット契約」についてのルールを制定する目的で割賦販売法が定められました。
クレジットカードにおける割賦販売
クレジットカードには商品やサービスを購入するために利用する「ショッピング機能」と、クレジットカード会社から現金を借り入れできる「キャッシング機能」の2種類があります。
クレジットカードのショッピング機能においては、カード会社が2ヵ月を超えて後払い、又はリボルビング払いを受ける場合が割賦販売法の適用を受けることになります。
2ヵ月を超える2回払いや、分割払い・リボルビング払い・ボーナス一括払いが割賦販売法の規制対象となります。一方、翌月1回払いは割賦販売法の対象外となります。
クレジットカードのキャッシング機能は商品やサービスの購入ではなく借入にあたるため、割賦販売法の規制対象外です。代わりに貸金業法の規制対象となります。
その他の割賦販売
その他の割賦販売の主な例としては「ショッピングローン」や「個別信用あっせん契約」などが挙げられます。
ショッピングローンは主にパソコンや家電など、高額商品を購入する際の支払方法であり、個別信用あっせん契約は、信販会社と提携している店舗でクレジットカードを利用せずに分割払いできる仕組みとして利用されています。
また、個別信用あっせん契約はスマートフォンやポケットWi-Fi本体などの支払いに利用されています。個別信用あっせん契約を利用し、毎月の通信費と合わせて本体代金を支払っている方も多いのではないでしょうか。
割賦販売法に基づく取引のメリット
割賦販売法では消費者を守るための権利として「クーリング・オフ」や「支払停止の抗弁権」などが定められています。
クーリング・オフは、申込書面または契約書面などを受け取ってから8日間であれば、無条件で解約・撤回できる制度です(連鎖販売取引など特定の取引の場合は「20日間」)。
不意の訪問販売や電話勧誘など、「自分の意思がハッキリしないまま契約してしまった」ケースで消費者を保護します。
支払停止の抗弁権は、購入した商品について問題があった場合、消費者がクレジットカード会社からの代金請求に対し、支払い停止を主張できる権利です。
「購入した商品が届かない」、「カタログの見本と実際の商品が違う」、「販売業者が倒産してサービスが受けられなくなった」といったトラブルが発生した場合に備えられます。
セキュリティ強化を目的とした「改正割賦販売法」
次に2018年6月1日に施行された「割賦販売法の一部を改正する法律(以降、改正割賦販売法)」について解説します。
改正割賦販売法の主な目的には、「情報漏洩と不正被害の防止」と「セキュリティ強化」が挙げられます。
これには近年、EC加盟店などを狙った不正アクセスやスキミング被害などにより、クレジットカード情報の漏えいが拡大してきたことが大きく影響しています。
クレジットカード情報の漏洩に伴い、偽造カードやネット上での本人なりすましなどによる不正使用被害は増加傾向にあります。
2020年のクレジットカード不正利用被害額は約253億円にものぼり、これは2014年(5年前)の2倍を大幅に超える数字となっています。
クレジットカード会社も被害額の増加を受け、本人認証サービス(3Dセキュア)や不正検知システムを導入するなど、不正利用を防ぐために徹底した取り組みを行っています。
このような状況をふまえて、安全・安心なクレジットカード利用環境を利用者に提供するための措置を講じるべく、割賦販売法の改正が行われました。
また改正割賦販売法には、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックに伴うインバウンド需要を取り込むために、セキュリティ強化を図るという目的も含まれていました。
クレジット取引セキュリティ対策協議会の「クレジットカード・セキュリティガイドライン」とは?
割賦販売法の改正に伴い、クレジット取引セキュリティ対策協議会は「実行計画」というものを発表しました。
その後2018年、2019年と改定されていますが、この実行計画は「安心・安全なカード利用環境の実現」を目標としており、クレジットカード加盟店が改正割賦販売法上のセキュリティ対策義務を果たすための実務上の指針となっていたものです。
2020年には「実行計画」の後継となるものとして、クレジット取引に関係する事業者が実施すべきセキュリティ対策をとりまとめた「クレジットカード・セキュリティガイドライン」が公表されました。
このガイドラインでは、クレジットカード情報の保護と不正利用防止のためのセキュリティ対策を定めるとともに、その対策を有効なものとするために事業者が対応すべき事項が記載されています。
改正割賦販売法における3つのポイント
2018年施行の改正割賦販売法の主な改正内容のなかには、クレジットカード会社などに対する登録制度および加盟店調査の義務化と、クレジットカード加盟店に対するセキュリティ対策の義務化があります。
それぞれ見ていきましょう。
①クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録制度
改正割賦販売法では、クレジットカード会社などのアクワイアラー(加盟店契約会社。カード加盟店に対し、クレジットカード番号等の取扱いを認める契約を締結する事業者のこと)などについては、「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」として経済産業省への登録が必要となりました。
この登録を行ったアクワイアラーは、加盟店がクレジットカードの不正利用を防止するためのセキュリティ対策を行っているかなどの調査をすることが義務付けられています。
②加盟店調査などの義務化
前述のとおり、「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」は加盟店への調査や必要な措置を講じることが義務化されました。
調査項目には、主に下記の点が含まれています。
● 加盟店契約の締結時または締結後において、クレジットカード番号等の適切な管理や不正利用を防止するための対策ができているか
● 消費者との間でトラブルが発生していないか(不適切な販売をしていないか)
加盟店契約締結にあたり、調査の結果適切でないと判断した場合には加盟店契約を結ぶことはできません。
また、法令で定める基準に適合しない加盟店に対しては、合理的な期間内に基準に適合するよう指導し、従わないとき又は法令で定める基準に適合することが見込まれない場合には、加盟店契約を解除することが求められています。
③加盟店におけるセキュリティ対策
クレジットカード会社などのアクワイアラーに上記のような対応が義務付けられるのと同様に、クレジットカード番号等を取り扱う加盟店側にも、クレジットカード番号等の適切な管理や不正利用防止対策が求められています。
加盟店においては、情報漏洩を防止するための対策として、主に下記の対応を求めています。
● 加盟店におけるカード情報の非保持化
● カード情報に関する国際的なセキュリティ基準(PCIDSS)に準拠した情報保持
また、不正利用対策として、下記の対応を求めています。
● 店舗に設置する決済端末のIC対応化
● 非対面の取引における3-Dセキュア、認証アシスト、セキュリティコードによる本人確認
割賦販売法の改正はクレジットカードを使った生活にどう影響する?
割賦販売法の改正は「情報漏洩と不正被害の防止」と「セキュリティ強化」を行うことで、消費者が安心・安全にクレジットカード利用ができる環境作りを目的としています。
割賦販売法の改正による影響としては、下記のような機会の増加が考えられます。
● 加盟店での決済時に本人認証や券面認証での本人確認をより求められる
● ネットでの決済時、3-Dセキュアやセキュリティコードによる本人確認の機会が増える
決済時の手間が少し増えるように感じるかもしれませんが、本人確認は決済時のセキュリティを強化するための重要な手順です。
本人確認を求められた際にスムーズに対応できるよう、3-Dセキュアや認証アシストに対する理解を深めておきましょう。
まとめ
当初は「割賦販売等の取引を公正にし事業の健全な発展を図る」というクレジット産業育成が主な目的であった割賦販売法。
時代の流れに伴い、2018年6月1日に施行された改正割賦販売法では、消費者が安心・安全に利用できるクレジットカード環境の整備が主な目的となっているのをご理解いただけたかと思います。
たとえばクレジットカードを利用する際、以前ならクレジットカードの磁気部分(裏面の黒い帯)を端末にスワイプしていましたが、最近では端末にクレジットカードを差し込んで決済する方式に変わってきたことにお気づきでしょうか?
これは改正割賦販売法により、クレジットカード端末のIC化が進んでいる証拠といえるでしょうです。
割賦販売法と聞くと少し難しいイメージがありますが、このように私たちの日常の身近なところにも影響を及ぼしている法律なのです。クレジットカードをより安全に利用できる環境が整うのは、利用者として安心です。
また、クレジットカードのショッピング利用なら、セゾンパール・アメリカン・エキスプレス(R)・カードがお得な年会費でおすすめです。
年会費は1,100円(税込)(初年度無料)で、ポータルサイト「セゾンポイントモール」でのポイント優遇があるなど特典盛りだくさん。
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(※)適用には、諸条件があります。詳細はカードお申込みページをご確認ください。
なお、今回ご紹介したカードはインターネット上での不正使用による損害を補償するサービス「オンライン・プロテクション*」を利用できます。
クレジットカードはネットショッピングで大いに役立ちますが、セゾンカードでは「オンライン・プロテクション*」をはじめとしたサービスによって安全面からもショッピングをサポートしています。
割賦販売法の改正をふまえつつ、カード会社も不正利用の阻止や消費者保護に積極的に取り組んでいます。本記事で解説した割賦販売法をふまえた情勢を意識し、セキュリティ対策を意識したクレジットカード選びにぜひお役立てください。
(※)セゾンカード感謝デーの利用は永久不滅ポイント付与対象外となります
(※)補償を受けるには、以下条件があります。
・当社が実施する調査で不正利用による被害が確認できること
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(※)「QUICPay」「QUICPay+」は、株式会社ジェーシービーの登録商標です。
監修者
松浦 絢子
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法科大学院出身。企業法務系の法律事務所のパラリーガル(法律事務補助)として主にIT業界を担当した後、ロースクールに進学しました。弁護士資格取得後は法律事務所や不動産会社の法務部門に所属した経験もあります。法律事務所に在籍していた頃はちょうど東日本大震災後の不景気で、個人や事業者の方から銀行や消費者金融からの借金、クレジットカード利用に関するご相談を多くお受けする機会がありました。不動産会社の法務部に転じてからは、不動産購入時のローンや機関投資家の不動産投資におけるファイナンスに携わっていたため金融の仕組みについては人一倍興味があります。現在、不動産やIT分野を中心として、トラブル対応・新規事業に関する適法性検討・契約交渉に関するご相談などに取り組んでいます。その他、借金や資金繰りにお困りの個人や事業者の方からのご相談もお受けしております。休みの日は、たいてい近所の大きな公園で子供と遊んでいます。
【保有資格】
弁護士、宅地建物取引士